PENTAX AUTO BELLOWS STORY

オートベローズ物語

 

2019/1/3 改訂

… 概説 …

 旭光学工業「PENTAX」がハイ・エンドのベローズ装置である「AUTO BELLOWS」を上梓したのは、1964年(昭和39年)にTTL測光機「PENTAX SP」を世に出したころのことと思われます。これは東京オリンピックが開催された年です。

 そもそも、「AUTO BELLOWS」の「AUTO」というのは「自動絞り」のことなのですが、その構造上、ファインダーが明るく見える絞り開放でピント合わせを行い、シャッターを切る時点では設定した絞り値に絞り込まれる、という一眼レフカメラには必須の機能を、カメラと交換レンズの間に装着するベローズ装置においても使用できるようにする、というのが製品としての目的でした。

 これは、ベローズ装置というものが接写のための道具であったことから来ています。「一眼レフカメラ」がライカやコンタックス、ニコンSシリーズなど「レンズ交換式距離計連動カメラ」より圧倒的に優れている点は、レンズを交換してもファインダーで見たとおりにそのまま写せるというものであり、それにはレンズを大きく繰り出す「接写」が最も差の大きく出る分野でした。

 ところが、この接写時には被写界深度が浅くなりますから、大きく絞って少しでも被写界深度を深くする必要があります。しかし、そうすると一眼レフカメラのファインダーは暗くなってピント合わせが困難になります。そのため、ピント合わせと撮影の間に一々絞り環を動かす必要があったのです。「自動絞り」というのは、この煩雑さを軽減するために付け加えられた画期的な機能なのです。

 旭光学工業「PENTAX」は、その「AUTO」の実現に「ダブルレリーズ」という装置を利用しました。レンズの絞り込みとシャッターのレリーズを別々のケーブルに分担させる方法です。これ の仕組みは、ハンドルに取り付けたプランジャーを押し込んで行くと2本のケーブルが時間差を置いて押し込まれて行き、まず先に絞りが動き、次いでシャッターが切れる、という ものです。これの実現のためには、本来カメラが備えている自動絞り機構を一切利用せず、レンズ側の自動絞り機構だけを作動させる仕組みでした。

 もともと、この「差動式ダブルレリーズ」は、ライカなど距離計連動レンズ交換式カメラにおいて、望遠レンズを使用するときにミラーボックスを取り付け、そのミラーを撮影時にはアップさせるために開発されたものなのでしょう。先にミラーをアップさせてからレリーズする、という一連の動作 機能を応用した仕組みだと言えます。

 一方、ミノルタは1968年、カメラの自動絞り機構をそのまま利用した「AUTO BELLOWS T」を上梓しています。これは、蛇腹の下にレンズ台座を貫通するリンクシャフトを設けて、これにより前後に可動するレンズ台座に設けた絞り駆動装置をカメラのそれと連動させる、という構造でした。この方がギミックとしては優れていたのかもしれませんが、機構上、ベローズ装置に対して横位置でしかカメラを取り付けることができず、縦位置撮影をするためには三脚等の雲台の縦横切り替え機能を利用せざるを得ませんでした。このことは、複写台などにおいては 大いに不都合なことで、結局ミノルタも、1979年発売の「AUTO BELLOWS V」でこの方法を諦めています。

 しかし、この期に及んでも当時既に国際標準となっていた「ダブルレリーズ」を採用することを忌避し、通常のケーブルレリーズでレンズ台座の絞り装置を動かし、そこからの出力を特殊なケーブルでシャッターボタンに連結するという、何とも因循姑息な方法を用いています。今日、この特殊な出力ケーブルが失われている中古品がほとんどという状態なのは笑止千万…

 そのような特殊な例を除いて、旭光学工業「PENTAX」が始めた「ダブルレリーズ」使用による「AUTO BELLOWS」の仕組みは多くの他社も採用することとなり、この素朴な方式が勝利することとなりました。

 なお、「PENTAX AUTO BELLOWS」は、「PENTAX SP」が搭載した絞込TTL測光による露出にとって極めて利便性の向上となっています。まず絞り開放によってピント合わせを行い、ダブルレリーズを押し込んで行って設定した絞り値における適正なシャッター速度を設定し、そのままダブルレリーズを押し切ることでシャッターが作動する、という一連の撮影手順を円滑に行うことが可能になったのです。それまでは必要不可欠だったレンズ繰り出し時における 「露出倍数」などはまったく意識する必要が無くなったということです。

 後年、「PENTAX ES」シリーズなどで「絞り優先AE」が実現すると、シャッター速度の設定も不要となり、なお一層利便性が向上しました。

 「PENTAX AUTO BELLOWS」は、三脚台座、カメラ台座、レンズ台座の3か所を独立して「微動」させることができます。これを実現するために、断面が「X」形状をした角棒の上面と下面にラック・ギヤを設けた「1本角レール」を採用しました。各台座に取り付けてあるデルリン(ジュラコンかも?)樹脂製の「ピニオン・ギヤ」が1本角レールの「ラック・ギヤ」と噛み合い、その「ピニオン・ギヤ」をダイヤルで回すことで台座は微動します。つまり、アプト式登山鉄道と同様な方式であり、これを「ラック・アンド・ピニオン」と言います。この構造は当時多くの他社が採用していた「4本丸レール」より も圧倒的に軽量であり、なおかつ必要な強度と精度を充たした極めて優秀な機構でした。

 角レールと各台座との「摺動部」にはデルリン(あるいはジュラコン?)樹脂製の蟻溝部材が用いられています。これは 「潤滑」と「固定」の両方を担うためのものです。歴代「PENTAX AUTO BELLOWS」全般に言えることとして、紙と布の複合材製である「蛇腹」以外でこの装置の寿命を扼する大きな要素として、プラスチック部品の径年劣化があります。「ピニオン・ギヤ」と「摺動部」がそれで、これが劣化によって破損すれば、即、製品としての命を絶たれることになります。まさにアキレス腱というわけです。

 ここで警告!!絶対に行ってはならない行為は、各台座を角レールから抜き取った状態でクランプ・ダイヤルを締め込むことです。摺動部の樹脂製蟻溝部が角レール上で通常押される 時以上に動く可能性があり、蟻溝の狭くなっている部分に破断を引き起こす可能性が高くなります。

 ところで、デルリン樹脂というのは1960年に製品化されたとのことです。旭光学工業は出来たばかりの新製品を主要部品として採用したということになります。

 なお、角レールの両端にある4mmネジ円盤ボルトは、各台座が角レールから抜けるのを防止する役目です。これを抜き取れば各台座は角レールから外せます。この円盤ボルトのための4mmのネジ穴は、別売されていた「スライド・コピア」を連結するためにも使います。このことから、「スライド・コピア」を運用していた個体からはこの円盤ボルトが紛失している例が多発しています。ネット上から中古品を入手するにあたっては特に注意を払うべき点です。

 「AUTO BELLOWS」の特長の一つとして、レンズ台座を前後反転させることが出来る点が上げられますが、これは、蛇腹をレンズ台座から外せる仕組みが組み込まれていることにより行える機能です。通常の状態では蛇腹先端の連結部を「つまみネジ装置」でレンズ台座と結合してあるのですが、レンズ台座反転時には蛇腹先端部「つまみネジ装置」と交換レンズ先端とを結合します。

 この連結部分の寸法は、「Sマウント」である「初代」は「Takumar」の標準である「49mm径鏡胴」に対応していましたが、「Kマウント」化された「2代目」以降は、Kシリーズレンズに採用された「52mm径鏡胴」に対応したものになっています。そのため、Mシリーズレンズ以降の「49mm径鏡胴」の場合、交換レンズの先端に「49-52ステップアップリング」を装着する必要があります。

 なお、「2代目後期型」からは、レンズ台座背面の52mm径リングが固定式から「49-52ステップアップリング」を捻じ込んである形式へと変更されたため、それを外して交換レンズに装着することでレンズ逆付けが可能になります。このことから、「2代目後期型」の発売時期はMシリーズレンズ発足時以降なのではないかと考えていましたが、「3代目前期型」が発見されたことで、その仮説は崩れました。

 ベローズ装置の主要なオプション機器として「スライド・コピア」がありますが、これをデジタル一眼で使えば、ポジはもちろん、ネガ・フィルムからもデジタル画像に変換することが可能ですから、フィルム・スキャナーは不要になります。ただし、ネガ ・フィルムの場合は、別途画像ソフトでの反転処理が必要となります。「PDCU5」がバージョンアップして、これを簡単に行えるようになったのは重畳…

 「PENTAX AUTO BELLOWS」のための「スライド ・コピア」は、上下にシフト出来るためにトリミングが可能で、1.5倍程度に拡大も可能です。

 「2代目」から設けられた左右のロールフィルム受けは、それぞれビス2本を緩めることで取り外せます。

 なお、採光窓に対する照明としては、30cm以上離した位置でストロボを発光させるのが良好なようです。

 また、この機器は、当然35mm判フルサイズを前提としていますから、「APS-C」判の「K-3」などで使うためには、使用レンズは換算画角が50mmぐらいになるものを使わないと、コマ全体を写すのには難しいと思います。事実、50mmのマクロレンズでは、フルフレームは少し無理です。現行レンズなら 「HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited」が最適でしょう。

 Nikonが1975年ごろに「PB-4」で採用した「あおり装置」は、PENTAXは最後まで採用しませんでした。これは、超接写やポジ・フィルムの複写を主要な目的とするベローズ装置には不要な機能であると見切っていたものと思われます。それを組み込むことによる重量の増加や、コスト上昇を嫌ったということかもしれません。しかし、趣味の道具という点で言うと、その機能も欲しかったと思われてきます。

 「初代」から「4代目」までの全機種を通じて、レンズ台座とカメラ台座の上部には磁石の倍率スケール・ホルダーが設けてあります。ここに鉄板製L型の倍率定規を取り付けるのですが、それには 「f=50mmレンズ用」と「f=55mmレンズ用」の2種類があり、それぞれ正向き・逆向きのための目盛りが表裏に刻まれています。

 「AUTO BELLOWS」が生まれたのは、カメラにTTL測光機能が搭載されたのが大きいと思います。それに加えて、その後の自動露出AEの普及もその利便性を加速させました。しかし、その命脈を断ったのは、その次の時代のカメラのAF化でしょう。マクロ撮影においてもAFが求められるようになっては、生き残るすべはなかったのです。

 また、PENTAXが始めたストロボの内蔵によるペンタ部の前方への突出が装着の障害になるなど、物理的な理由も加わったようです。

 結局、「AUTO BELLOWS」シリーズは、現在(2019/1/2)分かっているだけで「12タイプ」が作られました。その変遷の内容について、以下に記することとします。

… 目次 …

AUTO BELLOWS の構造

初代 AUTO BELLOWS

前期型 A

前期型 B

前期型 C

中期型

後期型

2代目 AUTO BELLOWS K

前期型

中期型

後期型

3代目 AUTO BELLOWS M

前期型

後期型

4代目 AUTO BELLOWS A

前期型

後期型

歴代「AUTOBELLOWS」変異一覧表

ダブルレリーズ

スライドコピア

リバースアダプター

マウントアダプター

レリーズアダプター

オートベローズで無限遠の来るPENTAX純正交換レンズ

互換可能な蛇腹

<番外編その1> 鳴かぬなら鳴かせて見せふ時鳥…

<番外編その2> 初代オートベローズ(Sマウント)でも、Kマウントレンズが使えるんです…

<番外編その3> あおれないとなれば、それに焦れ憧れるは人の性…

<番外編その4> ひと捻りすると使い道も増えるんです…

<番外編その5> メンテナンスについて

<番外編その6> 連結という言葉は、使用の幅を広げるキーワード…

<番外編その7> 更なる使い方の飛躍を目指して…

<番外編その8> デジボーグのカメラサポートとして

<番外編その9> イメージサークル確認用器具として

<番外編その10> 無用の長物を生かして使う

・・

オートベローズのための備忘録

PENTAX AUTOBELLOWS Mの使用例

パッケージ(元箱)意匠の変遷

 

こぼれ話

 トリビア的な話として、三脚台座側面に「PASSED」と表記された角ステッカーが貼られていた時期があります。これが何を意味しているのか亭主は不知なのですが、ステッカーにはPENTAXの「王冠片目」も表記されています。それが確認できるのは「初代後期型」の一部と「2代目」までです。この時期の角レール「BELLOWS UNIT」にも貼られているので、当時の何らかの制度上のものと考えられます。

 角レール端の円盤ボルトが無くなっていることの対応策として、市販の4mmボルトに50円硬貨を接着する方法があります。50円硬貨の外径は円盤ボルトの外径に近く、穴径は4mmボルトよりほんの少し大きいだけですから、弾性接着剤で固定することで、お誂え向きの品とすることが出来ます。 この国ではアメリカ合衆国とは違って、貨幣を毀損することは罰則のある違法行為ですが、弾性接着剤は容易に分離可能ですし、硬貨そのものには機械加工を行わないので、毀損にはあたらないと考えられます。

AUTO BELLOWS の構造

 

 「AUTO BELLOWS」は、断面がX形状をしたアルミ製1本角レールにレンズ台座、カメラ台座、三脚台座が取り付けてあります。ここではそれぞれの機能や構造について少し詳しく見て行きたいと思います。

 

●レンズ台座

 レンズ台座には交換レンズを取り付けるマウント金具と、その交換レンズの絞り装置を動かす機構が組み込まれています。 その機構をダブルレリーズで操作することで自動絞りを実行するのです。

 また、その背面には蛇腹先端部と連結する「仕組み」が設けてあります。蛇腹先端部との連結を切り離し、レンズ台座を一旦角レールから抜いて、それから裏返して戻すと 「レンズ逆付け」ができます。これは「リバースアダプター」の使用による「レンズ逆付け」とは異なり、ダブルレリーズ使用による自動絞りが使えるのが利点です。

 ところで、「レンズ逆付け」する意味は、等倍以上の近接撮影だと、レンズの光学設計上、その方が得られる像は良好だからです。

 「初代」のレンズ台座背面にある蛇腹先端部との連結用の「仕組み」である「つまみネジ装置」の内径は55oフィルターの外径57oと同じです。レンズ逆付け時にはここが最先端となりますので、「55-52」と「52-49」の二つのステップダウンリングを用意しておくと、逆付け時にフィルターやフード、リングライトなどのレンズアクセサリーを使用することが出来ます。このときに注意が必要なのは、いきなり「55-49」ステップダウンリングでは、自動絞り機構と干渉するために使えないということです。

 なお、これに使うステップダウンリングは「マルミ」製のものが適当です。「ケンコー」製は外周の滑り止めギザが邪魔して適合しません。

 「2代目」以降はこの部分が52oフィルター雌ネジの切られた外径54oの「リング」となっていますから、そのままでここにフィルター、フードなどの各種交換レンズ用アクセサリーが装着でき るようになっています。

 さらに、2代目「K」後期型以降は、この「リング」がレンズ台座背面にねじ込まれていて、その「リング」の実体は「49-52ステップアップリング」なので、それを外した後の雌ネジには49oレンズ用アクセサリーが装着できますし、嵌めたままなら52oレンズ用アクセサリーが使えます。これは何ときめ細かい配慮であると、ただただ感心する以外にはありません。

 なお、取り外した「49-52ステップアップリング」は、49mm鏡胴の交換レンズの先端に装着することで逆付けが可能になります。これも驚きのアイデアというほかありません。

 レンズ台座基部前面にはアルミ製の黒地ネームプレートが貼付されています。これの役割は機種名称を表示することと、角レールとの篏合と潤滑を担う白プラスチック蟻溝部品を固定する二本のビスを隠すことにあります。 従って、その白プラスチック部品の交換が必要になった場合は、このネームプレートを剥がさなくてはなりません。そしてそれはそんなには困難ではない…

 

●カメラ台座

 前方に「蛇腹」が取り付けてある「カメラ台座」の背面には取り外せる「マウント金具」が連結されていて、右横の「つまみネジ」を緩めることでそれを外すことができます。カメラはこの「マウント金具」に取り付けてからカメラ台座に装着します。カメラの横位置、縦位置はこれを回転させることによって切替えることができます。

 この「マウント金具」がカメラ台座から外せる構造のベローズ装置は案外なことに少数派で、多くの製品では、回転は可能ですが容易には外せない形式です。外せることはベローズ装置からのカメラの脱落事故のことを考えると危険であるとも言えますが、利便性と秤にかけると、こちらの方が優れていると亭主は断じます。

 なお、上記「つまみネジ」の位置ですが、同時代に製造を開始した「BELLOWS UNIT U」などはカメラ台座上部に付いています。オートベローズが右横に付いているのは、上部には倍率定規台座の磁石プレートが設けられたためと思われます。このように右横に付いていることで、現在のカメラが内蔵ストロボの出っ張りなどのために上部にあるつまみネジと干渉するという問題が生じなくて済んでいます。

 カメラ台座背面の「マウント金具」を連結する部分の内径は、「初代」は42oですが、「2代目」以降は48oになっています。ここに適合する「マウント金具」を「制作」することで、どのカメラでも取り付けることができるようになります。

 「初代」は「M42マウント」互換ですから、単に適合する各社カメラ用マウントアダプターをそれに装着すればよいのですが、「2代目 」以降のためには、外径48oの「M42マウント金具」を制作するという方法があります。病篤き亭主は、まだ今のようにはオートベローズ研究を深めていないころ、知人の伝により町工場に依頼して、旋盤加工によりそれを作らせてしまいましたが、46oフィルターの外径は48oであることから、それの枠とステップアップリングと純正Sマウント「リバースアダプター」を組み合わせることでの自作も可能です。このような工夫が愉しめるのもオートベローズの大きな利点のひとつです。

 カメラ台座前面には「蛇腹」が取り付けてあります。蛇腹の内側から四隅4本の小ビスを外すことで蛇腹を取り外せますが、台座に粘着していることが多いので、カメラ台座と蛇腹との接合面に切れないナイフ等を挿入して慎重に剥がす必要があります。なお、そこにあらかじめ無水エタノールを浸み込ませると取れ易くなります。

 蛇腹は薄い「丸穴開き角プレート」でカメラ台座に押さえ付けられています。蛇腹自体はサイズさえ合えば他機種のものを流用することが可能です。

 蛇腹の先端にはレンズ台座背面との「結合金具」が取り付けてあります。その取り付け方はカメラ台座側と同じです。この「結合金具」には「つまみネジ装置」が設けてあり、それにより、「初代」は逆付けした交換レンズ先端を、「2代目」以降はそれに加えてカメラ台座背面を取り付けることが出来ます。

 カメラ台座基部前面にはメッキした平頭ビスが捻じ込まれています。これの頭部がレンズ台座基部と当たることで、ヘリコイド装置を持たないバレルレンズである「Bellows-takumar 1:4/100」の無限遠に必要な光路38mmを出しています。

 ところで、カメラ台座の特殊な使い方として、カメラを取り付ける「マウント金具」の代わりに交換レンズを取り付ける「マウント」を取り付け、蛇腹端金具の方にカメラを取り付ける方法があります。これによってカメラと交換レンズの位置関係を直線ではなく自由な関係にすることができるので、あおり撮影に対応した装置の一部分とすることが可能です。これはレンズ台座を蛇腹から外せる「オートベローズ」だけに出来る優れた機能です。

 中古市場から「オートベローズ」を入手する場合、特に注意する必要があるのが、カメラ台座の「マウント金具」が欠落している品です。容易に取り外せることから、壊れた古カメラにこれが取り付けられたまま、その品がオートベローズにとって重要不可欠な部品であると認識されずに処分されてしまっているケースがよくあるのです。実際に使用していた人から入手する場合にはこのような問題はほとんど無いのでしょうが、無知なリサイクル業者や遺品など継承者によってネットオークションに登場するものにはよく見られますので、とても重要な注意点です。このマウント金具が無いと、正常に使うためには多くの苦労を伴うことになります。

●三脚台座

 三脚台座下面には「カメラ小雌ネジ穴(1/4吋)」が設けてあり、これにより雲台に取り付けます。撮像倍率を保ったままピント合わせを行うときにこの台座を前後させます。

 なお、この「カメラ小雌ネジ穴」には「コイルスプリング」が捻じ込まれています。これはそれが外れないように取り付けてあるのですが、その役割は緩み止めです。雲台の雄ネジを捻じ込むと、雌ネジを兼ねているコイルスプリングが引き寄せられて緩みを防ぐのです。簡単ですが巧妙な仕組みです。

●角レール

 各台座を取り付ける最も基幹となる部品です。アルミのX断面形状の上下に鉄の「ラック・ギヤ・レール」をビス止めしています。この「ラック・ギヤ・レール」に対して各台座に取り付けてある 「ピニオン・ギヤ」が噛み合い、その「ピニオン・ギヤ」をダイヤルで回すことで各台座は前後に移動します。

 この「ピニオン・ギヤ」とダイヤルの軸について、その軸受が各台座の両側にあるものと、ダイヤル側の片側にしかないものとがあります。それを亭主は「両持ち式」と「片持ち式」と呼ぶことにしています。

 「両持ち式」は軸受の位置が固定なので、「ピニオン・ギヤ」と「ラック・ギヤ」との間隔、つまり噛み合いを調整出来ません。 もしその必要が生じているのなら、「ラック・ギヤ・レール」の取り付け部を削ったり薄片を挟んだりするしかありません。しかし、軸受が軸の両側にあるのですから、強度としては優れています。

 「片持ち式」は、その軸受外周を偏芯させているので、各台座への取付位置を容易に変更することが可能です。つまり、「ピニオン・ギヤ」と「ラック・ギヤ」との間隔を調整できるのです。しかし、回転軸を片側で保持するのですから、強度的には劣ります。

 前者がその製造時に高度な技術・技能を要するであろうことは容易に想像出来ます。円滑に駆動するためには適正な「噛み合い」が必要なことで、これを機械加工時に実現しなくてはなりません。その点後者は、組立時に適正な噛み合いとなるように調節できます。このことにより、穴の位置をさほど高精度に機械加工しなくても目的を達することが可能です。職工の技能差の幅をより大きく出来ることで生産性が上がったことでしょう。

 なお、各台座には白プラスチック製の蟻溝部品が取り付けてありますが、これは移動時に角レールとの間の潤滑を受け持つと同時に、各台座のクランプ・ダイヤルを回すことで変形して、各台座と角レールを締め付け、固定する機能となっています。しかしながら、固定するごとにプラスチック部品は変形を繰り返すので、径年により劣化が進行したそれに亀裂が生じる恐れがあります。特に、角レールから外した状態でクランプダイヤルを回すと通常より大きく変形するため、亀裂の発生が起き易くなります。これは絶対に行ってはならないことです。

 

 ところで、各台座に用いられているデルリン(あるいはジュラコン?)製の蟻溝部品とピニオン・ギヤは、一般名称は「アセタール樹脂 」というエンジニアリング・プラスチック製なのですが、これが実用化されたのは1960年とのことです。このプラスチックは金属に似た特性と柔軟性と耐油性、すべり特性が優れていることから、これが実用化されなければ角レールというのは成立していなかったかもしれません。1964年頃に登場したのは、このプラスチックが製品化されたためであることが分かります。

 しかし、この樹脂はナイフなどで傷を付けると、そこからパキッと割れるという特性があるとのことですから、蟻溝の部材が一番狭くなっている鋭角部分から破断するのも当然のことだと分かります。角レールから外した状態でクランプダイヤルを締めこんではいけないのはこのことがあるからです。

 この樹脂の素材色は乳白色なのですが、顔料を混ぜることで着色できます。しかし、破断の起きやすいのは、亭主の経験的には黒色の部品ですから、カーボンブラック顔料の配合が粘り強さを阻害するのかもしれません。乳白色のままの旭光学工業の製品に破断例が少ないのはそのためかもしれません。

 角レールの前後端部には4mm径のネジ穴があり、これに対して円盤ボルトが捻じ込まれています。これは各台座が角レールから脱落するのを防止する役目です。

 また、この内の前端部ネジ穴はオプション部品のスライドコピアを取り付けるためにも使用します。

 なお、「スライド・コピア」を常時運用していた個体などの場合、円盤ボルトの片側が失われている場合があります。これは取り外して仕舞い忘れたのだと思われます。中古品を購入する場合、このことに注意が必要です。

 さらに、角レール前端部の4mm径ネジ穴には、三脚台座の「カメラ小雌ネジ穴」にあるのと同様なコイルスプリングが捻じ込まれているものがあります。それは「初代」の前期型のもので、「初代」の中期型以降は省略されました。

 このコイルスプリンクによる巧妙な緩み止めは、「スライド・コピア」取り付けのためのものだと思われます。「初代」の中期型以降に省略されたのはその必要性が少ないことと、製造コスト削減のためでしょう。

初代 「AUTO BELLOWS」

  まだ確認は出来ていないのですが、1964年「SP」の時代になるあたりで誕生したと思われる「AUTO BELLOWS」は、当然、ネジ式の「Sマウント(M42・プラクチカ)」です。このSマウントのものは1975年にKマウント化されるまで約11年間製造されたので現在も数多く残っていますが、その間、大きな変更を何度も行っていて、「前期型 A」 ・「前期型 B」・「前期型 C」・「中期型」・「後期型」の5つの型が存在していることを、亭主は現物の蒐集により確認しています。

 それでは、各型間の違いについて以下に述べます。

 各台座の駆動用ダイヤルの形状が変更になったのが「前期型」及び「中期型」と、「後期型」との違いです。 前者は単純なローレットであり、後者はブロック状の凹凸です。後者の形状はその後4代目が終了するまで続きました。

 「前期型」と「中期型」以降との違いは、レンズ台座マウント金具の固定方法です。「前期型」はマウント面にある4本のビスで固定する方法でしたが、「中期型」からはレンズ台座側面3か所の芋ビスによって押さえ付ける方法に変更されています。これはネジマウントのネジ切り始めの不安定さを微調整するために有効な方法となり、マウント金具製造・組立を容易にしています。

 また、角レール前端の4mmネジ穴に「前期型」は緩み止めが設けてありますが、「中期型」以降は廃止されました。

 「前期型」のうち、駆動ダイヤルの軸がすべて「両持ち式」なのが「前期型 A」で、「前期型 B」からは三脚台座以外は「片持ち式」の軸受となって、偏芯している軸受の固定位置を変更することでピニオン・ギヤと角レールラック・ギヤの噛み合せを調整できる仕組みでした。

 「片持ち式」の軸は「両持ち式」の軸より少し長くなっています。「片持ち式」のダイヤルの方が外側に出ているので、ロックダイヤルと干渉しないで操作できるようになり、少し操作性が向上しています。

 「前期型 B」と「前期型 C」との違いは、カメラ台座及びレンズ台座駆動ダイヤル軸が、前期型両持ち式時代に開いていた軸受穴を金具で埋めているのが前者で、その穴を始めから開けていないのが後者です。

 「中期型」からは三脚台座も片持ち式になりました。

 なお、「前期型 A」だけの特徴として、カメラ台座基部背面の形状があります。長方形に凹んでいて、2本のナベ頭ビスが設けてあります。これは他の型には無い特徴です。

 この「初代」では、蛇腹端金具とレンズ台座の連結は、レンズ台座にある「つまみネジ装置」で蛇腹端金具先端リング(55mmフィルター径・外径57mm)を押さえ付けて行っています。蛇腹端金具にも「つまみネジ装置」はあるのですが、これはリバース取付時に49mmフィルター径のレンズ先端に連結する だけのものでした。

●前期型 A

 この「前期型 A」は製造数が極めて少なかったようです。中古市場に出て来ることは本当に稀です。亭主が入手によりその存在を確認したのも2014年のことで、ネット上でもその画像はほとんど見つけることができません。その機能・性能はともかくとして、稀少性は最も高いと思われます。全体のたたずまいもメカニカル感が際立ち、一番きりっとしている感じです。 ダイヤル軸が短いことも容姿の良さの理由でしょう。

 また、カメラ台座基部後方に窪みがあり、そこに白いプラスチックの蟻型部品を固定する2本のナベ頭ビスがありますが、これは次の期型からはカメラ台座自体を前後に180度回転して製造するようになりましたから、その窪み部分がカメラ台座基部前方に移っています。この窪みが外に表れていることを嫌っての変更だと思われますが、蟻型プラ部品を外して整備するときには蛇腹が邪魔になりますから、 このことで整備性が犠牲になりました。

 なお、最近の考察により、白プラスチック蟻型部品を固定する2本のナベ頭ビスのあるカメラ台座基部後方の窪みについてですが、この個体は製造時に前後180度誤って機械加工した「エラー品」である可能性に気付きました。そうだとすると「正規品」も存在していたことになります。その方が「前期型 B」にある「メッキ目暗蓋」の説明として納得できます。今はその発掘が課題となっています。もしこれが「エラー品」ならとんでもなく希少…

 この型の最大の特徴は、工作精度が高くなくてはそもそも製品として成立しない構造にあります。組立にあたってギヤの噛み合い微調整はラック・ギヤ・レールの取付しかない構造となっているのです。そのため、機械加工に要する手間はとてつもなく多 かったことでしょう。それを行う職工の精密機械工作技術の高さを要求される珠玉の構造であるとも言えます。その点で、歴代形式の内の最高峰と位置付けても良いと亭主は思っています。その後の諸形式は、性能を落とさずに、如何に汎用技術化を図るかという苦闘の道そのものと言えます。単なるコストダウンという言葉では言い尽くせない工夫を感じることが出来ます。

 当時の販売価格は\14,500でした。「SP」の本体価格が\30,000円ですから、高価と言えるかもしれません。この価格は後期型まで続きます。

●前期型 B

 「前期型 A」からの変更点は、カメラ台座とレンズ台座の駆動ダイヤル軸受が「片持ち式」に変更されたことです。しかし、三脚台座の駆動ダイヤル軸は両持ち軸受のままです。 これはより重いものを駆動するために、強度の劣る片持ち軸受にするのをためらったのかもしれません。

 また、上記したように、カメラ台座基部後端の形状が変更されました。その後、この形状が最終型まで続くことになります。

 なお、「前期型 A」で開いていた台座の軸受穴が不要となり、それをメッキの「目暗蓋」で埋めています。これが次の「前期型 C」との唯一の違いです。

 この型で採用された片持ち軸受けの利点は、偏芯した軸受けの固定位置を変更調整することで駆動ピニオンギヤとラックギヤの間隔を組立時や整備時に調整できることです。「前期型 A」のような両持ち式はその調整が出来ないので、製造加工時の穴明け位置の精度が要求されます。腕が劣る職工が穴開けを行ったりするとオシャカにする率が高かったりしたのかもしれません。この片持ち式なら穴開け位置の精度はそれほど要求されませんから、能率と歩留まりが高まったことでしょう。

●前期型 C

 この型は「前期型 B」とほとんど同一ですが、そちらは不要となった軸受穴を金具で埋めていたのを、この型では始めから開けないようにしています。

 思うに、前の型の「前期型 B」は、「前期型 A」の仕掛品の残りを流用した産物だったのかもしれません。三脚台座が「前期型 A」と同じく駆動ダイヤル軸が両持ち式なのも、「仕掛品」が残っていたのを使用しただけなのかもしれません。そのため、これが片持ち式になった個体も 「前期型 C」の中に存在する可能性があります。もし発見されれば、さらに細分類する必要がありそうです。

 亭主はこの個体を2015年2月に発掘しました。恐らく1ロットぐらいしか作られなかったのではないかと考えられます。他には2016年6月にネットオークションに登場しているのも見ました。

 余談ですが、海外のネット上に登場するのはこの「前期型 C」からで、その前の型はまだ見たことがありません。なので、それらは輸出には供されなかったのかもしれません。

 

 なお、「前期型 B」が「前期型 A」の仕掛品を使って製造したのだとすると、「前期型 A」と「前期型 B」の間に、もう一つ型が存在した可能性があります。「前期型 A」と「前期型 B」とではカメラ台座の形状が異なっているからです。「前期型 B」以降と同じ形状のカメラ台座で、駆動ダイヤル軸が両持ち式のものが存在した可能性が考えられるのです。

●中期型

 この「中期型」はレンズ台座マウント金具の取付方法が変更となり、台座側面で上・左・右3か所の芋ビスにより押さえ付けてマウント金具を固定するようにしています。 このことでネジ溝の入り始め位置を調整できますから、製造能率、組立精度を高められる変更です。

 また、三脚台座の駆動ダイヤル軸も片持ち軸受式となりました。これらにより、各調整機能については完成を見たと言えるでしょう。

 さらに、「前期型」にはあった角レール前端4mmネジ穴の緩み止めも廃止しています。

 この型も中古市場で殆んど見かけなくなっています。すぐに次の「後期型」になったので製造数が少なかったものと思われます。ダイヤル意匠以外の機能としては「後期型」とまったく同等です。各ダイヤルの製造には機械加工など手間がかかったので、次の型から変更したのでしょう。

 この個体の発掘は蒐集の初期の段階で、後期型個体との違いが「AUTOBELLOWS」における諸変異型の存在を亭主に意識させるものとなった記念碑的存在です。

 

 ところで、この型の個体の中に、「カメラ台座」だけを「前期型 A」のための台座の軸受穴をメッキ金具で埋めている個体(つまり「前期型 B」)も存在しています。このことは、型式変更後に残っていた前型の仕掛品を有効利用していることが推定される事象です。

 ただし、これは後の時代に、ユーザーなどにより「二個一」がされたことを否定できません。しかし、必ずしも故意にという事ではなく、購入時期の異なる複数を同時運用していた事業所などでは、整備時に混合が生じることが想像できます。このことは単に角レールからカメラ台座(蛇腹が付いている。)を外して取り換えるだけで成立することですから、この可能性の方が高いかも…

●後期型

 駆動用ダイヤルの形状がそれまでの機械切削による細かなローレットから、精密ダイキャストで出来る荒いブロックパターンに変更となっています。

 なお、このダイヤル形状は、以後、最終型である4代目まで続きました。

 この型が歴代機種12種類の中で最も数多く製造されたものと思われます。現在、中古市場に出現する頻度も高く、取引価格も低くなっています。

 この「Sマウント」の初代も、カメラ台座のマウント金具に「マウントアダプターK」を取り付ければ「Kマウントカメラ」で使えます。他社のマウントでもほとんどのものにM42マウント対応のマウントアダプターが存在しますから、これらを利用することで、ほとんどの現役のデジタル一眼で「AUTO BELLOWS」として使うことが可能なのです。

 「Sマウント」や「M42マウント」の交換レンズはまだ中古市場において豊富に、しかも極めて安価で流通しています。これらを愉しむ母艦としての役割は大きいものであると言えます。

 また、「M42-L39マウントアダプター」をレンズ台座に装着することで、豊富にある「引き伸ばしレンズ」を撮影用に流用することが可能です。それらは接写の性能がどれも高いので、利用価値は大きいと言えます。焦点距離105mm以上 のものなら無限遠も出せます。

 

 このSマウント時代には、Sマウントのベローズ用バレルレンズ「Bellows-Takumar 1:4/100」を販売していたのですが、これは絞り環が2列のプリセット絞りのもので、ベローズ装置に搭載したAUTO機能を使えるものではありませんでした。焦点距離は100mmで、3群5枚ヘリヤー型1:4の明るさであり、絞り羽根は8枚というものでした。このバレルレンズは「AUTO BELLOWS」誕生以前に上梓されたと思われますが、Sマウントの間は自動絞り化されませんでした。従って、AUTO機能を使うのは標準レンズなどを接写で使う場合などに限られていました。

2代目 「AUTO BELLOWS K」

 旭光学工業PENTAXが1975年にレンズマウントをM42・P=1ネジ式の 「Sマウント」から3本外爪バヨネット式の「Kマウント」に変更すると、当然「AUTO BELLOWS」のマウントも「Kマウント」に変更しました。Kマウントカメラ初代のKシリーズカメラはすぐにMシリーズカメラに代替されたので、この「2代目」である「AUTO BELLOWS K」の製造期間は短かったと考えられるのですが、その短い中でも大きな変更が行われて、前期・中期・後期という三つの型が存在します。

 なお、その次の「3代目」の誕生時期が1978年7月という可能性が出ていますので、それが正しいとすると、製造期間は約3年間ということになります。

 「Sマウント」のものと大きく異なっている点は、マウント以外では蛇腹先端金具とレンズ台座を連結する部分です。「Kマウント」のものは蛇腹端金具にある「つまみネジ装置」でレンズ台座後端のリング(52mmフィルター径 ・外径54mm)を押さえ付けて連結するようになっています。リバース取付時に52mmフィルター径のレンズ先端を連結するのにもこれを兼用する仕組みで、コストのかかる「つまみネジ装置」を先代より1個省略することで合理化を行っている優れた改良です。

●前期型

 

 ダブルレリーズをレンズ台座に取り付ける部分が「初代」と同じなのが「2代目」の中でのこの「前期型」の特徴です。SマウントのTakumarレンズ群と違って、Kマウント 交換レンズには手動絞りへの切替機構が設けてないために、ダブルレリーズを使用しないと絞り開放でしか使えないという欠点を持っていました。この型の製造も少数だったと思われます。

 なお、このKマウント化後のものは、角レール両端の円盤ボルト表面の仕上げが、それまでの梨地から、中心のある磨き仕上げへと変更されています。

 この時には販売価格が\21,000になっています。

 この個体が2代目「AUTOBELLOWS K」としては最初の入手でした。当時既に入手していた3代目「AUTOBELLOWS M」との違いの多さに驚いたものです。

・む

●中期型

 「ダブルレリーズ」をレンズ台座に取り付ける部分が自動と手動の切替式になりました。これは交換レンズ本体に自動と手動の切替装置が無いKマウント交換レンズには必要な機能なのです。これで基本性能は完成に近付きました。

●後期型

 この型からレンズ台座右脇にオプション部品のための台座が設けられこと以外に、レンズ台座背面の連結金具を捻じ込み式「リング」(ステップアップリング52-49)に変更したことがこの「後期型」の大きな特徴です。これにより、49mm鏡胴の交換レンズの場合、その「リング」を外して交換レンズ先端に捻じ込むことで「レンズ逆付け」が出来るようにしました。これは来るべき「Mシリーズ」レンズのために行われた改良だとも考えられます。

 なお、上画像は角レールの向きが前後逆に取り付けられています。正しい向きは赤い点が右前にならなくてはいけません。

 「3代目 M 前期型」の発売が1978年のことという可能性が出ていますので、この型が生まれたのはMシリーズレンズ群の発足時期である1977年のことかもしれません。

 ところで、この「後期型」から設けられたレンズ台座右脇の「オプション部品台座」に取り付けるべき品とは、商品化が企画されはしたものの、結局、上梓されることがありませんでした。つまり、この台座は使われることのない無用な機能となってしまったのです。いったい旭光学工業PENTAXがそこに何を取り付ける予定だったのか、同社は黙して語らずという姿勢を維持していますが、その実像についてあれこれ忖度するのも愉しみのひとつかも…

 当時の販売価格は\22,000でした。

 ところで、亭主が妄想して制作したオプション部品は「ダブルレリーズ」のための「置場」なのですが、本当のところはストロボ等の照明灯具用「アクセサリー・シュー」の取付を予定していたのかもしれません。 しかしこれは、接写にはより用途が向いている「リングライト」が開発されたために製品化されなかったのかもしれません。

 この「2代目 K」からは、蛇腹端金具のつまみネジ装置は52mm径鏡胴を保持するサイズとなったので、これを利用して52mm径フィルター枠を取り付けた「52mmリバースアダプターK」を取り付けることで、そこにKマウントカメラを取り付けることができます。カメラ台座にはマウント金具を取り付ける穴に「接写リングS」から取り外したレンズ側Sマウント部分(外径48mm)を取り付けることが出来ることから、この組み合わせで自在完璧な「あおり装置」を組み立てることが可能です。

3代目 「AUTO BELLOWS M」

 Kマウント初代であるKシリーズカメラは短命で、その登場の約1年後の1976年にはコンパクトを指向したMシリーズカメラが発売されています。このMシリーズは大人気となり、 それは1983年にシャッター速度優先AEやプログラムAEの可能なAシリーズカメラが登場するまで製造されました。そのための「AUTO BELLOWS」として上梓されたのがこの型です。約7年の製造期間と考えられますから、Kマウントの中では残存個体数が最も多いものと思われます。

 この時期は「スライド・コピア」の使用も多かったようで、角レール前端の円盤ボルトが欠損している中古品が多くなっています。入手にあたっての注意点でしょう。

●前期型

 ネームプレート表記以外は「2代目」の「後期型」と同等機能です。些細なことですが、唯一違うのは角レールにラック・ギヤを取り付けるビス頭 などがプラスになったことです。

 なお、このビス頭の変更がこの型の当初から行われたのか、先代の2代目「後期型」の途中で行われたのか、まだ不明な点です。

 カメラ台座のマウント金具も、まだ非防水型(ロックピン受穴がU字形)です。2014年7月にこの個体を発掘するまでは、この型は存在していないと考えていました。

 しかし、「後期型」との違いは取り外せるカメラ台座マウント金具の違いだけですから、後世にそれを2代目のものと交換している可能性は残ります。更なる発見・発掘による検証が待たれるところです。

 ところが、その後(2014年8月)、U字形のロックピン受穴である非防水型マウント金具を装備した個体の画像を見ましたので、この型の存在が補強されました。その品も「前期型」の特徴と亭主が考える、角レール両端の円盤ボルト周囲のローレットが粗いものでした。

 さらに、2014年9月にU字形のロックピン受穴である非防水型マウント金具を装備した個体を含むセットを元箱付きで入手しました。これにはダブルレリーズ後期型がバンドルされていて、元箱にもそれであることを示すシールを貼付しています。また、 同梱の「1978年7月印刷」の使用説明書には、ダブルレリーズ後期型の使用方法を書いた紙が挟み込まれています。つまり、この「3代目後期型」の途中から「ダブルレリーズ後期型」はバンドルされるようになったということです。

 この型の存在を発見するまでは、Mシリーズカメラ発足後も、1980年までは2代目「K」後期型の製造が継続していたと考えていましたが、そうではなかったようです。このことで、 かえって2代目「AUTO BELLOWS K」の、短期間における変更の頻繁さが際立つことが分かりました。まさに、走りながら改良を加えていたことが窺い知れます。もしかすると製造ロットごとに変更していたのかもしれません。

●後期型

 「前期型」と違う点は、カメラ台座のマウント金具が防水型(ロックピン受穴が楕円形)になっていることです。

 また、角レール両端の円盤ボルト周囲のローレットが細かいものになっています。この二点が「後期型」の特徴です。

 なお、この防水型マウント金具に変えた理由は、当時上梓された最高級機「LX」の防塵・防滴性能を補完するためと思われます。つまり、この変更を行ったのは「Mシリーズ」開始後暫くしてからの1980年のこと と推定出来ます。

 この時代の価格は\23,500でした。

4代目 「AUTO BELLOWS A」

 名称からするとマウント面に電気接点の付いたプログラムAE可能な「Aシリーズカメラ」の対応型である「KAマウント」かと思われるかもしれませんが、その機能はまったく搭載されていません。単なる「Kマウント」のままです。この名称は単に製造時期を示すものでしかありません。

●前期型

 ネームプレート表記以外は3代目「AUTO BELLOWS M」後期型とまったく同一機能です。しかし、そのネームプレートからは「ASAHI」の文字が消えました。内容の変更を伴わず名称だけを変えたのは、単にこのネームプレートから「ASAHI」の表記を消すためだけだったのではないかと亭主は推定しています。その根拠は、いまだに「Mシリーズ」の名称のままのアクセサリーが存在することによります。

 伝統の「ASAHI」を消したのは会社名を「旭光学工業」から「ペンタックス」に変えたためですが、それは軽佻浮薄以外のなにものでもない「コーポレート・アイデンティテイ」なる悪しき西洋かぶれの下らぬ風潮に押し流された至極愚劣な選択だと、顰蹙の感頻りなり…

 仕上げ及び機能が最高に洗練されたこの「4代目前期型」と「3代目 M 後期型」とが、歴代「AUTO BELLOWS」の最高峰と位置付けて良いのではないかと考えています。

●後期型

 この型は「初代」以来の表面仕上げ(結晶塗装)を変更して、ただの艶消し(梨地)塗装に「改悪」しています。同時に角レールの断面寸法をほんの少し小さくしています。このため、従前の型との部品の互換性が大きく損なわれました。コスト削減のためなのでしょうが、残念ながらシリーズの「蛇尾」となったモデルというわけです。しかし、それにしても、角レールの断面寸法を変更した意図がまったく理解できない…

 また、角レール両端の円盤ボルト周囲のローレットが粗いものに戻されています。

 これは既にAFカメラ時代になってから変更された機種で、「AUTO BELLOWS」というものに対するニーズが少なくなっていたために製造数は少ないと思われます。平成になってからも販売されていましたが、そのときまだ販売されていた長命な名機「LX」のユーザーぐらいしか購入しなかったと考えられます。

歴代「AUTOBELLOWS」変異一覧表

 

機器銘

駆動用ダイヤル

形状

駆動ダイヤル

軸受け

軸受穴

レンズ台座

マウント金具

取付法

ダブルレリーズ

取付部

オプション

台座

ロックピン

受け穴

表面

塗装

角レール

ラックギヤ

止めビス

 

初代AUTOBELLOWS

前期型 A

単純ローレット

両持ち式

軸受あり

マウント面

4本ビス止め

自動のみ

単純ネジ

無し

-

結晶

塗装

マイナス頭

 

前期型 B

三脚台座のみ両持ち式

他は片持ち式

金具で穴埋め

 

前期型 C

開けていない

 

中期型

片持ち式

レンズ台座側面

3本芋ビス押さえ

 

後期型

ブロックパターン

 

2代目AUTOBELLOWS K

前期型

Kマウント

マウント面

6本ビス止め

開放

U字型

 

中期型

自動・手動

切替装置付

 

後期型

有り

 

3代目AUTOBELLOWS M

前期型

プラス頭

 

後期型

防滴型

楕円形

 

4代目AUTOBELLOWS A

前期型

 

後期型

梨地

塗装

 

                 

 

 

ダブルレリーズ

 PENTAXの「AUTO BELLOWS」を「AUTO」たらしめる非常に重要な付属品として「ダブルレリーズ」があります。これ無くしては「AUTO BELLOWS」と名乗るのが憚られるほどの重要な存在なのです。

 しかし、後年、電気による作動が主力となったカメラではシャッターボタンを単なる電気押しボタンスイッチとしてしまい、そこにケーブルレリーズを捻じ込めないようになると、このダブルレリーズの価値が失われてしまいました。連続する動作としての「AUTO」が出来なくなってしまったのです。これは極めて不埒千万なことなり…

 ところで、そのシャッターボタンにケーブルレリーズを捻じ込めなくなったカメラでは、「遠隔操作」するためには電気的なコードをプラグでカメラと連結して、そのコードの先端に設けたスイッチによって行うようになりました。そこで、この仕組みを利用することにより、ダブルレリーズを元のように正しく使えるようにすることが可能となります。残念ながら、PENTAXはそのための対応部品を上梓しませんでした。不平不満やるかたなし…

 しかし、ニコン、キヤノンなど数社が対応アダプターを上梓したので、これらを流用改造することで目的を達することが可能です。特にキヤノンの製品は、適合するプラグへと交換することで容易に 多くのカメラ用に改造が可能な構造なので、超お薦めです。しかし、この品も生憎既にディスコンになっているので、販売店の在庫か中古市場からの調達しか方法が無いのが難点ですが…

 なお、既存PENTAX製スイッチ装置「ケーブルスイッチ F」の改造により目的を達成する方法もあります。他には、マイクロスイッチなどの利用により新規に製造する方法もあります。電気工作好きならそれもよし…

 このダブルレリーズにも、「前期型」と「後期型」が存在します。

●前期型

 ダブルレリーズに必要な時差作動が不完全なシロモノですが、一応、支障なく作動させることが可能です。ハンドル部が小さくて、操作性は今一です。握って操作するのではなく、ハンドル突起部を人差し指と中指で挟んで保持することを予定している構造のようです。Canonがそうしたように、ライカの同等製品形状を模倣したとも見えます。

 なお、この前期型の難点として、2本のケーブルアウターの外部素材が軟質透明塩化ビニールなので、これが経時による劣化によって柔軟性が失われ、特に冬季においては硬化して、両端の金具から外れるという障害が頻発しています。これが外れると内層の金属網線だけでは強度を保てないので破損に繋がってしまいます。

●後期型

 この後期型がバンドルされたのは「3代目 M 前期型」の途中(1978年)からです。その根拠は、ネット上のバンドルされているセット画像等によると、「3代目 M 前期型」には前期型のものが存在し、亭主の所有する「3代目 M 前期型」セットには後期型がバンドルされているからです。

 前期型では不完全であった時差作動ですが、これでは完全なものに改良しています。この後期型は写真用品商社「U・N」による販売の外にも、ヤシカなどカメラ他社にもOEM提供されていま した。

 なお、この後期型にも二つのバリエーションが存在しています。2本のケーブルの両方の先端部にアジャスターが付いているものと、シャッター側には付いていないものが存在します。両者は絞り駆動側の形状も異なっています。最も初期のものと考えられるセットのバンドル品は1本だけのものですから、2本共にアジャスターのあるものの方が後期のものと考えられます。1本だけのものを「後期型 A」、2本のものを「後期型 B」とすべきなのでしょうか…

  ダブルレリーズは、ニコンやキヤノン、マミヤなど他社の製品でも流用が可能ですが、オリンパスのは「同時作動式」なので使えません。必ず「時差作動式」のものを選ばねばなりません。

スライド・コピア

 ベローズ装置の大きな用途として、ポジフィルムを複製する用途がありました。そのために使う部品がこれです。フィルムマウントを上下にずらせますので、トリミング複写も可能です。

 今日、フィルムからデジタルデータへの変換に使う用途が生まれていますので、一つは持つべきものとなっています。光源にはスレーブ発光のストロボを使う方法が良さそうです。

 左右のロールフィルム受皿は、ビスを緩めて上にずらすことで取り外せます。マウントされたポジやカットフィルムのネガから複写するのには不要なものですから、外して使うのが常態…

 交換レンズを取り付ける部分は内径が52mm鏡胴用ですが、「49-52ステップアップリング」が付属していました。これにより、49mm鏡胴となったMシリーズレンズでの使用に対応したのです。

リバースアダプター

 

 交換レンズを前後逆に取り付けるためのアダプターです。基本的に「AUTO BELLOWS」には不要なものですが、色々と遊ぶために役立つものでもあります。

 「Sマウント」のものと、「Kマウント」のものとが存在します。上右画像の既に販売されていない「Sマウント」は49mm用のみですが、「Kマウント」のものには52mm用と49mm用が存在します。

マウントアダプター

 

 「Sマウント」の「AUTO BELLOWS」を「Kマウント」カメラで使用するために必要です。純正の「マウントアダプターK」にはロック用のストッパー・バネが小ビスで取り付けてありますが、これを右上画像のように外すことで、「AUTO BELLOWS」に付けっ放しでの運用が可能になります。

 2代目以降のKマウントにSマウントやM42マウントの交換レンズを取り付けるためにも必要な品です。

 社外品にはフランジ付きのものがあり、これを利用することも可能ですが、「AUTO BELLOWS」の最小光路では「Bellows-Takumar 1:4/100」及び「Super-Multi-Bellows TAKUMAR 1:4/100」の使用時に無限遠が出せなくなります。

 M39・P=1近似である「ライカLマウント」の「引伸ばしレンズ」を使うためのマウントアダプターも、純正の「Aリング」以外にも、市販品が存在します。

 

 右下の品はフランジが無いため、最短光路を稼ぎたいときに便利です。

レリーズアダプター

 上記したように「AUTO BELLOWS」の自動絞り機能を使うためには「ダブルレリーズ」を使用することが必要なのですが、それをシャッターボタンに取り付けることが出来る現役カメラは存在しなくなりました。しかし、それら今時のカメラは「遠隔操作」を電線で繋ぐ電気的な「スイッチ」によって行いますから、ケーブルレリーズの押す 機械的動作をこの電気的「スイッチ」の機能に「変換」する機器を経由することで「ダブルレリーズ」を使えるようにすることができるということになります。

 生憎、旭光学工業PENTAXは電気スイッチ化したシャッターボタンに対応する品を製造・販売しなかったので、不本意ながら下の画像のように他社の製品を改造するか、それでもあくまでPENTAXに拘りたいなら、純正「ケーブルスイッチF」を改造する方法が簡便です。生憎「ケーブルスイッチF」はプラグが現役デジタル一眼レフとは異なっていてそのままでは使えませんから、この改造を施すことで優れた製品の寿命を永らえさせるのも功徳かと…

 なお、「ケーブルスイッチF」には前期型と後期型が存在していて、後期型は内部の空間が小さくなっているために、この改造にはあまり向きません。亭主が使用した前期型を選んだ方が楽です。その前期型と後期型の外見上の違いは、組立ビス3本の表面仕上げだけです。前期型はクロームメッキ、後期型は黒色皮膜です。

 いずれの改造も半田付けの道具と技能が必要です。それさえ用意できれば簡単な工作でしょう。

 

 

※ Canon製変換器「ケーブルレリーズアダプターT3」を使用した改造例。プラグを3.5mm径「ステレオ・ミニ」に付け変えています。市販の2.5mm径「ステレオ・ミニ・ミニ」プラグは、「ケーブルレリーズアダプターT3」のコードが太いために取り付け不能です。

 なお、上左の画像にある3本の電線の「ステレオ・ミニ」プラグへの取付ですが、「赤線」は先端電極へ、「白線」は中間電極へ、「銅色シールド線」は基部電極へハンダ付けします。

 

 

※ 「ケーブルスイッチF」前期型を使用した改造例その1。

 この改造は押しボタンを単に「ケーブルジョイント」に置き換えています。ケーブルジョイントを捻じ込んでいる木造の下駄が改造の 「肝」であり、全てです。加工が容易な桐材で作り、エポキシ接着剤で周囲を強化しています。材料は菓子箱を解体して利用しました。少し小さな穴を開けて、そこに木ネジのようにケーブルジョイントを捻じ込んで取り付けています。強度はこれで十分です。不安なら接着剤を併用しても良いでしょう。プラグも3.5mm径「ステレオ・ミニ」に付け変えています。この方法なら後期型でも工夫次第で可能でしょう。

 上左画像に写っている電線の役割ですが、向こう側上半押しが「青線」、下全押しが「赤線」、手前側「黒線」は上下の端子に連結します。プラグへの接続は、先端部端子が全押しの 「赤線」、中間端子が半押しの「青線」、基部端子がアースの「黒線」となります。

 

 

※ 「ケーブルスイッチF」前期型を使用した改造例その2。

 押しボタンを、昔のカメラ「ME super」から取り外したシャッターボタンに置き換えています。白く見えるのは、 取り付ける場所への太さを調整するためにシヤッターボタンに巻いたビニールテープです。この方法は、後期型ではおそらく不可能です。また、「改造例その1」と違って、これの場合はコンパクトにするために外殻ケースの切断短縮加工を行ってい ます。この改造は「改造例その1」でも可能です。プラグも3.5mm径「ステレオ・ミニ」に付け変えています。

 ここで、今時の電気的なスイッチの仕組みについて少し触れておきます。シャッターボタン「半押し」と「全押し」という機能を実現するために、3つの電極によって電流を制御しています。シャッターボタンを半分押し込むことでまず2つの電極が接触し、完全に押し込むことで3つの電極すべてが接触する仕組みです。半分押し込むことで露出機構やAFが働き、完全に押し込むことで、それに加えてシャッターが作動するのです。このことから、このスイッチは「半押し」と「全押し」を切り替えるということではなく、正確には「一部機能」から「全部機能」への移行という働きをすることになります。

 なお、「ケーブルスイッチF」など一部の機種は、マイクロスイッチを2個あるいはその複合のものを使用しています。全押しと半押しを別のスイッチの断接によって実現しています。

 今日の遠隔操作機器に一般的に使用されている電線は、2芯の周囲を網線で包んだシールド線という構造のものです。カメラで使っている電流は直流ですから、2芯が「行き」とすると、シールド線は「戻り」ということになります。2芯のうちの1本が半押し機能を担い、他の1本が全押しのシャッター機能を担うということになります。

 ところで、PENTAXデジタル一眼レフのケーブルスイッチプラグ2.5mm径「ステレオ・ミニ・ミニ」における3つの電極の役割ですが、先端部はシャッターボタン全押しです。中間部はシャッターボタン半押しで、基部は戻り機能です。上記変換器のプラグを付け替えるときには、3本の電線の導通をテスターで調べながら行う必要があります。ダブルレリーズを取り付けて作動・不作動の状態のときの導通・絶縁により判断し、プラグの電極にハンダ付けします。

 亭主が「改造」のひとつに使用した上の写真にあるCanon製変換器「ケーブルレリーズアダプターT3」もすでに製造されなくなっていますから、カメラ店の在庫品か中古市場から調達するしかないようです。今や遅疑逡巡することなく迅速果敢な行動が必要になっているのです。

 なお、上記したようにCanon製変換器「ケーブルレリーズアダプターT3」は電線が太いので、PENTAXのデジタル一眼レフに使う市販の2.5mm径「ステレオ・ミニ・ミニ」プラグを直接取り付けるのは不可能です。そこで亭主は、上画像のように一旦3.5mm径「ステレオ・ミニ」プラグを取り付けて、これに「ステレオ・ミニ・ミニ」変換ブロックを併用しています。

 また亭主はこの3.5mm径「ステレオ・ミニ」プラグをメーカーや機種ごとに異なるプラグ変換用に統一しています。これを介することでどのメーカーの「ケーブルスイッチ」も利用することが出来るように しているのです。畢竟、「互換性」というのは亭主が最も好きな言葉なのです。

オートベローズで無限遠の来るPENTAX純正交換レンズ

 Universal-Takumar 1:4/100  ……初期に極少数製造された。

 Bellows-Takumar 1:4/100

 Super-Multi-Coated BELLOWS-TAKUMAR 1:4/100

 SMC PENTAX BELLOWS 1:4/100  ……Kマウント

 smc PENTAX BELLOWS 1:4 100mm  ……Kマウント

 なお、1964年9月作成の「BELLOWS U」使用説明書に、無限遠まで来るレンズとして「ベローズ・ペンタックス100mmF4」という名称が乗っています。これが実在したのか、単に「Universal-Takumar 1:4/100」の企画時仮称だったのか、謎として残っています。

互換可能な蛇腹(2014/10までに確認したもの)

断面幅 62.5mm   「PENTAX AUTO BELLOWS」 「PENTAX AUTO BELLOWS K〜A」 「Minolta BELLOWS U」 「Minolta BELLOWS V」

断面幅 63mm    「KONICA AUTO BELLOWS」 「FUJICA AUTO BELLOWS」 「CONTAX AUTO BELLOWS PC」  「NIKON PB-6」

<番外編その1> 鳴かぬなら鳴かせて見せふ時鳥…

 「システムカメラ」の重要な要件として、歴代機種間のアクセサリーにおける「互換性」というものがある、というのが亭主の確固たる持論です。このオートベローズの場合、カメラのAF化以降、特にデジタル一眼レフになってから、その 「互換性」というものが少々なおざりにされている品の一つです。既に製造販売が終了して久しい品ですから致し方の無いことなのかもしれませんが、ほんの少しの設計の配慮で回避できることなら、その互換性を可能な限り維持してもらいたいものだと思っています。それが企業文化の香しさ、豊かさの証であるとさえ思っています。これは、「互換性」を愚直なほどに大切にしてきた「PENTAX」にだからこそ要望することです。Canonなどのように、既存ユーザーに後ろ足で砂をかけるような身勝手企業には望むべくもないことなので…

 その互換性阻害の実例ですが、PENTAXデジタル一眼レフ初代の「*istD」の場合、肝心な横位置で取り付けることができません。カメラ台座とカメラ下部が約1oほど干渉するからです。接写リングの下駄をはかせるなどの弊害もある小手先の対策を嫌った亭主は、カメラ台座の干渉する部分を切削加工することで、その干渉を回避しています。縦位置なら改造しなくとも支障なく取り付けることが出来て、しかも、フィルムカメラ時代には望むべくも無かったレールとの干渉回避も実現しているので、これは誠に残念なことです。

 それが「K10D」や「K20D」になると、カメラ台座との干渉は、カメラ側マウント周辺の設計が適切だったことによって見事に回避されています。これは、当時、亭主などオートベローズ溺愛家のネット上での「苦言」が届いた結果なのかもしれません。縦位置でも横位置でも、オートベローズに何ら改造を加えることなく取り付けることができます。

 ただし、カメラ全体が大きくなったことで、縦位置ではカメラ左側がレールと干渉するようになり、カメラ台座をレール端付近に置いてしか使えず、カメラ側を前後させることでフォーカスする技法が使えなくなりました。この問題は、元々フィルムカメラ時代からあることで、そもそも「オートベローズ」自体が強度を重視してコンパクトに作られていることから起因する誕生当初からの問題なのですが、他社のオートベローズにあるようにレンズ台座、カメラ台座が大型の場合には、可動部の「あそび」による誤差が拡大する弊害があるので、どちらを選択するかという問題ではありますが…

 ところが「K-7」になると、さすがに横位置は支障なく取り付けることができるものの、縦位置の方は、カメラのAF・MF切り換えスイッチとカメラ台座が干渉して、完全な縦位置に取り付けることができないという「失態」が生じています。少し斜めの位置までしか取り付けることができないのです。その少し傾斜した分だけ雲台を傾けることで正しい縦位置にすることはできるので、縦位置撮影がまったく不可能ということではないのですが、カメラだけを付け直すことで縦横の撮影を連続して継続するということが出来ないので、操作性としては著しく劣ってしまいます。書籍の複写などの複写台を使った縦位置撮影には大きな支障となります。これは回避不可能と言えるような部分ではありませんから、設計時にチェックが漏れたのだとしか考えられません。寂しいことですが、PENTAX設計者の中でもオートベローズの存在が忘れられつつあるのだと思わざるをえません。

 この「障害」をオートベローズ側で回避するためには、先に「*istD」のために切削したカメラ台座を、さらに斜めに切削しなければなりません。これをすることで見事干渉を回避して正しく装着できるようになります。幸い、その部分に切削の余地はまだ十分にあるので、「K-7」 〜「K-3」を使う限り、この改造は必要不可欠なことです。

 なお、「K-7」はカメラが小型になったことにより、カメラ台座に下左画像の改造を加えることで、下右画像のように縦位置でもレールに干渉しなくなりました。これはフィルムカメラ時代には実現できなかったことなので、本当に素晴らしいことです。

 「K-5」シリーズが発売されましたが、「K-7」の機体は流用されたので、縦位置干渉問題は解決していません。 その次の「K-3」においても同様です。やはり、オートベローズ・カメラ台座の改造が必要なのです。良く切れるヤスリを用いれば、半刻もかからない工作時間で改造が可能ですから、愛好者は是非にも行うべきです。

 亭主が勇躍敢然と行ったこの改造により、この「オートベローズM」は、フィルムカメラで出来ていたことのすべてが行える「至高」の存在となりました。さらに、「*istD」と「K-7」、「K-5」 シリーズ、「K-3」であるのならば、縦位置での角レール上のカメラ移動も自在という、これはフィルムカメラ時代では不可能だったことも可能になるという素晴らしさです。 ああ、「織田信長」もいいもんだ…

 

 

 

追記: 2016年4月に35mmフルサイズデジタル一眼レフ「PENTAX K-1」が上梓されましたが、これは機体がマウント下部方向に大きくなったことで「AUTO BELLOWS」には取り付けることが出来なくなりました。 取り付けるためには、上記切削を更に大きく行わねばならなくなったのです。

 

  

 

 駆動ダイヤルの軸受け付近にまで削る必要があるため強度的に少し心配ですが、何とかギリギリのところで可能でした。U字型断面にえぐる方が体裁は良いと思いますが、素人がヤスリ1本で行う作業性では段付きに削るのが現実的です。

 なお、カメラ台座を前後させてフォーカスする方法が、この改造によって縦位置でもギリギリで可能です。このことから、上記「切削法」を行うだけのメリットはあります。

 しかし、これ以上機体が大きくなると、もう改造には堪えられなくなりそうです。

 ところで、切削にあたっては、削り滓が大量に出ますから、汚さないために蛇腹と駆動軸はあらかじめ外して作業した方が良いと思います。ヤスリ作業中に駆動ダイヤルが邪魔にもなります。それが出来るくらいのスキルがないと、この改造は難しいかも…

<番外編その2> 初代オートベローズ(Sマウント)でも、Kマウントレンズが使えるんです…

 初代オートベローズは、国際標準M42マウント互換であることから、少なくとも国産のデジタル一眼カメラのすべて(中判は除く。)で使えるという汎用性を誇っていますが、亭主として唯一不満な点は、肝心の本家 「Kマウント」レンズが正向きでは使えないということです。「リバースリングライトホルダーK」と「リバースアダプターS」を下の写真のように組み合わせて、それをレンズ台座前面に取り付ければ正向き取り付けは可能なのですが、その厚みの分だけレンズが繰り出されることになるので、無限遠付近の撮影ができません。

 

 ところが、上記「リバースリングライトホルダーK」と「52-55ステップアップリング」を使うだけで、下の写真のように 、「Kマウント」の「smc PENTAX BELLOWS 1:4/100」を無限遠も来るように装着できるのです。「リバースリングライトホルダーK」は49mmフィルター用なので、蛇腹端金具にそれだけで装着できることから、レンズの先端に「52-55ステップアップリング」を装着することで、レンズ台座背面の「つまみネジ装置」で固定出来るのです。

 なお、このような使い方の場合、レンズフードが、PLフィルターが使えないじゃないかと突っ込みを入れられそうですが、心配ご無用、純正のオート接写リングbPから雌マウントを抜き取った跡に46mmフィルター枠を挿入すれば、これと46-49ステップアップリングと組み合わせることで、49o径フードも、フィルターも、リングライトも付けられます。

 この「挟み込み」テクニックを応用すると、焦点距離が短い「引き伸ばしレンズ」でも、無限遠が出せるものが増えます。 工夫次第で蛇腹内にマウントをオフセットさせることも可能だからです。

 また、「リバースリングライトホルダーK」と同じ機能を持つリング「BR-3」を現在も販売しているNikonのFマウントレンズを正向きに装着することも可能です。何度も言いますが、これはオートベローズだから出来る芸当で、他のベローズ装置では、こんなことは夢にも見られません。

<番外編その3> あおれないとなれば、それに焦れ憧れるは人の性…

  PENTAXの「オートベローズ」には、他社の製品の一部にはあるような「あおり装置」が設けてありません。これで究極至高の写真術である「あおり撮影」がしたいという欲求に応えるためには、何とか改造するしかないのです。その改造には様々な方法が考えられますが、素人の限られたスキルと道具で実現するためには、工夫と発想が大切です。手軽で「楽」であることを至上とする亭主の長年の粘り強い?構想・妄想の結果として、一つの簡便な成案を得たので紹介します。

 ベルボンの販売する製品で「SPT-1」という超スグレモノの望遠レンズサポート金具があります。これと組み合わせて「あおり撮影装置」を組み立てました。

 これにはオートベローズのレンズ台座は使わないのでレールから取り去り、逆向きにしたカメラ台座にM42レンズマウントを装着して、蛇腹端金具にはカメラマウントを装着します。これでカメラとレンズは別行動が可能です。

 これに使う部材としては、「SPT-1」のほかに、ベルボンの4シリーズ小型自由雲台、適当なクイックシューセット2組以上、純正「リバースアダプターK49o」、マルミの「52-49ステップダウンリング」、純正Sマウント「オート接写リング」から抜き取ったM42雌マウントです。

 この方法では、「Bellows-Takumar 1:4/100」を使うことで無限遠撮影もできます。同じく無限遠の出せる焦点距離の引伸ばしレンズを使うためには、「オアシス」の「M42-L39マウントアダプター」も使います。

 これに使うオートベローズは、通常2代目以降のものが必要です。純正Sマウント「オート接写リング」から抜き取ったM42雌マウントをカメラ台座にレンズマウントとして取り付けるためには、48o内径が必要だからです。初代は42o内径ですから、そのための更なる工夫が必要になります。

 これらの材料が揃えば、何の工作も加えることなく組み立てることができます。「あおり撮影装置」の自作としては、これ以上になくお手軽でしょう。

 なお、この装置の組み立てに用いる材料のうち、オートベローズとレンズ以外にも、今は新品で購入することができないものがあります。それは中古市場で調達するしかありませんから、オートベローズ愛好者は、それが比較的安価で容易に入手可能なうちに手に入れる努力が求められます。特に、純正Sマウント「オート接写リング」のセットは、M42マウント関係の改造素材として驚くほど有能なので、可能な限り数多く収集しておくことをお勧めします。

 上の写真の組み合わせだと「あおり」が少し窮屈です。角レールの下にもう1組クイックシューセットを追加するなどすれば自由度が増えます。厚さ20o程度の製品が向いているかも…

 なお、カメラ台座に取り付けるレンズですが、Kマウントのものにすることも、「リバースリングライトホルダーK」を利用すれば可能になります。純正Sマウント「オート接写リング」から抜き取ったM42雌マウントとリバースアダプターSとを組み合わせる方法と、46oフィルター枠と 「49-46ステップダウンリング」とを組み合わせる方法があります。光路を短くできるのは後者です。

 同様に、Nikonから販売されているFマウント用のリバースリングライトホルダーである「BR-3リング」を使えば、ベローズ用のNikkorが使用可能になります。この場合、46oフィルター枠と 「52-46ステップダウンリング」とを組み合わせます。

 カメラもNikonのFマウントにする場合は、リバースアダプターである「BR-2Aリング」と52oフィルター枠を組み合わせます。

<番外編その4> ひと捻りすると使い道も増えるんです…

 「初代」と「2代目」以降との違いの一つに、蛇腹端金具のつまみネジ装置があります。「初代」の内径が49oフィルター用の51oに対して、「2代目」以降が52oフィルター用の54oであるということ以外にも、つまみネジの位置が、「初代」の上部に対して「2代目」以降は右横であるということがあります。この右横になっていることで、うまいことに上記「あおり撮影装置」の改造において支障とならないのです。これが 「初代」のように上部にあると、カメラに取り付けるときにストロボの出っ張りと干渉してしまうのです。このような使い方をすることを前提とした位置の変更だとしたら、その設計者の凄さに感動するのですが、おそらくただの偶然か、「初代」のレンズ台座と蛇腹の連結つまみネジの位置が左横だったことと操作性を合わせただけなのでしょう。左右は逆転しているのですが…

 でも、このような使い方があると分かった以上、「初代」の位置は不平不満の種となります。「2代目」以降と同じようにはできないのでしょうか。そう考えると、亭主に寄生している工夫の虫が蠢き出します。

 その虫の知らせなのですが、蛇腹端金具自体は、4本のビスを外すことで蛇腹から外すことができます。蛇腹断面は正方形なので、蛇腹端金具を90度回して取り付け、そのことで右横につまみネジを移すことは容易です。しかし、それではレンズ台座の背面にある 「つまみネジ装置」と干渉してしまいます。元々は、それを避けるために「つまみネジ装置」上部に「逃げ」のU溝が入っているのです。たとえ首を幾度となく捻ってでも、これを解決する必要があるのです。

 虫というものは、虫の目でしつこく観察するので色々の事が見えるのです。レンズ台座背面の「つまみネジ装置」は円形で、90度の対角状に4本のビスで取り付けてあります。これを外してから90度回して付け直すことで、上記「逃げ」を右横に移すことが出来るのです。このちょっとした組換え改造を行うことで、「初代」でもレンズマウントのことさえ解決すれば、上記「あおり撮影装置」の素材として使えるようになるのです。

 その「初代」のカメラ台座にレンズマウントを装着する方法として、接写リングを利用することを「虫」が提案しています。それの雄ネジは外径42o弱ですから、これのP=1のネジ山分だけ研削して、その周囲に厚さ1o程度のアルミ板を巻き付けて接着すれば作れそうだと言っているのです。ヘリコイドの無いバレルレンズを取り付けるだけなので重量はそれほどかからないことから、エポキシ接着で十分な強度かと…アルミ板なら工作も容易ですし…いかにも怠惰な虫らしい「楽」そうな発想です。結構正攻法ですが…

 でも、色々とアダプターやリング類を弄り回しているうちに、「搦め手」攻略という発想も湧いてきました。カメラ台座に元々付いているM42雄マウントにM42雌マウントの長いものを捻じ込んでしまえば、M42雌マウント、つまりレンズを取り付けるマウントに出来るということです。これに気が付けば、亭主手持ちの改造マウントリングが「俺の出番だ」とその存在を主張します。

 Sマウントの「リバースリングライトホルダー」というものを亭主は自作しています。それは古い52oフィルター枠の中に純正Sマウントオート接写リングから抜き出したマウント雌部を接着しただけのものなのですが、これが2個あれば、そのフィルターネジで連結することで、目的のものは見事完成するのです。これで 「稲葉山城」はあえなく陥落…なので、亭主自作の件のアダプターは「堀尾茂助」と命名することに決定…

 ちなみに「堀尾茂助」というのは「堀尾吉晴」のことで、関ヶ原の勲功で出雲の月山富田城を得て、晩年松江城を築いた尾張出身秀吉配下の武将です。信長の美濃斎藤龍興攻めの時に、稲葉山城搦め手攻めの間道先導をしたことで世に出たという伝説があります。

 追記すると、この用途に使う場合、1個は純正Sマウントオート接写リングから抜き出したマウント雌部を「52-49ステップダウンリング 」の中に接着したものとする方が、装着する交換レンズやアダプターを選ばなくなります。マウント外径が大きくても支障がなくなるからです。でも、これは「リバースリングライトホルダー」としては、そのままでは使えませんが…

 それにしても、純正Sマウントオート接写リングの有能さには、開いた口がふさがらない…

<番外編その5> メンテナンスについて

 各台座のピニオン・ギヤは、ジュラコン樹脂で出来ています。レール上のラック・ギヤに硬い異物などが詰まっているとピニオン・ギヤを痛めてしまいますから、使用前のレール清掃は必要な作業です。

 初代前期型を除いて、ピニオン・ギヤは2か所の芋ビスを緩めることで、各台座から軸受とダイヤル共々外せますから、時々は外して清掃しましょう。 取付位置を変更することでギヤの出を調節できますから、ラック・ギヤとの噛み合いがきつかったり甘い場合は、これで調整します。

 ロック・ダイヤルの利きが悪い時は、ロック・ダイヤル両脇の芋ネジを締め込むと改善します。この内側には金属プレートが入っていて、ロック・ダイヤルでそれを押しつけることで白いプラスチックの摺動部品をレールに押し付けるのですが、ロック・ダイヤルは金属プレートの中央だけを押すので、それが反ることで押し付けが部分的になってロックが利き難くなることから、両側の芋ネジで金属プレートの両端を押し出すことによってその反りを少なくするのです。

 白いプラスチックの摺動面とレールの間に油分が入るとロックは利き難くなるので、時々外して無水エタノールで清掃しましょう。

 蛇腹は紙と粗目の補強布の合成で出来ているので、長期間の使用により折り目にピンホールが開いたり、裂けたりしてしまうことがあります。こうなった場合、交換用の補修部品としては流通していないので、既存のものから外して交換するしか現実的ではありません。新規に一品生産してもらうと\35K程度はかかるようです。これでは程度の良いものを中古市場から調達する方が安価です。そこで、他の製品から流用出来ないかと考え、いろいろと探ってみましたが、今分かっているのは、ミノルタSR用エクステンション・ベローズU及びVの蛇腹が同じ断面と山谷寸法なので流用が出来ます。こちらの方が山数が多いので、外す時に両端が傷んでも 、切り取って整えることが可能です。SR用エクステンション・ベローズU及びVはマウントが滅亡したためか、中古が比較的安価で流通していますので、今のうちに程度の良いものを確保しておくと良いかも しれません。これらも、ミラーレスがのさばってくると、案外高価になるやもしれず…

 また、CONTAXやKONICA、FUJICAのオートベローズに使われている蛇腹も、幅が若干広いものの、一山切り取ることで使えます。取り付けプレートの互換性は無いので、入れ替える必要があります。

<番外編その6> 連結という言葉は、使用の幅を広げるキーワード…

 2基のオートベローズを連結すると、より倍率の高い接写ができる以外にも、交換レンズを2個直列に配置することで、ケプラー望遠鏡とすることや 、顕微鏡とすることもできます。たとえば、前側のレンズをCCTV用のCSマウント短焦点超広角レンズとし、後ろ側のレンズでその実像を拡大すると、超パンフォーカスな画像を得ることも可能です。そのときには、2基を連結するアダプターが必要になります。

 等倍以上の拡大なので、後ろ側のレンズは逆付けするとして、レンズ台座背面と前側カメラ台座とを連結するためには、Kマウント同士のオートベローズなら、 「リバースリングライトホルダーK」と「49-52ステップアップリング」と、ケンコーが販売している「52oオス・オスリング」が必要になります。

 Sマウント同士なら、「リバースリングライトホルダーS」(自作)と「52-55ステップアップリング」が必要です。

 これが前が「Sマウント」で後ろが「Kマウント」なら、「リバースリングライトホルダーS」(自作)と「52oオス・オスリング 」の組み合わせです。前が「Kマウント」で後ろが「Sマウント」なら、「リバースリングライトホルダーK」と「49-55ステップアップリング」の組み合わせということになります。

 これら連結用アダプターは、ヘリコイド接写リングとの連結にも使える組み合わせです。

 CマウントやCSマウントの交換レンズを取り付けるためのアダプターは、BORG社からM42マウントへの変換アダプターが販売されているので、これが利用できます。

 なお、交換レンズを直列に配置して得られる像は、ファインダー内では倒立逆像となります。

<番外編その7> 更なる使い方の飛躍を目指して…

 2基のオートベローズを所有している場合、そのうちの1基の三脚台座にクイックプレートの台座を取り付ければ、角レールを利用したマクロスライダーが作れます。

 また、3基所有していれば、2本の角レールを90度交差させて接続することで、X軸・Y軸微動が可能な接写装置とすることができます。

 この成否は、雌ネジである三脚台座に同じく雌ネジであるクイックプレートの台座を取り付けるという点にあります。相互の雌ネジをボルトで結合するというのが発想としてはすぐに浮かぶのですが、所有するベルボンのクイックプレート台座にはボルト頭の入るスペースが無いので、それは容易ではありません。三脚台座を分解してそちら側から締め付けるというのも、やはりボルト頭の入るスペースがありません。困った…

 三脚台座とクイックプレート台座を接着してしまえば簡単に解決出来るのですが、互換性、汎用性を第一とする亭主としては、それは取りたくない方法です。強度的には頭を取った長ボルトでの結合を併用すれば問題がなさそうなので、回転を抑制するだけということで強力両面接着テープでの結合も案としては出ているのですが、三脚台座が分解できなくなってしまうので棄却です。メンテナンスが出来ない形にするのでは問題外……

 他の銘柄のクイックシューセットなら、解決可能な製品があるのかもしれません。拙速は戒め、気長に漁るとしますか…

 なお、分解したので、三脚台座の1/4吋雌ネジがコイルバネになっていることに気付きました。突き当りはそのバネが折れ曲がっていてストッパーになっており、ボルトがそこまで届くとそれが押されて、ネジ山全体でボルトを締め付けるという構造になっています。このような凝った作りのものは初めて見ました。恐るべし…

 短いプレートを用いる方法は試みました。一応成立はするのですが、取付位置が離れることでプレートのたわみによる微細なガタが生じてしまうので、採用には至らない…

 上下同じ位置にボルトが出る形の箱型プレートがあれば持って来いなのですが、そのような既製品は見つからないので、何とか作るしかないのかと…

 「KIRK」のアルカスタイルクランプに、皿頭ボルトで取り付けるタイプのものがあります。これを使えば、U1/4-20皿頭ボルトで三脚台座に取り付けることができます。このクランプの開口を横使いに取り付ければ、レール上で左右にカメラ位置を調整することが可能 になりますから、マクロスライダーとして一段と機能が向上します。

<番外編その8> デジボーグのカメラサポートとして

 デジボーグを行う場合、ドロチューブやヘリコイドがカメラの重みで撓むことで動きが渋くなるという問題があります。これの対策として色々と考案されていますが、オートベローズを改造することでその用途に使えるように出来ます。

<番外編その9> イメージサークル確認用器具として

 オートベローズK以降では、Kマウントレンズのイメージサークルを確認するための器具として使えます。カメラ台座部の穴径が48oであることから、46oフィルター枠が固定出来ます。これに46-49ステップアップリングを組み合わせて49oフィルターを取り付けることができます。

 49oフィルターは直径44.5oのピント板とすることが出来るので、これ以上のイメージサークルがあるレンズなら135フォーマットの対角画角43oを充足していることを確認できます。

 49oフィルターをピント板にするためには、ガラス表面にメンディングテープを貼ります。枠からガラスを外して作業すると楽です。

 APS-Cフォーマット用のDAレンズの中にも135フォーマットの対角画角をカバーするイメージサークルを有しているものがあります。この器具を用いれば、どれがそれであるのかを確認することができるのです。ちなみに、DA40mmF2.8LimitedとDA70mmF2.4Limited、DA☆200mmF2.8とDA☆300mmF4は、確実に135フォーマットでも使えます。

<番外編その10> 無用の長物を生かして使う

 2代目の「K」後期型から新設されたものに、レンズ台座右側面の3mm頭メッキビスとその下の3mmネジ穴があります。これは本来ここに取り付けるオプションを企画していたのですが、それが製品化されることが無かった存在です。したがって、製造コストを押し上げただけの無用の存在となってしまったのですが、折角設けてあるのですから、ユーザーとしては、これを使ってあげるのが功徳というものです。

 9mm間隔に3mmのビス頭と3mmネジ穴が並んでいるのですから、この間隔に3mm穴を開けた板を取り付けることが出来ます。その板を12mmから15mmの幅にすれば、ここに 「ダブルレリーズA」のハンドル部を下の写真右のように差し込むことが出来るのです。

 ピント合わせのときには、両手で各台座のダイヤルを操ることもあります。その時にダブルレリーズのハンドル部はケーブルでぶら下がった状態にするしかありません。これは何とも美しくありません。専用のホルダーがあれば、美しくセットしておくことが出来ます。

 ダブルレリーズAのハンドル部は、2本のケーブル基部が15mmほど凹んでいます。ここに板を差し込むことで、右下写真のように直立して保持できます。板は厚さ3mm以下のものならベニヤ板でもアクリル板でも何でも使えます。亭主は下左写真のように、1mm厚アルミ板を加工しました。鋸と、ヤスリと、ツイストドリルがあれば作れますから、このオプション用台座が設けられた「AUTO BELLOWS K」後期型以降のユーザーは功徳を積むべきときですぞ…

 

 なお、このオプション台座の用途ですが、アクセサリーシューの取付用だったのかもしれません。ここに照明器具を取り付ければ、接写用の光源として使えます。リングライトが開発される以前には、有効な方法だったかもしれません。このことを暗示する個体が存在していて、初代後期型のレンズ台座にアクセサリーシューを取り付けているのです。素人仕事とも思えない取付方ですから、プロトタイプだったのかもしれません。

※資料画像 初代後期型 を使用したプロトタイプ?

 

… オートベローズのための備忘録 …

1 オートベローズで無限遠の出せるレンズたち

 ■Kマウント

SMC PENTAX BELLOWS 1:4/100

smc PENTAX BELLOWS 1:4 100mm

 自動絞りが使えます。絞り羽根は6枚です。形状は6角形です。

 レンズ構成は3群5枚ヘリヤー型です。

 ■Sマウント

Universal-Takumar 1:4/100

Bellows TAKUMAR 1:4/100

Super-Multi-Coated Bellows TAKUMAR 1:4/100

 どれも絞り環が2列のプリセット絞りです。設定は前側の絞り環で行います。絞り羽根は8枚ですが、F8で8稜星となり、F11で8角形、F22の最小絞りで円形となる特殊な形状 です。

 レンズ構成は3群5枚ヘリヤー型です。

 ■ライカL39マウント

FUJINAR-E 10.5p F4.5

 レンズ構成は3群4枚テッサー型のようです。

FUJINON-EX 105o F5.6

 レンズ構成は6群6枚です。分離型のオルソメターでしょう。

 

2 オートベローズに装着可能なアダプターたち

(1)  初代 Sマウント

 ■レンズマウント

  <ライカLマウントアダプター>

 引伸ばしレンズなどライカLマウントのレンズを取り付けるときに使用する。純正のAアダプターの外に、BORGから出ている。

  <49oフィルター雌ネジアダプター>

 Kマウントレンズ正向き取付時(挟込法による。)にフードなどのレンズアクセサリーを取り付ける。オート接写リング1からマウント雌部を取り外したものに46mmフィルター枠を挿入し、46-49ステップアップリングを組み合わせる。

 ■レンズ台座背面

  <55-52ステップダウンリング>

 リバース時に52oのフード、フィルター、リングライトなどのレンズアクセサリーを取り付ける。49oなら52-49ステップダウンリングを併用する。

  <52-55ステップアップリング>

 オートベローズ連結において、リバース時にSマウントのカメラ台座との連結に使用する。リバースリングライトホルダーS(自作)と併用する。

  <49-55ステップアップリング>

 オートベローズ連結において、リバース時にKマウントのカメラ台座との連結に使用する。リバースリングライトホルダーKと併用する。 

 ■蛇腹端金具

  <カメラ取付マウント>

 カメラ台座を逆使いするときにカメラを取り付ける。リバースアダプターK49oに49oフィルター枠を組み合わせる。八仙堂の49o雌雌リングでもよい。

  <リバースリングライトホルダーK>

 Kマウントレンズを正向きに取り付ける。このときレンズ先端には△-55ステップアップリングを装着する。△はレンズのフィルターサイズ。

 ■カメラ台座マウント取付部

  <リバースリングライトホルダーS>

 カメラ台座を逆使いするときにレンズを取り付ける。52oフィルター枠内にSマウントのオート接写リングから抜き出したマウント雌部を接着して作り、それに52-49ステップダウンリング内にSマウントのオート接写リングから抜き出したマウント雌部を接着したものを組み合わせる。

(2)  2代目以降

 ■レンズマウント

  <マウントアダプターK>

 M42マウントレンズを取り付ける。

 ■レンズ台座背面

  <52oオス・オスリング>

 オートベローズ連結において、リバース時にKマウントのカメラ台座との連結に使用する。リバースリングライトホルダーKおよび49-52ステップアップリングと併用する。

 同じくSマウントのカメラ台座との連結に使用する。リバースリングライトホルダーS(自作)と併用する。 

 ■蛇腹端金具

  <カメラ取付マウント>

 カメラ台座を逆使いするときにカメラを取り付ける。リバースアダプターK49oに52-49ステップダウンリングを組み合わせる。

 ■カメラ台座マウント取付部

  <M42マウント雌>

 カメラ台座を逆使いするときにレンズを取り付ける。Sマウントのオート接写リングから抜き出したマウント雌部を用いる。

3 各部寸法

マウント間最縮長 正付け時 38mm  逆付け時 56mm

マウント間最伸長 正付け時 170mm 逆付け時 174mm

レール全長 200mm  高さ 24mm  幅20.5mm

レール端円盤ボルト ネジ径 M4 ネジ長さ 6mm 頭円盤径 20mm

蛇腹最縮時寸法  12.5mm

蛇腹断面寸法  62.5mm

蛇腹長さ  上面可動部10山

重量 792g

カメラマウント金具取付部内径  初代42mm 2代目以降48mm

蛇腹端金具つまみネジ装置内径 初代51mm 2代目以降53mm

レンズ台座裏つまみネジ装置内径 初代57mm

PENTAX AUTOBELLOWS Mの使用例

 

 ※レンズ逆付け3倍撮影時

オートベローズのメリットとしては、レンズ逆付けがリバースアダプターを用いなくてもできるということと、その時でもダブルレリーズを併用することによって半自動絞りによる撮影が可能であるという点です。撮影倍率が等倍を超える場合、レンズ逆付けの方が画質が良いということから、超接写のためにはオートベローズを使うことでより快適な撮影が可能になるのです。磁石で吸い付ける倍率定規も逆付けに対応していますから、あらかじめの倍率設定に便利です。

ダブルレリーズを使わないと自動絞りによる撮影は出来ないのですが、今のカメラはシャッターボタンにケーブルレリーズを取り付けることができません。遠隔操作は電線によるケーブルスイッチによって行っています。そこで、ケーブルレリーズからケーブルスイッチ機能への変換が必要となります。PENTAXカメラ用の製品は存在しないので、他社カメラ用の改造か自作するしかありません。改造の素材としてはCanonの製品が簡便です。カメラ接続端子をPENTAX用に付け替えるだけです。

超接写の場合、露出倍数がかかるために光が不足します。それを補うためにストロボなどの補助光が必要になります。しかし、通常のストロボだと不自然な影が付いたり、繰り出されたレンズの陰になったりする弊害があります。そこで便利なのがリングライトです。これはレンズの先端に取り付けるリング状の発光体のことですが、ストロボ方式のものとLEDランプ式のものがあります。オートベローズ使用時にはオート機能が使えないストロボ式は試し撮りが必要なのですが、LEDランプ式はファインダーで光の当たり具合を事前に確認できるのと、適正な露出を決定できるので、より使い勝手が優れています。ただし、光量がストロボ式より大幅に少ないので、より低速のシャッターが必要になります。

 

※使用機材

PENTAX K-7 (「KIRK」 L-ブラケット装着)

PENTAX AUTOBELLOWS M (オプション用台座に自作ダブルレリーズホルダー装着)

ダブルレリーズA

CANON ケーブルレリーズアダプターT3 (カメラ側端子をPENTAX用に改造)

smc PENTAX M 1:1.7 50mm逆付け

SONY リングライト HVL-RLAM (49mmアダプター使用・ 干渉するため49mmフィルター枠併用)

パッケージ(元箱)意匠の変遷

 AUTO BELLOWSに限らず、元箱の意匠は時代によって何度か変遷しています。その流れについて画像を収集してみました。

 最初の意匠はこれです。初代の前期型と中期型に使われています。後期型になってからも使われたかもしれません。

 初代後期型にはこれが使われています。

 Kマウント化された2代目になると、この意匠になります。

 3代目前期型からはこの意匠となります。バンドルされているダブルレリーズがまだ前期型です。

 同じ3代目前期型でも、途中でダブルレリーズが後期型に変更されています。1978年7月印刷の使用説明書には、ダブルレリーズU型に変更されていることを説明するページが挟み込まれています。

 この元箱意匠は3代目後期型になっても使われたかもしれません。

 3代目後期型になるとこの意匠になります。「ASAHI」が製品名称から消された時期です。

 この意匠が4代目のもので、最終形です。