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第7章 接写

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 一眼レフがその競争者であった距離計連動カメラより元々圧倒的に勝っていた機能として、ファインダーで見たままの像を画像とすることができるという点です。この機能があるために容易に行える撮影方法として接写があります。

 一眼レフの交換レンズについて焦点距離を考える場合、無限遠にあるものを撮影する場合を基準としています。この場合、レンズ群は最もカメラに接近しています。その状態から近くのものにピントを合わせるためには、一般的な方法として、レンズ群全体を撮像面から離していきます。このための装置がヘリコイド装置であることは先に述べました。しかしながら、ヘリコイド装置で繰り出せる長さは限られています。標準レンズの場合、最大で繰り出しても、撮像面から45cm程度のものにピントを合わせることが限界です。それより近くのものを撮影したい場合、カメラと交換レンズの間に接写リングやヘリコイド装置を挟みます。それによりレンズ群は大きく繰出すことが可能です。

 そうして繰り出していくと像倍率が等倍を越えて行きます。そうなると、交換レンズは前後を逆にした方がより良い画質を得ることができるようになります。

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 その理由は、上の模式図のように、被写体からの光線のレンズへの入射角と出射角が等倍付近に繰り出したときに逆転するからで、レンズを逆向きにした方が 、レンズ設計において予定している光路により近く出来るからです。

 等倍以上の撮影においては、レンズを逆付けした方が良いということもその理由の一つとして、マクロ交換レンズでは、等倍までの製品がほとんどです。

 交換レンズを前後逆に用いる場合、交換レンズに組み込まれているフォーカス装置は当然使えません。ベローズ装置やヘリコイド接写リングの併用が必要となります。それらに交換レンズを取り付けるためのリバースアダプターが用意されています。

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 等倍以上の撮影を行うためには、交換レンズの焦点距離と同じ程度以上繰り出さねばなりません。その方法として、接写リングを重ねて挟んだり、ベローズ装置を用いたりすることが行われています。 これら接写に使うアクセサリー類について、以下に述べることにします。

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1 マクロレンズ

 マクロレンズと称されるレンズがあります。PENTAXにおいても、Takumer50o/F4を始めとして、歴代のシリーズにおいて作られてきました。 当初は全群繰出し式であったため、等倍撮影に必要な長い繰出し行程を得るためにダブルヘリコイド方式のものもありましたが、それでは自動絞りとの親和性が無いので、 後年シングルヘリコイドの1/2倍のものに変更になっています。

 マクロレンズは接写時に画質が低下しないように収差補正したレンズです。書画などの平面の複写を想定していますから、歪曲収差を特に除去する設計になっているものが多いようです。画面全体に渡って解像力を一定以上に確保することも、コントラストの高さも要求されますし、また、周辺光量の低下も極力少なくする必要があります。

 虫や花など立体的で小さなものを拡大撮影するときの前後のボケ具合を重視する要求に対応を特化したマクロレンズも登場しています。一般撮影の延長としての用途としては、これの方が需要が多いのでしょう。平面撮影性能については疑問符の付くものでも、立体感の描写が優れているために称揚されているマクロレンズがあります。

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2 接写用アクセサリー

 接写用アクセサリーの代表は接写リングです。一眼レフカメラの最大の利点は、カメラ本体と交換レンズの間にアクセサリーを挟むことができることです。接写リングは前後にマウントを設けたただの筒ですが、自動絞りなどの連結機構を組み込んだものをオート接写リングと言います。筒の長さが異なるものを3個セットにしているものが一般的です。 オート接写リングの場合、オート機能作動の制約で連結の個数に制限があります。

 接写リングの中にはヘリコイド装置を組み込んでいるものもあります。これは筒の長さを可変にしているので、接写距離の調整が容易になります。自動絞りなどの連結が出来ないのですが、K-5などデジタル一眼レフで使う場合、旧Kマウントレンズの自動絞りをキャンセルできることで実絞りAEが可能になる利点があります。

 接写の時にはレンズを繰出すことで実効F値が暗くなるためにシャッター速度が遅くなるので三脚を使用することも多く、そんな時には精密なピント合わせのために、ファインダー像を拡大できるマグニファイヤーがあると便利です。また、低い位置にセットしたカメラのファインダーを見るために上から覗けるレフコンバーターがあると撮影姿勢が楽になります。

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3 ベローズ装置

 究極の接写装置と言えるのがベローズ装置です。 レンズを取り付けるレンズ台座とカメラを取り付けるカメラ台座とに分かれており、これらを繋ぐのが光を通さない特殊な加工がされた紙で作られた蛇腹です。レンズ台座とカメラ台座はレール上を動くことでその間隔を変えることができます。繰出し量が大きく、その可変幅が大きいので、操作性は快適です。また、ダブルレリーズを併用することで自動絞り的に使える製品もあり、アダプターを使用せずともレンズ逆付けできるものもあります。

 レンズ台座にあおり装置を備える製品もあり、それを用いると、故意に光軸をずらすことで得られる特殊な撮影も可能です。

 レールが折り畳める製品も作られました。携帯時にコンパクトにするという目的で考案されたものですが、レールの関節部強度が不足していたために、後世に残ることはありませんでした。PENTAXもSマウント時代のAPやK、S2時代にBELOWSCOPという名称で販売しています。

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(以下書きかけ…)

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