1. 真夏のスタート

とはいっても、まず先立つものがない。一般の方は医者というとやたら金持ちというイメージをお持ちですが、勤務医はなかなかどうして、苦しいものがあります。そこで、とにかく自己資金ゼロ開業が可能かどうか、という話がすべてのスタートラインになります。

2004年夏。暑い日でした。東京の本郷は医療器械メーカーの「秋葉原」状態。その中のS医科工業の関連会社である、医療コンサルタント「メディカル・コンサルト」の応接室に私はいました。S医科工業とは昔から手術機械を使う関係があり担当者に紹介してもらったのです。当然、開業の手伝いをお願いしに来たわけです。とりあえず金はない、開業したい、場所探して、成功させて。何て無茶な相談でしょう。しかし、冷やかしではないので、こんな無茶な相談ができるわけで、これはもう本音でいくしかないだろう。今更、かっこつけてもしょうがない。

ところが、その頃メディカル・コンサルトは地方で大きなプロジェクトを抱えていて、それにかかりっきりだったのか、金がないので無理と思ったのか、その後連絡がありません。こっちも本気モードですから、いつまでもただ時間をつぶしているわけにはいきません。

もう、これ以上待ってられない、と思っていた11月の初め。やっとメディカル・コンサルトから連絡をもらって、2回目のミーティングをすることになり、実質的に作戦がスタートしたのです。とりあえず、名刺は大事。医者は、薬品会社や機械メーカーから名刺をもらうことはあっても、その度に名刺を渡したりしません。意外と世間知らずで、名刺を持っている方が、「偉そう」という感じで見られる。しかし開業するなら、まず最初にすることは名刺を作ること。