☆☆ 「BELLOWS」はカメラシステムの華 ☆☆

 

2018/11/15 改訂

… 前書き …

 「蛇腹」を用いるベローズ装置は、その「造形」として、カメラ関係の機材の中でも飛び切りマニアックな雰囲気を持っています。その「機能」にしても、撮像部とレンズを連結するという存在であることから、とりわけフレキシビリティが高いのです。アダプターの利用などでマウント部などを工夫することにより、多様なカメラやレンズを装着することができることが、そのマニアックさを大いに助長しています。

 その多彩なフレキシビリティ故に、速写やAFとは無縁であり、自動絞りも使えないものがあります。じっくりと撮影するスタイルでないと使えない品でもあります。スローな撮影を愉しむ機材なのです。

 フイルムカメラ時代には、現像するまで上手く写っているのか確認ができなくて、また、接写に使うときには「露出倍数」の知識と経験が必要だったのですが、デジタルカメラならすぐに撮影結果が分かりますから、適正な露出になるまで設定を変えるなどして、良好な写真を得るのも簡単になりました。より使用についての敷居が低くなったのです。

 一般的には、ベローズ装置は「接写用」であると思われています。確かに、その用途では他の追随を許さぬ存在なのですが、カメラで使う以上、無限遠まで撮影ができたほうがよいのは言うまでもありません。そのためにヘリコイドなどのフォーカス装置を内蔵しない「ベローズ専用」のレンズがあり、また、元来フォーカス機構を持たない「引伸ばしレンズ」にもその用途に使えるものがあるのです。フランジパックの関係で、無限遠から使えるレンズの焦点距離が100o以上になってしまうのが難点ですが…

 しかし、現在はカメラメーカーからカメラシステムの一員としてのベローズ装置が販売されなくなってしまいました。使いたいと思う人は粗悪なサードパーティ製や、蛇腹の劣化が進んでいる品を中古市場から調達するしかないのです。手軽に楽しめるものでなくなっているのは、とても残念なことです。

 そんなベローズ装置について、頑迷固陋なPENTAX支持者を自認する亭主が所蔵しているものを、PENTAXの現役カメラで使えるものを中心に、幾つか開陳してみようと思います。これを見て自分も使ってみたい、所有したいという人が増えれば、復活の日が来るのかも…

…  もくじ …

旭光学工業(PENTAX)におけるベローズ装置の変遷について

ASAHI PENTAX BELLOWS U

MIRANDA の FOCABELL

MINOLTA AUTO BELLOWS V

FUJICA BELLOWS

ベローズ装置で使う小物たち

ダブルレリーズ・コレクション

互換情報

あおり撮影について

ベローズ装置で無限遠の出せるレンズ

こぼれ話

 ベローズ装置には「レール」が必需品です。これの形式・形状には色々あって、初期のベローズ装置に使われていたのが丸レールです。1本丸レールのものが軽量小型にできるので、簡易型にはよく使われました。その上を可動するレンズ台座による光軸精度を高めるために、「丸」の両側面を平面として陸上トラック形状断面に改良したものも現れました。レンズ台座の移動安定性をより高めることを目指して、台形断面の角レールも生まれています。これらは、1本レールの軽量小型を良しとしての改良です。

 丸レールが1本では、強度的に光軸精度が確保できないとなると、2本丸レールとした製品が生まれます。また、そのことによって強度が飛躍的に増したことで、レンズ台座とカメラ台座を別々に動かすことも可能になりました。しかし、三脚座の位置はレール基部かカメラ台に設けるしかないので、使い勝手の上で三脚座を可動式にしたいという欲求には応えられていません。そこで、丸レールをさらに2本増設して、これに可動式の三脚台座を取り付けるものが生まれました。2本レールをマクロスライダーという形で増設する形式のものもあります。

 鉄製(又は真鍮製)の丸レールが4本も必要ということになると、重量も形状も大きくなります。そこで、これに対する革命的な改良が「X」断面形状の1本角レールの採用でした。左右を蟻型とした角レールの上面と下面にラック・ギアを設けることで、上にレンズ台座・カメラ台座、下に三脚台座を取り付け、それぞれ独立して動く3点可動式を実現したのです。特に、アルミ製1本角レールは軽量小型であり、この形式は、すぐに丸レール式を駆逐してしまいました。

 PENTAXは、4本丸レールの時代を経ていません。2本丸レールから1本角レールへ、「オートベローズ」という形で直行しています。アルミ1本角レールの「魁」ということです。また、レンズ台座と蛇腹とを外せるようにしたため、レンズ台座を前後逆にすることで、「オート」のままでのレンズ逆付けを実現しました。このことも革命的なことでした。

 オートベローズへの移行が最も遅れたのが「Nikon」です。4本丸レールとしたときに、レンズ台座にあおり機構を組み込んだことで自動絞りの機構を組み込めなかったのか、すでにあった自動絞り機構組み込みのオートリングの存在が邪魔したのか、それは最終モデルである1本角レール「PB-6」でようやく実現しているのです。

 「Minolta」は、オートベローズを1968年2本丸レール時代に実現していますが、その「オート」の機構を凝り過ぎたために、PENTAXのような逆付け時の「オート」には対応できていません。等倍以上の接写にはレンズ逆付けが不可避ですし、それがベローズ装置がマクロレンズより優れている機能の最右翼なのですから、これは大きな減点です。さらに、縦位置での取り付けが出来ないなど、凝り過ぎた「オート」機構がもたらした制約は大きなものとなっています。

 なお、「Minolta」においては、1本角レールは1979年「AUTO BELLOWS V」で実現しています。これのアルミ1本角レールは上下に分割できるもので、下部は単体のマクロスライダーとしても使えるものです。レンズ逆付け時の「オート」機能やレンズ台座にあおり機構を組み込んでいることを含めて、この製品が135フォーマット用としては最も高機能なベローズ装置であるとの栄誉を受けることが出来るでしょう。既に滅亡マウントであるのと、使用している潤滑用蟻型のプラスチック部材が劣悪だったために、機能を失う障害が危惧されるのが残念なところです。

 これも滅亡マウントである「Contax Auto Bellows PC」も「Minolta AUTO BELLOWS V」と同じ製造者によるOEMで、ほぼ同等機能です。ベローズ装置の機能としては両者が最高峰なので、フランジパックの短いミラーレス機にマウントアダプター併用で使用する需要がこれからも高まるものと思われます。特に、135フォーマットのミラーレス機が誕生したなら、その価値が飛躍的に高まるのかもしれません。これらに比べたら、現在高値で取引されている「Nikon」の「PB-4」なんぞ、不細工不器用な、ただの骨董品かと…

 あおり機構の付いているベローズ装置は、撮影の幅を大きく広げてくれる優れものですが、それに取り付けるレンズのイメージサークルが大きくないと、満足に使えない画像しか作れません。イメージサークルの周辺部の画質は低下しているのが通例ですから、余裕が大きいほど良好な画像が得られることになります。

 あおり装置は、レンズ台座とカメラ台座のどちらにも組み込むことが可能で、これを実現したベローズ装置も存在します。「プラウベルSST」がそれで、レンズ、カメラともにアダプターの交換でカメラ各社の製品が使えるというものでした。しかし、機能を凝り過ぎ、詰め込み過ぎてなのか、部材の強度を含めて造りに難があり、多くある可動部のガタが多くて操作性が悪く、また、カメラアダプターの固定が不安定であるため、使用中にカメラの脱落事故などもあったようです。大型の大判カメラ並みの機能を135フォーマットカメラ用の中に詰め込んだことによる弊害でしょうか…

 ベローズ装置の究極形としては、自動絞りができるオートベローズです。これは、国内カメラメーカーとしては、1960年代後半に旭光学とミノルタが実現しています。旭光学とミノルタが採用した自動絞りの方法はまったく異なっており、ミノルタは、交換レンズの延長として、愚直にカメラの自動絞り機構の作動を伝達する機構をベローズ装置に組み込みました。とても大がかりな仕組みです。

 しかし、旭光学は発想を軽快に飛躍させて、ダブルレリーズという別の装置を用いることで、レンズの絞り込みと、その後のシャッターレリーズを実現しています。この方法は、ベローズ装置とカメラの連結という部分をフリーにし、ベローズ装置の簡素化に寄与するとともに、レンズ逆付け時の自動絞りをも実現しました。結局、多くのカメラメーカーは、この簡便かつ合理的なダブルレリーズ利用方式に追随することとなります。

 ミノルタは、1979年にようやくレンズ逆付け時の自動絞りを実現する「AUTO BELLOWS V」を発売しています。このときにも、大勢を占めていたダブルレリーズ方式に降ることを良しとせず、シングルの汎用ケーブルレリーズを用いての絞込後に、独自の仕組みである出力ケーブルレリーズを用いてシャッターレリーズする仕組みを採用しています。意地もここまで来ると、まことに見苦しいと言わざるをえませんね…

 これだけ独自仕様、技術の独創性というものに拘泥する企業だったのですから、カメラ事業の維持にも、もっと意地を張って貰いたかったものです。

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旭光学工業(PENTAX)におけるベローズ装置の変遷について

 レンズ交換式の一眼レフカメラだからこそ有効に使えるものとしてベローズ装置があります。1952年旭光学工業は、「M37マウント」の「ASAHIFLEX」という名称のカメラから一眼レフを始めましたが、この時代から 、カメラ・システムの一環としてベローズ装置は販売されていました。

 

※資料画像 ASAHIFLEX用 「BELLOWSCOPE」

 それは、当時、多くのカメラメーカーが採用していた小林精機製作所「BELLOWSCOPE」のOEM製品で、アルミの1本丸レールが根元で折り畳める形式でした。

 海外の画像によると、前面に付けられていた「ネームプレート」は「赤地のビス止め式」で、この時代のものの特徴としては「ムーブメント・ダイヤル」や「クランプ・ダイヤル」が「アルミ製地金色」であるということで、表記は浮彫になっていました。

※ASAHIFLEX用 「BELLOWSCOPE」

 なお、上画像のように、ネームプレートが「黒地のビス止め式」のものもあるのですが、「赤地」のものとどちらが古いものなのか不明です。この画像の品は折り畳める丸レールの左右にf=50mmとf=100mmの倍率定規が刻まれています。f=58mmレンズは1954年誕生ですから、この品が作られたのはそれ以前のものと思われます。

 ところで、上記「赤地のビス止め式」のネームプレートの方は輸出用だった可能性もあります。海外の画像には「黒地」のものは見られませんから…

 レンズマウント側はマウント金具を取り付けているレンズ台座の穴がM42マウントより小さいので、M42マウントへの交換は困難ですが、カメラマウント側はカメラ台座の穴径が40mmとなっていて、後世のM42マウントのものと同じなので、M42マウントへの交換が容易です。それを行えば、M37マウントレンズの母艦としてデジタル一眼レフに取り付けて使うのに、入手が極めて困難な「M37-M42マウントアダプター」を用意しなくても可能です。

 この形式の品は1957年にペンタプリズムを搭載してM42マウント化された「ASAHI PENTAX」以降の時代にも引き続き採用され、それには「ASAHI BELLOWSCOPE」と表記された「黒地のビス止め式」ネームプレートが使われています。

 下画像左のように、前期には上記「ASAHIFLEX」用と同じようにムーブメント・ダイヤルやクランプ・ダイヤルがアルミ製地金色でしたが、下画像右のように、後期には黒染めになっています。

 左の前期のものには焦点距離58mmの倍率定規しか刻まれていません。右の後期のものには焦点距離55mmの倍率定規も刻まれていますし、リバース取り付け時の倍率も赤字で刻まれています。このことから、左のものは1957年「AP」時代、右は1958年「Auto-Takumar 1:1.8/55」をセットレンズとした「K」時代以降というのが亭主の推定です。

 ところで、その「黒地のビス止め式」ネームプレートに「ASAHI BELLOWSCOPE」ではなく、「ASAHI BELLOWS UNITS」と表記されているものと、「ASAHI BELLOWS UNIT」と記載されているものとが存在するのです。前者は1本丸レールが折り畳めるもので、後者は折り畳めないものです。前者には焦点距離58mmと55mmの倍率定規が丸レールの左右に刻まれています。これらは過渡期の試作的なものかもしれません。両者の区別のために、折り畳み式を「UNITS」 と複数形とし、折り畳めない方を「UNIT」と単数形にしたのかもしれません。この辺はまだ謎です。

 「UNIT」の方はダイヤルが次の時代と同じアルミ蓋の大径になっていますから、こちらの方が新しいのでしょう。試作品を疑う理由がそこにあります。おそらく、この辺の数年間はめまぐるしく変化していたものと思われます。

 なお、両者のクランプ・ダイヤル表記が薄緑色なのが、これの製造時期を1959年ごろとする特徴です。「S2」前期型の時代です。これがPENTAX用としては丸レールの折り畳めるものの最終形だと思われます。

 OEM製造者である小林精機製作所の自社ブランド「KOPIL」の方は、1本丸レールを中空クロームメッキ製のものに仕様変更して、関節部ギヤ強度の不足を克服していますが、旭光学工業がそれを採用することはありませんでした。

  

※「BELLOWS UNITS」                                                                 ※資料画像 「BELLOWS UNIT」

 1961年誕生の「S3」及び「S2」後期型の時代になると一本丸レールが折り畳めないものになりましたが、これの「白地の貼付式」ネームプレートに記されていた名称は、当初は「ASAHI BELLOWSCOPE」のままでした。この時期の小林精機製作所は、自社ブランドの「KOPIL」にも、他の多くのカメラ会社のためのOEM製品にも、この「白地の貼付式」ネームプレートを用いています。1本丸レールにそれまでの折畳式を廃したのは、関節部があることにより強度と精度が不足するのを嫌ったためでしょう。

 しかし、外箱の機種名表記とその中身の機種名表記が異なっているというのは、OEM製造だとしても、これはまったく奇妙奇天烈不可解千万…

 同じ「白地の貼付式」ネームプレートでも、「ASAHI BELLOWS UNIT」となったのは間も無くのようです。

 

※丸レールが折り畳めない「BELLOWSCOPE」              ※折り畳めない丸レールになった「BELLOWSCOPE」の外箱

 1964年「SP」の時代になると、レンズ台座、カメラ台座も少し大きくして、レールとレンズ台座を安定させる仕組みも変えています。カメラ側マウント金具をアルミ化して少し外径を大きくしたものとなり、これは「BELLOWS UNIT」という「黒地の貼付式」ネームプレートになって、表記に「PENTAX」が入りました。

 これは「SP」のヒットと合わせて約4年間と製造期間が長かったので、中古市場での調達が比較的容易です。

 ところで、この製品からは、カメラ側マウント外径が大きくなったことで、純正の「マウントアダプターK」を用いてぎりぎりKマウントカメラにも使えるのですが、それより前のものはマウント外径が小さいので、それではKマウントカメラに正常に取り付けることができません。これは注意を要する点です。必ずドーナツリングや、社外品のフランジ付きマウントアダプターを用いるなどの対策を講じる必要があります。

 この1本丸レール「BELLOWS UNIT」は、1969年6月印刷の「SP」使用説明書には載っています。1968年までにOEM製造元の小林精機製作所は倒産していますから、納入されていた在庫を販売していたのかもしれません。

 なお、これらに使われていた外箱ですが、初期のものは内部に布が使われた積層厚紙の丈夫な、いかにも保存箱然としたものでしたが、「S2」の時代には上の画像の箱になっていて、その表記は「BELLOWS UNIT」になっています。外箱の表記とその中身の表記が異なるというのも謎のひとつです。

 この時代に、旭光学工業PENTAXの中では「小林精機製作所」の用いていたブランド名称を避けて、独自の機種名称としての「UNIT」という方向性が固まりつつあったのだろうと思われます。

 外箱が下の画像と同じような意匠の黒地に青文字の「BELLOWS UNIT」となったころに、「BELLOWS U」という製品が販売されています。説明書に使われているカメラや箱の意匠からすると、1962年「SV」時代になってからでしょう。下の画像のように、使用説明書表紙の写真に「SP」を使っているものがありますから、1965年ぐらいまで作られていたのかもしれません。

※資料画像 「BELLOWS U」

 これはメッキ2本丸レール上を可動するレンズ台座とカメラ台座を設けたもので、2本の丸レールを固定する先端部にスライドコピア用の台座が設けてありました。「U」という名称は、「UNIT」に対するものということと、2本レールであることを掛けていたのかもしれません。

 三脚取付ネジは、カメラ台座と先端のスライドコピア取付部に設けてあります。この製品の主たる用途がネガやポジフィルムの複製であることを感じさせる構造となっています。または、複写台に垂直に取り付けて使うことを予定していたのかもしれません。それなら、先端部に三脚取付ネジがあってもまったく問題が無さそうです。

 これは、後に続く「AUTO BELLOWS」の先駆けとしての位置付けになり、1969年6月印刷の「SP」使用説明書では既に「AUTO BELLOWS」と入れ替わっていますから、製造されたのは数年だと思われます。

 なお、同じ時期に「Nikon F」用として販売されていた「BELLOWS U」や「Minolta SR」用の「BELLOWS U」と構造・部材が酷似していますから、おそらく 、どれも同じ会社によるOEM製造だと思われます。

 

※資料画像 「BELLOWS UNIT U」

 1971年「ES」の時代になると、一本丸レール「BELLOWS UNIT」は既に一本角レール「BELLOWS UNIT U」に置き換えられています。これ以降が新しい角レールのBELLOWS UNIT群です。その詳細については「角レールの「BELLOWS UNIT」たち」という 部屋で詳解しています。

 なお、一本丸レール「BELLOWS UNIT」については、「 一本丸レールの輝き」という部屋で詳解しています。

 「AUTO BELLOWS」はTTL絞込測光搭載「SP」の時代に誕生した高機能ベローズ装置ですが、その後Kマウント化されて「AUTO BELLOWS A」後期型まで続きます。その詳細は「オートベローズ物語」という部屋で御覧ください。

 その後、カメラがAF化されることで需要が縮小し、ベローズ装置はついに販売されなくなってしまいました。残念至極…

番外編:

※資料画像  「RICOH XR BELLOWS UNIT」

 Kマウントのベローズ装置としては、Kマウントを採用した一眼レフを展開していたRICOHも「XR BELLOWS UNIT」という名称で販売していましたが、これを中古市場で見ることはほとんどありません。この品はカメラ側マウント金具がカメラ台座に固定されているために、ストロボ内蔵などでペンタ部がマウント面より前に出ているカメラでは取り付けることが出来ないことから、近年のデジタル一眼レフでは、そのままでは取り付けることが不可能という問題があります。

 接写リングの下駄を履かせることで取付が可能にはなりますが、最短光路が50mm前後になってしまうことから、焦点距離50mmレンズでは等倍以上でしか使えません。肝心の「SMC PENTAX BELLOWS 1:4/100」の場合は無限遠が来ないので、これでは利用価値がほとんどありません。

※資料画像  「RICOH XR BELLOWS-2」

 また、マクロスライダーを組み合わせた上資料画像の可動式三脚台座付きの2点可動式のものも販売していましたが、これも現役のデジタル一眼レフでは内蔵ストロボの突起にカメラ台座の角が干渉するため取付不能ですから、接写リングの下駄無しには使用できないものになっています。カメラ側マウント金具が固定式であることの痛恨の弊害です。

 これらをOEM製造したのは、コンタックス・京セラ・ヤシカ、コニカ、フジカ、ミノルタ、マミヤ中判、PENTAX645などのオートベローズをOEM製造した会社と同じだと思います。使っている蛇腹の質や操作ダイヤル等の部品がまったく同一の造形ですから、これはほぼ確実です。

 この製造会社ですが、現行大判ホースマンに使われている部品が非常に類似しているので、駒村商会の関係会社ではないかと推測しています。

… ASAHI PENTAX BELLOWSU …

 「BELLOWS U」というのは、1962年「SV」の時代に誕生したベローズ装置です。「BELLOWS UNIT」がアルミ一本丸レールであるのに対して、鉄の二本丸レールとすることで剛性を高め、このことで光軸の変動を少なくして、また、カメラ台座をレール上の可動式とすることで、撮影倍率を変えずに、カメラを前後することによってピント合わせをすることを容易にしたものです。

 しかし、次の時代の「AUTO BELLOWS」とは違って、三脚台座が可動式ではないので、操作性は大きく劣ります。三脚は重心的に不安定になるレール前方か、あるいはカメラ台座に取り付けるしかなかったのです。このため、同時期の競争他社は三脚台座を独立して動かせる4本丸レールの製品を出していました。しかし、それは当然著しく重くなります。

 この時代のベローズ装置に求められていた機能の一つは、フィルムの複写です。ポジ・フィルムのスライドマウントやロール・フィルムの複製を作る需要は、教育・研究・学術界などでかなり高かったようです。そのため、別売のスライドコピアを取り付けることができるようになっています。

 レンズ台座は取外しが出来ないので、等倍以上の高倍率撮影時に必要なレンズ逆付けのためには、上の写真のようにリバースアダプターを使用する必要があります。

 この品は、今となっては高剛性だけが特長のものになってしまいました。そのため、すぐにより高機能なアルミ1本角レールの「AUTO BELLOWS」に置き変わってしまったのです。

 亭主の所持する個体には1964年9月作成の使用説明書が入っています。その表紙写真に使われているカメラは「SV」ですから、その時代である1962年以降に誕生したのは確かなことでしょう。ネット上にある他の使用説明書表紙には「SP」を使っているものがありますが、1969年6月作成の「SP」使用説明書では既に「AUTO BELLOWS」と入れ替わっています。

 なお、亭主所蔵の「BELLOWS U」使用説明書には、専用「ベローズ・ペンタックス100ミリF4」があると書かれています。1964年9月当時、「Bellows Takumar 1:4/100」をこの名称で計画していたのか、あるいは実際に作られたのか、ここで新たな疑問が生まれてしまいました。

 いずれにしても、プリセット絞りの「Bellows Takumar 1:4/100」が、半自動絞りである「AUTO BELLOWS」より前に誕生していたことが明らかです。

 スライドコピアを取り付ける丸棒は、当初は鉄製でしたが、後にアルミに入れ替わっています。亭主の入手したものの中には両方入っていました。少しでも軽くしようとする工夫でしょう。

 また、これのレンズ側マウント面内径側には、幅1mm、深さ0.5mmの「Sマウント」と名乗るためには必要な窪みが設けてあります。これは「ASAHIFLEX」用交換レンズのためのマウントアダプターの収まるスペースです。

 不埒なことに、この製品は「K-5」に横位置で取り付けることはできません。他の機種のカメラでも、ストロボを内蔵している機種すべてに取り付けることはできないものと思われます。ペンタ部ストロボの出っ張りがマウント取り付けつまみネジの頭と干渉してしまうためです。横位置で使うためには、間に「接写リング1」などを挟む等の工夫が必要です。上画像のように、縦位置なら支障なく取り付けられます。

 マウント取り付けつまみネジの頭の出が大きいので、ネジ部先端を短縮加工すれば干渉の回避が出来そうなのですが、抜け止め加工してあるらしく、抜き取ることが出来ません。これは「馬鹿者対策」なのでしょうが、念の入れ過ぎ…

 三脚座がレール先端とカメラ台座部にあるのですが、レール先端部で三脚に取り付けると重量バランスを取るのに窮屈です。この位置で取り付けるのは、おそらくスライドコピア装着時だけでしょう。いずれにしても、不完全な製品であると断言できます。

 取り外すことの出来るカメラ側マウント金具はマウント面直径が小さく、純正「マウントアダプターK」を併用してKマウントカメラにぎりぎりで取り付け可能です。慎重な取り扱いが必要でしょう。このマウント金具は、次の時代の「AUTO BELLOWS」のものより取付部外径がわずかに大きく、残念ながら、上位互換性はありません。このことからも、両者の製造会社は異なっていたのだと思われます。

 なお、同時期の製造と思われるものに「Nikon F」用の「BELLOWS U」があります。レール先端部三脚座以外は旭光学の「BELLOWS U」とまったく瓜二つです。同じ会社がOEM製造していたのでしょう。また、「Minolta SR」用の「BELLOWS ModelU」も多くの部材が類似していますから、これら三者に共通な「U」というのが2本丸レールのことも意味していたのか、二世を意味していたのか、単なる偶然なのか、そんなことを考え出すと昼も眠れない…

 畢竟、この製品は、今となっては、単に歴史の証人、あるいは「骨董」としての存在でしかない、というのが亭主の結論です。実用性はほとんどありません。それを目的に入手すると失望するだけでしょう。

 使われていた外箱ですが、かぶせ式の実箱中央部外側に白い幅広の紐が体裁良く取り付けてあります。蓋をすっぽりとかぶせる形式ですから、これを引き抜いて開けるために実箱を押さえるための工夫のようです。 このあたりは結構芸が細かい…

 ほとんど同じ作りの「BELLOWS U」を使っていた「Nikon」は、次の世代の「BELLOWS W」では四本丸レールとすることで、懸案だった三脚座の独立可動性を実現しました。同時期に旭光学工業が一本角レールでそれを実現したのとは対照的です。しかし、レンズ台座にあおり装置を組み込んだのは先鋭的でした。これは1970年に誕生させた「BELLOWS NIKKOR 105mmF4」のイメージサークルが大きいことを活用したのでしょう。旭光学は、同社のベローズ装置にあおり装置を組み込むことはついにありませんでした。

 なお、ミノルタも同じようなデザインのベローズ装置として「BELLOWS ModelU」を上梓していましたが、これは各部の寸法が若干異なっています。しかし、使用している部品が極似しているものがあることから、同じOEM製造者だと思われます。

 ところで、この「BELLOWS U」をOEM製造したのが何者なのか、資料が見当たらないので不明です。当時、各社のベローズ装置を製造していたのは「小林精機製作所」でしたが、同社が自社ブランド「KOPIL」で出していた2本丸レールとは大幅に構造が異なっていて類似性は見られませんから、他の製造者であることが濃厚です 。

 「MIRANDA」の「Focabell」という製品の意匠と類似しているので、これを1953年には販売していたミランダカメラがOEM製造していたのかもしれません。なお、同社は1976年12月に当時のアメリカ資本によって計画倒産しています。OEM製造をミランダカメラそのものが行っていなかったとしても、同社製品の製造を実際に行っていた協力工場(下請工場)が行ったことが濃厚だと思われます。

 なお、これとセットになっていたスライドコピアは、ミノルタの「EXTENSION BELLOWS」の1本丸レールに取り付けることができます。取り付けるレンズを工夫すれば使い物になるかもしれません。

最縮長(マウント間)   37mm

最伸長(マウント間)  180mm

カメラ側マウント外径  51mm

蛇腹断面寸法      60mm

重量            g

… MIRANDA の FOCABELL …

 

 

 

 1951年から製造を始めたらしい汎用ベローズ装置として「FOCABELL」という製品があります。これは「オリオン精機産業」、後の「ミランダカメラ」が販売したものです。これに用いていた「ダブルマウント」は、アダプターを介することでコンタックスやライカなど当時の距離計連動レンズ交換式カメラに使える汎用性を持たせたものでした。

 一眼レフカメラ黎明期の国内カメラ各社から販売されたベローズ装置が、この二本丸レールの「FOCABELL」と構造や使用部品が極めて類似していることから、それらのOEM製造も「ミランダカメラ」が行っていた可能性が高いと思います。特許の関係でそうせざるをえなかったのかもしれません。 同時代に小林精機製作所の「DUO-TRACK-BELLOWSCOPE」が国内ではOEM製造されなかったのや、西独ノボフレックス製の「MINOLTA AUTO BELLOWS U」が国内販売されなかったのもそれが理由かもしれません。

 

 

 1本角レールの「FOCABELL-S」という製品もあって、これは角レールが根元で折り畳める形式でした。小林精機製作所の「BELLOWSCOPE」のような伸ばした時のレールの後端にボルト 捻じ込む方式の固定法ではなく、角レール後端の溝に板がバネで入り込んで固定する仕組みで、少しガタのある方法でした。その構造上、任意の角度でチルト撮影も行えました。

 

※資料画像 FOCABELL-AUTO-S

 

 折り畳めない1本丸レールの「Focabell Auto-S」という製品もあり、これは自動絞りの連動機構を内蔵していました。一本丸レールが二重構造になっていて、内部の丸レールが絞り連動機能を受け持っています。これはミノルタの二本丸レール「AUTO BELLOWS T」が同様なコンセプトですから、そちらもやはり「ミランダカメラ」がOEM製造者である可能性が高いと思われます。

 自動絞りで取り付けるカメラの存在しない産業遺産と化していますが、「Focabell Auto-S」の蛇腹断面寸法は50mmですから、二個一要員としては役に立つ…

 

 ミランダ・マウントは外バヨネット・内ネジという変則的なものです。その内ネジ・マウントの規格は「M44・P=1」というもので、1950年代後半から60年代にかけて製造された「フジタ 66」という66判一眼レフカメラのネジ・マウント「M44・P=0.75」とは互換性がありません。ちなみに「P=0.75」というネジ・ピッチはフィルターに用いられていたもので、マウントの場合は「P=1」が主流でした。

 

 これらのベローズ装置を販売した「ミランダカメラ」は1955年に国産最初のペンタプリズム一眼レフカメラを発売しました。それに用いられたのがこれらのベローズ装置に用いていた汎用マウントです。多くの種類のマウントアダプターが販売されていました。同社は1969年に「AIC」により買収され、その「AIC」が経営資金を途絶したことにより1976年12月に倒産しています。

 

… MINOLTA AUTO BELLOWS V …

 「Minolta」は、時代が移るごとに色々な会社にベローズ製造をOEM委託して販売していますが、同時代に販売された「BELLOWS W」とこの「AUTO BELLOWS V」は、CONTAXやKONICA、FUJICA、TOPCON、MAMIYA中判などの 「AUTO BELLOWS」をOEM製造した会社にOEM委託していました。これ以後には、新たな製品は作られていません。

 ところで「Minolta」は、1968年に初代のオートベローズを誕生させています。「AUTO BELLOWS T」がそれで、2本丸レールで、自動絞り用スライドシャフトが2本のレールの間に設けてある形式でした。このため、ダブルレリーズなどを使わなくても自動絞りが出来たのです。別売りで2本丸レールのマクロスライダーが販売されて、これを組み合わせることで、4本丸レールの3点可動式ベローズ装置とすることができました。

 「AUTO BELLOWS U」というものも存在しますが、これは4本丸レールを一体化して大幅にコンパクトにしたもので、西独ノボフレックスがOEM製造していましたが、国内販売はされなかったようです。 特許の関係かもしれません。ノボフレックスは、同じ品を他の各カメラマウントで販売しています。

 「AUTO BELLOWS T」と「AUTO BELLOWS U」は、その自動絞り機構上、カメラを横位置でしか取り付けることができませんでした。このため、縦位置撮影は三脚の雲台機能に頼らざるを得なかったのです。これを縦位置にもできるように改め、しかもレンズ台座にあおり機構を組み込んだのが1979年誕生の「AUTO BELLOWS V」です。同じくレンズ台座にあおり機構を組み込んだ「Nikon」の「PB-4」の誕生は1975年ごろですから、これを参考にしたものでしょう。「PB-4」には自動絞り機構は組み込まれていませんから、あおり機構を組み込んだオートべローズとしては、御三家(当然Canonは含まれない。)の中で最初の存在です。

 なお、「AUTO BELLOWS T」をOEM製造していたと推定できる「ミランダカメラ」が倒産したのは1976年12月のことですから、それを受けてこの機種を開発したのかもしれません。当然別のOEM製造元です。

 「Minolta」がAF化を目的として「αマウント」に切り替えたのは1985年であり、そのマウントではベローズ装置を作っていません。「AUTO BELLOWS V」はベローズ装置の終焉を飾る驥尾の栄を恣にする存在です。

 この品の特長は、レンズ台座に同じOEM製造であるCONTAXと同様なあおり機構を組み込んでいることと、ケーブルレリーズを利用した半自動絞り機構を組み込んでいることです。

 あおり機構を組み込んでいるのは、35mm判用としては少数派で、「Nikon」の「PB-4」が著名ですが、こちらの方は中古市場でも高値です。ひとえに現役のデジタル一眼レフで使えるためでしょう。CONTAXとこの品はOEM製造者が同一なのですが、CONTAXの方が中古市場で高値なのは不思議です。どちらも滅亡マウントであるのは同じでも、ライカとの提携時代の共通設計のものなど、使用できるレンズの豊富さではこちらの方が上だと思うのですが…

 「あおり」の種類としては「スイング」と「シフト」です。スイングは360度可能ですから、レンズ逆付けもこれで対応する仕組みですが、この方法だと、PENTAXなどのようにレンズ台座をレールから抜いて裏返しに入れ替える必要がありませんから、より操作性が高いと言えます。

 半自動絞りは、ダブルレリーズを使用しなくても付属品の「専用出力ケーブル」を使用することでレリーズできる仕組みになっています。中古流通品の中にはこの特殊な形状の専用出力ケーブルが失われている品が非常に多いので、入手の時には要チェックです。これが無いと、市場価値はぐんと下がるとのことです。 もっとも、この専用出力ケーブルを使えるカメラというものが存在しなくなってしまったので、今では、その有無は殆んど無意味ですし、他社の標準である「ダブルレリーズ」を使用すれば同じ事ですから…

 ところで、「Minolta」という会社は、独自仕様というものにえらく熱心で、この点は、亭主がまったく評価しない点です。可能な限り汎用性を目指すべきだと言うのが亭主の絶対的な価値基準です。意地 を張るように先行他社のような「ダブルレリーズ」を採用せず、余計なコストをかけて出力ケーブルなどという小細工を弄したのは、まったくもって感心しない…

 使用できる現行デジタル一眼レフカメラが存在しない既に滅亡した「SRマウント」ですから、カメラ側マウントを工夫しなければ使えません。SRマウントアダプターの存在するフランジパックの短いミラーレス一眼で使うのでない限り、「M42マウント」に改造するのが最も汎用性を高めることになりそうです。

 オリジナルマウント金具を旋盤で加工してM42雄ネジを切る方法もありますが、より光路を短縮するためには、新に製作した方が良さそうです。これはフランジパックが短かい「SRマウント」ですから、専用オートベローズレンズで無限遠を出すためには必要なことです。

 PENTAXのカメラで使用できることが最優先である亭主としては、M42マウントにすることが必須改造です。これの実現はまだなのですが、現在、あおり撮影は他の所蔵ベローズ装置でこの品より自在に行えるので、所要のコストを考えると、モチベーションがあまり高まりません。もし将来、フランジパックの短いカメラを入手したときには使うかもしれないのですが…

 これをOEM製造したところの製品に共通していることですが、カメラ側マウント金具が外せません。固定つまみネジは付いていますが、これは縦横切り替えのために約90度回転させるためだけのものです。マウント改造のためには 、蛇腹側から分解して外す必要があります。

 なお、同じOEM製造者が供給していた「KONICA AUTO BELLOWS AR」のカメラ側マウント金具は、このミノルタのものとは外径等が若干異なっていて、互換性はありません。未確認ですが、CONTAXやFUJICAのものとも異なっているのではないかと思われます。この辺が 、OEM製造者の矜持なのかもしれませんが、互換大好き亭主としては大いに顰蹙の感あり…

 レンズ側マウントには、各種のマウントアダプターを使用することで、多種多様なレンズを装着することが可能です。M42マウント、ライカL39マウント、RMSマウントなどです。リバースアダプター経由でなら、レンズ台座を180度回転させることで、ちょっとした工夫を加えることにより、あらゆるカメラメーカーの交換レンズが装着可能になります。PENTAXのKマウントレンズでも、リバースリングライトホルダーKを所有しているなら、49-55ステップアップリングを用意するだけです。他社一眼レフの場合、ボディ・マウントキャップを使用した改造が現実的です。この場合、光路を短縮することが可能になりますから、無限遠を出すために有効な方法です。

 もちろん正規のSRマウント旧レンズがまだ豊富に中古市場で流通していますから、これを調達することも容易です。

 三脚台座が可動するマクロスライダー部分は分割式で、オプションとして別売(\9K)されていました。なので、これを組み合わせていない品が中古市場で流通しています。むしろ 、その方が多いかもしれません。このマクロスライダーレールにはホットシューが装着されていることが、他社にOEM供給されていたものと大きく異なる点です。ストロボをスライドコピアの光源に使うなど、色々と使い道が広がりそうです。ギミックとしては好き者向き…

 取付部などの寸法は他のOEM製品と同一なので、他社のマクロスライダー部分を使うことが出来ます。しかし、ホットシューのせいで、「Minolta」のマクロスライダーは、そのままでは他社には使えません。これまた、何と言う偏狭な考え…

 このオートベローズでオートの使える純正ベローズ用レンズとしては、新旧4種類があります。100mmと50mmのそれぞれ新旧型ですが、当然50mmは無限遠が来ません。無限遠の来る100mmの新型はレンズ構成が4群5枚クセノターで、旧型は3群3枚トリプレットです。どちらもマクロレンズ向きのレンズ構成です。

 なお、RMSマウントのベローズ用レンズも、「ベローズマイクロロッコール12.5mmF2」と「ベローズマイクロロッコール25mmF2.5」がそれぞれ新旧存在していて、これらは拡大専門レンズです。これの使用のためには 、「M-1」か「M-2」のマウントアダプターが必要です。

 「RMSマウント」は顕微鏡の対物レンズ用の国際標準マウントですから、膨大に存在するそれらを使用することも可能です。当然拡大専用ですが…

 あおり撮影の場合、チルトが最も有効な技法です。見掛け上で上下方向に前後している被写体の場合、「シャインプルーフの原理」によってピント範囲を前後に拡大するためには、チルトダウン技法が有効です。それが左右方向に前後している被写体ならスイングが有効ですが…

 このベローズ装置にはスイングしかないので、全体を90度傾けることでチルトとするしかありません。また、斜め方向に前後している被写体なら、それに合わせて傾ける必要があります。偏芯してそれを行えるだけの保持能力を持った、しっかりとした三脚と雲台が必要不可欠ということです。

 なお、チルトアップの技法を使うと、ピント範囲を狭めることが可能です。中景にピントを合わせたときに前後を大きくぼかして、あたかも模型を撮影しているかのような、いわゆるミニチュア画像を得ることが可能ということです。

 この製品のOEM製造者が供給していたベローズ装置に共通の極めて大きな問題点として、角レール蟻型と各台座との嵌合に使われているプラスチック部品の品質が劣悪で、現在、径年による劣化・硬化により亀裂破壊が非常に起き易くなっているということがあります。形状が少し違うものの、同じプラスチックを用いているミノルタのものも、破壊は避けられないリスクです。これも径年損耗のリスクを抱えている紙の蛇腹と違って、このための補修部品の供給はまったく望めないので、破壊したその時点で製品寿命は尽きてしまいます。これは、まさにアキレス腱です。真鍮などを機械加工で削り出すなどして代替部品の製作は可能なのでしょうが、そのコストを思うと気が遠くなります。

 なお、近年「3Dプリンター」の発達が著しいので、これにより、プラスチック部品の単品あるいは少量生産が比較的容易に出来るようになっています。この方法は補修部品の製作には打って付けだと思われます。誰かプロデュースしてくれないものだろうか…

データ

最縮長(マウント間)  mm

最伸長(マウント間)  mm

蛇腹断面寸法     59mm

重量           g

シフト幅         mm

 

AUTO BELLOWS ROKKOR 1:4 f=100mm

  

※前期型トリプレット               ※後期型クセノター      

1121553 1125911 1128170 1128508  

… FUJICA BELLOWS …

 富士フイルムが同社の「プラクチカM42マウント」一眼レフカメラ「ST701」及び「ST801」のために販売したベローズ装置です。当時の標準レンズである焦点距離55oの倍率スケールがレール横に刻まれています。

 レンズ側に実絞り切替機構を持たない同社交換レンズを実絞りで使うための仕組みがレンズ台座のマウント金具に施されているのが特長です。レンズを取り付けるマウント金具の奥にフランジを設け、レンズを捻じ込んで行くと自動絞りピンがこれで押されて、絞り環の設定値に絞り込まれるという仕組みです。そのため、北信中野の 「コシナ」が現役生産しているフォクトレンダーやツァイスなど、同様な構造の交換レンズを無改造で使えるベローズ装置として貴重です。

 やつれ果てた元箱に「ST701用」とありますから1970〜1972年の製造でしょう。 同梱されていた取扱説明書には70年7月と印刷時期が記されています。いずれにしても、製造後35年以上を経て亭主の許に来たというわけで、雌山亭においては、同族「FUJINAR-E」たちのベースとして活躍を期待されています。

 なお、取扱説明書には、リバースアダプターと引伸ばしレンズのためのライカLマウントアダプターも別売されていたことが書いてあります。その内のリバースアダプターは入手しましたので、ライカLマウントアダプターの入手も目標になりました。

 

 ところで、「FUJICA」の交換レンズは「Takumar」と違って、自動絞りと手動絞りの切替機構が付いていないので、レンズ逆付け時には常時絞り開放になってしまいます。そこで、上画像のように、49mm鏡胴対応の純正リバースアダプターには絞込ピンを押して実絞りにするための別リングがセットになっていました。

 また、この取扱説明書によると、同社引伸ばしレンズ「FUJINAR-E」は、接写には解像力が優れていると推奨しています。無限遠付近は…それなりですかね…

 回転はできますが取外し式ではないカメラ側マウントは、マウント面が二段になっていて、純正「マウントアダプターK」だとカメラを取り付けるとガタが出ます。これもドーナツリングの併用か、社外品のフランジ付きKマウントアダプターが必要です。

 なお、純正「マウントアダプターK」をオリジナルのままで使ってはいけないのは、「BELLOWS UNIT」の場合と同様です。

 最縮長が少し長いので、引伸ばしレンズ「FUJINAR-E」シリーズは、焦点距離105mmでないと無限遠が来ません。入手が比較的容易な「Bellows-Takumar 1:4/100」 は無限遠が来ます。

 フォーカシング・ダイアルが右側なので、手持ち撮影には向きません。これをなぜ右側にしたのか大いに疑問でしたが、三脚に取り付けた場合、左手で雲台を操作しながら、ケーブルレリーズを握った右手で操作するには、これの方が便利かもしれないと思い付きました。

 レールが少し太く、全体にしっかりとした造りなので、強度に不満はありません。フォーカシングダイヤルは軽く操作でき、全体に精度が高い感じです。1本レールは円形のものの左右を平らに削ったかたちですが、これはレンズ台座の回転止めのためと、左側面にストッパーを押し付けるためです。この形状のおかげでガタが少なくなっています。

 レンズマウント奥にフランジがあることにより、マウント先端に開放測光用の突起のある「SMC TAKUMAR」が使えないのではと危惧しましたが、それは杞憂に終わりました。マウント面までいっぱいに捻じ込むことができて、その時には最小絞りにまでなります。 「SMC TAKUMAR」の上梓は1971年ですから、このベローズがそのための対策を施していたというより、亭主は「SMC TAKUMAR」のマウントの方が、このような製品でも支障が無いように設計に配慮した結果だと判断しています。旭光学設計陣の広角視野に瞠目…

 なお、「FUJICA」のマウントは、一般的なプラクチカM42マウントではなく、PENTAXの「Sマウント」規格に準拠しています。ネジ部の前に一段削っている部分がそれで、これは 「M37マウントアダプター」を落とし込むための逃げです。

 上の画像のように「Bellows-Takumar 1:4/100」を取り付けると、カメラ側マウントに社外品のフランジ付きマウントアダプターKを取り付けた状態で 、最縮長時にほんの少しオーバーインフになりますから、まさに誂えたような寸法です。この品が誕生したときには既に上梓されていたベローズ専用レンズなどPENTAXのシステム利用を視野に入れていたのでしょうから、流石と言うしかありませんね…

 上記したように、右側にフォーカシングダイヤルがあるので、手持ち撮影は困難です。三脚に据えることが前提になります。

 

●出自について

※資料画像

 スパイラートン(Spiratone)というブランドで各種OEMレンズを販売していた米商社から「BELLOWSMAT」という名称で販売されていたものが、この「FUJICA BELLOWS」とそっくりです。おそらく、同じOEM製造者の手になるものでしょう。フォーカシングダイヤルなど、使っている部材のほとんどが同一と思われます。さて、この製造者はどこなのでしょうか…

 この写真の品は、レンズ側マウント金具が随分と分厚いので、光路長が「FUJICA」のものより長いと思われ、「Bellows-Takumar 1:4/100」の無限遠は来ないものと思われます。「FOR PENTAX」と箱に表示していますが、あまり使い物にはならないのかも しれません。

 なお、「AUTOMATIC BELLOWS」とも表記されていますから、自動絞りのためのカラクリが組み込まれているのかもしれません。それなら自動絞りではなかった「Bellows-Takumar 1:4/100」の無限遠撮影を意識する必要がなかったのかも…

※資料画像

 さらに、エキザクタマウントながら、前方にスライドコピアを取り付けることの出来る製品画像も見つけました。 自動絞りの連動機構も内蔵しているようです。下のメッキパイプがそれです。前部に貼ってあるネームプレートは「M.A.B.Optica」というブランドですが、その素性は不明です。

 なお、「M.A.B」というのは「Magic Automatic Bellows」の略のようです。「Canon」のFLマウントもあります。

 この機種については、別のブランドの画像も見たことがあります。

 

 両側のダイヤルの機能や全体の構造からすると、「MIRANDA Focabell Auto-S」に似ているところが多い気がします。なので、「ミランダカメラ」がOEM製造したのではないかと思えて来ました。

データ

最縮長(マウント間)  37mm

最伸長(マウント間)  135mm

蛇腹断面寸法     53.5mm

カメラ側マウント取付穴径  44mm

重量           280g

価格  5000円

2

… ベローズ装置で使う小物たち …

 ベローズ装置は様々な小物(アクセサリー)を併用することで多様な使い方ができます。そんな働き者の小物たちを取り上げます。

< ダブルレリーズ >

 オートベローズの機能を利用するためには必要な品です。PENTAXから純正品も販売されていますが、まったく同一の品を写真用品商社の「UN」が販売しています。

 なお、2012年製造が終了しています。以後は流通在庫のみということになりますから、まだ所持していない場合は、入手を急いだ方がよいかと…

< ケーブルレリーズ→ケーブルスイッチ変換器 >

 ケーブルレリーズでシャッターを押す形式のカメラは絶滅しているので、ケーブルレリーズの動きを電気的な信号に変換する装置が必要です。オートベローズの機能を完全に使うためには 、必ず用意すべき品です。

 PENTAXの純正品は製造されていないので、他社製品のプラグをPENTAX用に付け替えるか、部品を収集して自作するしかありません。

 以前唯一Canonが販売していたものはT3という規格の独自プラグなので、同社の「Kiss D」や、PENTAXのデジタル一眼レフなどが使用していてスタンダードデファクトになりつつある2.5mm径 「ステレオ・ミニ ・ミニ・プラグ」に付け替えなければなりません。でも、この製品は電線が太いために、2.5mm径の「ステレオ・ミニ・ミニ・プラグ」を装着するのは困難です。工作が容易な3.5mm径の 「ステレオ ・ミニ・プラグ」を装着して、「3.5mm→2.5mmプラグ変換ブロック」を併用する方法が手軽です。

 ※Canon「ケーブルレリーズアダプターT3」 定価2500円

< マウントアダプターK >

 

 Sマウント(M42)のベローズ装置をKマウントカメラに取り付けるときに使用します。PENTAXから純正品(\7K)が供給されています。亭主はそれがまだ\1Kだったころに大量に入手しました。

 カメラから取外すときは、四角穴に親指の爪を押し込むとストッパーの板バネが押し込まれますので、カメラとの結合が解けます。

 ストッパーの板バネはネジ止めされていますから、これを外せば(右の写真)レンズに付けっぱなしにして運用できます。カメラとの結合のストッパーが無くなりますから、脱落事故には注意が必要ですが…

 なお、カメラ側マウント部が取外し式になっていないベローズ装置では、ストッパーの板バネは、右上の写真のように必ず外してからベローズ側に装着しましょう。オリジナルのままベローズ装置に装着し、それからベローズ装置をカメラに取り付けると、今時のカメラはベローズ装置を外せなくなることがあります。カメラに装着してからベローズ装置を取り付けようとするとその訳が分かりますよ…

 なお、その機能が失われている現在のデジタル一眼レフではまったく関係の無いことなのですが、この「マウントアダプターK」は、単にバヨネットへの変換金具という機能だけではなく、測光機能を正常に働かせるための仕掛けも施されています。周囲に2ヵ所向かい合って四角く切り欠かれている部分がそれです。片側はストッパーの板バネを操作するための穴ですが、その反対側が開放測光機能を働かせるための仕掛けです。この部分で装着時にカメラ側の開放測光連動爪を動かして、取り付けられているレンズが絞り開放にある状況であると認識させる装置なのです。これが無いと、カメラ側は絞り込まれていると認識し、常に露出過多な写真になってしまうことになります。

 また、この切欠きにカメラ側の開放測光連動爪がかかっていることで、ストッパー板バネを開放することにより、連動爪のバネの力でマウントアダプターは外れる方向に回転します。つまり、爪の先でストッパー板バネに触るだけで自動的にマウントアダプターKは外れるのです。このこともあって、PENTAXはストッパー板バネを取り外してレンズ側にマウントアダプターKを取り付けての運用を勧めていないのです。レンズを外そうとするバネの力が常に掛かる構造であることから、レンズ脱落の危険があったためです。この機能は 、現在のデジタル一眼レフでは失われていますから、このリスクも少なくなっています。逆に、ストッパーを外しても自動的にマウントアダプターは外れてくれませんから、自分で回して外す必要が出てきました。つまり、現在では、マウントアダプターKは 、レンズ側に付けっぱなしにする改造を行った方が使い易いということになりそうです。

< フランジ付きM42→Kマウントアダプター >

 マウント外径が48.5mmより小さなSマウント(M42)のベローズ装置や接写リングをKマウントに取り付けるときに使用します。

 これを使えば、マウント外径が小さくてそのままでは純正マウントアダプターKが使えないPENTAX純正のSマウントヘリコイド接写リングも、純正マウントAなどを併用することで、最縮長が短いために引伸しレンズのFUJINAR-E75oが無限遠から使えます。

 また、純正のマウントアダプターKと違って、ベローズ装置がカメラから取外せなくなるという問題もありません。ストッパーもかかります。銀塩Kマウント一眼レフでも測光が正常に機能する構造になっています。

 フランジの厚さがありますから、交換レンズに使用する場合、単に装着しただけだと無限遠が来ません。でも、望遠系のTakumarなら、調整することで無限遠が来るようにできます。

 材質がアルマイト加工したアルミなので、カメラとの脱着操作は慎重に行う必要があるでしょう。取付け強度が不足することはないようです。

 このマウントアダプターを販売しているのは、フォトショップサイトウという栃木にある店ですが、通信販売で入手できます。亭主は店主から誠実な対応を受けました。

< フランジ付きライカL→M42マウントアダプター >

 

 ライカLマウント(M39・P=1近似値)の引伸ばしレンズをベローズ装置に取り付けるときに使用します。アダプターAという名称の純正品が以前旭光学から販売されていましたから、これを中古市場でも調達できる可能性があります。相当に希少ですが…

 現在は、同一機能のものがBORG社から販売されています。通信販売で入手できます。

 左上画像は、アダプターAの後期型でアルミ製です。前期型は真鍮製クロームメッキでした。

< フランジ無しライカL→M42マウントアダプター >

 ライカLマウントの引伸ばしレンズをベローズ装置に取り付けるときに使用します。無限遠がもう少しで来るという場合に、これはフランジが無い分、光路を短縮できます。FUJINAR-E90oの場合、BELLOWS UNITで純正アダプターAを使用すると無限遠が来ませんが、これを使用することで来ます。

< 顕微鏡対物レンズ用アダプターK >

 顕微鏡の対物レンズ(RMSマウント 内径20.32mm(0.8インチ)、ピッチ0.706mm(36山/1インチ))をKマウントベローズ装置に取り付けるときに使用します。現在は販売されていません。MinoltaなどのRMSマウントレンズを装着することができます。

< リバースアダプター(Sマウント) >

 Sマウントのベローズ装置にレンズを前後逆に取り付けるときに使用します。倍率が高い撮影のときには、リバースの方が良い像が得られるのです。

 昔、純正品が販売されていたので中古市場で調達できる可能性があり、比較的入手し易いようです。でも、新品ではどこも供給していないようです。

 なお、これをどうしても入手出来ないときは、純正Sマウント接写リングの1からマウント雌部を抜き取ったものに46oフィルター枠とステップダウンリング49-46を組み合わせると出来上がります。光路が少し長くなりますが…

< リバースアダプターK >

 Kマウントのベローズ装置にレンズを前後逆に取り付けるときに使用します。倍率が高い撮影のときには、リバースの方が良い像が得られるのです。

 フィルター径49o用と52o用のPENTAX純正品があります。

< リバースリングライトホルダーK >

 リバースアダプターを使用してリバース装着したKマウントの交換レンズにリングライトやフィルター、フードなどを装着するときに使用します。49o用しかありません。

 最近までPENTAXが純正品を販売していましたから、中古市場で調達できる可能性があります。新品はどこも供給していないようです。

 

 なお、これとリバースアダプター(Sマウント)を上の写真のように組み合わせると、Sマウントのベローズ装置にKマウントの交換レンズを正向きに取り付けることが出来ます。接写の世界の機材利用の多様性を高めるスグレモノです。

 また、この品をリバースアダプターKと組み合わせることで、接写リングとしても使えます。間に49oフィルターの枠を追加することで、操出量を調整することも可能です。

 他社のマウントレンズでも、そのマウントのリバースリングライトホルダーが供給されているのなら、同様のことが可能です。知る限りでは、ニコンの「BR-3」というリングだけがそれで、他には無いようです。改造による自作しかないかもしれません。その方法は、レンズに適合する接写リングを利用し、そのカメラ側マウント部に適合するステップリングを、雌部を外向きに接着してしまうのです。超望遠などのよほど重量級のレンズでない限り、エポキシ接着剤で十分必要な強度が得られます。

 リバースリングライトホルダーKは入手が困難な品になっていますが、接写リングセットは比較的容易に入手できます。そのうち3は長いため胴部の切断が比較的容易に工作出来ます。切断の目標とすることが出来る筋が入っているので、これをガイドとして金鋸などで工作できます。これにステップダウンリング58-49を接着すれば 、リバースリングライトホルダーは出来上がります。ステップダウンリング58-49の外径は切断した接写リング内径より少し小さいので、周囲に下駄を履かせて接着するのが簡便です。1サイズ大きな62-49だと、外周を削るのは大仕事です。

< リバースリングライトホルダー(Sマウント) >…別名「堀尾茂助」

 リバースアダプターを使用してリバース装着したSマウントの交換レンズにリングライトやフィルター、フードなどを装着するときに使用します。

 純正でも販売されなかったので、自作するしかありません。これは52oフィルター枠の中に純正Sマウントオート接写リングから取り出したマウント雌部を接着しています。亭主所蔵のリングライトは 、取り付けアダプターが49oと55oしか付属していないので、これには52-49ステップダウンリングを組み合わせています。

< 倍率定規 >

 オートベローズにおいて使用します。焦点距離50o用と55o用があります。裏返せば、リバース装着時の目盛りが刻んであります。

< ベルボン 望遠レンズサポーター  SPT-1>

 

 これをオートベローズと併用すると、右上の写真のようにカメラ側をあおることが可能になります。

 筒状のカメラマウントに小型自由雲台を取り付け、それにカメラを取り付けます。オートベローズからはレンズ台座を取り去り、蛇腹の先にカメラマウントを取り付けてカメラ に装着します。カメラマウント台座にはレンズマウントを取り付けてレンズを装着します。

 筒を上下させればライズ・フォールができます。自由雲台でチルトとスイングができます。レンズ側のスイングもオートベローズ取り付け部を軸として可能です。

 この品はベルボンのFHDシリーズのビデオ雲台プレートとして使うことが出来ます。FHDシリーズ雲台は蟻溝のサイズが国際標準になりつつあるアルカスイスと互換なので、この品は他社の雲台でも使える物があります。

<Sマウント オート接写リングセット>

 この品はマウント雌部を抜き取ることができます。その外径が48oなので、M42マウント関係の改造に驚くほど役立つ品です。中古市場で比較的入手し易い品です。それにとても安価…

<ステップアップリング・ステップダウンリング>

 他のアクセサリーと組み合わせることで、色々な小物として使うための便利な道具です。マウントの改造には、その外径と内径や働き幅を利用するので、その種類や数値を把握しておくことも、改造術を高める秘訣です。

 なお、通販の八仙堂からは、特殊なリングとして各種サイズの雌雄リング、雌雌リング、雄雄リングが販売されています。これらを組み合わせることでマウント改造の幅は著しく拡大します。

<オート接写リングKセット>

 これもマウント改造にとても役立ちます。リバースリングライトホルダーKが入手難なので、それを自作するためには必需品です。しかし、中古市場に出物も少なく、価格も高いのが難点…

… ダブルレリーズ・コレクション …

…  まえがき …

 PENTAXなどのオートベローズは、ダブルレリーズが無いとオートでは使えません。オート実現のためには必要不可欠な存在なのです。ところが、亭主が所蔵するオートベローズの数とダブルレリースの数とではいささか乖離があり、これを1:1の関係にまで近付けるのが課題となっています。新品を購入出来る製品もまだあるのですが、高価なそれを入手するのには多くの資金を要します。過去の遺産の中から調達することで、懐に優しいコレクションをするのを目標としています。

 また、ダブルレリーズは、他社の製品とでも相互に使えるものと思われます。それを検証するためにも、各社のものを可能な限り蒐集しようと発願しています。

 なお、ダブルレリーズの中には、オートベローズで必要な時差作動式ではなく、同時作動式のものもあります。これは2台のカメラを同時にレリーズするためにあるので、これを間違って調達しないようにしなければなりません。今日、捻じ込み式のシャッターボタンを有する現行カメラはほとんどありません。シャッターボタンが単なる電気スイッチ化しているので、いまさら同時作動式ダブルレリーズの市場価値はほとんど無いに等しいと思われます。カメラ用品販売会社「U・N」が時差作動式を生産終了し、その部材を用いて同時作動式の新製品「UNX-4594」を出したというコンセプトが理解できません。オートベローズ用として、間違ってこれを購入しないように注意しましょう。

 ダブルレリーズの作動の機構は、どれもほとんど共通であると思われます。上画像の、下のコイルバネが仕掛けてある長い方の真鍮シャフトが絞りを動かすもので、ハンドルのプランジャーを押すと先に押されます。短いシャフトは 、シャッターをレリーズするものです。2本のシャフトは、それぞれインナーケーブルに繋がっています。

 ハンドル内のプランジャーの中には強いコイルスプリングが入っていて、それに押されている「チューブ」が入っています。プランジャーの端には楕円形の「プレート」があって、「チューブ」はそれを貫通しています。この「プレート」が短いシャフトを押すのです。

 長いシャフトは「チューブ」の中に差し込まれます。「チューブ」の中にはプレート位置より下側に「仕切り」があり、プランジャーを押すと、まず最初にこの「仕切り」で長いシャフトを押します。プランジャーを押し続けて行くと、「チューブ」の先端が上画像の2本のシャフトが貫く黒い楕円部品に当たり、それ以上長いシャフトを押せなくなります。なおもプランジャーを押すと、プランジャーの中の強いスプリングがそれ以上進めなくなった「チューブ」に押されて縮み、そのことでなおも進んで行けるプランジャーの端にある「プレート」が短いシャフトを押し始めます。このために 、シャッターレリーズの前にプランジャーが一段と重くなるのです。この巧妙な仕掛けによって、確実な時間差で2本のケーブルが作動するのです。この2本のケーブルは、それぞれ黒プラスチック楕円部品に捻じ込まれていて、左回しに外すことが出来ます。

 PENTAXの前期型は、これとは少し違うメカニズムです。Nikonの「AR-7」以降も少し違います。

 なお、現在のデジタル一眼レフなどでは、そのままでは使えないダブルレリーズがほとんどです。電気スイッチ化したケーブルスイッチでしかレリーズできないカメラがほとんどになったためです。このままではオートベローズはオートの名を全うできません。そこで必要となるのがケーブルレリーズの機械的な動きを電気的な作動に変換する装置です。これを用意することによって、オートベローズとダブルレリーズは現代に甦ることができるということになります。 自分のカメラに適合するこの変換装置を用意することが、オートベローズ使いには必ず行わなくてはならない義務、ということになります。

… もくじ  …

PENTAX 前期型

PENTAX 後期型

YASHICA

Nikon AR-4+AR-8

Nikon AR-7

Nikon AR-10[改]

Mamiya旧型

Mamiya新型

Konica(5ピン)

Canon

Canon V

Olimpus(同時作動式)

Olimpus

E.Leitz

 

※番外編

Canon「ケーブルレリーズアダプターT3」[改]

PENTAX「ケーブルスイッチ F」[改]

 < PENTAX 前期型 >

 国内カメラメーカーがオートベローズ用として使った最初の「時差作動式ダブルレリーズ」なのではないかと思われます。国外では、ライカ・ビゾフレックスなどのミラーアップ用等で使われていたかもしれません。ハンドルの形状に、それとの類似性が見られます。バルブ撮影用に、つまみネジ式ストッパーが付いています。

 これには握って使う、というだけのハンドルの大きさがありません。人差し指と中指の間に挟み、親指で押すという操作スタイルを予定している形状です。

 この品は、まだ時差作動機構も生硬で、何より、アウターケーブルの構造・素材がまったくいただけません。内部に金属の網線が見える透明のチューブなのですが、軟質塩化ビニールなので、気温による変化を大きく受けてしまいます。冬季には硬化して収縮し、密着弾性を失って被せているだけの両端の金属部分から抜けてしまうことがあるのです。中の網線は潤滑と美観だけが役割で、強度をまったく担っていませんから、塩ビチューブが外れると、機能を失ってしまいます。

 なお、外れた塩ビチューブは、温めて軟化させた上で、この素材に対応する瞬間接着剤を金属部分に点滴してから再度被せることで、修復が可能です。ただし、瞬間接着剤はクリープ作用に弱いという物性があるため、いつまで有効なのかはまだ不明です。カメラ・レリーズ側ケーブルは、ハンドル基部のアジャスターで調整することが可能です。

 肝心の時間差作動のメカニズムとしては、他の大部分の製品と少し異なっています。2本のケーブルの動き出しは同時で、停止時間だけが違っているのです。つまり、絞りを動かすケーブルの出が短く、シャッターをレリーズするケーブルの出が長くなるのです。オートベローズの絞りは少しのストロークで作動し、シャッターの方はそれより長いストロークで作動することから成立している方法です。これは、必ず絞られてからシャッターが作動することを保障する方法ではなく、使用する機種の仕様に依存する可能性がある方法であると言えます。これでは、まだ時間差作動機構としては完成していないと言わざるをえません。

 Kマウント化後のオートベローズでは、最小絞り付近まで絞り込まれる前に、下記「ケーブルレリーズアダプターT3」[改]をレリーズしてしまうことがあります。その場合、オートベローズ側の絞り作動リンクを調整する必要があります。

 使い勝手は、アウターケーブルが軟質塩ビなので、冬季には特に柔軟性が不足し、あまりよろしくありません。

 なお、電気スイッチ機構への変換装置を改造する工夫次第では、同時作動式としても使えるかもしれません。

 所有数 6

 < PENTAX 後期型 >

 この品が、いつからオートベローズにバンドルされるようになったのかですが、今のところ、「AUTO BELLOWS M」前期型の途中(1978年?)からなのではないかと考えています。2012年までは製造が続いていた品で、まったく同じ品を汎用品としてカメラ用品販売会社の「U・N」が販売していました。探せば、まだ新品で市中在庫があるかもしれません。

 ケーブルがしなやかで、押し固さは軽く、使い心地は上々です。これは、前期型とは比べ物になりません。ハンドル部が長くなっているので、従前の指挟みスタイル以外にも、握っての操作スタイルが取れます。

 ハンドルの2本のケーブルが出ている部分は内側が窪んでいるので、ここを利用して、「AUTO BELLOWS K」後期型以降にあるオプション台座に設けた亭主特製ハンガーに差し込むことが出来ます。差動機構が良く出来ているのでその必要はほとんどないでしょうが、2本のケーブル先端部にアジャスターがありますから、作動の微調整は可能です。バルブ撮影用に、つまみネジ式のストッパーが付いています。

 比較的小型ですし、操作性の良さは他製品を圧倒しています。これから1つだけを所有したい人は、これを入手すべきです。

 絞り駆動側ケーブルの先にインナーの出を調整する機構が付いていて、13mmから5mmの間で調整ができます。シャッター側は13mmまで出ますから、ほとんどどのカメラでもレリーズできます。

 なお、上の画像のようにシャッター側にもインナーの出を調整する機構が付いているものがありますが、 最も初期と思われるバンドル品にはシャッター側に調節機能が付いていません。その使い分けが、時期、用途共に不明です。

 所有数 8

  < YASHICA >

 品物自体はPENTAXの後期型とまったく同じもので、黒地のYASHICAのステッカーが貼られています。両者は同じOEM製造者の製品なのでしょう。 これを使うオートベローズはCONTAXブランドなどで出ていた品で、レンズ台座にあおり装置が設けてあるものです。

 所有数 1

 < Nikon AR-4+AR-8 >

 Nikonのオートベローズである「PB-6」と、オートリング「BR-4・BR-6」に用いるために作られたダブルケーブルレリーズです。「F2」以前のライカタイプ被せ式シャッターボタンに対応する品ですが、「レリーズアダプターAR-8」を併用することで、「F3」 以降の通常の捻じ込み式に変換されます。バルブ撮影用の回転式切り替えストッパー機能も付いています。絞り側ケーブルに作動調整機能が付いています。 「レリーズアダプターAR-8」は、単独ではあまり流通していません。これが付属した中古を入手すべきでしょう。

 なお、以前「エツミ」から販売されていた被せ式と捻じ込み式のリバーシブルタイプケーブルレリーズの捻じ込みアダプターはこれには使えません。「AR-8」がなければ、現行デジタル一眼レフでは、PENTAX「ケーブルスイッチ F」に直付け改造する以外には、ほとんど使い物にならないと言うことです。

 ハンドルは「AR-7」と同じものですが、機種名を浮き彫りにするため、プラスチックのモールド金型を別にしているという贅沢さです。無駄にコストをかけているとも言えますが…握っての操作スタイルにしか対応していません。

 上の画像は、大きさの比較のために「AR-10[改]」を並べています。カメラ側ケーブルには「レリーズアダプターAR-8」を取り付けています。

 なお、「レリーズアダプターAR-8」は働き幅が小さく、PENTAXの「ME-Super」をレリーズできません。Nikonのカメラにしか使えないのかもしれません。しかし、Canon「ケーブルレリーズアダプターT3」 やPENTAX「ケーブルスイッチ F」[改]をレリーズできますから、現行デジタル一眼レフで使うのにはまったく支障がありません。 半押しやレリーズ時に重いのは「AR-7」と同様です。

 所有数 1

 < Nikon AR-7 >

 

 Nikonのオートベローズである「PB-6」と、オートリング「BR-4・BR-6」に用いるために作られたダブルケーブルレリーズです。「F3」以降のシャッターボタンに取付穴のあるカメラ用です。ハンドルの形状は「AR-10」と少し異なっていますが、握っての操作スタイルにしか対応していません。バルブ撮影用の回転式切り替えストッパー機能も付いています。

 実売価格はこれも投げ売り状態で、2012年末現在で3K円を下回っています。ディスコンになる日も近いと思われます。

 なお、この品はシャッター・レリーズ側の出が少なく、PENTAX「ME-Super」をレリーズ出来ません。Nikon製カメラの短ストロークに合わせてあるもので、汎用性が欠ける製品ということが分かりました。

 Canon「ケーブルレリーズアダプターT3」 やPENTAX「ケーブルスイッチ F」[改]を安定的にレリーズするためには、もう少しシャッター・レリーズ側(上右画像の下側ケーブル)の出を多くする必要があります。分解してプランジャーシャフトに付いている楕円形プレート下面に下駄を貼り付けることでその出を多くすることができますから、これを行うと快適操作になります。プランジャーの頭は、シャフトから左回しに外すことが出来ます。

 ところで、この品の時間差作動装置は、PENTAXなど他の時間差作動装置と少し異なり、ベローズ側取付口の中に一部の機構が入っています。先行他社の特許を逃れるための工作かもしれません。素直に特許使用料を払えばいいものを、無用なコストを懸けてのこの姑息さは、いかにもNikonらしい…

 なお、その後入手した品は、無改造でもCanon「ケーブルレリーズアダプターT3」 やPENTAX「ケーブルスイッチ F」[改]を安定的にレリーズ出来ます。作られた時期によってシャッター・レリーズ側の出が多めのものが作られたようです。

 所有数 4

 < Nikon AR-10 [改] >

 Nikonのオートベローズである「PB-6」と、オートリング「BR-4・BR-6」に用いるために作られたダブルレリーズです。シャッターボタンに捻じ込み穴の無い、電気的スイッチになった機種用です。ハンドル内にスイッチ機構が組み込まれていて、カメラ・レリーズに必要な半押し・全押しの信号電流を電線で出力します。バルブ撮影用の回転式切り替えストッパー機能も付いています。このストッパー解除の操作性は良好です。

 ハンドルは大型で、握っての操作スタイルだけしか対応していません。操作性は良好なのですが、絞り込みの途中からシャッター半押し状態になり、レリーズのタイミングが掴み難いのが難点です。

 オリジナルの電線は2線式で、プラグも現行ニコンカメラで使えない旧式用なので、Nikon現行デジタル一眼レフで使うためにでも、参考価格6.3K円もする変換コード「MC-25」を併用しなければなりませんし、当然そのままでは他のカメラで使えません。

 ニコンは2線式にするためにハンドル内に電子基板を設けていて、金属製のケーブルレリーズをグランド、つまりアースとして使用する電気回路としています。こんな回りくどいことをしなくても、素直に3線式にすれば簡単なのに 、と思ってしまいます。幾種類もあるモータードライブなどでも使うために、この複雑な仕掛けが必要だったのかもしれません。この「からくり」搭載のせいでなのか、小売希望価格は当初でも6.5K円、現在は7K円台後半という高価なものになっています。既に「PB-6」がディスコンになって、プラグをそのまま使える機種を失うなどで使途が限られるせいか、実売価格は投げ売り状態で、2012年末現在5K円台に下がっている量販店もありますが…

 ハンドル内には半押し用と全押し用としてマイクロスイッチが2個使われていますから、これを利用することで3線式に改造することが出来ます。既存配線と基板を外し、単に電線をハンダ付けするだけの改造ですから比較的容易です。ただし、2個のマイクロスイッチのどの端子にどの電線をハンダ付けするのかを判別できる程度の電気的スキルは要求されるので、これを未装備の人には敷居が高いかも…

 亭主は以前から「ステレオ・ミニ3.5mm径」プラグをケーブルスイッチなどの異機種間互換用として統一しています。そのため、この付け替え改造に使った3線コードは、そのプラグの付いたものを使用しています。このようにすることで、他機種でも使う道を広げているのです。現行PENTAX用のプラグは、キャノンの「EOS Kiss」シリーズカメラと同じく「ステレオ・ミニ・ミニ2.5mm径」ですから、市販の変換ブロックを併用することで、上の画像のようにスマートに使えます。

 所有数 2

 < Mamiya  旧型>

 Mamiyaの中判カメラをミラーアップしてから撮影するためのダブルレリーズです。シャッター側を黒色にして誤装着を防ぐ工夫がされています。バルブ撮影用のストッパー機能がありません。

 所有数 1

 < Mamiya  新型>

 Mamiya「AUTO BELLOWS 645N」にバンドルされていたダブルレリーズです。バルブ撮影用のストッパー機能を組み込まぬのもMamiyaの伝統です。ケーブル調整は絞り側で行えます。ハンドルの形状としては、握っての操作スタイルにしか対応していません。先に作動する絞り側は軽いのですが、カメラ・レリーズの作動が非常に重く、使い心地は最悪です。ことさらこの品を選ぶメリットは皆無と断定できます。OEM製品の習いとして、メーカー名をチープな印刷としています。ゴム印かもしれない…

 所有数 1

 < Konica(5ピン) >

 Konika 「FS」及び「FT」シリーズカメラの5ピンリモートスイッチ端子に対応したケーブルスイッチ機能内蔵のダブルレリーズですから、1979年以降の誕生です。2012年12月に取得しましたから、その間製造から30年以上経過しています。

 NikonのAR-10と同様に、ハンドル内にケーブルスイッチ機能を内蔵しています。適合するプラグ付き電線と付け替える改造を施すことで、今日のデジタル一眼レフで使える品にすることが期待出来ます。必要な資材を揃えて、いずれ改造に供そうと画策しています。哀れ滅亡してしまったプラグですから、それが功徳というものでしょう。

 ハンドルは「Mamiya」と同じデザインですから、同じOEM製造者だと思われます。オートベローズの方が同じOEM製造者だったので、これは当然のことでしょう。 しかし、Mamiyaが印刷だったのに対して、こちらはメーカー名を浮き彫りにしています。Mamiyaには無いバルブ撮影用の回転式切り替えストッパー機能も付いています。

 なお、Konicaは通常のダブルケーブルのものも出していたようです。そちらはハンドルのデザインが異なっていますから、別のOEM製造者なのでしょう。

 分解して色々と調べてはいるのですが、3芯の電線は使っているものの、肝心のスイッチは1接点のようです。つまり半押し・全押しに対応していないようなのです。プラグ側で調べても全押し対応しかしていない様子です。別に半押し対応の仕掛けを付け加えないと使い物にならないかもしれません。一応その構想は成立しているのですが…

 所有数 1

 < Canon >

 Canon唯一のオートベローズ(FDマウント)にバンドルされていたダブルレリーズです。 ケーブルがPENTAX後期型の1.5倍ほどと長いのですが、しなやかさはあまりありません。ハンドルに大きさと長さがあるので、指挟みスタイル以外にも、握っての操作スタイルも取れます。

 プランジャーの押し重さがあり、ストロークも大きいので、操作性はPENTAX後期型より大きく劣ります。バルブ撮影用の回転式切り替えストッパー機能も付いていますが、ストッパー解除の操作性は、同形式のNikonよりよろしくありません。中古流通も多く、価格も安いNikonの「AR-7」の方を選ぶべきでしょう。

 ただし、絞りを動かすケーブルの出は長いので、こちら側でシャッターをレリーズすることが可能です。カメラ2台を時間差で作動させる用途にも使えることがこの品の利点です。無駄に長いと思われるプランジャー・ストロークも伊達ではないのかも…

 所有数 3

 < Canon V >

 

 「E.Leitz」のものと似ています。1956年Canonが1眼レフに参入する前のVシリーズレンジファインダー機時代の品です。アルミ製ハンドルはピンでかしめて組み立ててありますから分解は不可能です。指挟みスタイルでの操作を予定している形状です。厳密には時差作動式ではないのでしようが、何とか使える存在です。

 平頭側にNikonの「AR-8」や以前エツミから販売されていたリバーシブルケーブルレリーズの捻じ込み式アダプターを併用することで、オートベローズでの使用が可能です。後者の場合は、インナー先端を切り詰めることで最適化することが可能です。

 2つあるうちの下のつまみネジは、平頭側インナーケーブルを出したまま固定するためのものですから、ビゾ・フレックスをミラーアップさせたままにするなどの用途で付けられたようです。

 これは日本のカメラがドイツなど先進国の製品を模倣していた時代の驥尾となる記念碑的製品の一つかもしれません。現在支那など発展途上国の模倣品をことさらに非難する前に見ておくべき品なのかも…

 所有数 1

 < Olimpus (同時作動式) >

 

 ダブルレリーズですが、時差作動式ではありません。2台のカメラを同時に作動させるための、いわゆる「二又レリーズ」です。当然PENTAXのオートベローズでは使えません。昔カーテンレールとして使われていたような巻線をアウターケーブルに使っていますので、しなやかさが不足して、使い心地は劣悪です。

 所有数 1

 < Olimpus >

 Olimpusのオートベローズにバンドルされていたダブルレリーズです。PENTAXの前期型と同じく透明塩化ビニールのアウター被覆なので、同じ問題を抱えています。しかし、2本の先端部は、E.LeitzやCanon Vのダブルレリーズのように巻線で補強してあります。全体に大型で重くなっています。

 ハンドルは円筒形で、指挟みスタイルでの操作を予定している形状です。時差作動式ではありませんから、PENTAXのオートベローズでは使えません。

 所有数 1

 < E.Leitz >

 

 オートベローズ用に用意されたダブルレリーズではありません。ライカのビゾ・フレックスにあるミラーをシャッター作動前にUPさせるためのもののようです。\0.52Kと驚くほど安価で巷にころがっていたので、出来心でつい拾い上げてしまいました。「Canon V」と比べると、全体に仕上げが上等です。本家の貫録か…

 2つあるうちの下のつまみネジは、平頭側インナーケーブルを出したまま固定するためのものですから、ビゾ・フレックスをミラーアップさせたままにするなどの用途で付けられたようです。オートベローズでは絞りを固定する用途でも使えます。指挟みスタイルでの操作を予定している形状です。厳密には時差作動式ではないのでしようが、何とか使える存在です。

 平頭側にNikonの「AR-8」や以前エツミから販売されていたリバーシブルケーブルレリーズの捻じ込み式アダプターを併用することで、オートベローズでの使用が可能です。後者の場合は、インナー先端を少し切り詰めることで最適化が可能です。

 所有数 1

※※番外編

  < Canon「ケーブルレリーズアダプターT3」[改] >

 これは、初期のCanon「EOS」シリーズで使うために作られたアダプターです。新たに「ケーブルスイッチ」を購入せずとも、従来からの使い慣れた機械式「ケーブルレリーズ」を使用して遠隔レリーズが出来るようにという 、プロやハイアマのニーズに応えたものだと思います。ことさらダブルレリーズ用に作ったということではないのでしょう。「EOS」シリーズは、従前のマウントである同社オートベローズが使えないものにしてしまいましたから…

 なお、Nikonの方は、カメラの3ピンリモートターミナルに直接取り付ける形式の「ターミナルシャッターMR-3」という製品で同じ要求に応えています。こちらの方はカメラソケットに直付けする形式で 、電線を介在していないので改造用資材としては使い難いものになっています。旧3ピンから現行10ピンへの高価な変換コード「MC-25」を併用するにしても、PENTAXなど他社カメラで使うためには、さらにプラグの付け替えが必要ですし、入手もより困難です。第一、その姿がスマートではありません。

 兎にも角にも、Canonが新マウントカメラEOSの普及のためにプロやハイアマに媚びたこの製品を作ってくれたおかげで、今日オートベローズがオートベローズたりえているという想定外の大功績となっています。

 しかし、ディスコンになって少々時間が経過していますから、市中在庫も枯渇しているものと思われます。中古市場からの調達しかなくなっているかもしれません。これが有るのと無いのとでは、オートベローズの折角の機能に格段の違いが生じてしまいますから、将来に備え、亭主は所有するダブルレリーズと可能な限り1:1の装備率になるよう調達に励んでいます。販売していたころの最終定価は2.5K円でした。

 プラグは「EOS」旧型用の「T3」ですから、他のカメラで使うためにはプラグの換装が必要です。オリジナル・プラグの根元から切断し、その部分に使用するカメラに適合するプラグを取り付けます。電線の構造は上画像のとおり、繊維で巻いた3芯です。赤線が全押し、白線が半押し、裸の網線が戻りのグランド(アース)です。赤線は被覆の下をさらに繊維で巻いているという過剰品質です。この構造のせいで、巻き癖 、曲がり癖が取れ難くなっています。

 亭主は「ステレオ・ミニ3.5mm径」プラグを異機種間互換用に統一していて、これがこの太いオリジナルの電線に取り付けることの出来る最小のプラグです。PENTAXの現役カメラで使うためには、「ステレオ・ミニ・ミニ2.5mm径」変換ブロックを併用することでスマートに使えます。CanonのKissでもこの方法で使えます。

 このようにしておけば、他社のプラグは、他端が「ステレオ・ミニ・ミニ2.5mm径」となっている市販品がありますから、「ステレオ・ミニ・ジャック⇔ステレオ・ミニ・ジャック」というアダプターなどを併用することで、ハンダ鏝を使っての更なる電線へのジャック取付作業を省略することも可能です。

 なお、「ステレオ・ミニ3.5mm径」の先端電極は全押しで、中間電極が半押し、基部電極が戻りのグランド(アース)です。

 所有数 14

 < PENTAX「ケーブルスイッチ F」[改] >

 

 ダブルレリーズを用いて最近のデジタル一眼レフのシャッターを切るためには、ケーブルレリーズの機械的作動を電気信号に変換しなければなりません。このための道具として使えるのが「ケーブルスイッチ」です。このケーブルスイッチのボタンを指で押す代わりにケーブルレリーズで押してやれば、目的は達することになります。まさにその作業をそのまんま行えるように改造したのがこの品です。そこには発想の転換など微塵もありません。非常にシンプルな、まことにべたな発想(^_^;)

 この「改造」に使用したPENTAXの「ケーブルスイッチ F」は、今では珍しくなった縦型のハンドルです。これも機械式ケーブルレリーズの操作スタイルを踏襲したデザインで、まことにべたな発想の製品と言うことができます。しかし、そのおかげで、この改造には適しています。上右画像のように、オリジナルの押しボタンの仕組みを取り去り、その跡にエツミの「ニュージョイントレリーズ」という製品を取り付けるだけの改造です。その取付方法に若干の工夫と工作が必要ですが、作用させる力の入力方向が元と同一なので、まことに具合の良い操作性です。見た目はともかくとして、PENTAX守護者としては、吾ながら得心得意の改造です。この改造を行った時点では、上記「ケーブルレリーズアダプターT3」の存在を知らなかったので、これがベストと思っていました。井の中の蛙(^_^;)

 この改造方法の場合、上右画像の木製部品を工夫することでインナーケーブルの到達位置を調節できるので、それが短いNikon製ダブルレリーズや同時作動式ダブルレリーズでも使用可能にすることができます。これがこの改造の最大の利点かも…

 「ケーブルスイッチ F」は、残念ながらそのプラグで使用できる現役カメラを*istシリーズ以降は失ったので、中古品が安く大量に流通しています。上記「ケーブルレリーズアダプターT3」をどうしても入手出来ない人や、生理的にCanonを毛嫌いしている人は、これを試みる道が残されています。 マイクロスイッチを使用しているので、「半押し時」と「全押し時」に節度のある手ごたえがあり、この点が「ケーブルレリーズアダプターT3」より優れている部分です。

 ところで、この「ケーブルスイッチF」には前期型と後期型が存在していて、上記改造には前期型が適しています。後期型は内蔵のマイクロスイッチが変更されていて、内部空間が狭くなっているために改造の余地が狭く、特に下記改造は不可能です。前期型を選んで改造するのが適当です。

 前期型と後期型の外見上の違いは組立ビス3本の表面仕上げだけです。前期型はクロームメッキですが、後期型は黒色皮膜です。

 なお、プラグを変更しなければならない、という問題は解決しなければなりません。上の画像のように、電線を切断して新たなプラグを付けてもよし、そっくり既製プラグ付き電線と付け替えるもよしと、その方法は工夫次第です。電線ごと付け替えるときには、電線に通したハトメ金を潰してハンドルからの抜け止めとする 、Nikon「AR-10」に使われている小技を盗むのが良さそうです。 亭主は両方の方法を行いましたが、既存電線の切断の方が手軽ですし、具合も良いと思います。

 ちなみに、これのちょん切ったケーブルFには「ステレオ・ミニ3.5mm径」ジャックを取り付けたので、「MZ-3」などのFソケット銀塩カメラでこの「改造」用品などを使える存在に昇華しています。でも、まず使 うことはないでしょうが…

 「改造」の方法としては、「ニュージョイントレリーズ」を使う代わりに、下画像のように、「ME-Super」から取り外したシャッターボタンを利用する方法もあります。

 シャッターボタンの周囲に5mm幅のテープを巻き付けて必要な太さ(約7mm径)を作り出し、接着するだけです。この個体は、ハンドルの押しボタン部外殻を切り取って短くする改造しています。その他は、部品を外しただけです。下左画像では、まだ電線を取り付けていませんが、手前に見える2個の端子はグランドで、向こう側上が半押し、下が全押しになります。元の配線は、上画像のように手前が黒、向こう側上半押しが青で、下全押しが赤でした。手前2個のグランド端子は互いを連結します。

 

 また、ダブルレリーズのシャッター側を、直接「ニュージョイントレリーズ」同様に取り付けることも可能です。この場合、ダブルレリーズ専用となってしまい、汎用性が失われますが、2011年末に新製品も出た現行品として入手可能な同時作動式のダブルレリーズを用いての改造でも、間隔を工夫することで時差作動とすることが可能という利点もあります。

 さらに、Minoltaの「AUTO BELLOWS V」の特殊な出力ケーブルが必要なシャッター・レリーズ用として、これも安く入手可能な単線ケーブルレリーズを切断して得られる口金部分を、「ニュージョイントレリーズ」の代わりにそれと逆方向に接着し、その中に適合する長さに調整した真鍮棒を挿入すれば、専用のレリーズ・スイッチとすることも可能です。

 このように、簡便な改造素材として非常に優れているので、安く豊富なうちに入手するのも肝要ですし、滅亡プラグの供養のためにも功徳を積むことになるのかと…

 所有数 4

… 互換情報 …

 かつてカメラ各社から出ていたベローズ装置のうち、紙と布で作られている「蛇腹」は損耗により使えなくなる可能性が高いものです。他の銘柄の蛇腹との互換性が分かれば、中古品を補修部品として入手する道も広くなります。

 また、カメラマウントが変更出来れば、多様なデジタル一眼レフで使う道が開けます。カメラ台座のマウント金具の互換が可能であるなら、それはより容易なことです。特に、M42マウント化が可能であれば、適合するアダプターと組み合わせることで、ほとんどのカメラで使用が可能になります。

蛇腹断面寸法 :幅

49.5mm    「ASAHI BELLOWSCOPE」

50mm    「ASAHI PENTAX BELLOWS UNIT」 「KOPIL BELLOWSCOPE」 「KOPIL BELLOWSMAT」  「KOPIL DUO-TRACK BELLOWSCOP」

53.5mm    「FUJICA BELLOWS」

54mm   「ASAHI PENTAX BELLOWS UNIT U」 「ASAHI PENTAX BELLOWS UNIT V」

55mm    「Minolta Extension BELLOWS」 「KONICA BELLOWS UAR」 「RICOH BELLOWS」

59mm(ピッチ大)  「Minolta AUTO BELLOWS V」 「Minolta BELLOWS W」

60mm    「PENTAX BELLOWS U」

62.5mm   「PENTAX AUTO BELLOWS」 「PENTAX AUTO BELLOWS K〜A」 「Minolta BELLOWS U」 「Minolta BELLOWS V」

63mm    「KONICA AUTO BELLOWS」 「FUJICA AUTO BELLOWS」 「CONTAX AUTO BELLOWS PC」

カメラ台座マウント金具取付穴 :直径

40mm    「ASAHIFLEX BELLOWSCOPE」 「ASAHI BELLOWSCOPE」 「ASAHI PENTAX BELLOWS UNIT」

        「ASAHI PENTAX BELLOWS UNIT U〜V」 「KOPIL BELLOWSCOPE」 「KOPIL BELLOWSMAT」 「KOPIL DUO-TRACK BELLOWSCOP」

42mm    「PENTAX AUTO BELLOWS」

42.5mm   「PENTAX BELLOWS U」

44mm    「Minolta Extension BELLOWS」 「FUJICA BELLOWS」

45mm    「KONICA BELLOWS U AR」

46mm    「Minolta AUTO BELLOWS V」 「Minolta BELLOWS W」

47mm    「KONICA AUTO BELLOWS」

48mm    「PENTAX AUTO BELLOWS K〜A」 「ASAHI PENTAX BELLOWS UNIT K」

 径年使用による蛇腹の損耗は避けられないことです。補修部品としての提供は必要なことと考えています。全種類を揃えるというのはなかなか難しいでしょうが、互換性の高いものや製造数の多いサイズについては、一定数の製造に見合う需要が見込めるのではないかと考えています。

 最も古い時代から作られた「BELLOWSCOP」用の49.5mmですが、「PENTAX BELLOWS UNIT」と互換を取って50mmとすることで需要が多そうです。

 また、「PENTAX AUTO BELLOWS」用の62.5mmも、CONTAXなどのAUTO BELLOWS用63mmと互換を取って63mmとすることで需要が見込めます。とりあえずはこの2種類を用意することで、補修部品市場の立ち上げが可能ではないかなどと妄動中…

…  あおり撮影について …

 ベローズ装置の中には「あおり撮影」が可能なものがあります。あおり撮影というのは、光軸を意図的にずらしたり傾けたりすることにより、特殊な撮影効果を得る方法です。被写体に対してレンズおよび撮像面の中心が一直線上にあるのが通常の撮影ですが、これの関係を崩すことで様々な効果を得ることが可能なのです。

 まず第一に、撮像面のアパーチャー(撮像センサーやフィルム)を光軸に対して直角方向にずらす方法です。これを「シフト」または「ライズ・フォール」と言います。レンズが作る一定のイメージサークルの中のどの部分を撮像面のアパーチャーで使うかを変更する方法です。例としては、上すぼまりに写る建築写真のすぼまり度を緩和する時などに使う技法です。これは、レンズのイメージサークルがある程度大きくないと使えない技法です。

 第二として、撮像面を光軸に対して傾ける方法です。これを「チルト」または「スイング」と言います。これには被写界深度を調整する効果があり、ピントの合っている範囲を広げたい時や、逆に狭めることで特殊な画像効果を得る時に使う技法です。イメージサークルはさほど大きくなくても使える技法です。

 被写体の前後に離れた2点に同時にピントを合わせたい時に、その2点を結んだ線の延長と、光軸に直角なレンズ第2主点からの直線と、撮像面の延長との三つの線が一点で交わった時に、前後に離れた被写体の2点に同時にピントが来ます。この原理を「シャインプルーフの原理」というのですが、これを実現させるためには、レンズを 「あおる」と同時に、カメラ側もあおれたほうが撮影の幅が広がります。レンズのあおりによるイメージサークルの移動を撮像面が追尾できるからです。大判カメラにはこの機能があるのがあたりまえなのですが、小型カメラの接写装置としてのベローズ装置には、レンズをあおる装置しか装備されていません。しかも、そのあおり装置が装備されていないものがほとんどなのです。

 なお、被写界深度を増減するためのあおり効果を得るときに、撮像面側をあおった方が必要なあおり作動量が少なく、構図の移動やピント調節が少なくて済むという操作の容易さがあります。レンズ側をあおるとイメージサークルが移動しますから、それが大きくないと撮像面のアパーチャーが納まりませんし、移動してしまう被写体の像を撮像面が追尾するためにはカメラ全体を動かさねばならず、それによるピントの再調節も必要となります。ところが、撮像面をあおるのなら、さほど大きくないイメージサークルでも撮像面のアパーチャーが納まりますし、被写体の像移動もわずかで、ピントの調整も軽微で済みます。レンズを含めたカメラ全体を動かす必要もほとんどありません。

 テーブル上にある料理の盛られた皿などを撮影する場合などのような物撮りの場合、撮影対象主題全体にピントが合っている必要があります。このような用途での撮影装置としては、カメラ側をあおれる装置が撮影能率の点で優れています。ここにシフトレンズなどよりベローズ装置の方に利点があるのです。

 逆あおり撮影について

 一般的に、あおり撮影により被写界深度を増やすためには、カメラから見てレンズ面を下向きに傾けるチルトダウンという操作を行います。これによりピントの合っている範囲が通常より遠方にまで拡大します。このため、自然な感じに写ります。しかし、それとは逆に、レンズ面を上向きに傾けるチルトアップという操作を行うと、ピントの合っている範囲が手前に広がり、遠方のボケ方が大きくなります。このため、中距離にピントを合わせると遠方のぼけが強調され、あたかも近接撮影をしているような効果が生まれます。このことにより、普通の街の風景写真でも、あたかも街の模型を撮影したかのような写真にすることが可能なのです。

 

…  ベローズ装置で無限遠の出せるレンズたち …

 ベローズ装置には最も縮めた時でも40mm前後の最小光路長があります。そのため、通常の交換レンズを取り付けるとその最小光路の分だけ繰出された状態になり、無限遠は出せません。それを出すためにはフランジバックの長い、ヘリコイド装置の付いていない「バレルレンズ」という形式の交換レンズが必要になります。

 ベローズ装置を販売したカメラ会社は、同時にそれで無限遠を出せる「バレルレンズ」タイプの交換レンズを上梓することが多かったのですが、すべて絶版になっているため、中古市場から入手するしかありません。

 ところが、フィルムから印画紙にプリントするときに使用する「引伸ばしレンズ」には羽根枚数の多い優秀な絞りが備わっており、ヘリコイド装置が付いていないので、ある程度の長さの焦点距離のものであれば、フランジバックが長いので無限遠を出すことが可能です。ベローズ装置によって最小光路長が異なっているので、適合する焦点距離には幅がありますが、それは概ね90mmから105mm以上となります。

●亭主の所蔵品紹介

< FUJINAR-E 1:4.5 f=9cm >

 ネット上には4群6枚オルソメターであるという情報がありますが、点光源をレンズ面に反射させると、前群は4つの明るい反射、後群は2つの明るい反射と1つの暗い反射が見えます。なので、「凸凹・(凹凸)」というレンズ構成の3群4枚テッサーであることは確かなように思えます。実際に分解しても、前群は凸凹の単玉が2枚で、後群は凸です。一部のレンズ玉がホルダーにモールドされているので断面の確認が出来ず、貼り合せかどうか確認できませんが 、後群凸だけがそれのようです。

 絞りはプリセットです。フィルターなどを取り付けるアタッチメントネジが付いていないので、前部プリセット環に49mmフィルター枠を接着する改造を行っています。

 これを使って無限遠を出すためには、最小光路33mm以下のベローズ装置が必要です。

<レンズデータ>

絞り:F4.5〜22

絞り羽根:10枚

鏡胴外径(mm):47

フランジ取付ネジ:39 P=1/26"

鏡胴長(mm):25

フランジフォーカス(mm):78.5

< FUJINAR-E 1:4.5 f=10.5cm >

 これもネット上には4群6枚オルソメターという情報がありますが、点光源をレンズ面に反射させると、前群は4つの明るい反射、後群は2つの明るい反射と1つの暗い反射が見えます。「凸凹・(凹凸)」というレンズ構成の3群4枚テッサーであることは確かなように思えます。

 絞りはプリセットです。フィルターなどを取り付けるアタッチメントネジが付いていないので、前部プリセット環に49mmフィルター枠を接着する改造を行っています。

 この品であれば、ほとんどのベローズ装置で無限遠が出せます。 下の画像は等倍からの切り出しです。2q以上離れた送電鉄塔ですが、色滲みも少なく、優秀な解像力であることが分かります。

※絞り開放 1:4.5           ※絞り 1:8

<レンズデータ>

絞り:F4.5〜22

絞り羽根:10枚

鏡胴外径(mm):47

フランジ取付ネジ:39 P=1/26"

鏡胴長(mm):25

フランジフォーカス(mm):

< FUJINON-EX 1:5.6 f=105o >

 照明式の絞り表示窓があるので、撮影レンズとして使用する場合はマウント部の改造が必要です。そのまま使うと絞り表示窓から光が入り込み、画像のコントラストを阻害します。このことを知らずに使用しているケースがあるのではないかと思われます。

 マウント部が浮動式のため、取付後に絞り表示窓の位置を任意の場所に動かせます。絞り表示は蓄光塗料で記されています。

 レンズ先端の径46mmアタッチメントは外せ、その取付ネジは「ライカLマウント」となっているので、リバースアダプターを使わずとも逆付けが出来ます。

 この画像は、自作のエキザクタマウントアダプターを取り付けた状態です。

 レンズ構成は6群6枚と公表されていますが、その構成図は見つかりません。4群6枚ならオルソメターあるいはダブルガウスと推測できるのですが、前後が凸メニスカスということしか分かりません。

 < レンズデータ >

  焦点距離(mm):105

  口径比(F):5.6

  レンズ構成(群−枚):6-6

  包括角度(開放):52

  最大適用画面寸法(開放・mm):56×84

  最小絞り(F):32

  絞り羽根 8枚

  設計基準率倍率:×7

  使用倍率範囲:×1.5〜×15

  色消波長域(nm):380〜700

  歪曲(%):-0.05

  焦点距離設計値(mm):106.2

  鏡胴外径(mm):54

  フランジ取付ネジ:39 P=1/26"

  鏡胴長(mm):42

  フランジフォーカス(mm):95.2

  バックフォーカス(mm):86.1

  第2主点とフランジ面の距離(mm):11.3

  主点間隔(mm):-2.8

  全長(mm):42

  重量(g):110

< E-LUCKY 1:4.5/90 >

 3群3枚トリプレットです。

 F4.5〜22の絞りは10枚羽根です。絞りはプリセットです。フィルターなどを取り付けるアタッチメントネジが付いていません。

 この品も最小光路33mm以下のベローズ装置で無限遠が出せます。

<レンズデータ>

  鏡胴外径(mm):41.5

  フランジ取付ネジ:39 P=1/26"

  鏡胴長(mm):29

  フランジフォーカス(mm):82

< EL-NIKKOR 105mm 1:5.6 N >

 4群6枚オルソメターです。ダブルガウスが「凸(凸凹)・(凹凸)凸」であるのに対して、「(凸凹)凸・凸(凹凸)」のレンズ構成です。明るさを得られないのですが、諸収差の補正が優れています。ダブルガウスがガウスの対称形であるのに対して、トリプレットの対称形ということから、収差補正が優秀なのです。

 また、イメージサークルが大きいことも特徴です。これはあおり装置付きのベローズ装置に必要な性能です。 フランジバックが大きめなので、あおり装置の付いたベローズ装置での無限遠付近での使い勝手が良好です。

 

 マウント部は浮動式なので、取付後、任意の場所に絞り表示部を移動できます。これも照明式なので、撮影用に使う場合はマウント部の改造が必要です。そのまま使用すると、コントラストの低い画像になります。 具体的には、マウント面の窓の位置を120度動かします。

 このレンズ、絞り開放でも無限遠の解像力が優れています。2q以上遠方の送電塔を手持ちで写しても、色収差の滲みは確認できません。撮影レンズとしても優秀です。右上画像は等倍の切り出しです。

<レンズデータ>

 アタッチメントφ40.5mmP=0.5ねじ込み。

 色収差補正波長域380-700nm。

 基準倍率5倍、

 使用倍率2-10倍。

 鏡胴外径(mm):51

 フランジ取付ネジ:39 P=1/26"

 鏡胴長(mm):27

 フランジフォーカス(mm):100.5

 絞り羽根8枚 F5.6〜32

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