リンドナートラムの走った日

2025年7月23日
 
 

ドイツのほぼ中央に陸の孤島とも思われるナウムブルグという旧東独の小さな町があります。そこにわずか片道2.5キロの路面電車がDBの駅まで単車のトラムが走っています。4両が動態で、3両のゴータが稼働しています。もう一台は1927年の統一ドイツ時代にリンドナー社が製造したTw17型単車のトラムが動態で保存されています。恐らくリンドナー製の単車トラムが動態保存されているのはここだけだと思います。ハーレの市電から来たものです。この戦前のトラムを大切に修繕し動態保存しているのはこの町の小さなトラム会社Naumburger Straßenbahnです。早めに予約したら7月23日の2時から走らせてくれるという承諾が来ました。更に担当者は「1時間かけて走るから、ここで停まれ等の 指示を出してくれれば写真が撮れるように運行する」との有難い返事も来ました。私はこの100年前のトラムの走行が撮れたのが今回私の最後の渡欧の最大の収穫でした。数年前は通常運転に入っていましたが、ホイールベースの長いことが、路線の勾配や急カーブの線形に合わず、特別走行以外は使用されなくなっていました。
 
 
 
 

 

路線のほぼ中間にある本社デポの前に行くと初めて見るリンドナー製「Tw17」トラムが出発線に出ていました。素晴らしい! ゴータとはまた違う美しさです。


 
 
 
 

ゴータの運転台とは全く違います。担当者は技師で運転士でもありますが、聞いても私が分かりません。


 
 
 


車内は1-2の座席でシックな木製の座席です。とてもきれいに手入れがなされています
 


いよいよ出発です
 
 

方向幕には「特別走行」が表示されました。最初はDBのナウムブルグ駅に向かいますが、ほとんどが道路と並行しているため撮れる場所は限られるので、折り返しの緑のある場所を選んで止めてもらいました。運転士が走行しているようにしっかり立ってくれています。横から撮りたかったのですが、道路の右端には各家の車の駐車場として車が縦列して並んでいます。  Postring電停付近

 

  



この日は晴れたり曇ったりで、この時だけ突然、晴れ間が出ました。露出を変える時間もなく、ややオーバー気味になりました。 Jager Platz電停付近 



 
 

 
ここは交換駅です。道路がすぐ脇を走っているので背景にベンツやVWなどの、車が途切れた時を狙ってシャッターを切ります。私は通常
ゴータを撮る場合も、必ず画面からクルマを避けます。古いトラムには時代としてふさわしくしくないからです。    Becker Platz電停
 






終点のSalzter電停です。ここは車が多くて道路側から撮るのは危険です。

 
 




終点なのでこの先は線路はありません。運転士は反対側に移動です。信号が青になって一斉に車が来ますがその前に1枚だけ撮りました。







1往復だけなので、反対側の道路の向こう側から狙うのは被りのリスクがあります。どうしても安全な場所になりますが、ここはバックに教会のようなクラシックな建物があるのでトラムと一緒に撮りました。あとで調べるとSecondary Alexander von Humboldt というフンボルト財団の高校でした。研究に熱心な世界の若者を受け入れるこの学校がナウムブルグにあるとは知りませんでした。ドイツには鉄道に限らず、驚かされることの多い国です。    Becker Platz電停
 
 
 
 
 

 
後ろのフンボルト学校を入れるとどうしても電停看板柱が入るので、これも車の途切れた時にトラムだけを撮りました。






ここでゴータと交換するから撮れ、との運転士さんの指示でリンドナーとゴータの並びが撮れました。車は避けられませんでしたが、記念すべき写真です。







丁度1時間後に、デポに戻りました。ここは本社の事務所ですが、9月20には創業133年のお祝いイベントをするようです。







デポと隣のビルとの間に留置線があり、今にも走りそうな、ゴータ群がいました。イベントには出てくるかもしれません。パンタを上げています。




最後に:
従業員はわずか10人程度で経営状態も悪く、市からの補助金も滞っている中、女性も含む職員
はハードな仕事をこなしています。それでも ゴータやリンドナーに対する愛着は深く、技術も高い彼ら
は、町の住民の足として頑張っています。末長く、歴史に残る車両たちを守って欲しいと願っています。