Vol.14 - 13 Jan. 2002

新年の松が取れると、次に梅の季節がやってきます。
ふだんあまり梅は気にかけたことのなかったのですが、春らし
さはまだ全く感じられないこの季節、「梅」という言葉だけで、
陽の傾いたこの季節の晴れ渡った午後を思い浮かべます。
イギリスにいた時の冬、モノトーンの街路樹の輪郭をぼやかす
ように小さな花を一斉につける梅の様子にまるでノアの方舟か
ら顔を出してみたら世界は落ち着きを取り戻していましたといっ
たイメージで、長く暗い冬の季節の終わりをドラマチックに告げ
る花だという印象をもって以来なんだか気になっています。

鉄道趣味から見つけた「秩父鉄道」のサイトで、この1月下旬
から2月にかけての週末に臨時急行「ロウバイ」号を運転します
という記事を見つけました。
長瀞からロープウェイで約5分、標高497mの宝登山(ほどさん)
の山頂にロウバイ園があって、1月下旬から2月中旬にかけて
が見ごろとのこと。それにあわせて臨時急行を走らせましょうと、
そういう企画列車の案内でした。

「ロウバイ」というのはその音から「老梅」だとばかり思っていた
のですが、実は「蝋梅」あるいは「臘梅」と書くのだそうです。
別名をトウバイとかカラウメ(共に「唐梅」と書きます)というそう
で、要するに、本当の梅とはグループが違いロウバイ科に属す
る花だとのことです。
そんな「ロウバイ」を改めて眺めてみると、なるほど「臘梅」と言
われるような由来がなんとなくわかってきます。
枝の節ごとに咲く花は、薄黄色か黄色の半透明の花びらを持ち、
それは冬晴れの青空にまるでロウソク細工のように見えるので
そういった名前が付いたのでしょう。
花びらのように見えるその部分は、実は萼(がく)と花弁が連続
してそう見えているのであって、つまりアジサイと同じような成り
立ちになっています。ロウソク細工のような花、そう思って眺め
ていたら、名前の由来にもう一説、陰暦の12月「臘月(ろうづき)」
に咲くから「臘梅」。
どっちみち、本当の「梅」とは違うということが強調されています。

「花」が薄黄色で中央部が紫のものが「蝋梅」で、花全体が黄
色で中央部の色の変化のないものは「素心蝋梅(ソシンロウバ
イ)」というそうです。また開花時期がもっとおそい「春」には、香
りのよい赤褐色の花を咲かせるアメリカロウバイ(別名「黒花蝋
梅」)というものもあるそうです。

寒風に上着の襟を立て、背中を丸めてうつむき加減に歩きがち
なこの季節。天気が好い日には、無理をしてでもちょっと上を見
て歩いてみませんか?
梅のようで梅でない「ロウバイ」、どんな花なのか見つけてみて
ください。
そういえば夏にはまた「ウメモドキ(梅擬)」なんてヤツもあるん
ですよね。
日本人が身の回りの植物につける名前の、なんと身勝手なこと
でしょう。


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