Vol.19 - 19 May. 2002

ここのところ、関東地方はどうにもしゃきっとしない天気が続い
ています。桜の開花が早くて、黄金週間には夏日があったりし
ている今日このごろ。この不安定な天気は、もうとっくに梅雨に
入ってしまっているとでもいうことなのでしょうか。
それだけは、勘弁してよ、ね。
一年中で一番快適な季節を、もう少し楽しませて欲しいもので
す。

さて、そんな気象状況と連動するかのように、ニュースでもここ
しばらく、なんだか暗雲をイメージさせるような妙な発言が続い
ています。
中国・瀋陽の日本総領事館事件で、駐中国大使は「不審者は
追い出せ」と指示していたと言われています。
また、外務省の国際学会派遣をめぐる背任事件では、例の北
海道選出の代議士が、「おれがとってきた金で呼ぼうとしたの
に、なぜ出せないんだ」と、支援委員会のカネを私物化している
ような発言を繰り返して、外務省職員を叱責したと言われてい
ます。
こういう問題になると必ず、その後その本人から「そんなこと言
っていない」だとか「そのひとことだけがクローズアップされてし
まった」だのと、うんざりするような嘘か言い訳が出てきて、その
後はすっかり興味がそがれてしまうのですが、今回の「ノンキな
通信」は、これらの問題よりは全然悪影響のない“不適切な表
現”を3題ほどご紹介いたします。

-*-

サッカー・ワールドカップの代表選手23人が発表になりました。
34歳、ゴンこと中山雅史選手が選ばれたことが、とても嬉しい
ですね。
明るく一生懸命な体育会系のリーダーが、その本来のステージ
で表情豊かに、しかしクールに妙技を披露する姿にたいへん魅
力を感じています。
その翌日のスポーツ新聞の見出しの一文が、私にはどうもへん
に感じられたのですが、皆さんはどう思われるでしょうか。
「中山 日本代表入り ゴンが日本を救う」
“救う”?
まだあくまで予選が終わっただけで、日本と韓国を舞台とする
グループリーグや決勝リーグが始まったわけでもないというの
に、“救う”という表現はどこから来るのでしょうか?
おそらく欧州遠征中の日本代表が14日(日本時間は15日未明)
にオスロのウレボール競技場でノルウェー代表と国際親善試合
で0−3で破れたことを憂いているのでしょう。
気持ちはわからないでもないけれど、待ちに待った代表が発表
され、さぁこれからだというときに、早くも一歩も二歩も出遅れた
表現を使うのはどうなんでしょう。

-*-

通勤の途中、「鷺沼(さぎぬま)」という駅でいつも各停から急行
に乗り換えるのですが、その際、ときどきふと考えてしまうような
構内放送を聞くことがあります。
鷺沼は単なる急行停車駅というだけではなく、私の利用する時
間帯には急行電車の始発もあり、ひときわ混雑の激しい東急
田園都市線の中にあって、朝の通勤時間帯に着席のチャンス
のある貴重な駅でもあります。
そんな駅で、遠くからやってくる混んだ後続の急行よりも、もう1
本待って、少しは空いている始発の急行を利用しましょうという
構内放送です。
「次にまいります急行電車はたいへん混雑しての到着です。お
時間に余裕のあるお客様は3番線に停車中の始発の急行電車
も併せてご利用ください」
「“併せて”ご利用」、ですか? …無理でしょう、物理的に。
急行に乗りたい客には、後続かさらにあとの始発かの二者択一
しか道はないわけで、“併せて”、つまり後続とそのあとの始発
を共に利用する、というようなことはできません。
この駅員は喋りながら自ら妙な表現だとは思わないのでしょうか。
そして、その他の駅員はこの駅員の構内放送の表現が間違っ
ていることに気づかないのでしょうか。

-*-

「燃えるゴミ・燃えないゴミ」
“燃える”ゴミ?
放っておくと自然発火でもしてしまいそうなこの表現。
“燃やせるゴミ”などという表現の方が正しいのではないでしょ
うか。
と、思っていたら東京・お台場のどこかの商業施設の中に“燃せ
るゴミ”と書かれたゴミ箱を発見。これは正しいと思いました。

-*-

回りくどい表現は避けたいとは思うけれど、仕事上で喋ったり
書いたりするときには特に「適切な」表現を使用したいものです。
今どきは、それこそ「ノンキな通信」のように、誰もが簡単に自分
の書いた文章を不特定多数の読者に対して開陳することができ
るようになっています。
簡単便利である反面、書き手のその時の勢いやテンションをそ
のままに、誰のチェックを受けることもなく流されるので、読み手
側にとっては何が書かれているのかよく分からなかったり、書き
手に悪意はなくとも読み手が不快な思いをしたりするということ
がよくおこります。
読み手が不快に感じて即座に抗議の返信を送ったりする時に
は、読み手側もそれはそれでまた沸騰してしまっているので、
書き手に対してわけのわからない文章を送りつけてしまう。
こうなるともう、泥沼です。
作家の村上春樹は、著書「村上朝日堂 夢のサーフシティー」の、
読者からのメールのやりとりの中で、「ただし書いた文章は必ず
一日寝かせます。書いてすぐに送信すると、後悔することは多い
ですね」と書いています。
作家という仕事、作品という成果を出さなければならない人です
から、これぐらいの慎重さはよくわかりますが、私たちのような
ふつうのサラリーマンではなんでもかんでも一日寝かしておくこ
となど基本的に不可能です。

でも、書いた直後や喋る場合には直前に、一瞬でも覚めて見直
すことは心がけておきたいものです。
(そんなわけで、皆さんへのメールの送信は翌日にしました)


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