接写道具あれこれ

 

… 前書き …

 

 レンズには焦点距離があり、無限遠のときがその固有の焦点距離となります。それは、光軸と平行に入ってくる光がレンズによって曲げられて、撮像面(フイルムや撮像センサーなど)上で光軸と交わった状態におけるレンズとピント板の間の長さです。この曲がる角度はレンズごとに一定ですから、無限遠より近いものにピントを合わせるためには、レンズを撮像面から離すのです。

 なお、ここでいうレンズとはレンズ玉のことではなく、複合であるレンズ玉集合体全体のことで、焦点距離はそのレンズ玉集合体が作るレンズの第二主点と撮像面との距離のことです。

 この目的のために、交換レンズにはヘリコイド装置などによる繰出し機構を備えています。しかし、その繰出量は限られます。そこで、交換レンズとカメラ本体の間に何らかの装置を挟むことで 実質的な繰出量を増大させるのです。

 また、交換レンズの前に凸レンズを追加することによってレンズ固有の焦点距離を短縮し、結果として元の無限遠の位置を繰出している状態にすることもできます。この凸レンズをクローズアップレンズと称します。

 一眼レフはレンズを通した像をファインダーで直接見ることができることから、接写装置を容易に使うことが出来ます。このことが一眼レフを使う最大のメリットであると言えるのかもしれません。

 と、いうことで、これら接写に用いる道具について、以下に少し陳列することにしました。

 

… 目次 …

 

接写リング

ヘリコイド接写リング

ベローズ装置

クローズアップレンズ

レフ・コンバータ等

マクロ・スライダー

LEDリングライト

ケーブルスイッチ

 

玄関に戻る

● 接写リング

 

 単なる筒の前側と後側にレンズとカメラのマウントを装備したものを接写リングといいます。何種類かの長さのものが用意されていて、必要な長さのものを選択してカメラと交換レンズの間に取り付けます。

 撮影倍率というものは、焦点距離と同じだけ繰出したときに等倍になります。焦点距離50oの交換レンズを使用して等倍撮影をするためには、交換レンズとカメラ本体の間に50oの接写リングを装着すればよいのです。

 

 接写リングは交換レンズとカメラ本体の間に装着することから、単なる筒では絞りをコントロールする装置の連結が断たれます。これを連結するための機構を持っているものを「オート接写リング」と言い、これなら自動絞りの仕組みが使えます。絞り操作機構を機械的に連結するわけですから、その作動抵抗が増えるため、複数連結には制限があります。他社にあるような絞りを鏡胴内のモーターでコントロールする仕組みの機種なら、電気的に連結するので複数連結の制限は生じないのですが…

 なお、KシリーズやMシリーズなどの交換レンズの場合、オート接写リングでないほうが自動絞りにならずに「K-5」などで実絞りAEが使えるため、より便利です。連結の制限もありませんし…

 また、Aシリーズ以降の交換レンズでも、オート接写リングはA位置情報を伝達しないので、KシリーズやMシリーズの交換レンズ並みの機能になってしまいます。このことから、絞りオート機能があると実絞りAEが使えないので、現行品はオート機構の無いものだけになっています。

 

 旭光学時代のSマウント接写リングは中古市場で安価に入手できますが、マウント外径が小さいために「マウントアダプターK」経由でKマウントカメラに取り付けるとガタがあり、光漏れも生じてしまいます。

 でもこれは、外径約60o、内径42oのドーナツ状板を間に挟むことで解決します。板の厚さは薄い方が良いのですが、薄すぎると強度が不足してしまいます。アルミなら1o程度、真鍮なら0.5oぐらいでしょうか…

 また、社外品のフランジ付きKマウントアダプターが存在しますから、これを使うことでマウント外径の小さな交換レンズや接写機器を使うことができるようになります。このフランジ付きKマウントアダプターはフランジが約1oと薄いので、Takumarの望遠レンズなら調整することで無限遠まで出せます。

 

 余談ですが、Sマウント時代のオート接写リングは、ベローズ装置などのM42マウントへの改造にとても役に立つ部材となります。安価で流通していますから、可能な限り数多く入手しておくと、カメラ弄りのためには何かと役に立ちます。

 

DATA:

長さ

 オート接写リング1   12o

 オート接写リング2   19o

 オート接写リング3   26o

 接写リング1       9.5o

 

● ヘリコイド接写リング

 

 接写リングは長さが変化しませんから、必要な長さのものを選択しなければなりません。撮影倍率を変化させたい場合は交換が必要で、かなり煩雑です。この弱点を克服するのが、長さを変化させることの出来るこの装置です。交換レンズ本体と同じようにヘリコイド装置が内蔵されていて、全長を無段階に変化させることができるのです。

 ただし、絞り連結機構は組み込まれていないので、自動絞りは使えません。「K-5」などの場合は実絞りAEが使えるので、かえってこのほうが良いのですが…

 また、ベローズ専用交換レンズや引伸機用レンズの流用などのフォーカシング機構の無い交換レンズを使う場合に、これなら気軽に扱えます。手持ちでの振り回しも容易に出来ますし…

 

 旭光学時代にもSマウントヘリコイド接写リングが存在しました。でも、これはマウント外径が小さいためにマウントアダプターK経由でKマウントカメラに取り付けるとガタがあり、光漏れも生じてしまいます。これも接写リングのときと同様に外径58o、内径42oのドーナツ状板を間に挟むことや、上右写真のように社外品のフランジ付きKマウントアダプターを使うことで解決します。

 

DATA:

長さ

 最短   26.5o

 最長   46.5o

● ベローズ装置

 

 ヘリコイド接写リングより撮影倍率を大きく変化させたいときなど、ベローズ装置を使えば簡単です。交換レンズとカメラ本体の間を蛇腹装置で結ぶので、操出量を大きく変化させることが出来るのです。

 

 詳しくはベローズ自慢の部屋へ、いらっしゃーい

 

● クローズアップレンズ

 クローズアップレンズは、交換レンズの先端にあるフィルター等装着用のネジに装着して使います。焦点距離1000oのものを1と称し、焦点距離が1000oの何分の一になるかの分母をbナ表示します。焦点距離333oを3というように…

 クローズアップレンズを重ねて使用すると、bヘそれぞれの和となります。1と2で3という具合に…

 凸レンズの単体であるものと、複数のレンズを組み合わせて色収差を減少させたもの(アクロマート)があります。当然アクロマートの方が高価ですが、撮影効果はより良いのかと…

 四隅の像が流れ気味になるなど元の交換レンズの光学性能を変化させますが、着脱と携帯は容易ですから、便利な道具であることは間違いありません。

 

 なお、標準レンズなどの交換レンズを、高倍率のクローズアップレンズとして使う方法があります。フィルター取付枠を利用して逆付けするのですが、そのために使えるのがケンコーのOMリングです。52o径しか販売されていませんが、ステップリングを併用すれば、他口径の交換レンズでも使えます。焦点距離50oだと20ということですから、超高倍率になります。でも、隅々まで高画質…

 

● レフ・コンバータ等

  

 

  

 

 野の花などの接写のときには、撮影対象物に近づきます。そのときにはロー・アングルになることが非常に多くなります。そんなときに必要となるのがレフ・コンバーターとかアングル・ファインダーとか呼ばれる道具です。

 これらはアイ・ピースに取り付けて使いますが、ファインダーを90度の方向から見ることの出来る装置です。プリズムが内蔵されているため、正立正像のまま見ることができます。以前は鏡を使った正立鏡像の製品もありましたが…

 等倍だけのものと、等倍と2倍程度とを切替えて使えるものがあります。2倍以上にした場合には四隅が大きくケラレますし、切り替えるとそのたびに視度調整が必要になりますから、あまり使い勝手は良くない…

 また、マグニファイヤー(右上の写真)でファインダー像を拡大すると、MFのときのピントあわせ精度が上がります。

 

 CanonやNikonの製品も、若干の改造によってK10Dで使えます。CanonはアイカップMEUの取付金具と交換し、Nikonは取付部品をサンドペーパーで少し削って薄くしています。

 CanonアングルファインダーBとアイカップMEUの取付金具とは、ネジピッチが少し異なるのですが、実用上支障が無い程度には捻じ込めます。

 Nikonの角窓アイピースアクセサリー取り付け部の幅はPentaxより少し広く、取付け溝幅は少し大きいのですが、少し厚い取付部を削って薄くすれば 、実用上支障がありません。

 

● マクロ・スライダー

 

 

 接写の時には、レンズを前後させるよりカメラ本体を前後させた方がピントが合わせやすいし、倍率が変化しません。オートベローズにはそのための機構が組み込まれていますが、他の接写道具の場合、マクロ ・スライダーを使用することで容易に実現できます。これはマクロレンズを三脚上で使うための必需品かと…

 

● LEDリングライト

 

 リングライトにはストロボ式、LED式、蛍光灯式などがあります。亭主が入手したのはLED式で、ストロボ式と違って常時点灯ですから、光の回り具合をファインダーで確認しながら撮影できて便利です。 光量は少ないので、ワーキングディスタンスは50p以下程度ですが…

 等倍以上の接写にはレンズを逆付けしたほうが良好な画像が得られます。この場合、Kマウントレンズなら以前「リバースリングライトホルダーK」という製品が市販されていましたから、それを使えばリングライトを使えます。

 でも、TakumarなどのM42マウント交換レンズ用のそれは市販されていませんので、自作が必要となります。その方法はこちらで…

 

● ケーブルスイッチ

 接写時には露出倍数がかかるのと、被写界深度を確保するために大きく絞るので、シャッター速度が遅くなります。当然三脚に据えての撮影になりますが、そのことで遠隔操作の必要性も高まります。そのための道具がケーブルスイッチです。

 シャッターがメカニカル制御であった時代には、シャッターボタンにケーブルレリーズを取り付けて行うのが遠隔操作だったのですが、シャッターが電子制御になってからはシャッターボタンは単なる電気スイッチになったため、遠隔操作の道具も電気スイッチと電線になりました。その電線とカメラを接続するのがコネクターなのですが、これが問題です。

 メカニカルなケーブルレリーズの時代には、ライカとその外にごく一部のカメラが別の接続方法だった以外はどれも共通でしたから、ケーブルレリーズはほとんど共通に使えました。ところが電気的な接続になったケーブルスイッチの時代になって、この接続のコネクターがカメラ会社ごとに異なった規格になったのです。それどころか、同じ会社のカメラでも機種が異なったり、新型となったりするだけで異なった規格のものに変わるという状況になりました。これはユーザーにとってはなはだ不都合なことです。

 

 

 

 その様々あるケーブルスイッチですが、肝心のスイッチ部自体の機能はどれもほとんど同じで、単にコネクターの規格が異なるというだけですから、このコネクターを自分が使用するカメラに適合するものに付け替えるだけで使えます。亭主は互換が可能なように、互換コネクター方式に改造しています。

 スイッチ部の外形的な構造は大きく分けて縦型と横型があります。縦型は「PENTAX F」のようにスイッチ部の先端部に押しボタンが付いているもので、初期にはこれが使われる例が多かったのですが、現在では横型が圧倒的に多数派です。横型はスイッチ部のコード側に近い横腹に押しボタンが付いているものです。

 初期に縦型が採用された理由は、内部に配置するスイッチにマイクロスイッチを用いているので、縦型の方がこれを作動する機構を組み込みやすかったためです。 それに対して横型に使われているスイッチはほとんどが単なる板バネです。通常それを3枚相互に絶縁して離して重ね合わせていて、これを押しボタンで押して次々に接触させることで接点を接触させる仕組みです。仕組みがシンプルなので製造が容易でコストも低いので、今はこれが多数派です。持ち易さ、押し易さはこの横型なのですが、ボタンを押し込んだときの操作感はマイクロスイッチを使ったものの方が良好です。

 

 

 横型なのにマイクロスイッチを使ったものに、上の写真の「Contax LA」があります。これのコネクターはPENTAXの*istシリーズ以降やCanon EOS Kissシリーズに使われているものと同じ汎用性の高い3接点のステレオ・ミニ・ミニという2.5o径のものです。これは軽くて小さくて握り易い形状であり、バルブ位置への切替方式を含めて操作感の良好なこの品が、すでに販売されていないものの、現在最も優れている製品だと亭主は断言します。