Vol.62 - 11 Sep. 2005

昨日、テレビで「ハリケーン『カトリーナ』チャリティー・ライブ」と
いう番組を見ました。
皆さんもご存じの通り、この8月末にアメリカ南東部を襲った大
型のハリケーン「カトリーナ」。このハリケーンによって大きな被
害が出たルイジアナ州、ミシシッピ州、アラバマ州での被災者
救援のために、アメリカを代表するテレビ局6局が共同で放送
した番組が、日本でも放映されたというものでした。
全米での放映終了から5時間。日本ではWOWOWで、予定を
変更して、特番として無料放映されていました。

このライブの原題は
SHELTER FROM THE STORM:A CONCERT FOR GULF COAST
直訳すれば「嵐からの保護:ガルフコーストのためのコンサート」
ということでしょうか。
「ガルフコースト」とはメキシコ湾岸のことらしく、上記の3州も
それぞれメキシコ湾に面しています。
特に日本でも大きく報道されているのは、ルイジアナ州ニュー
オリンズ市の被害状況でしょう。陸地面積 467.6平方キロの
約8割が水没したのだそうです。
ミシシッピ川とポンチャートレイン湖の間に位置する市は、海抜
以下の土地に都市が形成されていて、1インチ(25.4ミリ)の降
雨でも水害が発生してしまうのだそうです。1700年代にフランス
人たちによって街が作られたころから水害には悩まされていた
とのことで、実に300年間も悩み続けているというのは、超近代
国家のアメリカ合衆国が実に無策であり、人災と非難を受けて
も仕方のないことでしょう。

思い返せば、ボクがアメリカ国内を旅して回っていた1992年に
も、「カトリーナ」以前で最大と言うハリケーン「アンドリュー」が
ニューオリンズに大きな被害を与えていました。
そのせいで、アメリカの大都市を回ろうと思っていたボクでした
が、ニューオリンズだけは断念せざるを得なかったのです。

本場で生のディキシーランド・ジャズを聴いてみたかった。本場
のケイジャン料理を食べてみたかった。世界最古の市電にも
乗ってみたかった…。
いつか叶うかも知れないと思っていたことが、これでまた遠くに…。

コンサートでは、政府のイラク政策に関してブッシュ大統領を
非難して、その後多大なバッシングを受けることとなった女性
3人のカントリーグループ、ディクシー・チックスや、「カトリーナ」
被災者への政府の対応の遅さを大統領批判を込めて訴えた
ミュージシャン、カニエ・ウェストなどが出演してパフォーマンスを
披露し、俳優のジャック・ニコルソンやキャメロン・ディアスなどが
チャリティーの電話を直接受けていました。それは、2001年の
ちょうど今日、9月11日に起きたアメリカ同時多発テロによる被
害者へのチャリティー番組"America: A Tribute to Heroes"と
同じ番組構成です。
こういう番組をみると、アメリカ人たちの団結力と行動力に感心
してしまうのですが、一方で、日本でも報じられている政府の
対応の遅さや市民による略奪や暴動の頻発については、とて
も信じがたいものがあります。
これが世界をリードしようとしている国なのか? と…。

ニューオリンズ出身のミュージシャン、ルイ・アームストロング
は、「この素晴らしき世界」(原題:「What A Wonderful World」)
という曲の中で、

仲間が握手をしながら「こんにちは」とあいさつする。
赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。あの子たちは大きくなって、
やがては自分より多くのことを学ぶだろう。
ボクはひとり思う。なんて素晴らしい世界なんだろう

と歌っています。

天災による被害だけでなく、政府の考え方ひとつで未然の対策
を怠り、災害の発生後には被害者の救済も遅れがちになってい
るこの現状。
ルイ・アームストロングが歌った世界とは大きくかけ離れている、
そしてむしろ、遠ざかりつつあるように感じられる今の世の中…。
9月11日だからこそ、今一度考えてみようと思い、書きました。


どうしても聴きたくて、アルバムを購入しました。


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