Vol.15 - 27 Jan. 2002

去る1月17日に、2月2日公開のフランス映画『WASABI』の
ジャパンプレミア、つまり有名人や報道陣を集めて派手に催さ
れる試写会に行って来ました。
今回のは、東京・お台場のメディアージュで開催された、その
試写会で観てきた映画の感想などを書いてみようと思います。

さて、そもそもなぜこのような試写会への招待を受けたのかと
いうことですが、この「ノンキな通信」のVol.13でも書いたのです
が、昨年の5月14日から1週間、渋谷にあるゲームセンターを
借り切ってのロケ撮影に立ち会うことになったことがきっかけで
した。
そのゲームセンターは私の勤務先の運営する施設のひとつで、
今までにもSMAPの出演するCMのロケ地などとしても使用され
たことのある場所です。
そこでの1週間にわたる撮影は、連日午前中から深夜を超えて、
時には明け方まで続けられました。
私はその期間のうち、3日ほど夕方から深夜までの撮影に立ち
会ったわけですが、おしなべて滞りなく進められていくなかにも、
まあいろいろあった撮影と相成ったわけです。

制作者側から厳重に規制されていましたので、社内でも他部署
にすら言えないような状況でしたが、現場の内側は意外なほど
リラックスした雰囲気でした。
主演のジャン・レノや広末涼子とも言葉を交わすチャンスがたび
たびありました。
ジャン・レノはやはり大きな人という印象でした。背格好ももちろ
ん大きいのですが、ロケ地に到着して入ってきた時、一瞬にし
て現場の空気を全て入れ換えてしまったようなオーラも、その
わりにとても気さくな人柄も、それは圧倒的なものでした。記者
会見の席上で、共演できた喜びに思わず泣き出してしまった
広末涼子の気持ちもよく分かるような気がしましたね。そこにい
るだけなのに感じる圧倒的な包容力のような力がありました。
それから、「タイムクライシスU」というゲームを休憩時間にプレ
イしていたのですが、その姿はまさに“生・レオン”でした。
ゲームプレイヤーの後ろ姿に格好良さを感じることなど、意外と
ないものですが、いやぁ、彼は格好良かった。
声をかけたら返事をしてくれたのと同時に肩にポンと手のひらを
置いてきたのですが、その感触と大きさも忘れられません。
一方の広末涼子も、イメージしていたものとは全く違う好印象を
得ました。厳重警備下にありながらも休憩時間には、共演者や
スタッフと食べようとケーキを買ってきたり、フランス語のセリフ
の精度を高めるべく、リュック・ベッソンが録音したというMDに
真剣なまなざしで聴き入っていたり、集中力を維持しながらも
周囲の全員に気を使ったりする姿に、日本を代表する女優の
姿を見たような気がしました。見た目はふつうの女の子、でした
けどね。

さて、映画の感想ですが、私には楽しめた作品でした。
脚本にはなにひとつひねりも含みもないので、ハリウッド映画の
ような、これでもかこれでもかのド派手なシーンはありませんが、
出演者がきっちり演技をしているので、けっこう簡単に入り込む
ことができ、素直に楽しむことのできる作品でした。
製作のリュック・ベッソンは、数年前に流行った「TAXi」が日本で
公開する直前のテレビのインタビューで、再びフランス映画界に
活気を取り戻したいという気持ちで、若い映画監督にどんどん
作品を撮らせていると話していましたが、そういったもくろみが
充分に伝わってくる一本です。
60年代から70年代にかけて、スタイリッシュな「ヌーベルバーグ」
と呼ばれるフランス映画の波のあとに、ごくごく他愛もない、ただ
単純に笑えるというだけの娯楽作品が立て続けに日本で上映
されました。『リオの男』や『カトマンズの男』『華麗なる大冒険』
といった作品で、主演は「ヌーベルバーグ」で一躍スターになっ
た、ジャン=ポール・ベルモントです。
一説によると、これらのちょっとスタイリッシュなドタバタ喜劇映
画とジャン=ポール・ベルモントに大きく影響を受けて、漫画家
のモンキー・パンチは「ルパン3世」を描いたのだとか。
とにかくその頃のフランス映画は、日本にも次々やってきては
大人気を博していたという具合でしたから、本国フランスでは、
もちろん活気は最高潮だったはずです。
その頃の活気を取り戻したいということで、今回の『WASABI』
も作られているのだなということはよく分かりました。
あ、いまさらながら付け加えておきますが、『グランブルー」や
『レオン』『ニキータ』などを作ったリュック・ベッソンが製作だから
といって、これら作品のような「最後には涙うるうる」は、この
『WASABI』には求めないでください。製作の目的が違うので
すから。
どうか、先入観なしで、期待感もなしで見ることをお勧めします。
フランス人の求める「いかにも日本的」なシーンの連続に心の
中で「そんなことないってば!」と軽くツッコミを入れながら、ヒロ
スエのフランス語はなかなか流暢だぞと感心をし、ロケ地をみ
ながら「あ、ここ知ってる、行ったことある」などと思いながら明る
く見終わるのがこの映画を満喫するための秘訣でしょう。
「久しぶりに映画館に観に行く映画」もしくは「久しぶりに観るフ
ランス映画」ということで観るには、とても気軽な作品でお勧め
です。

個人的にはロケ立会から試写会まで楽しめた作品でしたが、ロ
ケ地では、フランス人スタッフがいとも簡単に約束を破ったり、
酔っ払いとしか思えないようなシラフの男にからまれたりと、それ
なりの苦労があって、その結果思い入れも少しは芽生えて、日
本での公開を期待するようになっていました。腐れ縁というわけ
ではありませんが、立会をしたシガラミで、ロケ地での印象をしゃ
べってくださいということで、テレビのワイドショー番組のインタビュ
ーも受けました。しかし番組では「ロケ地はここです!」という流
れでありながら、お店の名前が出るわけでもなく、店内の様子が
ただ漠然と写される画面の隅にホンの小さく、「誰これ?」と思わ
れているんだろうなぁ、名前も出ずに私の顔が出て、訳のわから
ないことをホンの数秒(ワンセンテンス)喋っている様子が流され
ました。因みに、番組名は「レッツ!」(日本テレビ系)でした。

ああ、なんだか最後には自慢話みたいになってしまいましたね。
とにかく、楽しい映画できたのでみなさんももし、機会とおヒマと
財布に小ガネがあったなら、映画館に脚をお運びください。
で、ついでにロケ地をめぐろうということで、INTI渋谷にも行って
ゲームのひとつもプレイしていただければ幸いです。と、営業ト
ークも入れとくか。(結局、ゲームセンターの名前言っちゃったよ)

最後に試写会でのジャン・レノと広末涼子の様子を添付して、
今回の「ノンキな通信」を「Fin」といたします。


                      (撮影:Babaちゃん)


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