Vol.27 - 09 Feb. 2003

今回のお話は…。
今なお大規模再開発の続く東京・汐留に昨年12月にオープン
した「電通四季劇場〔海〕」で、先日、柿(こけら)落とし公演の
ミュージカル『マンマ・ミーア!』を観てきました。
劇団四季のHPによれば、ロンドン、トロント、サンフランシスコ、
ロサンジェルス、シカゴ、メルボルンで大好評を得て、2001年10
月に開幕したニューヨークでは、テロ事件の影響で悲しみを背
負った人たちの心を掴んだとのこと。
ギリシャの小島を舞台にしたロマンティック・コメディは、全22曲
もちりばめられたスウェーデンの世界的ポップスグループ「ABBA」
のヒットソングによって輝きを増して、“日本ヴァージョン”も大成
功と言えるできばえになっていました。ぜひともご覧ください。

「ABBA」はボクの人生の中で、かなり大きな部分を占めるポッ
プスグループです。その存在を知ったのは、小学校6年生のころ。
その年齢の子供たちは、男の子も女の子もデビュー間もない
「ピンクレディ」の歌と踊りに魅了されていましたが、同時に「ベ
イシティローラーズ」や「KISS」といった海外のミュージシャンた
ちにも触角が向き始めていました。ボクもそんな海外の音楽に
耳を傾け始めた友達から誘われて渋谷の映画館に「ABBA THE
MOVIE」という映画をその友人と初恋の女の子と3人で観に行っ
たのが、「ABBA」との出会いでした。
大ヒット曲「Dansing Queen」が収められたアルバム「Arrival」の
次のアルバム「ABBA THE ALBUM」がこの映画に合わせて出
ていましたから、ボクが「ABBA」を知ったのは、最高潮の時期を
ちょっとだけ過ぎたころだったのかも知れません。
でもとにかく、金髪と赤毛のヨーロッパ美人ふたりが歌い、人な
つっこい雰囲気の長髪でヒゲのキーボードとちょっとサルっぽい
顔をしたギターのふたりの男性が組み合わされた北欧のグルー
プに、ボクはひとめでファンになってしまい、それからというもの
毎日毎日寝ても醒めても「ABBA」のアルバムを聴いていたもの
です。
日本ではたった一度しか行なわれなかったツアーも、当時はま
だぴあだのセゾンだのといった電話予約などは全くなく、確か
キョードー東京だったと思うけれど、日曜日の朝早くから表参道
の青山通りで長い列に並んで、武道館公演に行くことができま
した。
アリーナではなかったけれど、1階最前列、しかもステージ正面
からひとつだけ右に折れたところという自分なりに最高に満足で
きる席で、母といっしょに小学校卒業を祝ったのでした。
「ABBA」熱はその後もあまり冷めることなく、高校時代には当時、
最盛期の「竹の子族」が「Gimme! Gimme! Gimme!」に合わせて
踊るのをちょっと渋い目で見ながら、「ABBA」最後のオリジナル
アルバム「The Visitors」まで、とりあえずきちんと発売当日に
購入していました。
こんな状態でしたから、他のミュージシャンのことを知るのは遅
くなってしまいました。
高校3年生のころに、カノジョから薦められて聴いたビリー・ジョ
エルの「The Nylon Curtain」からでしょうか。とにかく、自宅で
は隣室の兄から「いい加減に、聴くのヤメろ!」と怒られるぐらい
に、「ABBA」漬けの日々を送っていました。

社会人3年目に、機会があって英国に語学留学をさせてもらう
ことになりました。
初めの3ヶ月は英国南部の保養地、ボーンマスというところで
ホームステイをしていたのですが、ある週末に同じクラスのブラ
ジル人の音頭取りで、ロンドンまでミュージカルを観に行くこと
になり、そこで初めて観たのがアンドリュー・ロイド・ウェーバー
の大ヒットミュージカル『Cats』でした。
映画「ウエストサイド物語」を観たときには違和感を覚えた“ミュ
ージカル”でしたが、全キャストがいろいろな種類のネコを演じな
がら歌って踊る『Cats』には、英語は分からないながらも大いに
感激して、それからというもの、英国滞在中の1年間で10回も
ウエストエンドに脚を運び、その後、移ったニューヨークでも5ヶ月
間に2回、ブロードウェイの『Cats』を観ました。
1年5ヶ月で12回の『Cats』! それだけでなく、ウエストエンド
では『Starlight Express』や『Les Miserables』、『Miss Saigon』、
『Me and My Girl』、それから蜷川幸雄演出の劇団四季英国公
演『Jesus Christ Superstar』も観ましたし、ブロードウェイでは
『Crazy for You』も観ることができました。
つまりこの時期は、「ミュージカル」漬けの日々を送っていたわけ
です。

そんな「ABBA」と「ミュージカル」がいっしょになっている『マンマ・
ミーア!』。
観る前までは、こんなボクにとっては“超がっかり作”になる可能
性もあったわけですが、見終わったあとの感想は、「大満足」で
した。
「ABBA」に思い入れが強かった分、幕が上がる前のオーヴァー
チュアで「Mamma Mia」のアレンジ曲のイントロが聞こえてきた
時に感じた、あの“ぐっ”とくる感覚がなんともいえませんでした。

劇団四季ではロングランを目論んでいるようです。ロングランと
聞くといつでも観られるという気持ちになりますが、旬なうちに一
度ご覧になって、ロングランで2度目、3度目を楽しむのがいいと
思います。
映画と違って、生身の人間が「今そこで」芸術を生み出している
というところがとても感動的です。
宣伝くさくなりましたが、「芸術に触れる機会を作ってください」
という、今回の「ノンキな通信」でした。


Regent Street, London, End of 1991


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