Vol.39 - 14 Jun. 2004

遅ればせながら、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」と「世界の
中心で、愛をさけぶ」を読んでみました。



「ハリー・ポッターと秘密の部屋」は、皆さんご存じの通り、「ハ
リー・ポッター」シリーズの2作目で、既に5作目の「ハリー・ポッ
ターと不死鳥の騎士団」が9月1日に発売されることも発表され
ている、世界的大人気のシリーズです。
ですから、本当に"遅ればせながら"読んでみたわけです。
もちろん第1作の「ハリー・ポッターと賢者の石」も読みましたが、
どうしたことか、1作目、2作目共に読むのにかなりの時間を要し
ました。
分厚くて気軽に持ち運ぼうと思えなかったせいもあって、会社の
往復の電車の中などで読めなかったことが一番の要因ですが、
いざ読み始めることができた際にも、意外と読むこと自体に苦労し
てしまって読み進められなかったということも大きな原因です。

一方の「世界の中心で、愛をさけぶ」は、会社の往復の時間と
寝床に就いてからのしばらくの時間だけ、2日間で簡単に読み
終えてしまいました。
もちろん「ハリー・ポッター」シリーズに比べて、薄くて軽いという
こともありますが、読み進めるペースに大きな違いがあったこと
も事実です。
村上春樹著「ノルウェイの森」を抜いて日本の小説としては過去
最高の発行部数を記録したというだけあって、誰にでも読みやす
い素敵な小説だと思いました。
話の展開は、筋立ての構成のせいもあって、ひねりのない先の
読めてしまうものでしたが、それでも読者をぐいぐい引き込むの
は、やはり青春期の柔らかい思い出に共感を覚えさせるような
テーマと、それを語るきれいな言葉ではないかと思いました。
生き生きとした会話とていねいに語られるクセのない文章が、
その"いつか聴いたことのある話"に改めて読者を振り向かせて
しまったのでしょう。さりげない一文(著者にしてみれば決して
さりげないわけではないとは思いますが)に、ふと心をぐいっと
握られてしまったりして、軽く読める文章ながら、電車の中で
不覚にも泣き出してしまうような一瞬が訪れそうになりました。
(テンポがいいから、泣き出す前に読み進められましたが)
一場面一場面、情景がイメージしやすい文章でしたから、もう
映画は見てしまったような気分になっています。今さらそのイメ
ージとの差異をチェックしに映画館に脚を運ぼうとは思いません。
小説を読むだけで充分でしょう。小説はお薦めします。
ただ、「世界の中心で、愛をさけぶ」、この媚びるようなタイトル
だけは馴染めませんでした。

「ハリー・ポッターと秘密の部屋」ですが、読み進めるに苦労した
理由のひとつとして、文章に馴染めないというのがあります。
ボクには、あの訳文からは"気持ち"が感じられなかったのです。
黙りこくった、聞きまくっていた、どでかい手、蹴りを入れられて…。
今まで読んできた小説の中では見たことのない喋り言葉が文章
に織り込まれていて、これには大いに違和感がありました。
いくら少年少女の冒険物語だからといって、流行り言葉や今どき
の喋り言葉を使わないでほしかったというのが、最も残念な印象
でした。
本国、英国ではJ.K.ローリングスが繰り出す物語に、子供たちが
とりこになっていると聞いています。そしてその現象は日本でも
そのまま再現されているとのことです。
つまり、今の日本の子供たちが読む、あるいは読んでもらうことで、
この作品に触れているわけです。
そんな絶好な機会なのですから、選りすぐりのきれいな日本語を
読ませてあげたいし、聴かせてあげたかった、と思いました。

いつも、良い作品にめぐり会いたいものだと思っていますが、それ
以上に、きれいな文章を読みたいとつねづね思っています。
「世界の中心で、愛をさけぶ」では、その欲求がひとまず充たされ
ました。

じめじめと暑いこの季節、外に出られない時は、たまには読書など
いかがですか?


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