JR山手線や埼京線、りんかい線などのターミナル駅となった
大崎駅の東口には、大崎ニューシティやゲートシティといった
高層のオフィスビルを中心とした複合施設が並んでいます。
1982年に東京都の副都心と位置づけた再開発が開始され、
今ではすっかりきれいな町並みに整備されています。
大崎駅から見てビル街の裏手に、目黒川が流れています。
以前は、東京のみならず、全国でも有数の汚れた河川として
有名でした。
しかし、近年では川の浄化活動、水質改善活動が功を奏し、
また下水道の普及もあって、目黒川とその周辺の環境は見違
えるほどのものになりました。
そんな水質改善活動の一環として、2004年11月9日から開始
された、御成橋(おなりばし)での再生水の放水を見に行って
きました。
この辺りの目黒川は、川幅は30m程度で、両岸はコンクリートで
固められた開渠のような状態になっています。ですから、川とは
言っても水辺はなく、ふだんの日は水面をかなり下に見下ろし、
速い流れがあるわけでもないので、以前の汚れて悪臭が漂って
いた頃には、それはひどい状態だったのだろうということが容易
に想像できます。
御成橋は、大崎駅東口の大崎ニューシティの裏手、目黒川に
沿って五反田方面に200mほど上った場所、品川区大崎5丁目
と西五反田2丁目の間に架けられています。
現在架けられている橋は鉄製の近代的なものですが、その昔
は江戸時代に、将軍が鷹狩りに行く際にこの橋を渡ったそうで、
「将軍のお成り~」が、その名の由来なのだそうです。
とにかく、ふつうの時間帯には、都内では神田川や小名木川、
横十間川などでもよく目にする、至って一般的な鉄製の橋で、
片側1車線の道路の両側に幅2mほどの歩道のある、ごくごく
ふつうの橋です。
(橋そのものとしては、100mほど下流にかけられている歩行者
専用の“すずかけ橋”の方が、アーチもかけられていて、見た目
では楽しいかも知れません)
さて、“再生水の放水”ということですが、どういうことかといえば、
川に向かって橋の上から放水して、澱みがちな川の水に水流と
酸素を送り込もうというものです。
その水は、下水を芝浦にある水再生センターで再生した水で、
一般的にはいわゆる水道水とは違って、トイレや散水用などの
飲料としてではない目的で使用される水道で、上水道や工業用
水道、下水道などに対して、中水道と呼ばれている水道を通る
水です。毎朝8時半以降、毎時00分から、1回10分から20分程度
の放水がおこなわれます。
夜間はライトアップもされ、また橋の南西側、大崎5丁目側には
説明パネルが立てられ、これも風力発電と太陽電池によって、
夜間照明が灯るようになっています。
これらの施策によって水質改善だけでなく、水辺や地域の環境
イメージの向上を図っています。
橋の周辺も再開発が進んでおり、遊歩道や公園などが整備され
夏場は清涼感があるでしょうし、夜間はもっと雰囲気が良いので
しょう。
ボクが訪れたのは、12月初めの薄日の差す昼下がりでしたが、
放水が始まるまで、橋の東五反田2丁目側にある公園のベンチ
で、周辺の景色や空を眺めながらぼ~っと過ごすのも悪くないと
思いました。
そして放水が始まりました。
噴水のようにいきなりしゃーっと放出されるのではなく、まるで係
員が重いバルブをよいしょよいしょと回しているかのように、始め
は太く力のない水流がノズル直下の水面にじょぼじょぼと零れる
ような音を立て、それがやがて勢いよく裾を広げるように弧を描き
ながら広がるようになって、水のスクリーンを形作ります。
高度経済成長期の匂いのする大きな工場に、今どきの無機質な
オフィスビル。整備された歩道にアースカラーに彩られた完成した
ばかりの高層マンション。公園といってもカラフルなコンクリートに
ゴムやプラスチックで表面がカバーされたカラフルな遊具が並び、
そんな中を流れる目黒川もまるで運河のよう。
大都会の片隅に用意された憩いの空間は、 “自然”というものが
一切見受けられない場所でしたが、そこにこれまた人工ではある
ものの、ひとつの水流が加わった時、意外にもなんだかちょっと、
ふっと一休みできる時間と空間が生まれたような、そんな気がし
たのでした。
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大崎駅から新木場に向かうりんかい線の電車

一見、どうということのない橋

欄干の銘板も遠慮気味な「おなりばし」

御成橋の説明パネル
(川の水質改善と水の再生について)

放水が始まった!

薄日ながら水煙に虹がかかる
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