Vol.17 - 31 Mar. 2002

地球温暖化の影響なのでしょうか。今年は桜が3月中旬にして
早くも咲いてしまって、明日から4月という今日はすでにすっかり
葉桜になってしまった樹も見られました。
4月初めに桜祭りを開催するはずだった桜の名所では、軒並み
急遽中止という事態に追い込まれ、気象庁はその開花予想の
方法を再検討することになったようです。
桜が咲くにも今どきはしっかりビジネスが絡んでいるので、いつ
咲いたっていいじゃないの、とはいかない様子です。

サクラ前線の移動に伴って順次開花が進んでいくわけですが、
それにしても、それぞれの桜の木同士はなぜ、どのようにして
同時期に蕾をつけ開花させることができるのでしょう。
関西にいたころ、阪急電車の車窓から見える桜の樹々を眺め
ながらその理由について考えたことがありました。
それはきっと、都会にいる桜の木がふとこう思い立つんですね。
A:「オレ、そろそろ咲くわ」
B:「え、もう行くんかい。せやったらワシらも咲かなアカンがな」
C:「せやな。せやったら咲こか。隣の町内会にはワシから伝え
とくわ」
隣の町内会。
D:「え? あいつらもう咲いたんかい。ほだら、ワシらも咲かな」
E:「おま、ちょい早いで。でもしゃあないか、咲かなアカンわな」
隣の県。
F:「都会の衆は咲くの早いのぉ」
G:「オレら、もうちょいゆっくりでもよかよね」
こんな感じで、なんらかの形で話し合いでもして開花日を決めて
いるような気がします。今年のような異例な早さはもしかしたら、
桜もみんなでワールドカップのサッカーでも観たいのかもしれま
せん。6月までには北の外れまで葉桜になっていなければなら
ないから、そのためには開花時期を繰り上げよう。そんな取り
決めが、日本人の知らないところできっと交わされたのでしょう。
お互いの連絡はEメールならぬGメール(Ground、または地面の
“G”)。

2年前、この「ノンキな通信」の前身である「関西通信」のVol.6で、
大阪の毛馬桜之宮公園(けまさくらのみやこうえん)の桜のこと
を紹介しました。
私としては、かつて見た中でもっともインパクトのある桜の名所
でしたが、今年は、何気なく出かけたドライブのさいちゅうに東京
近辺としては信じ難いほどのボリュームのある桜の名所に出く
わしました。
場所は町田市小山田というところ。
その昔、戦車のテストコースだったという丘の尾根線を整備した、
その名も「尾根緑道」という延長2kmほどの遊歩道です。

  

この「尾根緑道」でも4月の6日・7日に予定されていた桜祭りが
中止になっていました。



その一週間前である3月末日。期の変わり目でもあるこの日、
無事に期末を越せたビジネスマンの家族や、また一歩社会人
デビューの日に近づいた学生たちが、どんどん散りゆく桜の木
の下で日常のわずらわしさをしばし忘れて、酒を酌み交わして
いました。
そんなグループの間を犬を連れて歩きながら、遊歩道を行き交
うジョギング中の中高年や私と同じように犬を散歩させている人
などを見ながら、また一年経って4月がやってきたのだなと感慨
にふけっていたのでした。
そこで思い出した、松尾芭蕉の一句がありました。
「さまざまの事 おもひ出す 桜かな」

皆さんは今年、きれいな桜を観ましたか?


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