Vol.1 - 23 Sep. 2000

自分自身もいつの間にか『IT関連』業界に身を置いている
わけですが、パソコンやインターネット、携帯電話などは
知らず知らずのうちに、本来はあまり必要性がなかった
はずの人々の間にも確実に入り込んでいるようです。

@URL
先日、会社帰りの電車の中で、ほんの一杯だけ呑んできた
という風情のもう定年間近だろうと見受けられるおじさんと
おそらくそのおじさんと役職的には変わらないのだろうけれど
若干後輩にあたるのだろう、これまたおじさんが、ちょっとだけ
ふらつきながら翌日に予定されているプレゼンについて
喋っていました。
「お前、明日のプレゼンのホームページ、覚えてるか?」
「ああ、メモに書いてありますよ。机にあります」
「あれだぞ、お前。あのページだぞ。インターネット開いてだな…」
「ああ、わかりますわかります。今はちょっとメモがないけど…」
しかし先輩おじさんは後輩おじさんの話などちっとも聞いていない。
先輩風(かぜ)を吹かすというか、あるいは上司風とでもいうべきか、
とにかく説教口調に拍車がかかります。
「インターネット開いてだな、こう打ってけばいいんだよ…。
エッチテーテーピー、コロン、ななめななめてん、三ダブルてん…」
おじさんたち、がんばってインターネットの使い方、覚えたんだなぁ…。
もうひとがんばりしようとする古参中堅管理職の努力と悲哀、
見た気がしました。

Aインプット
その翌日、これまた帰りの電車の中で。
おばさんはおじさんに向かって変わり行く最近の電車や駅について
ひとしきり文句を訴えています。
「目蒲線なんか目黒まで行きゃしなくなっちゃってさ、多摩川園で
降ろされちゃうんだよ。田園調布すら行きゃしなくなったんだよ」(※1)
「ふぅん」ひたすら聞くおじさん。
「今までは田園調布で隣の電車に乗りゃ良かったんだけどさ、
今は多摩川園で降ろされちゃって階段昇んなきゃいけないんだ。
まったく、新しくなって不便になるってどういうことよ」
「ふぅん、そうだなぁ…」
「ったくよ」
そんなおばさん、今度は向かい側の席で携帯電話をいじっている
高校生ぐらいの女の子を見つけて、おじさんに訴え始めました。
「ったく、電車ん中では迷惑になるから使うなって言ってんじゃないの」
「ん? どこ?」
「あれよ、あの3番目の女。手の中に機械があんじゃないの」
「ああ、あれかぁ」
「今こんなとこでやんなくたって、家でやれってのよ。頭で覚えときゃ
いいのよ。自分の頭に“インプット”しろってんだよ」
このおばさん、パソコンと携帯電話を混同しています。
両方ともその「機械」の名前は知らないようでしたが、“インプット”
などというパソコン登場以前には聞かなかったような言葉は
どこかで覚えたようでした。

首相自ら旗振り先導すれども、なかなか具体的には進まない『IT革命』。
しかし末端ではゆっくりではあるものの確実に変わりつつあるようです。
本来「革命」とは、急激な変化がもたらされることを言うのですけど。



※1 目蒲線:
この話の文脈からすると、正確には「東急多摩川線」のこと。
それまでの東急目蒲線が、この年の8月に途中駅の「多摩川」を
境に目黒寄りの「目黒線」と蒲田寄りの「東急多摩川線」に分離された。
それに伴い、都心に向かう路線ではなくなった「東急多摩川線」では、
乗り換えや接続等で利用者に不便を強いることになった。


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