三脚・一脚システム収蔵庫

 

前書き

 カメラ撮影に幅を持たせる装置として三脚や一脚があります。遅いシャッター速度のブレ対策としてだけでなく、パノラマ撮影やベローズ装置の使用など、様々な撮影方法を可能にする重要な装置です。この三脚や一脚を利用したシステムの構築が、カメラを操作する楽しみを増幅させてくれます。そんな重要なシステムの要素となる機器のうち、亭主が所蔵するものをここに収め、それらについて若干の 批評・感想などを述べます。

概説

 三脚や一脚には必要とする「高さ」というものがあります。これを充たさない製品では役に立たないということになります。

 三脚の場合、それが低くても、身体を屈めるなどすれば使えるということがありますが、それでは三脚に写真を取らされているということにもなりかねません。真っ直ぐに自然に立ったときにファインダーを覗ける位置を出せるということが、三脚や一脚には必要不可欠な基本性能なのです。

 また、三脚の場合、カメラから手を離しても自立しなければなりません。これが安定していることが必要なことです。少々の風ぐらいで揺らいだり、倒れたりするのでは性能不足です。このようなことの無い、しっかりとした構造のものが必要となり、また、そのような状態に三脚をセットする運用が求められます。

 そもそも、カメラ撮影において最も基本的なことは、カメラを水平面上に置くということです。それを前後左右に傾けるのは撮影に変化を付ける必要があるときに行う、という考え方が重要です。そのため、三脚に求められる基本機能は、あくまで正確な水平面を出せて、その状態を保ちつつ、360度全周にレンズを向けることができる機能が必要なのです。

 三脚・一脚に求められる最低限の「高さ」は、使用する人の直立時の眼高によって決まります。その眼高から使用するカメラや雲台などの高さを除いた高さを出せることが必要があり、その時には、センターポール(エレベーター)を多くとも10cm程度上げている状態で出せることが必要です。エレベーターを目いっぱい上げねばその高さが得られないようでは、その三脚は必要な性能を満たしていないということになります。

 なお、「エレベーターを10cm程度上げた状態で」というのは、カメラ台に俯角をかけたときに、ファインダーを覗き込むために少し下げられるだけの調整の余裕を持たせるという意味です。三脚の脚を縮めるのは手間がかかりますが、エレベーターの上げ下げなら迅速に行えます。

 三脚の据え方、使い方ですが、被写体の方向、つまりレンズの方向に1本の脚を向け、他の2本は身体の両側にします。これで左右の脚を水平面を得るための微調整のために伸縮し易くなります。また、この置き方ならカメラに最も近づくこと ができます。重心はレンズ側に傾くのが通常なので、それをレンズ下の脚で負担することにもなります。

 エレベーターの操作ハンドルやダイヤルは、右利きの人は右側にします。常に同じ側にする習慣を付けると、ファインダーを覗いたままでの手探り操作が容易です。

 雲台には水準器が必需品です。それも、水平回転軸より下にあることが望ましいのです。回転軸が垂直であることが、その上のカメラ台の水平面を維持する上で必要なことで、回転軸の垂直を得るためには、それより下に水準器が無いと、正確なそれが得られません。 しかしながら、そのようになっている雲台は極めて稀と言ってもいいでしょう。

 水準器の形式としては、「棒式」と「ドーム式」があります。ドーム式は2軸の傾きを同時に検出することが出来て便利なのですが、真上から見ないと正しい水平を検知できないという欠点があります。高い位置にあるとそれは困難ですから、横から も確認できる棒式の方が、カメラ台付近に取り付ける場合は向いています。

 なお、棒式の水準器において、棒の右側に気泡が行っている場合は右側の脚を縮めます。この時には三脚の最下段を調整するのではなく、最上段で行います。三脚は最上段から伸ばして使うのが原則ですが、水平の微調整は最上段の伸縮で行います。その方がやり易いからです。

 ベルボンの三脚の場合、最上段パイプの太さごとにクラス分けがしてあって、3桁の最初の数字が大きいほど太くなります。カーボンパイプは 「8」シリーズが36mm、「7」シリーズが32mm、「6」シリーズが28mm、「5」シリーズが25mm、「4」シリーズが22mmというようにです。アルミパイプの方はこれより1mm太くなり、アルミしかない「3」シリーズが20mmです。2番目の数字は段数を表し、3番目の数字は機種を区別しているようです。

 ジッツオの場合もシリーズによって太さが決まっています。「00」シリーズが16mm、「0」シリーズが20mm、「1」シリーズが24mm、 「2」シリーズが28mm、「3」シリーズが32mm、「4」シリーズが37mm、「5」シリーズが41mmです。製品コードのGT、GMなどに続く1けた目の数字として表示されています。

 SLIKの場合も、3桁数字の機種は最初の数字が最上段パイプ径ごとのクラスを表示するものになっていて、最新機種はその径の変更が行われています。 「9」は32mm、「8」は28mm、「7」は25mm、「6」は22mmです。

 最近のカーボンパイプモデルは、ナットを緩めてもパイプが回転しない構造になっていますが、このためにパイプに加工がしてあります。ベルボンの場合は内径部に直線溝を掘っていますが、SLIKは内径部に直線リブを立てています。溝よりリブの方が強度を保てるのかもしれません。

☆☆ 三脚本体 ☆☆

 三脚の主要な構成要素として、3本の脚と、それを取り付けるハブ(基部)があります。ハブには3本の足をすべて同じ角度で固定することが可能な仕掛けが付いていることが一般的で、その固定角は3種類に変更可能であるものが一般的です。

 また、ハブの中心にはセンターポールが設けられており、これを上下させることができるものが一般的です。ラックギヤ・エレベーターによりハンドルを回すことで上下させるものと、単にスライドするポールの締め付けを緩めて手動で上下させるものとが一般的です。操作性の軽快さのためには後者ですが、重い機材のためには前者が適しています。ラックギヤを駆動する方法として、ピニオンギヤのみを用いるものと、ウオームギヤも用いるものがあります。バックラッシュが大きいのは後者で、これならハンドルから手を離してもエレベーターがほとんど落下しません。前者は容易に落下しますから 、ストッパーを操作することが必須です。

 センターポールの上部には雲台を取り付けるためのプレートと雄ネジが設けてあります。大型の三脚ほどプレートの径が大きくなっています。雄ネジも大型のものは太い 「U3/8-16」(通称カメラ大ネジ)ですが、中型のものは「U3/8-16」と「U1/4-20」(通称カメラ小ネジ)とのリバーシブルになっているものがあります。小型は「U1/4-20」 だけであることがほとんどです。

 スライド式センターポールパイプは、ネジによる中継ぎになっているものが一般的で、これを外して短くすると、全開脚によるローアングルが可能になります。ベルボンの場合、センターポール径は脚の最上段径と同一のものが多いようです。これも、カタログ等への情報の提示が無いものの一つです。

 脚は何段かに伸縮できるようになっています。段数の少ないものの方が1段あたりが長いのが一般的です。携帯性は段数が多い方が収縮時の全長が短いので良好ですが、最下段のパイプ径がより細くなるため、強度、安定度は劣ります。

 大型の三脚の中には最上段のパイプの太さと長さが同一でも、より段数の多い製品もあります。これらはカメラなどを高い位置にセットするためのもので、全部伸ばすと脚立などに乗って撮影することになりますが、これは水平構図の取得の自由度にとっては非常に有効です。

 パイプ伸縮の調節は、ナットで割り中ゴマを動かして締め付ける「ナット式」のものと、外側からカムの付いたレバー操作で締め付ける 「レバー式」のものが一般的です。カーボンパイプの三脚に「レバー式」が導入されたのは、パイプが回転しない工夫がされてからのことです。それまでは異形断面の作れるアルミパイプのみでした。

 なお、二つ巴状断面のパイプ自体を回転させることでパイプ面同士を接触させて、その摩擦で固定する方式のものが中型以下の多段のものに用いられています。

三脚格納庫

●ベルボン・ネオ・カルマーニュ830

 亭主のフラグシップ三脚です。8シリーズカーボン製脚径36mmの3段で、2段目は径32mm、最下段は中型6シリーズの最上段と同じ径28mmです。

 最上段は発泡ゴム筒で覆われています。センターポールを上げなくても1800mmの高さが得られます。 最下段を伸ばさなくても、エレベーターを少し上げるだけで、亭主の機材で直立時の眼高が出せます。

 折り畳み式クランクハンドルによる210mmの調整幅がある径36mmラック&ピニオン・エレベーター式センターポールは、三脚基部の上下で中コマを締め付けて調整する方式なので、精度のある中心が出せます。

 ところで、この折り畳み式クランクハンドルですが、残念なことに、使い勝手はすこぶる不良です。回転軸に対する固定方法があまりにいい加減で、この製品最大の欠点です。現行機種は改良されているようですが…

 ハンドルを回すことでウオームギヤが回転し、それで軸を90度変換して回わされるピニオンがラックを駆動する仕組みです。エレベーターの作動にあたっては、ハンドルを回転させるのだけに頼らず、同時にポール自体を上下に押すと円滑迅速な作動が可能です。

 ウオームギアが使われているのでバックラッシュが小さく、ポールに上下の力を加えても、それだけで動かすことは困難です。

 上部プレートは径66mmで、「U3/8-16」雄ネジが設けてあります。下部プレートにも 「U3/8-16」雄ネジが設けてありますので、ここにも雲台やフックなどを設置できます。この下部プレートの雄ネジは、オプションのフックを取り付けたときに、その先端の向きが脚と干渉しないようにネジの切り始めが配慮されています。センターポールが回転しない構造なので、これは必要な配慮です。

 カーボンパイプ脚は3種類の固定角度で開脚が可能です。ただし、その内の全開脚時にはセンターポール(エレベーター)を一番上まで上げる必要がありますから、これはあまり実用的な機能ではありません。

 脚の長さ調節はナット式で、コマを割り広げてパイプ同士に押し付けることで固定する方式です。ナットを緩めても脚パイプは空転しないので、上段のナットを緩めてあっても下段のナットが空転しません。

 ゴム石突を捻じ込むとスパイクが出てくる可変方式です。

 この品はベルボンのハイエンド三脚です。さすがにがっちりとしていて、各可動部の精度も十分です。車での移動が前提なら、4段よりこの3段が適当でしょう。 通常の状況なら上二段だけで運用できます。

●ベルボン・カルマーニュ640VE

 亭主が最初に手に入れたカーボン三脚です。カーボン脚径28mmの4段で、2段目は25mm、3段目は22mm、最下段は径19mmです。通常の開脚時にセンターポールを上げない場合は、センターポールプレート上面まで1180mmの高さです。最上段は発泡ゴム筒で覆われています。

 径28mmのセンターポールは333mm上げられます。操作は迅速かつ手軽にできるのですが、片側から押し付けるフリクション固定式なので、残念ながら正確なセンターは出せません。上部プレートは径55mmで、「U3/8-16」雄と「U1/4-20」雄のリバーシブルネジ(通称二分三分:ニブサンブ)が設けてあります。亭主の機材で直立時の眼高が出せますが、センターポールを120mmほど上げる必要があります。

 カーボンパイプ脚は3種類の固定角度での開脚が可能です。捻じ込みの中継ぎ式となっているセンターポールを短縮すると全開脚ができます。センターポール下部にはプラスチック製の蓋が捻じ込んでありますが、これに現行6シリーズにはある 「U1/4-20」雄ネジはありません。補修部品として現行品が直販(\600)されていますから、交換は可能です。

 脚の長さ調節はナット式で、コマを割り広げてパイプ同士に押し付けることで固定する方式です。ナットを緩めるとその下の段の脚パイプが回転してしまうので、上段のナットを締めておかないと下段のナットはパイプごと空転してしまいます。現行の製品はこれが改良されていて、パイプ内径部に溝を掘り、これを利用して空転しないようになっています。

 石突はゴム製です。

 軽量な4段三脚なので、携帯用に向いています。電車・バスでの移動には、このサイズが実際の上限でしょう。

●べルボンUT-63Q

 2012年11月に発売になったウルトレックシリーズ、ベルボン独自のウルトラロック式コンパクト6段中型三脚です。脚を180度折ることで雲台を付けたままでも縮長278mmという短さを実現しています。 脚は最上段径30mm、最下段径15.4mmですから、負荷3kgの中型三脚としては十分なスペックです。

 センターポールの伸長無しで伸長1362mmですから、亭主の機材で直立時の眼高を出せます。センターポールは148mmと短いので、仰俯角微調整時ぐらいにしか使えませんが、ロックナット方式なので正確なセンターが出せます。

 特殊な構造なので、ローアングルは少し高めです。

 専用雲台として新型の細身な自由雲台「QHD-U6Q」を採用しています。 格納時の構造上、他の雲台はこの三脚には使えません。

 この三脚は畳むと非常にコンパクトになるためか、畳んだ状態では1.5kgという重量が重く感じられます。広げてしまえば軽いのですが…

 

●べルボンVS443Q

  エレベーターを傾けることが出来る特殊な三脚です。エレベーターというより、それ自体が「1ストップ雲台」の一種と言う方がイメージとしては近いものです。花壇の花などを写す時にはとても便利です。三脚を花壇内に入れなくても相当に近寄れます。

 また、カメラを下に向けることも容易ですから、床に置いた図画や書籍などの複写に便利です。エレベーターをマクロスライダー的にも使えます。

 三脚本体は4シリーズ脚径23mm4段のアルミです。伸縮調整はレバー式です。 最上段が長めなので、亭主の機材で直立時の眼高が出せます。

 最上段に自転車用ハンドル布テープを巻いています。冬季にも冷たくなくて、これが具合良いようです。

 なお、この特殊なエレベーター部は6シリーズなど他の三脚でも運用可能です。デジタル一眼レフで一般撮影に使うのなら、最低5シリーズの三脚本体が望ましいと思います。

 

●ベルボン・フィールドチェーサー

 ベルボンの生産終了品リストにも載っていない旧型三脚です。マウンテンチェーサーというのは載っていますから、その亜種だったのかもしれません。

 5シリーズ脚径26mm4段のアルミです。伸縮調整はレバー式です。 ピニオンギヤのみのエレベーター式センターポールで、径40mmの上部プレートには「U1/4-20」雄ネジが設けてあります。径49mmの下部プレートにも 「U1/4-20」雄ネジが設けてありますので、ここにも雲台を設置可能です。

 最上段が短いので、エレベーターを上げても亭主の機材で直立時の眼高が出せません。

●ベルボン・ウルトラマックス i SF

 これもベルボンの生産終了品リストに載っていません。「ウルトラマックス i M」というのは載っていて、それはカメラ雲台が付属していますが、これは共色の自由雲台「QHD-41」が付属しています。少量期間限定生産だったようです。

 3シリーズアルミ製脚径21mmの5段で、最下段は径8mmです。通常の開脚時にセンターポールを上げない場合は965mmの高さです。径18mmのセンターポールは193mm上げられます。上部プレート径は22mmで、 「U1/4-20」の雄ネジが設けてあります。脚の伸縮は、ベルボンがウルトラロックと称する二つ巴型断面の異形パイプ自体を回して、互いの接触抵抗で固定する法です。

 小型軽量なので、電車・バスなどでの旅先にも気軽に持ち出せて、野の花の接写など多用途で使えます。当然直立時の眼高は出せません。

 5シリーズアルミ一脚の「RUP-40」を改造してあるので、「U1/4-20」雌・雌ネジリングを介して 、それと組み合わせる多用途ポッドの基部としても使えます。この組み合わせで、天井付近から外部ストロボをスレーブ発光させるなどの用途にも使えます。

 

 

☆☆ 一脚本体  ☆☆

 一脚はカメラブレ対策に有効な道具です。スタジアム、劇場などの観客席や人混みの中などの三脚が使えない場所で、望遠レンズなどの重い機材を支える場合に役立ちます。

 また、リモートケーブルなどを使用することで、手の届かない高い位置からのAF撮影を可能にしてくれます。

 中型以上の製品なら、登山の杖代わりも務めてくれます。長くできるので、下山時に滑り易い道などで役立ちます。

 

一脚格納庫

 

●ベルボン・ネオ・ポッド6

 

 全高1530mm、縮長480mm、カーボン製脚径28mmの4段で、最下段は径19mmです。上部プレートは径53mmで、「U3/8-16」雄と 「U1/4-20」雄のリバーシブルネジが設けてあります。脚の伸縮調整はナット式です。ナットを緩めてもパイプは回転しません。

 肩掛け用ベルトがカシメ固定の台座に直付けされています。同等現行品はこれを廃していることでも分かるように、あまり使い勝手の良いものではありません。亭主は、ベルトの直付け台座を取り外せるように、既存のカシメピンのカシメ部をドリルで削り抜き、それを4mm径 ・首下30mmのボルト・ナットと置き換えています。必要な時には、このボルト・ナットを外せばベルトを台座ごと外すこともできます。

 登山時の杖代わりにしても安全なのは、このクラス以上のものです。ナットを強く締め付ければ、全体重を預けても縮みません。

 最上段の発泡ゴムグリップは経年劣化で損傷したので、代わりに自転車用ハンドル布テープを巻いています。杖代用としては、太さ的にこれの方が具合良いようです。

●ベルボン・RUP-40[改]

 

 全高1584mm、縮長486mm、アルミ製脚径26mmの4段で、最下段は径17mmです。上部プレートは径30mmで、「U1/4-20」の雄ネジが設けてあります。脚の伸縮調整は締まり具合の調整機能が無いレバー式です。モデル名が「40」ですが、パイプ径は5シリーズ・アルミの26mmです。型番の「40」というのは4段という意味のようです。シリーズ表記なら540となるのかも…

 残念ながら体重を預けると縮んでしまいます。登山時の杖代わりにすると危険です。これが締め付け調整機能のないレバー式三脚・一脚の限界点でしょう。

 この品には石突部に「U1/4-20」雄ネジを植える改造を行っていて、「RUP-V40R」と同等の機能を持たせています。一脚として使用時には、ここにゴム付きナットを捻じ込みます。亭主は、大昔のカメラ速写ケース底面から取り外した三脚ネジをその製作に利用しています。

 「ポールポッド」として使うときは、上部プレート雄ネジに市販の「U1/4-20雌・雌ネジリング」を捻じ込み、そこにウルトラマックスiなどの小型三脚を取り付けます。石突部に雲台を取り付ければ「ポールポッド」の完成です。三脚の開脚次第では、天井付近からリモコンでストロボの光を降らすなどの運用が可能です。

 本家「RUP-V40R」は上部プレートと石突部に取外し式の頭無しボルトを付け替える方法ですが、亭主の改造は市販の雌雌リングを利用するものです。石突部に雄ネジを植える工作は、エポキシ接着剤によるパイプ内への 「U1/4-20ボルト」の固定です。ボルトにはナットを複数個捻じ込んで、その周囲にテープを巻いて17mmパイプ内径と合わせています。これで十分強固に固定出来ます。

●ベルボン・ウルトラスティック40

 

 全高1435mm、縮長420mm、3シリーズアルミ製脚径21mmの4段で、最下段は径12mmです。上部プレートは径33mmで、「U1/4-20」雄ネジが設けてあります。足の伸縮は、ベルボンがウルトラロックと称している二つ巴型断面の異形パイプ自体を回して パイプ同士の接触抵抗による固定法です。軽量コンパクトが身上です。腰に吊るしておいても負担になりません。亭主の機材で直立時の眼高が出せます。

 

☆☆ 雲台 ☆☆

 三脚などに取り付ける雲台を大きく分類すると3種類になります。「自由雲台」、「カメラ雲台」および「ビデオ雲台」がそれです。

 「自由雲台」というのは、カメラ台の付いたボールを締めつけたり緩めたりすることでカメラ台の角度を自由に変えるものです。

 「カメラ雲台」というのは、「3D雲台」とか「3ウェイ雲台」とも呼ばれ、上下チルト、左右チルト、水平パーンの3方向に角度を変えることでカメラ台の角度を変えるものです。

 「ビデオ雲台」には左右チルトがなく、上下チルトと水平パーンがゆっくりと動くように工夫されたもので、三脚座のある重い超望遠レンズを使うときに向いています。ゆっくり動かす仕組みは、粘度のあるオイルを用いているもの、スプリングを用いているもの、その両者を組み合わせているものなどがあります。

 「自由雲台」には360度全周に渡って25度以上のチルトが可能なものと、左右方向のチルトが10度程度以下に規制されてしまうものとがあります。ベルボンの従来型のものは後者で、緩めたときに重いカメラ等が横に大きく傾いてしまうのを規制できるメリットはありますが、自在なアングルを得るという点では欠点となります。

 また、独立した水平パーン機能を有するものと、それがボールの制御と同調するものとに分かれます。ベルボンのものは、従前はすべて後者でしたが、最近ようやく前者も作り始めました。使い勝手の良いのは前者になりますし、国際標準となっている機構はこれです。

 ボールを押さえる構造としては、外殻が左右に分かれていて、これを引き寄せることで中のボールを押さえ付けるものと、外殻内部に押板(中ゴマ)を設け、これをボールに押し付けることで外殻内側の湾曲との間にボールを挟むもの とに大別されます。後者は外殻自体がソリッドなので、別にパーン装置を設けることが容易です。

 「カメラ雲台(3D雲台)」は、「割り締め式」と「コマ締め式」とに大別されます。回転軸を制御するために軸受そのものにすり割りを入れて、それをパーン棒で締め付けて制御するものと、回転軸と外殻の間に割りコマを入れ、それを動かして回転軸に制動をかけることで制御するものとです。後者の方は締め込んだ時にカメラ台が変形しないので、フレーミングが狂い難いという利点がありますが、構造が複雑となるために高価です。

 なお、「カメラ雲台」の仲間に、左右チルト機能を省略した製品があります。上下チルトと水平パーンのみで、製品によっては、カメラ台の横位置・縦位置を切り替える装置も別に設けています。これはカメラを斜めに傾けて撮影するという概念を廃したもので、写真は水平面が重要という基本思想に基づいています。ビデオ雲台の仲間と言ってもいいのかもしれません。

 この種類の雲台の中には、1本のパーン棒の操作によって水平パーンと上下チルトを同時に操作する 「1ストップ雲台」と言われる形式のものがあります。ベルボンの製品では「PH-157」などがそれです。パーン棒を少し緩めると水平パーンが出来るようになり、更に緩めると上下チルトも出来るようになります。ビデオカメラによる撮影や、双眼鏡などを取り付けてバードウオッチングなどに使用するのは、この形式が向いているのかもしれません。構造原理上、割り締め式になります。

 また、SLIKの製品に「フリーターン雲台」というものがありますが、これは「1ストップ雲台」のカメラ台を、カメラネジを中心として360度水平回転させることができる構造としたものです。言い換えれば、カメラ台にパノラマ雲台を乗せた構造です。三脚の脚の長さで調整することなく水平面撮影を容易に実現出来るものとして考案されたものでしょうが、レベリングユニットを入手できる現在では、あまり利点は感じられません。雲台下部でまず基準となる水平面を出し、その上で雲台機能によりそれを自在に崩せる方が、自由なアングルを感覚的操作で得るという上では本道であると思います。

 なお、「自由雲台」のカメラ台をパノラマ雲台にしている外国製品(フォトクラム・プロゴールドII EasyPQR)も存在しますが、 これは「フリーターン雲台」のアイデアを使用したものだと思います。この方が使い勝手はいいかもしれません。

 また、アルカスタイルクランプの基部をパノラマ雲台にしている製品もベンロなどにあります。これからは、ハイエンドの雲台にはこれが必然の機能になるのかもしれません。

自由雲台格納庫

●マグネシュウム自由雲台ベルボン「QHD-72Q」[改造「KIRK」アルカスタイルクランプ3インチ直付け] + プレシジョン・レベラー

 基部径63.5mmのこの自由雲台は、本来はベルボン独自規格クイックベース「QRA-6L」が直付けになっていました。部品のほとんどがマグネシュウム合金製なので非常に軽量です。43mm径のボールを締め付けるダイヤル式ノブの操作性は、亭主の主観では、レバー式よりこのダイヤル式の方が、バイクのスロットルのように握って操作できるので扱い易いと感じています。 この優れた機構が、残念ながら現行モデルには採用されていません。食わず嫌いが多かったせいかも…

 ベルボンのこのダイヤルノブは長さがあるので親指・食指・中指の3本で握れ、締めるのも緩めるのも微妙に操作できて、これはとても優れている点です。しかし、時間が経つと ゴム表面が粘つくのはいただけない…

 軸に対して偏芯しているダイヤル・ノブの偏芯位置は容易に変更可能です。そのため、工具無しでこの締付軸を容易に外すことが出来て全体を分解できるので、露出の多いボール面が汚れても清掃が容易です。ベンジンなどでの清掃後は、適切なグリースを塗布することで安定した円滑な操作性を維持することが可能です。

 ボール上部首の長さは円筒部11mmで、その太さは22mmです。左右方向のチルト幅は、同社製他のクラスより小さくなっています。他社の製品のようにボールの覆い量が少ない方がカメラ台の動きに自由度が高く、カメラを急激に振り回すような使い方をするためにはその方が向いているでしょう。その点、ベルボンの自由雲台はどれもそのような用途には向きません。

  ボールと水平パーン軸の双方を2枚の外板で挟み、それを引き寄せることで締め付ける構造なので、ボールを緩めないと水平パーンできないシンプルな構造です。これは軽さを追及しているためなのでしょう。

 この品には、上の写真のように、既存の直付けクイックベース「QRA-6L」を外して、代わりに「KIRK」のアルカスタイルクランプ3インチを直付けしています。これで国際標準を何とか充足 したと言えるでしょう。

 ところで、亭主はベルボンのハイエンド自由雲台であるこの品を、あえて他の人に勧めようとは思いません。ベルボンは同社自由雲台の基本構造を改めるべきだと思っています。その名に背いてカメラ台の動きが上記のように自由ではないし、使い勝手から言えば、独立した水平パーンが出来ないのは、センターポールが回転しないエレベーター式大型三脚での使用時には大問題です。

 つまり、この品には、自由雲台に求められる基本性能において大きく欠けるところがあるのです。設計変更をしないと将来は無いでしょう。上級シリーズを設けて、そこで問題解決を図るというのでもいいでしょう。この品には、機能には制約があるものの、必要な耐荷重を得た上で軽量を求めるという限定的な用途にしか利点を見いだせません。

 また、クイックベースの国際標準はアルカスタイルになりつつあります。その流れへの対応を誤ると、これもまた将来への禍根と成りそうです。

 なお、2013年1月末に「プレシジョン・レベラー」というスグレモノの製品が上梓されました。上画像のようにこれを併用すると、この自由雲台の欠点を少しは救済できます。これを取り付けるクラスの三脚にはレベラー併用が望ましいことから、まさにぴったりの組み合わせです。このレベラーにはパノラマ機能もあることから、独立したパーン機能が無いこの雲台の使い勝手が大きく向上します。

 また、このレベラー機能はスリックのレベリングユニットなどボール式よりも精密な微調整がやり易すく、その点でもスグレモノです。

 なお、これの使い方は、レベラー基部上全体を回転させて水準器の気泡が指標線上に来るようにします。そのときに調整ノブを回して気泡をドーム中心に持っていけば水平が出るという仕組みです。これは非常に巧妙かつシンプルな機構で、軽量かつ操作し易いものです。また、上面には任意の位置にレバーで固定できる回転台が設けてありますから、パーン台、パノラマ台にもなっています。

●マグネシュウム自由雲台ベルボン「PH-263QL」[改造]

 この旧型自由雲台は、ベルボン独自規格クイックベース「QRA-6L」が直付けになっています。同級品としては既に何度もモデル変更になっていて、現行同等モデル「QHD-63Q」はデザインが丸っこいものに変更になっていることと、左右にもより多く傾けることが出来るようになっています。亭主としては、この旧型の12角形デザインの方が好みですが、機能的には新型の方が優れています。

 36mm径のボールを締め付けるのはレバー式です。軸に対するレバー位置は容易に変更可能です。そのため、この締付軸を容易に外すことが出来るので、露出の多いボール面が汚れても清掃が容易です。ベンジンなどでの清掃後は、適切なグリースを塗布することで安定した円滑な操作性を維持することが可能です。

 ボール上部首の長さは円筒部11mmで、その太さは13mmです。左右方向のチルト幅は、ベルボンの旧型自由雲台の中では比較的大きくなっています。そこで、外殻頂部を斜めに丸く削る改造を施して、上の写真のように、左右に さらに多く傾けることが出来るようにしています。後発の「QHD-65」ほどではありませんが、それに近い角度まで左右に倒せます。

●マグネシュウム自由雲台ベルボン「QHD-65」[改造アルカスタイルクランプ2.5インチ直付け] + SLIK レベリングユニット1

 2011年11月に発売されたベルボン初のコマ押し式自由雲台です。通常のコマ押し式が下から押すのに対して、これはジッツオのセンターポール雲台と同様にコマを横から押す特異な方式です。この方式だと、高さを低く出来る利点があります。水平パーンが独立して行え、2本の操作レバーが上下に並んでいるので、持ち変えずに片手で操作できます。特に左手での操作がし易くなっています。握ったままの手の中で全ての操作が可能ですから、ファインダーを覗いたままでの操作性が秀逸です。この二つのレバーはどちらも小型ですが、指先で押す軽い力でしっかりと締め付けることができます。

 元々は「カメラ台式」なのですが、それを取り外してしまい、そこに「KIRK」のアルカスタイルクランプ2.5インチを取り付けています。残念ながら元の取付ボルトは「M6ネジ」なので使えません。取り外した元の「カメラ台」を切断して、その一部分をこの改造に利用しています。

 ボールの直径は36mmですから、6シリーズ共通のものです。

 取り外してしまったオリジナルのカメラ台は「U1/4-20」雄ネジで、ダイヤルが厚いのと、周囲に大きな突起が設けられているので回し易くなっています。

 基部の径は56mmです。

 なお、これにはカメラ台式のものしか出ていませんが、生産地の中国では、ベルボン独自仕様クイックベース直付けのモデルも「QHD-65Q」という名称で販売されています。これはいずれ日本でも販売されるのかもしれません。そのクイックベースは旧型ではなく、最新世代自由雲台である「QHD-63Q」などと共通の、直付け専用のチープな新型ですが…

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 組み合わせているSLIKレベリングユニットは旧型です。新型は操作性が向上しているようですが、価格が高騰しています。パノラマ台のある雲台を運用するためにはレベル調整は必須ですから、投資すべき機材です。

●アルミ削り出し自由雲台ベルボン「QHD-U6Q」

 この自由雲台は国際標準である下からのコマ押し式で、パーン台が独自に設けてあり、2つのダイヤルが120度の位置関係にあるのは、この自由雲台を使用することが前提の三脚「UT-63Q」の折り畳んだ状態と干渉しないようにするためです。

 カメラ台がベルボン独自仕様のクイック台なのが大いに不満な点です。分解が容易ならアルカスタイルクランプへの換装がしたいのですが、組み立て時にネジ溝に接着剤を塗布しているために非常に困難です。 これは他の同社機種に共通の問題ですが、この構造は止めてもらいたいものの筆頭です。

●マグネシュウム自由雲台ベルボン「PH-253」[改造クイックベース直付け]

 型番からわかるように、これは旧式です。30mm径のボールを締め付けるのは「レバー式」です。ボール上部首の長さは円筒部9mmで、その太さは10.5mmです。

 レバー軸部のシールを剥がさないと分解ができません。その下にビスが隠れているのです。

 この品は、元付いていた「カメラ小ネジ式カメラ台」を、改造のために「QHD-53Q」から取り外して余っていた直付け用クイックベースに換装する改造を行っています。

 基部の径は44mm、全高は82mmです。ベルボンの4・5シリーズ三脚・一脚に向いています。

 このクラスになると、一杯にレバーを締めれば、雲台を人力で動かすことは極めて困難なぐらいの強固な固定力が得られます。 デジタル一眼レフで実用的に問題無く使えるのはこのクラスまででしょう。

●マグネシュウム自由雲台ベルボン「QHD-53Q」[改造アルカスタイルクランプ2インチ直付け]

 べルボン三脚「VS443Q」に付属していた基部径44mmの自由雲台です。最新シリーズの自由雲台ですが、このシリーズから付属するようになった直付け新型クイックベースは、旧型の「QRA-6L」とはクイックプレートの互換性があるものの、それと比べてあまりにチープです。雲台への取付ネジもM6なので、既存の雲台には取り付けることができません。取付部分形状が直付け専用のものなので、取り外しても汎用としては使えません。

 そのチープな新型クイックベースは外してしまい、アルカスタイルクランプ2インチに付け替えています。既存の取付ボルトはM6ネジなので使えません。吋ネジのU1/4-20ボルトに変えています。

 なお、これから取り外したクイックベースは、若干の改造の上、カメラ台を取り外した上記「PH-253」に取り付けて再利用しました。

●マグネシュウム自由雲台ベルボン「QHD-41」

 22mm径のボールを締め付けるのは「レバー式」です。 ボール上部首の長さは円筒部5.5mmで、その太さは10mmです。径41.5mmのカメラ台に「U1/4-20」雄ネジが直接付いています。ボールを緩めてカメラ台を回すことでカメラなどに取り付けるので、カメラ底面とこすれて傷を付ける虞はあります。この機種はすでに廃版になっていて、現行同クラスのカメラ台はカメラ小ネジが独立していて、それだけをダイヤルで回せる形式です。

 基部の径は32mm、全高は62mmです。ベルボンの3シリーズやウルトラマックスシリーズの三脚・一脚に向いています。

 一杯にレバーを締めても、カメラ台を人力で動かすことが可能な程度の固定力しか得られませんので、重い機材には使えません。 コンパクトカメラとか、外付けストロボとかを取り付けるぐらいが向いています。一脚での運用なら、あまり問題は生じないでしょう。

カメラ雲台(3D雲台または3ウエイ雲台)格納庫

●マグネシュウムカメラ雲台ベルボン「PH-460B」 + クイックベース「QRA-6L」

 

 2007年までベルボンのカタログに載っていたこの軽量3D雲台には、ベルボン独自規格クイックベース「QRA-6L」を取り付けて運用しています。左右チルト、上下チルト、水平パーンのそれぞれを独立して操作する3ウェイ式ですが、回転軸の外側軸受部に擦り割りを設け、それを締め付けて固定する方式なので、締め付けにより軸受に連続しているカメラ台が微妙に動き、フレーミングがずれてしまうという欠点があります。超望遠レンズの使用時には特にこれが問題になりますが、短焦点レンズでならほとんど問題にはなりません。

 カメラ台のカメラ小ネジは位置固定式で、水平時に三脚のセンターと一致します。つまり、水平パーン軸と一致するのです。これは優れた性能で、雲台には必要であるはずのこの基本性能を充たしていない機種が増えてきたのは嘆かわしいことです。

 下チルトで真下へ向けられるので、通常とは逆に、パーン棒の方向にレンズを向けてカメラを取り付けると天頂仰角も可能です。2本のパーン棒には長短があり、長い方を左右チルトに用いると、右チルト角をより大きく出来ます。カメラ小ネジは締め付けナットがレバーとカムによる強力な締め付けができます。

 ちなみに、この雲台で亭主所蔵の最長超望遠レンズを使うと、大仰角時に狙い通りにきちんと止めるのは一苦労です。パーン棒の締め付けを強めるとフレーミングが相当に動きます。トホホ…

●カメラ雲台スリック「SH-908」  + 「KIRK」アルカスタイルクランプ4インチ

 

 プロの間で評価の高いハスキー雲台の構造と極めてよく似た「コマ締め方式」の3D雲台です。カメラ台式で、ハスキーが位置固定式であるのとは異なって、スリットによりカメラネジの位置調整が出来ます。

 そのカメラネジをスリットの最前部付近に移動させると、水平時に三脚中心軸とカメラネジの軸が一致します。ハスキーを始めとして、 この必要機能を実現できない残念仕様な雲台が多いのですが、この機能はパノラマ写真を撮るときなどに重要です。

 コマ締め式の利点で、強く締め込んでもカメラ台が動きません。これは褒めてもいいでしょう。

 ベルボンの同クラス雲台より300g近く重くなっています。強度のためというより、全体に無駄に肉が付いている感じがします。

 この雲台の欠点というより「欠陥」は、三脚に取り付けると、上下チルトの下チルト時に90度+αが出せません。単体でなら出せる構造なのですが、これを取り付けるのにふさわしいクラスの大型三脚だと、センターポールプレートと干渉してしまうのです。つまり、センターポールプレートの径が51mm以下の三脚にしか正常には使えないのです。そのような小さな寸法の高級三脚はほとんどありませんから、これは明らかに設計ミスです。現状でこれを回避するには、直径51mm以下で厚さ14mm以上のスペーサーを雲台の下に捻じ込むしかありません。上に 「U3/8-16」雄ネジ、下に「U3/8-16」雌ネジの付いた円盤状スペーサーを取り付けることで雲台をセンターポールプレートから離し、このことで干渉を解消する以外に方法はありません。このスペーサーを製作して提供するのが、このような欠陥品を製造販売しているスリックの義務であると考えます。

 現状では、天頂星野撮影や大型文書図画の複写など、カメラを垂直にして撮影することを予定している人は、決してこの雲台に手を出してはいけません。他にもこのような欠陥を抱えている製品があるのかもしれません。注意が肝心です。困ったもんだ…

1ストップ雲台 格納庫

●ベルボン「PH-157」 + クイックベース「QRA-6L」

 1本のバーンハンドルの操作だけで上下チルトと水平バーンを操作することのできる雲台です。左右チルトは右90度までのみがレバーで操作できますが、これは縦位置撮影用でしょう。ビデオカメラを使うのには扱いやすい雲台です。

 構造上、割り締め式です。しかし、カメラ台が二か所の軸受けのうち、割の入っていない側の軸受け上にあるため、あまり締め付けによる変動はありません。 バーンハンドルを回すと、まず上下チルト軸を締め付け、さらに回すと、割の入った上下チルト軸が水平バーン軸を締め付ける構造です。このため、雲台自体を水平にしておけば、上下チルトでカメラ台を水平にし、その後に水平に構図を動かすという使い方が可能です。風景撮影には便利な動きです。

 カメラ台のカメラ小ねじは位置固定式ですが、水平時に三脚軸と一致しません。なので、パノラマ撮影には向きません。

 

 この「PH157」は長命な機種で、カメラ台こそクイック直付けになってはいますが、現行機種として健在です。気軽に使う雲台として性能は高いと思います。

その他の雲台格納庫

●ジッツオ・パノラマ雲台QR「GS3750DQR」  + SLIK レベリングユニット1

 360度パーンのみが可能な雲台です。大型なのでなめらかで安定して動きます。周囲に可動式度数目盛りがあるので、指標ポイントに対して任意の位置から目盛りが始められます。上部にCプロファイル用大型クランプが設けてあり、ミドルプレートが付属しています。

 ところで、このジッツオの独自規格Cプロファイル用クイックベースは、固定力に大きな疑問符が付きます。プレートの側面を押して固定するのですが、カムを利用したレバー式の押し付け力はえらく頼りなく、重い機材を取り付けたロングプレートを強固に固定できるとは思えません。これは欠陥商品と位置付けた方がいいのかもしれません。クイック無しのモデルの方が使えると思います。亭主としては全くお勧めしません。現在この組み合わせと同等の機能を有する 単一製品として、ベルボン「プレシジョン・レベラー」があります。そちらを選択すべきでしょう。

雲台用アクセサリー格納庫

●ベルボンクイックプレート「QRA-635Lシュー」

 ベルボン独自仕様のクイック装置のためのスペアシューです。カメラ等が回転しないようにするための爪2本が起倒式です。これの間に「KIRK」のクイックベース2インチがぴったりと収まります。

●ベルボンクイックプレート「QRA-67シュー」

 中判カメラ用で、上記と同じクイック装置で使います。上面だけが広くなっていますが、回転止めは付いていません。

●「KIRK」L型プレート「BL-K7」

 アルカスタイルプレートには、カメラ機種ごとに専用のコンパクトなL型プレートが作られています。亭主愛用のK-7・K-5・K-3用も作られていて(残念ながら現在は製造終了に…)、これをカメラに装着することで縦位置に迅速に切り替えられ、しかも安定して撮影が行えるようになります。

 これは、パノラマ撮影にはとても有効なアイテムです。縦位置で左右合わせて3枚を撮影すれば、それを繋ぎ合せることでAPS-Cフォーマットのカメラでもレンズ焦点距離に対応する135フォーマットの画像が得られます。より広角レンズが必要な風景撮影にも容易に対応可能ということです。

●ベルボン望遠レンズサポーター「SPT-1」

 この品は、アルカスタイルクランプである同社ビデオ雲台FHDシリーズでの使用も可能にしているため、アルカスタイルプレートと互換になっています。三脚座付きの望遠レンズとカメラをそれぞれで保持固定出来る上に、アルカスタイルクランプで使えば任意の重心位置を選べるので、使い心地は最高です。この場合、ほとんどの三脚座に備わっている縦横切り替え機能が使えなくなり、横位置専用となってしまうのが難点ですが…

 上の写真のようにプレートがマグネシュウム製二層構造のため、通常のアルカスタイルプレートなどよりプレート全体の厚みが飛躍的に大きいく、そのため撓みが極めて少なく て、パノラマ撮影に必要なレンズのノーダル ・ポイントとパーン軸の一致を得るときにカメラを大きくオフセット取付する用途でも高い精度が得られます。

 6シリーズ三脚のセンターポールと同じ径28oポール式になっているカメラ台に自由雲台や一脚用チルト雲台を乗せれば、オートベローズを利用してカメラ側あおり撮影装置とすることが可能です。

●「KIRK」レンズプレート「LP-3」

 PENTAXの超望遠レンズには三脚座が付いているものがあり、それらにはカメラ小ネジ雌のほか、安定した強固な取り付けに役立つ回転止めの穴が開いています。でも、この規格に合うピン(20mm間隔・径4.5mm)の設けてある雲台は 存在していないので、クイックプレートを利用してクランプにより取り付けるのが妥当です。

 アルカスタイルレンズプレートは端部に出っ張りを設けてある製品が多く、これを三脚座後端に押し付けて取り付ければ回転を抑制することが可能です。「KIRK」のレンズプレートなら、「LP-3」が 「DA☆300mmF4」、「M400mmF5.6」、「smc Takumar300mmF4」のいずれの三脚台にも取り付けることができます。取付時には三脚座全長とプレート面が全て密着し、ほとんど余りが出ません。スマートに納まります。これがベストな選択かと…

●SKIKアルカスタイルプレート「DS-20」

 SLIKの廃版製品です。

 

 

☆☆ 理想の雲台とは ☆☆

 どのような撮影の状況においても最も便利に使える全能な雲台というものを考えたとき、「自由雲台」か「3D雲台」かというところに帰結するでしょう。自由雲台の欠点は、カメラの左右方向の水平を保ったままで上下チルトのみが必要な時にそれが困難であることです。その点を重視するならば、全能という場合には「3D雲台」の方に軍配が上がるでしょう。

 写真撮影の基本は、カメラを全方向に対して水平にして撮影するというところにあります。この時に最も自然なパースが得られ、レンズの持つ歪曲収差の影響を最小に止めることができます。特に超広角レンズ使用時においては必要なことです。

 このカメラを水平にするというためには、雲台のカメラ台を水平にすれば得られるのですが、この時に雲台の上下チルト機能や左右チルト機能を用いて水平にすると、水平パーンを行っ ていったときにカメラが水平状態ではなくなることがあります。これは雲台自体が水平になっていないときに発生します。つまり、三脚上の雲台基部が水平になっている ということが必要なのです。これを実現するためには、三脚の各脚を伸長して調節する方法もありますが、傾斜地などではなかなか厄介な操作となります。そこで、三脚上に「レベラー」を装着し、その上に雲台を置くことにより、雲台を水平にすることは容易になります。その上でカメラ台を水平にすれば、水平パーンを行っても常にカメラは水平を保ちます。

 パノラマ撮影という手法があり、それはレンズのノーダルポイントを中心として回転させながら撮影する必要があるのですが、その回転軸の位置をどこにするのかという点も重要なことです。雲台の水平パーン軸を回転軸とするのならば、それがカメラ台のカメラネジの芯と一致することが設定をやり易くしてくれます。これが一致していない場合は、その偏芯を考慮塩梅してノーダルポイントを回転軸と一致させなくてはならず、操作性が劣ります。自由雲台はその構造上、雲台のパーン軸とカメラ台のカメラネジの芯を一致させることは容易ですが、3D雲台の中にはカメラネジの芯を水平パーン軸と一致させられないものが多くあります。3D雲台を入手する時に考慮すべき大きな点です。

 3D雲台には、3方向の回転軸を制御する方法として2つの方法があります。軸の軸受筒にすり割りを入れて、このすり割りを締め付けることで軸を固定するもの(割り締め式)と、軸受筒の中で軸をコマにより軸受筒に押さえ付けて固定するもの(コマ締め式)に分けられます。製造は前者の方が容易で部品数も少ないために安価なのですが、カメラ台を取り付けている軸受筒にすり割りが入り、それを締め付けることで軸受筒が 変形して動くためにカメラ台も動いてしまい、フレーミングが狂ってしまうという欠点があります。超望遠レンズの場合には、この狂いが大きな問題となります。

 後者は締め付けても軸受筒は動かないのでフレーミングの狂いも生じません。製造に手間がかかり、部品点数も多いために高価になりますが、全能の雲台という点では「 コマ締め式」を選ぶべきでしょう。

 雲台にカメラや望遠レンズを取り付けるときに、カメラ台のカメラネジを用いて固定する以外に、クイック装置を用いて取り付けることが可能です。このクイック装置をカメラ台の代わりに直付けしている製品も多くなってきました。しかし、クイック装置の種類は多く、有力な三脚メーカーは、それぞれが独自仕様のクイック装置を用いているという 、まことに困った状態です。カメラや交換レンズに取り付けるクイックプレートの互換性が無いため、複数の三脚メーカーの製品を用いるときに困ってしまいます。

 しかし、近年、アルカススタイルのクイック装置が国際標準になりつつあります。アルカスイス社の製品に用いられている規格がその性能が高いことで追随者があらわれ、特に中国や韓国の新興メーカーはこれを装備している例が多く、その互換性、調整能力の高さが他の各社独自仕様のクイック装置よりはるかに優れているので、これを用いることが必要となる情勢です。国産のメーカーも追随の時期を誤ると淘汰されてしまうことでしょう。

 SLIKの雲台にフリーターン雲台というものがあります。これはカメラ台がカメラネジを軸として回転できることに特長があります。この機能をクイック装置に内蔵した製品がパノラマ雲台という名称で存在します。これを3D雲台のカメラ台に取り付ければフリーターン雲台と同等 なものになります。

 亭主が考えるに、レベラーを雲台基部に内蔵し、カメラ台としてアルカスタイルのクランプを装備したパノラマ雲台を備えたコマ締め式3D雲台があったとしたら、これこそが「全能の雲台」と名乗れるものであると言えることでしょう。

 

 

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