Vol.004 - 14 Aug. 2005 - Movie in the Rearview Mirror

バックミラーと聞いて思い出すのは、クルマの免許を取って初
めて高速道路を走った時のこと。
バックミラーやサイドミラーを見つつ、実際に目視でも確認しな
がら本線に合流していくというのは、運転免許の教習でも一
項目設けられるほどの技術です。

1984年9月下旬の日曜日の夕方。免許を取り立てで、初めて
高速道路に入ろうとしているボクは、ワインレッドの77年型ボ
ルボ244DLの右側のサイドミラーを見ながら、頭も軽く回して
目視で後方も確認して、東名川崎I.C.から東名高速道路上り
線に入ろうとしていました。
バックミラーからもサイドミラーからも、目視でさえも、本線を
後方から迫ってきているクルマとの間には充分な距離があり、
合流には最適な状態です。
ボクはブレーキを踏むことなく、すぅっと本線に合流しました。
3車線を備える高速道路の一番左端の車線で、スピードを上
げながら今一度バックミラーを眺めてみると、後続車の一団
はようやく、ボクが本線に合流したあたりに到達したところ。
左端の走行車線には白いセダンが走り、真ん中の走行車線
には茶色の国産セダンが走っていて、その後ろを8tくらいの
材木を載せたトラック。そして、追い越し車線には高速バス。

合流できてひと安心と、ミラーから前方に視線を戻そうとした
時でした。バックミラーの中で何かがゆらぎました。
真ん中の走行車線を走っていたトラックが、左側の車線に移
ろうとしてバランスを崩し、横転したのです。
ミラーのサイズの画面で映画でも見ているような気持ちです。
荷台の材木がいっせいに路面にばらまかれ、後続や横を走る
クルマたちが巧みにかわして難を逃れていきます。
次第に遠ざかる現場の様子を見ていた限りでは、トラックに他
のクルマが追突するようなことはなかったようです。

実際に起こっている事故とはいえ、ミラー越しであった分、映画
のような仮想現実を見せられているような感覚でした。それは、
なぜかスローモーションのようにゆっくりと動き、ミラー越し故に
へんに遠近感が誇張され…。
初めての高速道路でミラー越しに生の事故を目撃し、暫くの間
は放心状態で運転を続けていたのでした。


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