コロナ禍で2年ぶりの渡独


久しぶりにドイツの鉄道を見ました
 
 
2021年9月1日~9月7日

 

パンデミックのさなかの6月、ドイツにIGEという鉄道旅行専門の旅行会社があり、そこが計画している6日間の蒸気機関車で楽しむツアーと言うのがあるのを知りました。ただ、当時ドイツは日本をコロナ感染拡大危険国に指定していて、入国は実質的に不可能でした。
ところが7月6日にドイツは日本を危険国から外し、ワクチン接種とPCR検査の陰性証明だけで入国可能になりました。同時にツアーの詳細も明かになり、この会社の強烈な鉄道ファンでもある社長がスイスの団体に引き取られた01 202を軸に、スイス客も誘致し、ドイツで保存の機関車を一気に使ってドイツ南西部に6日間、特別列車を走らせることも分かり、私は日本で全ての証明をとってドイツに行く決心をしました。8月末に出発、無事9日帰国しました。10日間滞在しましたので、このツアーが走る南西部を中心に、他のとても楽しく、歴史的な素晴らしいイベントも一緒に撮ってきました。(ドイツも規制されていたイベントを今春から再開しました)
しかし滞在中の9月3日にドイツは、日本を再度危険国に指定しました。私は本当にきわどいところで渡独出来たわけです。これが解除されるのが何時になるのかは不明で、実質再び渡独は不可能になりました。ドイツは厳しすぎるほどコロナの抑え込み規制が徹底していて、滞在中に7回もPCR検査を受けなければ、ホテル宿泊、レストランの食事、州をまたぐ移動が出来ず、また感染にも気を付けながらの旅行でしたので、肉体的にもさることながら精神的なストレスの疲れが今、どっと出ています。今までの地図を片手の気ままな旅行とはだいぶ違いました。
 
 
 

IGEツアー列車


これだけのコースを6日間で走る列車はかなりの高速で、日中の停車駅も少なく、追いかけるのには限度があり、
走行写真撮影は1日で2、3枚が限度です。のんびり走る地方のローカルイベントとは違い、難しい撮影でした。

 



 
1日からスタートしたツアー列車。まずはコンスタンツからスイスの豪華客車を牽引して01 202(これは元は西独の01でしたが今はスイスの団体が所有)の牽引で今日はシュトットガルトに向います。ここはジンゲン先の上り勾配で、01が1両で凄いブラスト音とともにやってきました。ファンやビデオのクルーも来ていました。好きではない202号ですが、取り敢えずはドイツで最初の撮影ですので気合を入れて試し撮りです。     Singen


 

 
 

 
Rottweilで待機していた旧東独機01 519がここで前補機で連結されます。久しぶりの改造01東独機はやっぱりカッコいい。
 
 
 
 

 
 


今回のツアーの主軸機関車は状態を最高に仕上げられて本務機で通した202号機です。私はそれより01 519の方がお目当てでした。  Sulz
 
 
 
 
 
 
 

 
問題の2日です。シュトットガルトをなぜかこの日は遅く出発した202+519列車は平地をリンダウに南下します。そしてリンダウから前補機は待望のネルトリンゲンのS3/6 に替わります。今回のハイライトは2日と言っても過言ではありませんが、リンダウをすでに夕方出発するツアー列車はここから一気にアウグスブルグまで突っ走ります。一番悪い時間帯に走りますので、順光で撮れる場所は限られてしまいます。ここはヘルガッツのΩカーブの先で正面に陽が当たるところです。ところが、なぜかリンダウを20分早発した列車は、このカーブを想定外時刻にやってきて、土手下にいた私は慌てて駆け上り撮った1枚です。これはちょっと反則気味。おかげで爆走してきたS3/6 に5秒、間に合わず煙の上が切れてしまいました。しかも線路際だったので4気筒の水蒸気をまともに浴びました。ちょっと泣けました。     Oberstaufen
 
 
 
 
 
 
 
 
 
機関車が一番美しく撮れる角度です。2両のパシフィックが轟音を立て、高速で勾配を登っていきました。S3/6はボディから蒸気を吹き出しています。  Hergatz
 
 
 
 
 
 
 


今の陽の長い時期は夕方6時過ぎでも撮れます。ここはケンプテンの先のお立ち台で重連列車はS字勾配を怒涛の如く登ってきました。私は本務機の202が隠れるまで待ったため、少しピンがズレました。勘がかなり鈍っています。ここにはファンは20人以上いましたが、彼らは逆光だろうが4気筒機関車の本気で勾配を登る姿を撮りたかったのでしょうね。   Kempten
 
 
 
 
 
 
 

 
この日最後の1枚です。日没直前の7時前、ド逆光ですがファンは夕日を入れて撮っていました。私はS3/6だけをいつものスタイルで撮りました。
 
 
 
 
 
 
 

 
9月3日は本来 41 018 の牽引予定でしたが41形が不調の為、アウグスブルグから朝一番はS3/6 が牽引するとのことで朝の順光で狙いました。01 202は 4日、5日も牽引するようでしたが、私は6日に予定されているネルトリンゲンの01 066を狙う事にして他のイベントに移動しました。驚いたのはこの列車はS3/6 3673号が補機なしの単機で走ったことです。それだけ整備されて調子が良かったんですね。
 
 
 
 
 
 

 
6日はツアーの最終日で、コブレンツからシュトットガルトに、ライン川沿いに走り、ビンゲンから南下するので光線は抜群です。今回の第2の目玉であった唯一東独の原型01 066の前補機を期待したのですが、なぜか同じバイエルン鉄道博物館の01 180が先頭でやってきました。肝心の066号が前補機に出ないまま、途中の予定路線のアクシデントもあって別線迂回してシュトットガルトに向いました。昔の西独のファンには180の方がいいのかもしれません。(旧西独内ですし)従って実質これが最後のツアー列車の撮影となりました。それでもS3/6 の本気度100%走行が撮れたのが、何よりの収穫でした。(^^)







バーデン58 311と UEFロカルバーン75 1118の共演
 
 
 

 
奇跡の復活を遂げた75 1118 と希少な58 311の並走・重連が黒い森で4日に実現しました。早朝のハウザッハで待機する主役たち。 9月4日
 
 
 
 
 
 
 

 
2両の共演の前に、シュトットガルトから今日のイベント列車に参加する乗客を乗せてドイツの「クロコダイル」E94が到着しました。  Hausach
 
 
 
 
 
 
 

 
E94でやってきた5両の客車と給水タンク車で3両ずつに分けられた2編成は、ハウザッハを9時45分に発車。黒い森に向って勾配を登ります。ここで2編成は追いつ抜かれつの並走をやります。しかしこのように両方が撮れることは滅多になく、この場合58形が先に来たら75形の列車は被られて並走と言う事が分かりません。乗客は身を乗り出して並走を楽しんでいます。唯一の撮影方法は長玉ズームで遠近調節可能にして、この様に双方が接近した時に切ることです。あとは運を天に任せるだけです。「黒い森」は崖淵を走るので、まず撮影場所がありません。      Gutach
 
 
 
 
 
 
 

 
黒い森の途中駅ホルンベルグで58形列車は75形列車を抜き、トリベルグまで先行してやってきます。2番線に入り後から来る75形列車を待ちます。
 
 
 
 
 
 
 

 
普通列車を挟んで30分後に75形牽引列車が3番線に到着します。ここで列車は1本化されます。58形が75形の先頭に付き重連になります。








 
58形が75形の前部に連結される寸前です。いつもは静かなトリベルグの駅はファンや乗客で、もうワヤの状態。出発など撮れません。








 
仕方なく峠を越えた下りの停車駅(貨物列車退避のためしばらく停車)ビリンゲンで、重連を撮りました。レンガ造りの駅舎がいいです。ここで重連の出発を狙いましたが、真夏と下り勾配のため煙は見えません。ここは工事中で撮りにくい駅でした。 調べてみても黒い森をこの古典機関車2両が並走や重連で走るのは私の記憶にはないですね。それだけ貴重なイベントでした。   Villingen








 
 

 
この日は日曜日。一旦解体された軌道を手作業で修繕開通させ、古典B形SLと貴重なDCが走ります。朝から親子連れやファンで大賑わいでした。このチビロコは、WN 12、「リーゼル」と呼ばれ、生まれは1913年です。2020年4月に復活しました。信じられない経緯の機関車と路線です。 Neresheimにて
Härtsfeld-Museumsbahn - Tradition und Zukunft auf der Schwäbischen Alb - YouTubeこのビデオをご覧になれば、一旦全廃された鉄道を、有志のボランティアが如何に復活(途中までですが)させたか、その苦労や歴史的背景もお分かりいただけると思います。これぞ、鉄道に賭けたロマンと言えます。
 
 
 
 
 
 
 

 
これまた凄いDCです。1934年に製造され、ここではT33と名付けられ形態も大きく変わっています。これが復活して走ると言うのが素晴らしい!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今日の一番列車は、トレーラーを連結したT33です。ドイツの美しい田舎風景を走るこの姿を見ただけで、遠くまで来た甲斐がありました
 
 
 
 
 
 
 

 
次は1時間半後に、WN 12「リーゼル」に牽引された列車が来ました。よくぞきれいに復活したものです。お尻にトレーラーを付けています。
 
 
 
 
 
 
 

 
当然、復路はSLはバック運転となります。朝、水をくべていた少年もキャブに乗っています。100年以上前の機関車とは思えません。









起点のネレスハイムから5分くらい歩いて線路を見上げると、バックに美しいネレスハイム修道院が見えます。最後はこれと「リーゼル」とのコラボで決めました。ネレスハイム修道院は18世紀に建築された南ドイツ最大のバロック様式修道院で、必見の価値ある歴史的建造物です。時間があれば見学したかったですね。

 
 
 
あとがき
 
ご覧のようにドイツのイベントは日本のように豪華列車を走らせたり、旧型客車は殆ど存在しないので新しくディーゼルエンジンを積んだ客車(?)に改造したり、華々しいヘッドマークを付けたりは絶対にしません。お客も昔のままの板張り椅子の客車を楽しみます。オリジナルの姿を大切にしています。またボランティアが徹底していて、手作業で鉄道を復活させたり、いかにファンを楽しませるか、工夫をしています。なお、いつも思うのはドイツでは、一度も若者や子供がカメラを持って必死になっている姿を見かけないことです。ですからマナーが徹底しています。また無粋な柵や高いフェンスもありません。そういう意味では落ち着いて撮れるお国柄です(自己責任が徹底している証拠です)。手作業でオリジナルに修繕、復元が大半です。それはDB(日本で言えばJRや私鉄)とは別の保存団体が寄付等によってしっかり活動しているからだと思います。
日本のように、本体の鉄道会社が採算を度外視して保存運行するには限界があると言えるでしょう。