… 角レールの「PENTAX BELLOWS UNIT」たち …

 

2022/12/21 更新

 

 

 カメラ台座から前方に伸びた一本丸レール上を動くレンズ台座で構成されていた「BELLOWS UNIT」は、それをOEM製造していた「小林精機製作所」が1968年?に倒産したことにより供給が断たれました。その後継として誕生したのが「X形状」の断面を持つ角レールの「BELLOWS UNIT」です。

 これの最初のものは「Sマウント」で、「SP」時代の後半のことです。その名称は「BELLOWS UNIT U」と命名されました。これは二本丸レールの「BELLOWS U」と名称が似ているので紛らわしく、誤用している例も見られます。

 この初代角レール「BELLOWS UNIT U」は、X断面の角レールの上下をカメラ台座、レンズ台座、三脚台座が可動する、3点可動式の本格的なベローズ装置となっていました。これを製造したのは、使用部材の形状からすると、その時既に上梓されていた「AUTO BELLOWS」の製造者と同一と思われます。

 3点可動式と言っても、「AUTO BELLOWS」のように3点の台座全てに微動装置が組み込まれていたのではなく、それはレンズ台座だけでした。他の2点は、角レールの任意の場所にまで滑らせて行って、そこで締め付けて固定するというものでした。

 また、その際の可動部に潤滑のための蟻型プラスチック部材を用いていたのはレンズ台座と三脚台座だけで、カメラ台座には組み込まれていません。これは、それを頻繁に動かすことを予定していないことによるものと思われます。カメラ台座に角レールを強固に固定するという機能の方を優先したというように見えます。

 この品の最大の特徴は、最短にしたときに、蛇腹部をカメラ台座とレンズ台座で完全に覆うことが出来る点です。これは、物理的に非常に脆弱な蛇腹を携帯搬送時に保護するために行われたものでしょう。この工夫のおかげで、カメラパックに裸で入れておいても 、蛇腹破損の心配をしなくてもよくなっています。

 角レールは先輩の「AUTO BELLOWS」のものより断面が小さく、長さも短いために軽くなっています。三脚台座を外せばより軽くなり、手持ち撮影時の取り回しが楽になります。

 しかし、一本丸レールの「BELLOWS UNIT」よりも、三脚台座を外したとしても5割以上の重量増加となったので、軽快な取り回しというわけにはいかなくなりました。剛性は大幅に増しているのですが……

 カメラ台座に取り付けてあるマウント金具は、上部のつまみビスを緩めることで取り外せます。マウント金具をあらかじめカメラに取り付けてから装着することで、ペンタ部のせり出しているものにも装着可能になります。この辺の使い勝手は良くなりました。

 この型は歴代の角レール「BELLOWS UNIT」の中で最短光路が31mmと最も短く、引伸ばしレンズを使用する場合、より短い焦点距離のものを無限遠から使えます。今日35mmフルサイズ判も登場しているミラーレス一眼を用いて引伸ばしレンズを使う場合、「M42システム」を利用することが多 と思われますので、そのシステムの中にそのまま組み込めますから、この型の有用性が一段と高まっていると思います。

 ところで、この型のカメラ台座は角レールにレバーで締め付ける構造ですが、オリジナル状態だと一番締め付けた時にレバーが後方に倒れます。このためカメラと干渉することがあります。これを解決するためには、レバーと反対側の円ナットを少しずらせば良いのですが、ロックネジがかかっているのでそのままではずらせません。カメラ台座前方にある芋ビスを緩めると円ナットがずらせるようになります。一番締め付けた時にレバーが真下を向く位置が最も支障が少ない位置だと思います。この構造は「BELLOWS UNIT V」前期型まで続きます。

 

 1975年に旭光学工業のカメラがネジの「Sマウント」からバヨネットの「Kマウント」へと移行すると、この角レールBELLOWS UNITも「Kマウント」へと換装されました。名称も「BELLOWS UNIT K」と改められたのです。これの場合カメラ台座のマウント金具取付穴径が48mmであり、「AUTO BELLOWS K」と同じマウント金具を使用していました。

 「BELLOWS UNIT K」は、亭主がこれまで中古市場に出て来たものを見た限りでは、全てのものが、カメラ台座にマウント金具を固定するつまみビスの位置が右横です。しかし、その使用説明書に使われている画像ではその位置が上部なのです。このつまみ ビスが上部にある製品が初期において実際に販売されたのかどうかという疑問があります。この使用説明書は1975年5月の印刷です。

 これを右横に移したのは、「KX」など絞り値の直読のためにペンタ部のせり出している機種では、上部のつまみビスの操作性が悪いことから行われた可能性があります。使用説明書画像の撮影に使われたのは試作品(β版)で、その試用による評価の結果、実際に販売された時には右横に移されていた可能性が高いのではと思っていますが……あるいは、カメラ台座マウント金具の取付穴径が、同時に開発された「AUTO BELLOWS K」と同じ「48mm」なので、それと位置を合わせただけなのかもしれません。

 なお、これの外箱には「BELLOWS UNIT K」と表記されているのですが、内箱は「BELLOWS UNIT U」と表記されています。在庫品を使ったのでしょうが、結構おおらか……

 

 また、この「BELLOWS UNIT K」のレンズ側マウントは「AUTO BELLOWS K」と同じようにレンズ台座の中に組み込まれたものでした。しかし、次の製品である「BELLOWS UNIT V」は、上右画像のようにユニット化された「Kマウント」をレンズ台座に取り付ける方法になっています。このことにより少し前方に迫り出して、最短光路が少し長くなっています。

 この変更は、レンズ側「Kマウント」ユニットを他のアクセサリーでも流用可能なものにするという意図だった可能性があります。より汎用性を高め、製造コストを圧縮するための工夫だと考えられます。

 なお、「BELLOWS UNIT K」から「BELLOWS UNIT V」へと変更した最大の理由として、カメラ台座マウント金具の取付穴径を「BELLOWS UNIT U」と同じ「40mm」に変更していることが挙げられます。これにより、カメラ台座に「BELLOWS UNIT U」の「Sマウント」を装着することができます。

 つまり、「BELLOWS UNIT V」は、明確に正統的な「BELLOWS UNIT U」の後継機であるということです。「BELLOWS UNIT K」ではカメラ台座右横に移していたマウント金具固定のためのつまみネジを元の上部に戻した理由がこれなのだと思われます。当時の「Mシリーズ」カメラでは、これでも支障がなかったためでもあるのでしょうが……

 それまで外箱の中に立派な内箱があったのは、この「BELLOWS UNIT V」では廃止されて、簡易な厚紙仕切にしています。

 旭光学工業が販売した最後の簡易型ベローズ装置である「BELLOWS UNIT V」は、その途中において、上画像にあるようにカメラ台座の角レールへの固定方法を変更しています。それまでの「レバー式締付法」を「ダイヤル式押付法」に変更しているのです。これは部品の共用によるコスト圧縮を意図した変更であると思われます。つまり、「BELLOWS UNIT V」には「前期型」と「後期型」が存在するということになります。

 同時に、「前期型」で最短光路が「37mm」と伸びていたものを、「後期型」では前後のマウント部の厚さを減らしたことや、カメラ台座、レンズ台座をそれぞれ少しずつ薄くすることで「33mm」にまで縮めています。

 また、防塵・防滴を標榜した名機「LX」の誕生した1980年に行われたと思われるマウント金具ロックピン受穴形状の「U字型」から「O字型」への変更も、この「BELLOWS UNIT V」の途中で行われています。そのため、「BELLOWS UNIT K」から「BELLOWS UNIT V」へ移行したのは、Mシリーズカメラの誕生以降の早い時期だったと考えられます。

 なお、1978年11月印刷の使用説明書に使われている画像は「BELLOWS UNIT K」のままです。このへんは結構杜撰な感じです。ところで、その使用説明書に挿入されていた紙片に、カメラ台座に取り付ける「Sマウント金具」が別売されていたことが記載されています。「ESU」や「SPF」のユーザーがまだ多くいて、そのための配慮として供給していたことが明らかです。 ただし、この別売の「Sマウント金具」は「BELLOWS UNIT U」のそれと同じものではなく、少し薄くなっています。ここでもより最短光路を短縮する意図が感じられます。

 さらに、「BELLOWS UNIT V」後期型の角レールは、それ以前の歴代のものとは少し異なっています。それは上面のラックギヤ・レールを取り付けている両端のビスが「プラス鍋頭」になっていることです。従前は「マイナス皿頭」でした。このことから、「BELLOWS UNIT V」前期型が誕生したのはKシリーズカメラの時代だったのではないかという疑惑が生まれます。その理由は、「AUTOBELLOWS M」前期型には「プラス頭」が使われているからです。

 この「BELLOWS UNIT V」に別売の「Sマウント金具」を装着すれば、Kマウント及びM42マウントレンズ、更にはライカLマウントの引伸ばしレンズなどを、ほとんどの各社現役デジタル一眼カメラにおいて使用する道が開けます。亭主が好きな汎用性という点では比類が無いということになります。特に最短光路の短くなった「後期型」は最強……

 この「BELLOWS UNIT U」から「BELLOWS UNIT V」までの簡易型ベローズは等倍以上の撮影が可能であることから、その時はレンズを前後逆向きに使った方がより良好な画像の得られるので、そのために「リバースアダプター」が必需品となります。「Kマウント」のものは「49mm」と「52mm」の純正品が販売されていますが、「Sマウント」のものは中古市場から調達するしかありません。でも、案外安価で潤沢に流通しているので、今はまだ容易です。

※BELLOWS UNIT U データ

最縮長(マウント間)  31mm

最伸長(マウント間) 136mm

角レール長さ     150mm  幅 16mm  高さ 20mm

蛇腹断面寸法     54mm

レール端円盤ボルト ネジ径 M4 ネジ長さ 5mm 頭円盤径 14.5mm

カメラマウント金具外径  51mm   取付穴径 40mm

レンズマウント金具 取付穴径 51.5mm

重量           415g(三脚台座抜き 355g)

価格(1973年現在)  ¥7500

※BELLOWS UNIT K データ

最縮長(マウント間)  31.8mm

最伸長(マウント間) 137.5mm

角レール長さ     150mm  幅 16mm  高さ 20mm

蛇腹断面寸法     54mm

レール端円盤ボルト ネジ径 M4 ネジ長さ 5mm 頭円盤径 14.5mm

カメラマウント金具外径  58.5mm   取付穴径 48mm

重量           410g(三脚台座抜き 350g)

価格(1975年現在)  ¥9500

製品番号       30025

※BELLOWS UNIT V 前期型 データ

最縮長(マウント間)  37mm

最伸長(マウント間) 142mm

角レール長さ     150mm  幅 16mm  高さ 20mm

蛇腹断面寸法     54mm

レール端円盤ボルト ネジ径 M4 ネジ長さ 5mm 頭円盤径 15mm

カメラマウント金具外径  58.5mm   取付穴径 40mm

重量           433g(三脚台座抜き 375g)

価格(1978年現在)  ¥12000

製品番号       30038

※BELLOWS UNIT V 後期型 データ

最縮長(マウント間)  33mm

最伸長(マウント間) 142mm

角レール長さ     150mm  幅 16mm  高さ 20mm

蛇腹断面寸法     54mm

レール端円盤ボルト ネジ径 M4 ネジ長さ 5mm 頭円盤径 15mm

カメラマウント金具外径  58.5mm   取付穴径 40mm

重量           420g(三脚台座抜き 360g)