Vol.6 - 15 Apr. 2001

先日電車の中で、高校生と思しき男の子たちが「肉喰いてぇ!」と
騒いでいる場面に出くわしました。いかにも高校生の男の子らしい
場面だと思いますが、男の子なら誰もが一度は切望し「肉喰いてぇ!」
と叫ぶはずだとお思いの女性の方々、それは大きな勘違いです。
魚も大好きな私は「肉喰いてぇ!」と切望したことは、思い出せる
限り一度もありません。
ところでその「肉喰いてぇ!」について、彼らは具体的にどんな肉を
喰いたいのでしょう。
じゃあ肉を喰わせてやろうと、彼らの前に茹でた鶏の胸肉やササミ
を出しても、「やったぁ、肉だ!」とは喜んでくれないでしょう。山盛り
のレバーを出したらどうかなと思ったところ、然る方より「レバーは肉
じゃなくて内臓でしょ」と突っ込まれてしまいました。
彼らは肉汁滴るステーキや焼き肉を想定していて、「肉喰いてぇ!」
とは「牛肉をたくさん喰いたい!」ということなのだということが、わか
ってきます。だったら初めからそう言えよ、って感じですが、豚肉や
鶏肉では駄目なのでしょうか?
オヤジ好みの昼定食の定番は「豚の生姜焼き定食」ですし、挽き肉
ではない肉のファーストフードといえばKFC(ケンタッキーフライドチキン)
の鶏もも肉。
私がおいしい肉がたくさん喰える料理と言われて思い出すのは、モン
ゴル料理のふわふわになるほどやわらかく煮込んだ羊料理「チャンサ
ンマハ」 (この場合の羊肉は“ラム”ではなく“マトン”)です。
そんなことをお気楽に考えている私ですが、一方、ヨーロッパでは英国
やアイルランドを中心に、数年前の狂牛病被害に続いて、口蹄疫(こう
ていえき:foot-and-mouth disease)の被害が深刻で、家畜の輸出入の
規制だけでなく強制処分などが行なわれ、特に英国では国全体の
GNPやGDPも大きく下落してしまったと聞きました。また影響で、牛
以外の肉に注目が集まっていて、オーストラリアからのカンガルーや
馬の肉の輸入が増え、それらが売れているとも報じられています。
ヨーロッパは元来、牛に食生活のほとんどを依存して発達してきた
民族の集まりで、口蹄疫そのものは人体への直接的な影響はない
とは言われていますが、牛や羊への感染を防ぐために流通を止める
ことによって結果的には周辺に住む民族の従来からの食生活の源が
覆されようとしています。
被害は甚大などという以上に、底知れないことが起きようとしている
ような気がします。
人間が自然を破壊することによって乱されてしまう生物の生態系や、
輪を描けなくなって途切れてしまう捕食関係。人間はこういった事態を
無視して独善的に開発行為を進め、その結果ついに人間も主食として
きたモノが食べられない状況に陥ったのではないか、そう思えてなりま
せん。
ユーラシア大陸の西端の島国がこういった被害に苦しんでいても、同じ
大陸の東端の島国では高校生が、特に心の底からというわけでもなく
お気楽に「肉喰いてぇ!」などと叫んでいます。
「喰わなきゃ死ぬ」という事態が、そこまで迫ってきているのかもしれない
というのに…。


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ノンキな通信  I.Z.'s Attic




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