Vol.3 - 27 Jan. 2001
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朝の通勤電車も、都心に真っすぐ向かう路線でなければ吊革を
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持ちながら少しは余裕をもって新聞を読むことだってできる。
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隣の吊革のおじさんは、器用に縦長に折りこんだ新聞を読んで
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厚手のジャンパーにノーネクタイのおじさんは、朝から官能文学。
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隣の私は、それじゃあ覗き込み様もないと、裏に来ているページ
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電車の中で隣合わせになった人の読んでいるものというのは、
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なんだか気になるもので、ついつい目が行ってしまう。
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乗り出してしまいそうになるほど見てしまうのは、やはり雑誌で、
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新しいお店、新しいクルマ、新しい情報機器。写真を眺めてから
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その写真に添えられたコラムやキャプションを読んでしまうのだ
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けれど、時々せっかくいいところまで読んだのにページをめくら
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そんな時は、思わず「あ、まだ読んでない!」と言いそうになる。
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コラムのオチが気になったり、中途半端に写真だけ見てしまって
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「え!? 今の何、今の何?」と後を引いてしまったりすると、もう
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これはちょっと中毒症状にでもなったような感じである。
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さて、一番最初に出てきた隣の吊革で官能小説を読むおじさんの
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新聞。私の見た裏面にさせられているページは、どうやらテレクラ
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それは、改行した後の2行目から唐突にはじまるひとことだった。
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もちろんこの「…」には金銭や時間的な情報などが続いているのだが、
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この最初の太字で書かれた「がりの女」という部分がとにかく私の
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縦折りにされて向こう側を向いているはずの、この「…」部分には
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ふとそう思ったら、いっぺんに頭の中がいっぱいになってしまった。
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「“寂し”がりの女」、「“悲し”がりの女」。両方とも本当は「の女」では
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なくて、「な女」でなければ、文法的にはいけないはずである。
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でもテレクラで誰かを求めているならば、寂しがりの女でも悲しがり
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の女でも雰囲気はわかる。「“なに”がりの女」なんだろう。
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この甘ったれた世の中で結構いけそうなのは、「“強”がりの女」。
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弱さをちょっと見せることで母性本能をくすぐるタイプなのかも知れない。
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「“くやし”がりの女」はS系。「もぉ、くやしいったらありゃしない!」と
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「“した”がりの女」とか「“やりた”がりの女」なんていうのも考えられる。
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「“甘えた”がりの女」なんて、けっこう、めろめろになる男、多そう。
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…まさか、「“がり”の女」はそのまんまで、実は鮨好き?
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冗談はさておき、このくらいまで考え込んでしまうと、もう答えを
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知りたくてしかたがなくなる。いったい「“なに”がりの女」なんだぁ!?
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痩せ細った「“がりがり”の女」まで考えた時だった。
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おじさんがページをくるりとめくって、その一瞬に、わずかに右側に
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携帯電話でのメールや情報収集で時間の有効利用を計るのもいいけれど、
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こんな風に頭を使うこともまだまだ電車の中にはあるものなんだ。
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まあ、携帯電話もマナーを守らなくてはいけないけれど、他人の覗き見も
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マナーとしてはあまりいいこととはいえないから、気をつけましょう。
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ノンキな通信 I.Z.'s Attic
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