「PENTAX交換レンズ」についての能書きあれこれ
「SMC TAKUMAR」 編 |
… 前書き … ・ 一眼レフカメラの黎明期に、取り付けの確実さと製造の容易さ、コストの低廉さなどや、互換性のメリットを良しとした多くのメーカーが追随採用したために世界標準になった「プラクチカマウント」 ですが、これをPENTAXは「Sマウント」と称しています。単なるネジ(M42:P=1)だけのマウントから始って自動絞り機能を持ったものを経て、開放測光機能を持ったものへと進化しました。自動絞り機能は旭光学が開発した機構が世界標準となりましたが、その後に追加搭載された開放測光機能は、特許などの障壁によって各社それぞれの方式となっていました。 このときのメーカー各社の態度が、その後の「プラクチカマウント」の命脈を扼する原因の一つとなった残念なことなのですが、旭光学も開放測光のための独自の方式を1971年、昭和46年に採用していて、これは同社製の従前カメラとの上位互換性は無論のこと、Kマウント以降のカメラにもマウントアダプターを使用することで取り付けることが出来ます。 この「上位互換」の尊重という社是は、今も誠実に行われていて、最新のデジタル一眼レフカメラにこの「SMC TAKUMAR」を装着できて、露出計やフォーカスエイドなど多くの機能を使うことが可能になっています。つまり、レンズとしての役目はほとんど現役であるということです。 ところで、「SMC TAKUMAR」という交換レンズは、マウント規格が 「開放測光」対応ということのほかに、「レンズコーティング」を従前の単層のものから多層のもの(SMC)へと変更し、レンズ面の反射率を飛躍的に低く抑えることができたのです。このことで 、逆光時の性能が向上しました。 鏡胴に今日全盛のエンジニアリングプラスチック部品は、まだまったく使われておらず、そのため、経年劣化による影響はほとんど受けないので、今もなお、その製品生命は完璧に保たれており、そして 、これからも長い寿命を保つことでしょう。金属製の鏡胴がもたらす重厚な操作感は、それを手にする者に喜びを与えます。 「バヨネットマウント」より脱着の迅速性が劣っているという弱みもさることながら、ネジ結合という構造上、交換レンズとカメラ本体の相互関係の正確な位置決めが困難な「プラクチカマウント」は、交換レンズとカメラ本体を相互に連絡する信号機構を組み込むためには向いていないと言えます。それら「マウント」に対する要求性能の変化と高度化に対応するためには、マウント規格の変更が必要だったのですが、それを軽々に行うことを妨げていたのが、ユーザーの中に蓄積されているカメラ本体や交換レンズ等の「資産」の重みだったのではないでしょうか。 そのユーザー「資産」を重視し、あえて技術的困難さを克服して、「開放測光」に必要な絞り値情報などを伝達するのための信号ピンの機構を組み込んだ交換レンズが「SMC TAKUMAR」なのですが、「プラクチカマウント」には、そのほかにも口径が小さいためにF値1:1.2以上の明るい交換レンズが作れないという問題点を抱えていました。 このマウントで国内では富岡光学により唯一製造された「58oF1:1.2」の交換レンズは、自動絞り駆動ピンを作動させるときに干渉するので、後玉の一部がえぐられているというトリッキーな品でした。 また、このことはあまり語られることがないのですが、PENTAXの開放測光Sマウントは、信号機構をすべてマウント内に収めているのです。このため、防塵防滴性に優れているという基本性能の高さが得られています。 同じプラクチカマウントでも、フジカなど他社の絞り環位置情報をマウント外で伝達する方法の場合、マウント外で可動部を設けることから、防塵防滴構造とすることは困難なのです。安易な手法を取らず、基本的性能を重視する姿勢は、その後も伝統となっています。 ・ 開放測光対応から足掛け5年後の1975年、昭和50年6月、旭光学工業はとうとう「プラクチカマウント」を諦め、交換レンズとカメラ本体の相互関係の精密な位置決めが容易かつ確実な「バヨネットマウント」である 「Kマウント」を採用しました。このときも、信号機構をすべてマウント内に設けるという基本はしっかりと守られました。 さらに、新たな世界標準となることを目指した気概の表れとして、このKマウント規格を公開したのです。国内を始め、海外でもこの規格を使用するカメラメーカーは数多くあります。しかし、世界標準というにまで至らなかったのは、その後の技術革新の加速がそれを妨げたということでしょうか… マウントを含めて交換レンズ機能の高度化が進むと、高利潤をもたらす交換レンズの製造を囲い込む思想が力を得たのでしょう。新たに開発された規格は公開されなくなりました。この思想は、その後、パソコンの世界でも実行に移されましたが、そちらの雨後の筍的超高成長業界では、互換性の要求の方が圧倒的な勝者となり、自己規格を囲い込んだ先進主導者である巨人がその決定的敗者となったのは対称的な事象です。経営者の哲学や大局観などの資質が問われる点ですね… Kマウントへ移行するにあたって、それまでの膨大な規模の交換レンズ群を対応させねばなりません。鏡胴構造はともかくとして、レンズ構成をも同時にすべて一新するほどの体力は、当時の旭光学工業にもなかったはずです。レンズ玉を保持する内部部品等の補修用在庫や互換性という要求もあったのでしょう。従って、レンズ構成をも変更した交換レンズは幾つもありません。少なくとも当初は、ほとんどのものがそのまま移行しました。光学性能自体が第一線のそれを維持していたという証左でもあります。それを可能とした 「SMC TAKUMAR」シリーズの交換レンズ群は、時代の大きな転換時において、新旧の橋渡しの役を立派に務めたと言えます。 また、Kマウントへの移行にあたって、従前からのユーザーへの配慮として、マウントアダプターの併用によって、従来の交換レンズなどの「資産」も使用し続けることができるようにしました。この要請のためや、レンズ設計の互換性の要請のためもあったのでしょうが、マウント規格のうち、フランジバック値は共通のものになっています。マウントの平坦性を負担しない構造のこのマウントアダプターは、製造精度をさほど要求されないためなのか、非常に安価に供給され続けました。夥しい数がユーザーの手元にある従前の 「Takumar」たちも、自動絞りを諦めさえすれば、どれも支障なく使い続けることができたのです。 しかし、今になってみれば、このKマウント規格は、特に口径に関しては、いささか狭小に過ぎたとの誹りは免れません。上位互換性の維持や、既存交換レンズを換装し易くするなど、円滑な移行を考えての選択だったのでしょう。当時の一方の成功マウントであるニコンのFマウントと同等近似の口径ではありますが、このときにもう少し大きな径を採用していれば、その後のたび重なる機能付加にあたってそれほど苦労しなかったであろうにと… ・ 今、「SMC TAKUMAR」シリーズの交換レンズを分解整備して思うことは、その構造上、リンク等を組み込んだマウント部が鏡胴から分離できるので、Kマウント化にあたって、このマウント部だけをKマウント規格にした部品を別に用意し、サービス拠点等での組換えサービスの設定というかたちをでも採っていたらと、残念に思うこと頻りなり… ・ このシリーズのレンズは、レンズ表面の乱反射を極めて少なく出来る多層コーティングを施すようになったのが特長ですが、このコーティングの高性能化は、レンズ構成に変化をもたらしていきます。この技術革新とコンピューターの高性能化によるレンズ設計能力の飛躍的向上により、それまでのレンズ構成よりはるかに複雑な多枚数構成のものが作りだされて行ったのです。この 「SMC TAKUMAR」シリーズは、その劇的な変革のスタートラインに立ったものと位置付けることができます。 ・ … 目次 … ・ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.8/55 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:3.5/135 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:2.5/135 前期型 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:2.5/135 後期型 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:4/200 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:4/300 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:3.5/35 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:2/35 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:3.5/28 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:4.5/20 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated Macro TAKUMAR 1:4/50 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated Fish-eye TAKUMAR 1:4/17 ☆☆ ☆☆ Super-Multi-Coated BELLOWS TAKUMAR 1:4/100 ☆☆ ・ ・ 絞りリンクについて ・ 等間隔に刻まれている絞り環の指標及びクリックに対して、それによって指定されたF値に絞り羽根が閉じるために必要な動きは絞り値によって不等間隔であることから、これを実現するために、カムを介して絞り羽根を動かすようになっています。 TAKUMARの鏡胴は、自動絞りに切り替えてある場合にカメラから外すと、どの位置に絞り環を設定していても、絞り羽根が常に開放状態となる構造になっています。 これが次の時代のKマウントレンズになると、カメラから外すと、絞り羽根は絞り環が指定する開度になります。つまり、自動絞りを実現するためにカメラが交換レンズに加える力の方向性がまったく逆になる構造なのです。 TAKUMARは、シャッター作動時に連結ピンをカメラが押すことで絞り込みます。Kマウントレンズは、カメラに取り付けるときに連結レバーが押されて絞り羽根が開放になり、シャッター作動時にカメラは押していた連結レバーを開放するので、レンズ自身のバネの力で絞り環の指定位置にまで絞り羽根が閉じるのです。 このことから言えるのは、TAKUMARは、仮に絞り羽根が多少粘ったとしても、撮影時にカメラ側から強く動かされるので写真の写りにはあまり支障が無いのに対して、Kマウントレンズの絞り羽根が粘ると、指定位置にまで絞り羽根が閉じるのに時間がかかるため、露光過多の写真が出来てしまうことになります。これを防止するために、Kマウントレンズは、絞り羽根が閉じる方向に強いバネを働かせています。TAKUMARは、開く方向にバネを働かせているのであまりバネを強くする必要が無く、そのため、絞りリンク全体も華奢な構造で事足りています。 ・ このように見てくると、TAKUMARのマウント部のスペースにKマウントの自動絞りに対応した絞りリンクを組み込むのは非常に困難であることが理解できます。PENTAXがそれを実現できなかったのは致し方の無いことだったと納得… ・ ・ 放射線を出すトリウム入りレンズについて ・ PENTAXには 他社と比べると明るいレンズが少ないという歴史があります。特にTakumar時代には、広角レンズだと焦点距離35mmに1:2があっただけでした。この「1:2/35」の場合、最初はフィルター径67mmという大口径の前玉を持つものでしたが、その後大幅に設計変更して、1967年にフィルター径49mmの小型鏡胴にモデルチェンジしています。 この設計変更を行えるようになった理由なのですが、1965年から入手し始めた酸化トリウム入りガラスによるレンズを作れるようになったからのようです。 このトリウムガラスのレンズを使用することにより、当時のハイエンド標準レンズである「1:1.4/50」もモデルチェンジしています。このレンズは 「SP」用に開発されたのですが、その当初の1964年には6群8枚構成であったものを、翌年の1965年に6群7枚構成としています。製造が非常に困難な「3枚構成」の貼合せ玉であったものを、比較的製造容易な「2枚構成」の貼合せ玉にしているのです。このレンズ構成は世界初のもので、これ以後、各社が競って 同形式を採用している優れたものです。 また、 同時期に、普及版標準レンズである「1:1.8/55」にも、このトリウムガラスによるレンズを導入しています。 ・ トリウムは放射性元素のため 、放射線を出します。その影響について問題意識が生じたためでしょうが、PENTAXは、1977年にはこれを使ったレンズの製造を終了しています。その問題意識を持った時期というのは、これより相当前の時点なのでしょうが、後継レンズの設計製造の問題があったために、変更が一遍にではなく順次行われたものと思われます。 最初に使わなくなったのが「SMC TAKUMAR 1:1.8/55」のようです。普及版標準レンズなので製造数も多く、問題も大きいということから変更を急いだのでしょう。 ピント環がゴム巻きの「SMC Takumar 1:1.8/55」の後期には使われていない製品があるので、これは確かなことです。 その次に変更の対象となったのが「SMC TAKUMAR 1:1.4/50」であると思われます。これは1975年のKマウントへの変更時には設計変更が間に合わず、短命だった「SMC PENTAX 1:1.4/50」の途中で変更していますから、次のMシリーズは、当初から使用していないものと思われます。 「1:2/35」の場合も、Mシリーズでまったく新設計のモデルに変わっていますが、その時期はMシリーズ開始時ではなく、それより少し遅れていたようです。それなので、1977年頃までトリウム入りレンズが作られ続けたということなのでしょう。 ・ トリウム入りレンズの製造が終了して30年以上が経ち、現在残っているそれらは、すべて多少にかかわらず「黄変」しているという問題があります。この黄変は「1:2/35」において特に顕著で、ファインダー視野が黄色く見えるほどです。 ところで、この黄変を改善除去できる方法があるという情報があります。紫外線を照射することで色が薄くなるというのです。この情報が正しいのかどうか、亭主は実験をしてみました。 結論としては、劇的な効果があるということです。2個の「SMC TAKUMAR 1:1.8/55」からそれぞれトリウム入りレンズ玉を取出し、同程度に黄変している2枚について、その内の1枚を陽のあたる屋外に放置したのです。6日間の放置で顕著な差が出ました。晴天の少ない6日間だったのですが、明らかに 「黄変」は緩和されています。紫外線被曝環境に置くことで黄変が緩和除去できるその原理そのものはわからないのですが、明白な効果があることだけは事実です。 ガラスというのは結晶ではなく、粘度の非常に高い液体なのだそうです。液体中の成分が紫外線を受けることで変化するというイメージは頷けるのですが、その変化した結果が光学ガラスの性能に影響を与えるのかどうかという点は気がかりなことです。 ・ トリウム入りレンズのもう一つの問題として、放射線を出しているということがあります。レンズエレメント自体から自然界の放射線量の100倍程度の放射線を出しているというのです。でも、この程度では健康に影響を与えるほどの量ではないので、気にするほどのことではないということです。交換レンズ後部を肌身離さず持っているというような状況があるはずもなく、通常の使用情況からして、実際の年間被曝量としては、自然界にある値の誤差に含まれてしまう程度の値です。 ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.8/55 ☆☆ ・
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・ これは、いわゆる「標準レンズ」というカテゴリーに位置付けられる交換レンズです。当時の販売形態として、カメラ本体とセットで販売されたため、ほとんどのカメラ本体が使用に堪えられなくなった現在もなおユーザーの手元に大量に残っている旧式交換レンズのひとつで、中古市場では非常に安価に流通しています。作られていた当時の世界標準マウントであるプラクチカマウント(M42)ですから、適合したマウントアダプターを併用することにより、多くの最新デジタル一眼レフに取り付けて使うことが出来ます。(※ニコンのFマウント カメラは、フランジバックがプラクチカマウントより1o長いので、無限遠が出せない。) ・ このレンズ構成の起源は1958年「Asahi Pentax K」のセットレンズとして誕生した半自動絞り「Auto Takumar 1:1.8/55」です。同時期にプリセット絞りの「Takumar 1:1.8/55」も少数作られています。こちらは「Asahi Pentax」と「Asahi Pentax S」用だったようです。その後全自動絞り「Auto Takumar 1:1.8/55」、「Super Takumar 1:1.8/55」、絞り環の回転方向を変えた「Super Takumar 1:1.8/55」、そして大きな設計変更を行ってアトムレンズとなった「Super Takumar 1:1.8/55」を経ています。 なお、この詳細については別室で開陳しています。 ・ この開放測光機能を持ったマウントは、AE機能を持ったESシリーズカメラのための「馬鹿者対策」機構として、ESシリーズのカメラに取り付けたときに、絞りオートからマニュアルに切り替えるレバーが作動しないようにする仕掛けが付け加えられています。マウント面に飛び出している小ピンがそれで、ESシリーズのカメラに取り付けたときにはこれが飛び出したままで、レンズの切替レバーがマニュアル側に動かないようにロックが掛かるのです。 従って、交換レンズを外したときにも切替レバーは動かないことになり、これを故障と早合点する人がいて、無理矢理動かそうとして壊すという悲劇も生んでいます。小ピンを押しながらなら切替レバーは動きますから、決して間違えないように… ・
・ 30年以上を経た旧式交換レンズとはいえ、レンズコーティングが既に「SMC」になっていますから逆光性能は優秀です。変形ダブルガウスタイプのレンズ構成で、明るさを無闇に欲張ってはいませんから、描写力や解像感は今も何らひけを取りません。同一レンズ構成のままでKマウント化もされました。分解が容易で整備のし易い鏡胴構造ですから、まったくの初心者が交換レンズの分解整備を最初に手がける物としても打って付けです。 ・ まったく同じレンズ構成でピント環がゴム巻きのもの(SMC TAKUMAR 1:1.8/55)と、アルミの削り出し加工のもの(Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.8/55)との2種類が作られていて、よく見かけるものに前期型と後期型だとの誤った認識がありますが、ゴム巻きのものは絞り優先AEの「ES」シリーズと昭和48年から販売された 「SPF」、その後追加されたリバイバルの絞込測光「SPU」用で、従前のデザインを踏襲したアルミ削り出しは、従前からあった絞込み測光マニュアル露出のみの「SP」や露出計不搭載の 「SL」用というのが正しく、作られなくなった時期だけが前後しているのです。従って、販売数は昭和46年から48年までの「SP」・「SL」用より、それ以降も作られた 「ES」シリーズと「SPF」・「SPU」用のゴム巻きのものが圧倒的に多く、当然残っている個体数も多くなっています。両者の違いとしては、ピント環の外に、絞り環の形状も別なものになっています。鏡胴に取り付ける部分の寸法は同一なので 、互換性はありますが… このことから、シリーズ共通のデザインを踏襲したアルミ削り出し加工ピント環のものは、マウントとレンズコーティングを変更した「Super Takumar」なのだと言う事ができるのかもしれません。マウント部に開放測光機能は搭載していますが、これと組み合わされたカメラの方には開放測光機能を搭載していなかったのですから… ・ なお、構成するレンズ群のうち、最も後ろの1枚には「トリウムガラス」が使われているものがあって、これについては、今では総てが黄変していると断言します。トリウムガラスは高屈折率 ・低分散を得るために多くのメーカーが使っていたもので、放射線を出す俗称「アトムレンズ」です。これを使った交換レンズは性能が高いとの俗説も流布されており、旭光学製でも使っている交換レンズが幾つかあります。これらは今もなお、微量ながら放射線を出して崩壊しつつあるのだとか… 黄変しているアトムレンズは、紫外線に被曝させることでその着色を薄くすることができます。鏡胴からレンズユニットを取り出して夏の直射日光に曝しておくか、紫外線ランプの照射が有効です。 1973年まで作られていたアルミ削り出し加工ピント環のものには、すべてトリウムガラスが使われているようですが、ゴム巻きピント環のものは、後期に作られたものには使われていません。その切り替わった時期や、シリアルナンバーにより判別が可能なのかどうかは、PENTAXが情報の開示を行っていないので不明です。 亭主の手持ちの中では、シリアル番号「79*****」の個体は黄変していません。 ・ 後から2枚目と3枚目は接着剤による貼合せレンズとなっていて、この接着剤が劣化変性することにより発生する現象が俗称「バルサム切れ」です。接着面に多数の油滴状の染みが生ずるものや、周辺部から鰯雲状の曇りが広がるものがそれです。これは、Kマウント化されたものにはほとんどの個体に発生している困った現象ですが、不可解なことに、より古いこの交換レンズやさらに古い 「Super-Takumar 1:1.8/55」の方には発生している個体をまだ見たことがありません。使用する接着剤の種類を変えたのでしょうか… ・ レンズ群を構成する各レンズ玉の形状そのものは「Super-Takumar」後期のものから「Kマウント」のものまで同一ですから、相互に置き換えることが可能です。Kマウントのバルサム切れした貼り合せレンズだけを健全な 「Super-Takumar」のものと入れ替えるとか、アトムレンズでないKマウントのものを「SMC TAKUMAR」以前に使われていたアトムレンズの替わりに使うとかいうような、「二個一」とか「部品取り」と称する改造もいろいろと楽しめたりする面白い交換レンズです。 バルサム切れは接着層とレンズが剥離する現象です。これが発生している貼り合せレンズ玉は、接着層の分離が亭主考案の「冷凍・熱湯法」により可能になっていますから、これからは「二個一」の出番は無くなるのかもしれません。 ・ なお、焦点距離ですが、「オートベローズの使い方説明書」に載っている接写表の倍率とベローズ繰出し量の関係から逆算すると、実質は約56.8oのようです。 「倍率=繰出し量/焦点距離」の関係ですから… ・ 長い間使わずに押入れなど暗くて空気の流通が悪い場所に仕舞って置いたものは、内外のレンズ面に黴が繁茂していることが多いものです。それらのほとんどは、中性洗剤を用いた洗浄で除去することが可能ですが、黴が分泌した酸などでレンズのコーティングが腐食されている場合は、残念ながらその痕が残ってしまいます。でも、これはレンズ玉のガラスそのものが傷付いたり腐食されているのではありませんから、光学性能を大きく損ねることはなく、撮影結果に影響を感じることはありません。 絞りの戻りが渋い個体も多いのですが、「絞り羽根」自体が油汚れなどで粘っているケースは極く少なく、マウント部のリンクが潤滑不良となっていることが原因である場合が圧倒的に多いものです。これらは、リンク部への微量の注油で快癒します。 もし「絞り羽根」自体が油などで粘っている場合は、絞りユニットを分解すると再組立が厄介ですから、取外した絞りユニットごとベンジンの中に漬け込み、羽根を動かしてよく振り洗いします。ヘアドライヤーなどでの「冷風」による乾燥後、鉛筆の芯を細かく削って磨り潰したものをごく少量羽根の間に塗布します。黒鉛の潤滑用パウダーを入手できるならそれを使います。 ヘリコイドの作動が固かったり、スカスカに緩いものがあります。これらの場合はグリースが固化したり、無くなっていたりしているので、分解清掃と注油により回復させることが出来ます。ほとんどその例が無いとは思いますが、磨耗によるガタが出ている場合は…回復困難ですから部品取り用とし、使える部分を他の個体に活用しましょう。 この交換レンズの特徴として、鏡胴の構造が二重になっていて、光学系と絞りがある内側部分と、ピント調節用ヘリコイドやマウント連結機構のある外側部分とに容易に分離でき、部分的な整備のために便利なものとなっています。 分解整備には道具が必要ですが、数種類の精密ドライバーからなるセットと、切り欠きリング回し、レンズサッカー、飾銘板リングを回すゴム程度で良いでしょう。 整備用の消耗品としては、レンズ玉の清掃のためにレンズペーパー、ヘリコイドの整備に専用のグリースが必要です。絞り羽根の粘りやヘリコイド等のグリース等が固化している場合のために洗浄用の上質ベンジンも必需品です。少し高価ですが、無水エタノールも用意すると良いでしょう。いずれも薬局で購入可能です。 ・ 分解において最初にする作業は、飾銘板を外すことです。飾銘板には工具等をあてがう穴や切り欠きはありませんから、ゴムなど軟らかくて摩擦係数の高いものをあてがって回すしかありません。口径に合わせた工具を自作するのが最も手軽な方法です。フィルター取付けネジ49o径のこのレンズには、海苔の佃煮などの広口ビンが適しています。口の部分にゴム系の接着剤を塗布して乾燥させ、その上にシリコーン系のコーキング材(バスコークが手軽)を塗布固化させたものがとても具合の良い工具になります。 ネジ溝に汚れなどがあると飾銘板が回り難くなります。スポイトや綿棒などでネジ溝に微量のベンジンか無水エタノールまたはCRC5-56を塗布浸透させ、粘着性の汚れを軟化させてから作業するとうまくいきます。 次にフィルター取付枠を外します。飾銘板を外した隙間に見える6本の小ビス(1.4-3.5ナベ)のうち、フィルター取付枠を止めている3本を外すことで外せます。 どれがそれかは、観察すればすぐに分かるはずです。これがすぐに分からない人は…この先の解作業には向きませんから、直ちに作業を中止して、飾銘板を元のように戻しなさい!! ・
・ 残る他の3本は二重鏡胴の内側を外側鏡胴に押さえ付けている小ビス(ワッシャ付き)で、これらを1.8mmマイナスドライバーで少し緩めることで内側鏡胴を回転させることができるようになり、それによって絞り羽根の開度を調整することができるのです。フィルター取付枠にある大き目の切り欠きは、その調整のための逃げです。この小ビスを取り外すことで、内側鏡胴は抜き出せます。 フィルター取付枠を取り外すと、その奥に3本の小ビス()1.4-3.5ナベワッシャ付き)が現れます。これらはピント環をヘリコイド装置に押さえ付けて固定しています。この3本を少し緩めることでピント環がヘリコイド装置に対してフリーになり、それによって無限遠の位置決め調節が可能になるのです。無限遠が来ないとか、オーバーインフであるとかの嘆きが旧レンズ購入者・所有者のネット上発言によく出てきますが、これを操れば簡単に解決することです。このへんが自前整備の醍醐味かと… ピント環を取り外すには、これらの小ビスを抜き取ります。 ・
ピント環を取り外すと、ヘリコイド装置が現れます。その構造は「内筒・中筒・外筒」の三重になっています。外筒の内側と中筒の外側には細かいピッチの逆ネジが切られ、中筒の内側と内筒の外側には数組の粗いピッチの順ネジが切られています。外筒は鏡胴に固定されていて、ピント環は3本の小ビスで中筒に固定 するのです。レンズ玉や絞り部分は内筒に装着し、内筒自体には鏡胴に対して回転しないように摺動式の回転止めが向かい合う位置に2組設けられています。内筒と中筒の間の粗いピッチのネジは数組ありますから、ヘリコイドを分解する場合、違う組合せにすると支障をきたしますので、抜いた位置をマーキングしておく ことで組立時に無用な苦労が避けられます。 なお、ピント環には、距離指標を印刷した薄く細長いアルミ板が接着してあります。このアルミ板の端が接着剤の劣化で剥がれている個体が多いものです。全部剥がれている個体を見たこともあります。ピント環を回すとジャリジャリという異音がするものは、その可能性が高いです。一旦全部剥がして、残った固化接着剤を無水エタノールなどで除去し、無限遠位置に 注意して弾性接着剤などで貼り付ければ修復できます。このアルミ板が折損している場合は、紙などに距離を記入して代用してもよいのでは… ・
絞り環は、その前方の被写界深度指標部分リングを周囲の芋ビス(1.4-1.5イモ)3本を1.2mmマイナスドライバー緩めて前方に抜き取ることで、それもまた前方に抜き取れるようになります。ただし、クリック用の鋼球(直径2mm)が零指標部の下に入っていますから、飛ばして紛失しないように慎重に作業しなければいけません。被写界深度指標部分リングと絞り環を抜き取ると、その下に00番プラス皿小ビス3本が現れますので、これらを抜き取ると絞り作動リンク部を組み込んだマウント部を後方に抜き取ることができます。 少し脱線しますが、上記クリック用鋼球に使えるステンレス鋼球は、東急ハンズなどで入手可能です。交換レンズ分解整備をこれからも続けたい人は、予備を少し入手しておくと心安らかでいられますよ… ・
マウント部に組み込まれている絞り操作のためのリンク類は、清掃と注油によって円滑に動くようになります。ここの潤滑不良が絞り作動トラブルの主要な原因となっていますので、分解したら必ず行うべきことです。 リンク部材の変形を修正する必要がある場合とか、ここの構造を完璧に見てみたい、絞り開度調整の仕組みや自動絞りの仕組みなどを理解したいという場合以外は、整備のためだけならこれ以上分解する必要はないので、そのまま全体をベンジンで洗い、汚れや劣化した油を除去して乾燥し、粘度のある上質な鉱物油を軸やカムなど摺動部に少量注油するだけにするのがよいでしょう。 なお、カムの部分は、絞り環の等間隔の動きを絞り開度の不等間隔な作動に変換するための巧妙な仕掛けですから、この構造と動きを理解することはとても有効だと思います。 ・
内部鏡胴は、前群レンズを保持している部分と絞りユニット部分および後群レンズを保持している部分で成り立っています。 絞りユニットの分解は、側面3か所の芋ビスを緩めることで前方から絞り羽根押さえ板が抜き取れます。絞り羽根の組み立ては、左へ左へと積み重ねて行き、最後の一枚は最初の一枚の下に差し込むようにして取り付けます。 レンズ玉は切り欠きリングなどで押さえてありますから、それらを外すことでレンズ保持部(ホルダー)から抜き出せます。 取り出したレンズ玉は、全体を微温水に浸してから、中性洗剤の泡を指先に取ってそれでそっとこすり洗いすれば、黴やレンズ周辺部の固化汚れは容易に取れます。無水エタノールやベンジンよりも、その洗浄効果は遥かに優れています。 洗剤を微温水で完全に洗い流し、水分を完全に拭き取ってから乾燥します。水滴が付いたまま乾燥すると水滴跡が残り、これを取るのに苦労します。 乾燥後はレンズペーパーで拭きあげて、元通りに組込みます。そのときに裸の指で作業すると指の油脂がレンズに付くので、ゴムの指サックか木綿の薄い手袋をして作業すると共に、レンズサッカーを用いてホルダーに挿入するときれいな仕事になります。 この時代の交換レンズに使用されている小ビスは、ほとんどがマイナス溝のものです。これは組立時に苦労の種です。プラス溝と違ってドライバーで保持し難く、奥まった狭い場所に取り付けなければならないのでとても大変です。 この装着し難いマイナス溝小ビスをより装着し易くする方法として 、ドライバー(1.8mm)の先端に水性木工ボンドをごく少量塗布して、少し乾いた状態で小ビスのマイナス溝に差し込むと保持し易くなるというものがあります。また、電気配線の絶縁用熱収縮チューブの内径がビス頭外径より小さいものは保持具として有効です。肉厚が少ないので狭い奥まった場所への取り付けが可能です。 ・
最短時の無限遠からレンズ群を繰り出すことによって近くのものにピントを合わせる原理になっていますが、このレンズ群を繰り出す仕掛けがヘリコイド装置で、ガタを少なくするために逆ネジと順ネジを組み合わせた巧妙な仕組みです。 その仕組みを単純化して考えれば、回転のみを抑制されたボルトを、回転だけするように固定されたナットを回転させることで前後に進ませる仕組みですが、ナットを滑らかに回転するようにガタ無く保持するという難しい要求を、ピッチの細かい逆ネジで保持することで解決した、というところに素晴らしさがあります。従って、ナットである中筒に固定しているピント環は同じ位置で回転しているのではなく、ごく少量前後しているのです。 このことを理解するには、現物を見るのが最も手っ取り早い方法です。面倒な事が嫌いで知的好奇心の無い人以外は、ぜひとも分解して納得してください。 内筒の回転止めを2箇所外すことで、内筒・中筒・外筒は分離することができます。上でも述べましたが、内筒と中筒とのネジと、中筒と外筒とのネジは回転方向が逆になっています。組立に際しては、両方のネジをいっぱいに捻じ込んだ状態から、2箇所の回転止めが正しく装着できる位置にまで捻じ戻した状態が正しい組立位置です。2箇所の回転止めは形状が異なり、板の真ん中にすり割りの入っていない方を鏡胴の狭い方の切り欠き部分に取り付けます。このことは分解前に確認しておきましょう。規定より捻戻し量が少ないと回転止めは正しく取り付けることができないので、ヘリコイドの組立は案外簡単です。設計思想と製造精度が優れている証拠でしょう。 ・ この交換レンズは、亭主が日頃事ある毎に「黄金の70年代」と喧伝賞賛している輝かしい時代の初頭に誕生し、あらゆる日本工業製品が世界王者の座目指して駆け上る怒涛の潮流のその最先端を競った存在でした。まさに我ら団塊の世代の青春時代に第一線で活躍した品だったのです。 亭主はこの交換レンズを幾つも所持しています。昔から所持していたものではなく、近年入手したものばかりです。どれもとても安価でした。当時の憧れであり、愛玩の対象であったこの思い出の品を慈しみ愛することは、自己のアイディンティティを大切にするにほかなりません。埃や黴などにまみれたままに捨て置かれるなどとんでもないことです。手を尽くして救い出し、交換レンズとしての生命のある限り大切に整備して使い続けましょう。 そしてこの品も我等も、それに堪えられるパワーをなお十分に秘めているのですから… ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50 ☆☆
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・ これは、標準レンズというカテゴリーの交換レンズです。同時代の上記「1:1.8/55」が普及品とすると、これは、より明るい高級品に位置付けられていました。より重く、より高価でもありましたが… 開放F値が1:1.4の1眼レフ用交換レンズで焦点距離が50oのものとしては、これの先代であるSuper-Takumarが昭和39年に発売されたのが世界で最初のものでした。当時、他社のものは55oとか58oとかでしたから… ところで、その後の亭主の現物蒐集に基づく研究で「Super-Takumar 1:1.4/50」の発売時期が昭和37年なのではないかという疑いが出て来て、これは確実なことだと亭主は思っています。 その最初のものは、レンズ構成が6群8枚となっていました。4群目貼り合せレンズが3枚構成だったのです。でも、約1年後には、このレンズ構成のものにモデルチェンジされています。それを可能にしたのが、同時代の多くの他社でも使っている「酸化トリウム入りレンズ」の採用だったようです。これは高屈折率と低分散を両立させる優れた性能を有していました。 このレンズ構成はKマウント化されても引き継がれて、その後Mシリーズ、Aシリーズ、AF化されてFシリーズ、現行のFAシリーズへと40年以上に渡って連綿と使われ続けている長命の設計です。基本性能が優れている証左でしょう。 これも、まったく同じレンズ構成でピント環がゴム巻きのもの(SMC TAKUMAR 1:1.4/50)と、アルミの削り出し加工のもの(Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50)との2種類が作られていました。 少し脱線ですが、同じ形式のゴム巻きピント環のTAKUMARは、1975年最後のSマウントとして発売されたSMC TAKUMAR 1:3.5/15だけです。少し異なった形式のゴム巻きピント環としては、ズームとSuper-Multi-Coated Macro TAKUMAR 1:4/100o がありますが… Kマウント化後には全てゴム(ビニール)巻きに統一され、その先駆け的な存在なのですが、TAKUMARの良さはアルミ削り出しピント環の感触にあると思うので、この少しチープな感じのゴム巻きピント環はかなり減点… ・ この交換レンズにも貼り合せレンズは使われているので、接着剤の劣化変性による曇り、いわゆる「バルサム切れ」は避けられない問題です。幸い「1:1.8/55」と同様、この品や、より古いものにはほとんど見られないのですが、次世代以降のKマウント化されたもの、特に大量に作られたMシリーズのものには、逆に今やほとんどの品に発生しているという厄介な現象です。 ・ また、同時代の高性能交換レンズ共通のものとして「アトムレンズ」問題も抱えています。5群目のレンズ玉が酸化トリウム入り光学ガラスで作られていて、それが今では総て黄変しています。 トリウムは放射性同位元素ですから放射線を出して崩壊し、その結果の黄変のようです。色味の変化はAWB機能があるデジタル一眼ではあまり問題にはなりませんが… でも、黄変している「アトムレンズ」は、紫外線に被曝させることでその着色を薄くすることができます。鏡胴からレンズユニットを取り出して夏の直射日光に曝しておくか、紫外線ランプの照射が有効のようです。 ・ レンズ群を構成する各レンズ玉の形状は、これと「K」及び「M」シリーズのものとは同じですから互換性があります。したがって、問題のあるレンズ玉を「部品取り」によって置き換えるという手が使える面白さもあります。 しかし、絞込測光鏡胴の「Super-Takumar」とは互換性がありません。亭主は未入手ですが、鏡胴構造を変更した「A」及び「F」、「FA」とも互換性が無いものと思われます。 ・ この交換レンズは、すべて前方から分解します。その手始めは、飾銘板の取外しです。このためには、是非とも工具の自作をお勧めします。 飾銘板を取り去った下に現れる3本の小ビスを外すと、フィルター取付枠は取り外せます。その奥に現れる3本の小ビスはピント環をヘリコイド装置の中筒に押さえ付けています。これを緩めることでピント環とヘリコイド装置をフリーにすることが出来て、それにより無限遠の調整が出来るのです。 前群のレンズ3枚を収めているレンズホルダーを、それが捻じ込まれているヘリコイド内筒から外すと、絞りユニットが現れます。 上記3本の小ビスを取り去ることでピント環を抜き取ります。その下に現れるヘリコイド装置内筒の外側面先端付近にある3本の芋ビスを緩めると、絞りユニットを抜き取ることが出来ます。芋ネジは先が尖っており、その先端をヘリコイドユニット周囲に喰い込ませる事で押さえているだけなので、これを緩めた状態で絞りユニットを回転させて絞り開度を調節できるのです。 なお、この芋ビスは抜き取ると紛失などの原因となるので、緩めるだけにしておきましょう。抜き取る必要はまったくありませんし、芋ビスを失くすと、代替品を入手するのが困難ですから… 絞りは8枚羽根です。Super-Takumar時代は6枚羽根でしたから、これは大きな改良です。 絞り環は、その前方の被写界深度指標部分リングを周囲の芋ビス3本を緩めてから前方に抜き取ることで、これも前方に抜き取れるようになります。クリック用の鋼球が零指標部の下に入っていますから、飛ばして紛失しないように慎重に作業しなければいけません。 被写界深度指標部分リングと絞り環を抜き取ると、その下に00番プラス皿小ビス3本が現れます。これらを抜き取ることで絞り作動リンク部を組み込んだマウント部を後方に抜き取ることができます。 ・
飾銘板を外し、フィルター枠を外してから ピント環を抜き取った状態。 絞りと前後のレンズホルダーを抜き取った状態です。
被写界深度指標リングを抜き取った状態。 絞り環を抜き取った状態。クリック用鋼球の紛失に注意…
マウント部とヘリコイド部を分離した状態。 レンズホルダーを兼ねているヘリコイド内筒が、 複雑な形状であることが分かります。 ・ マウント部に組み込まれている絞り作動のためのリンク類は、清掃と注油によって円滑に動くようになります。リンク部材の変形を修正する必要がある場合とか、ここの構造を完璧に見てみたいという場合以外は、整備のためだけならこれ以上分解する必要はないので、そのままベンジンで洗って汚れや劣化した油を除去して乾燥後、粘度のある上質の鉱物油を少量注油するだけにするのがよいでしょう。 レンズ群は、前群はレンズホルダーに保持されています。レンズホルダーはヘリコイド装置内筒から左回しで前方に抜き取ることができます。レンズ玉は切り欠きリングなどで押さえてありますから、これらを外すことでレンズホルダーなどから抜き出せます。 後群のうち一番前の貼り合せ玉と次のアトム玉は、ヘリコイド内筒に直接保持されています。アトム玉と、最後の1枚だけを保持しているレンズホルダーは後方から抜き取りますが、前の1群2枚の貼合せ玉は 、絞りユニットを抜き出した後で前方から抜き取ります。レンズ押さえのリングが奥まっているので、 どのカニ目回しでも使えるわけではありません。ピンセットとかデバイダーなどを改造した工具の工夫が必要で、この辺がちょっと厄介かな… 取り出したレンズ玉は、全体を微温水に浸してから中性洗剤の泡を指先に取ってそれでそっとこすり洗いすれば、黴やレンズ周辺部の固化汚れは容易に取れます。無水エタノールやベンジンよりもその洗浄効果は優れています。洗剤を微温水で完全に洗い流し、水分を完全に拭き取ってから乾燥します。水滴が付いたまま乾燥すると痕が残り、それを取るのに苦労します。乾燥後はレンズペーパーで拭きあげて、元通りに組み込みます。そのときに裸の指で作業すると指の油脂がレンズに付くので、ゴムの指 サックか木綿の薄い手袋をして作業すると共に、レンズサッカーを用いてホルダーに挿入するときれいな仕事になります。 ヘリコイド装置はその内筒の形状がレンズホルダーを兼ねてもいるので複雑なものになっています。前後のレンズホルダーを直接捻じ込むようになっているのも鏡胴を二重構造にしない工夫なのでしょうが、絞りユニットの簡素化や互換性も視野に入れている設計なのかもしれません。工作技術の高度化がこのような設計を可能にしたのでしょう。 ・ アトムレンズが使われているためなのかは不明ですが、このレンズの描写力を称揚する声が多くあるようです。45cmまで寄れるので、近接撮影での開放付近の前後ボケはとろけるような感じに…
・ この交換レンズは、「ジャンク」でもネットオークションなどでは案外高値で取引されています。「1:1.8/55」が理不尽なほど安価なのとは異なります。それだけ流通数が少ないのでしょうか…販売されていた当時は8,000円の価格差だったのですが、それは当時我々が貰っていた月給の1/6から1/8ぐらいに相当しますから、なかなか手が出なかったのかも… 多数販売された後進「smc PENTAX M 1:1.4 50mm」のあらかたがバルサム切れに侵されている現在、この交換レンズから貼り合せ玉を移植するというのが解決策の一つとなります。そのせいで人気になっているのだとしたら、それは後輩の不始末の尻拭いをさせられるということですから、身につまされること頻りなり… なお、バルサム切れ貼り合せ玉の接着層を誰でもが安全に分離する方法を2011年6月1日に亭主が考案確立したので、再度接着することで修理が可能になりました。したがって移植手術は不要になったので、この交換レンズをドナーとされる事例は減るのではないかと思っています。そのことにより中古価格が下落するのなら、それはそれで重畳至極… なお、これの先代7枚玉「Super-Takumar 1:1.4/50」は最終「Z期型」を除いて全く異なる寸法のレンズ群なので、そちらをドナーとすることは出来ません。お間違えなきよう… ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:3.5/135 ☆☆
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・ これは、望遠レンズというカテゴリーの交換レンズです。まったく同一レンズ構成のままでKマウント化もされました。そのレンズ構成は4群4枚とシンプルで、前群の3枚目は随分とぶ厚い凹レンズです。前から凸・凸・凹・凸と並ぶ典型的なエルノスターというタイプのレンズ構成です。全ての玉がメニスカス形状となっていますから、凹面と凸面の数は同じです。 鏡胴の構造は上記「Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50」とほとんど同形式のもので、焦点距離が伸びたのに比例して寸法が伸びているだけです。分解の方法はそちらを参考にしてください。前群3枚が組み込まれたレンズホルダーを抜くと、絞りユニットを前方から抜き取れます。後群は1枚だけですから後方から抜き取ります。 ・ 焦点距離135oのこの交換レンズは、標準レンズと焦点距離28oの広角レンズと合わせて3本セットの位置付けでした。いっぱしのカメラ使いという顔をするためには、少なくともそのセットを所持しているのが必須条件である時代でもありました。まだズームレンズは恐ろしく高価な割りに性能が劣っていて、一般庶民、特に薄給の若者がおいそれと手出しできるような存在ではなかったのです。 このくらいの焦点距離になると、絞り込んだときの望遠レンズらしい積み重なり感や、開放付近での前後ボケによる立体感がわかる絵が容易に作れます。標準レンズとは違うのだという感激を誰もが享受出来る存在でした。 APS-Cフォーマットのデジタル一眼レフで使うと、135フォーマットでの焦点距離200oレンズ相当の画角が得られます。積み重なり感や前後ボケによる立体感は135oなりのそれですが… 価格が低く抑えられていたことと、「3本セット」という世の風潮があった関係でたくさん販売されたので、まだユーザーの手元に大量に残っています。 ネットオークションなどでの取引価格も驚くほど安価です。でも、性能は侮れないものを持っていますし、貼り合せレンズを使っていないことでこれからも永く製造物としての生命を保ちそうですから、入手して愛玩することをお勧めします。 ・ なお、「1:3.5/135」のレンズ構成としては「Super Takumar」のときに現在のものに変更されています。M37マウント「Takumar」のときに誕生した前身は、4群目凸が貼り合せとなっていた4群5枚構成のエルノスターでした。普及を目的とするコストダウンのための変更だと思われます。
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:2.5/135 前期型 ☆☆
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・ これは、望遠レンズというカテゴリーの交換レンズです。開放測光対応プラクチカマウントであるSMC TAKUMARシリーズの交換レンズは僅か5年間という短い製造期間でしたが、それにもかかわらず、この名称の品には前期型と後期型が存在します。前期型のレンズ構成や鏡胴寸法はSuper Takumarのものを継承したのですが、レンズ構成も鏡胴設計も大きく異なる後期型は、同一レンズ構成でKマウント化もされました。昭和48年6月の時点では、既に後期型に置き換わっていました。 絞り開放のF値が1:2.5と明るく、ボケの効果がSuper-Multi-Coated TAKUMAR 1:3.5/135と比べてより多く感じられます。3割以上増えた価格差は十分にあったのかも…重量も3割以上増えていますが… 鏡胴は、旭光学の望遠系レンズの標準構造である前後分割式です。前群のレンズが組み込まれている前部鏡胴と、絞りユニット、後群レンズ、絞りリンク類の組み込まれている後部鏡胴とはネジで結合されています。絞りの前後のレンズ面に付着することが多い埃などは、前後の鏡胴を捻じって分割するだけで清掃除去できますから、メンテナンスが容易な構造です。 前群は凹レンズである3群目が凸レンズである前の2群と大きく離れ、絞りの直前に来る4群5枚構成エルノスターです。1群目凸が(凹凸)の貼り合せです。 6枚羽根の絞りユニットの鏡胴への固定方法は、上記Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.8/55の内部鏡胴の取付方法と同様なものですから、それらについて後期型と比較することで旭光学の交換レンズ鏡胴設計思想の変遷というようなものも見ることができて、なかなか興味深いものがあります。当然、後のもののほうが簡素で製造も容易でしょうから、コストダウンにつながっているのは明白です。絶対的な基本性能という点では 若干劣ってしまうのかもしれませんが… ヘリコイド機構に対するピント環の取り付けは、ピント環外周にある3本の芋ビスで押さえ付けることで行っています。この辺も鏡胴が太い交換レンズに共通の手法です。この芋ビスを少し緩めることでヘリコイド機構とピント環をフリーにすることが出来ますから、それによって無限遠を調整できます。ピント環を抜き取るためには芋ビスをもう少し緩めます。この芋ビスは抜き取る必要はありませんし、紛失を避けるためにも抜かないようにしましょう。 これから後の部分の分解方法は、上記Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50とまったく同様・同等です。後群レンズホルダーの取り外しはマウント部を取外してから行う方が簡単で、レンズ玉を傷つけるリスクが少なくてすみます。組立時に必要な無限遠の調整を嫌う場合以外は、鏡胴を分解してから行いましょう。でも、無限遠の調整は至極簡単です。 ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:2.5/135 後期型 ☆☆
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・ これは、望遠レンズというカテゴリーの交換レンズです。 まったく同一レンズ構成のままでKマウント化もされ、それは最も明るい望遠レンズとしてKAマウントの登場まで作り続けられました。 レンズ構成は前期型と違い、一般的な前群の凸レンズ群、絞りを隔てて大きく離れた後群の凹レンズ群の典型的なテレフォトタイプです。エルノスターの前方に凸凹2枚のダブレットを追加した構成というところですが、トリプレットを2組ということもできます。1枚目と2枚目の間の空間は、いわゆる空気レンズというものでしょうか… 鏡胴の全体的な形状寸法は前期型と似ていますが、実質的にはまったく新規設計の別なもので、ピント環などの外装を含めて、両者に互換性はありません。名称だけが同一という 、 旭光学の交換レンズによくある例です。コーティングの多層化により、レンズ枚数を増やしても支障が無いようになって出来たレンズ構成と言うことができます。貼り合せレンズを使わなくてもよくなったことで、生産性も向上しているのでしょう。 8枚羽根になった絞りユニットの鏡胴への固定方法は、上記Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50のそれと同様なものです。それ以外の鏡胴の分解方法は、上記前期型と同様です。 このレンズをデジタル一眼レフで使うと、軸上色収差が気になります。倍率色収差ではないのでF5.6まで絞ればほとんど改善されますが、開放付近では無限遠の白っぽい小さなものがものが薄赤紫に染まります。この時代のものではやむをえないのかもしれません。 ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:4/200 ☆☆
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・ これは、超望遠レンズというカテゴリーの交換レンズです。 まったく同一レンズ構成のままでKマウント化もされました。大きい、重い、暗い、寄れないの良いところ無しで、しかも、絞らないと画がぱっとしないとの散々の酷評まであって、中古市場でまったく人気が無いのが哀れです。製造・販売されていた当時は、このクラスでは最高性能で、開放絞りでも素晴らしい解像力であると旭光学は謳っていましたが… レンズ構成は、基本的には凸凹のテレフォトです。その凸グループは凸凹凸のトリプレット構成で、後の凹グループは凸凹のダブレット構成になっていることで諸収差を補正しています。凸凹それぞれの屈折力を大きくしないためでしょうが、あまり全長は短くしていません。 旭光学の望遠系レンズの定番構造で前後分割式鏡胴になっており、前群レンズが組み込まれている前部鏡胴が後部鏡胴にねじ込まれています。中群レンズの組み込まれているレンズホルダーは、後部鏡胴のヘリコイド装置内筒に捻込まれており、これを抜き取ると絞りユニットが現れます。後群レンズホルダーはマウント部を取外してから外すほうがレンズ玉を傷つけるリスクが少なくなります。 6枚羽根絞りユニットの鏡胴への固定方法は、上記Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50のそれと同様なものです。それ以外の鏡胴の分解方法は、上記Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:2.5/135前期型と同様です。 ・
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:4/300 ☆☆
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・ これは、超望遠レンズというカテゴリーの交換レンズです。 まったく同一レンズ構成のままでKマウント化もされました。諸収差を完全に除去したプロ用と旭光学は公言していました。F1:4と明るいのですが、とても大きく重いので、内蔵引出式フードと縦横位置対応の三脚座が付属しています。付属の専用キャップは引出式フードに被せる超大径のものです。それは内径85oですから、他の焦点距離のフード内蔵交換レンズでも使えるものがあります。 なお、この交換レンズ、公称は焦点距離300oですが、実質焦点距離を「オートベローズの使い方説明書」に載っている接写表の倍率とベローズ繰出し量の関係から計算すると、288oと出ます。 この交換レンズをマウントアダプターK経由でKマウントのカメラに装着するのなら、マウント最後部に取り付けてある遮光フレームを取り去る必要があります。どうしても装着誤差があり、指標位置が真上に来るとは限らないので、斜めになった遮光フレームに蹴られる恐れがあります。取外し容易な三脚座の取付部にはセレーションが設けてあるので、指標位置の誤差ズレはそれによって調整することができます。 望遠系レンズの定番構造で前後分割式鏡胴になっており、前群レンズが組み込まれている前部鏡胴は後部鏡胴に捻込まれています。絞り羽根の開度調節は、前部鏡胴を抜くと現れる3本の小ビスを緩めることで行えます。絞りユニットを取外すためには、この小ビスを抜き取ります。 他の分解手順は、上記Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:2.5/135 前期型と同様です。 前部鏡胴には引出式フードが装着されています。前部鏡胴も捻ることでさらに前後に分割することができ、フードを外すことができます。どの部分で分割できるのか、よく観察すると見つけられるのじゃよ… このレンズ構成も、基本的には凸凹のテレフォトです。その凸グループは凸凹凸のトリプレット構成で、後の凹グループは凹凸のダブレット構成になっていることで諸収差を補正しています。 ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:3.5/35 ☆☆
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・ これは、広角レンズというカテゴリーの交換レンズです。Super-Takumar時代どころか、その前の時代から使われてきた長命なレンズ構成で、後にKマウント化もされました。テッサータイプの3群4枚の前に大きな曲率の片凸形状(メニスカス)凹レンズを1枚置いたレンズ構成です。これは最も原始的なレトロフォーカス形式でしょう。 SMC TAKUMARシリーズの交換レンズ群の中では最も軽量コンパクトな鏡胴でした。PENTAX製MFレンズ全体の中でも、M 40oF2.8に次ぐ2番めの軽さです。 なお、この交換レンズ、後玉がマウント面より相当に出ているので、最も新型の国産M42マウントカメラ(と言っても、既にディスコンですが…)であるベッサフレックスTMに装着すると、無限遠時にミラーと干渉します。 ぎりぎりまでレトロフォーカス度を小さくしたかったためでしょう。
この交換レンズの描写力には侮れないものがあります。とても古い設計なのですが、発色や解像感はとても優秀です。APS-Cなら周辺画質の低下を免れますから、デジタル一眼で使うのに何の遜色もありません。標準レンズの換算画角になりますから、とても使い易い… ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:2/35 ☆☆
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・ これは、広角レンズというカテゴリーの交換レンズです。同一のレンズ構成でKマウント化もされました。SMC TAKUMAR広角レンズの中で最も明るい交換レンズでしたが、現在では総てが黄変しているという問題を抱えています。トリウムガラスで作られた、俗称「アトムレンズ」のせいですが、ユニバーサルフィルムでは色変換フィルターを併用しなければならないぐらいに色味が変わります。AWBが使えるデジタル一眼でならまったく支障はありませんが… 黄変しているアトムレンズは、紫外線に被曝させることでその着色を薄くすることができます。鏡胴からレンズユニットを取り出して夏の直射日光に曝しておくか、紫外線ランプの照射が有効です。 広角レンズとしてはとても長い鏡胴です。同じ焦点距離の1:3.5/35よりも20mmも長いのですから… レンズ構成を分析してみると、レトロフォーカスの前成分凹は凹凸2枚のダブレットと見ることが可能です。後ろ成分凸は5群6枚の変形ダブルガウスと見ることができます。前成分と後ろ成分の屈折力を押さえることで収差を少なくし、そのために全長を大きく取った設計になっているのでしょう。後群を変形ダブルガウス構成とすることで明るさを確保しています。 ・ 鏡胴の分解手順は上記Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50とほぼ同一ですが、6枚羽根の絞り装置がユニット化されておらず、ヘリコイド内筒に直接組み付けてありますから、羽根の清掃が必要な場合など、絞り装置のメンテナンスはなかなか厄介です。 前群、後群ともにレンズホルダーに組み込まれていますから、鏡胴の前後からそれぞれ抜き取ります。後群ホルダーはマウント部を外してから抜き取るとレンズ玉を傷付けるリスクが少なくて済みます。 ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:3.5/28 ☆☆
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・ これは、広角レンズというカテゴリーの交換レンズです。Kマウントに移行しなかった数少ない交換レンズのひとつですが、広角レンズの定番焦点距離だった28o交換レンズは前のSuper-Takumar時代に誕生し、大きな設計変更が一度行われて、レンズ構成も変化しています。28oというのは旭光学が最も悩み、模索を繰り返して来た焦点距離なのかもしれません。Kマウントされなかったのは、その設計変更周期とマウント変更時期が一致したためなのでしょう。 前部凹がトリプレット、後部凸が逆エルノスターとでも言うべきレンズ構成のレトロフォーカスです。この逆エルノスター構成の後群とすることで、レトロフォーカスの欠点だったコマ収差を良好に補正できるようになったのです。この基本設計は次世代以降の広角レンズに引き継がれて行きました。 前群レンズの直径に比べて鏡胴が小さめなので内部はせせこましく、分解整備は少し厄介です。鏡胴の構造は概ね上記Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:1.4/50と似通っていますが、絞り装置がレトロフォーカスの後端近くに置かれているために小さく、ユニット化されておらずにヘリコイド内筒に直接組み付けられています。絞り装置を分解すると再組立に苦労しそうですから、もし万一絞り羽根が粘っている場合は、ヘリコイドを分解して内筒を外し、それごとベンジン洗浄したほうが簡単そうです。 しかしながら、絞り羽根が粘っている事例は、レンズシャッターカメラのシャッターユニットに組み付けられているもの以外には亭主はまだ出会っていません。無知な手で無闇な注油などのメンテナンスを受けたような場合や、水没事故に遭ったような場合を除き、交換レンズの場合はその構造上、絞り羽根そのものが粘ることはほとんど考えられません。絞り羽根の戻りが遅いものにも何件か遭遇していますが、マウント部リンクの潤滑が悪くなっている事例ばかりでした。それらは、どれもリンク部の清掃と少量の注油で総て完治しています。 ・ 飾銘板の幅が狭く、しかも前群レンズホルダーの方が前に出ているので、通常の外し方では困難な場合があります。前群レンズホルダーごと回すと 、場合によっては飾銘板がロックナットのようになって、通常のゴム道具では回らなくしてしまうおそれがあります。飾銘板だけを回せる道具を用意するのが安全でしょう。 フィルター取付枠を外すとピント環をヘリコイド中筒にその頭で押さえ付けている小ビスが3本見えます。これを緩めると、ピント環とヘリコイド内筒の止め付け位置を変えることで無限遠の調整ができます。抜き取ればピント環が外せます。 被写界深度指標リングはその周囲3か所の芋ビスで止めてあります。これを緩めれば外すことが出来るのですが、その前にピント環の回転止めビスを抜きます。 絞り環は前方に抜きます。クリック用のボールベアリングが下に入っていますから、飛ばして無くさないように注意が必要です。開放位置にしたときに「5.6」の下にありますから、その位置に親指をかぶせるようにして外すと飛ぶ心配が少なくなります。このボールベアリングの入っている穴の下には裏側に板バネがあるのです。絞り環の取付時には、絞り開放で行うと分かり易くて失敗が少なく出来ます。 絞り環を取り去った下には鏡胴周囲に3か所の小ビスが現れます。これを抜くと、ヘリコイド外筒とマウント台座が分離出来ます。マウント台座の内側には絞りリンクが組み込まれています。このリンクは、動かないなど作動が異常な場合以外は分解の必要がありません。汚れていたらベンジン中で振り洗いし、回転部分に少量の注油します。 ・ ヘリコイド装置は外筒、中筒、内筒の三重構造です。後側から対角2ヵ所の摺動板を外すことで分解出来ます。分解する前に、三筒の位置関係をマーキングしておくと、組立時にまごつかずに済みます。 ヘリコイドにはグリースを使います。これの粘度で回転の重さが変化します。何種類か専用グリースが市販されています。好みの粘度を見つけるのも自前整備の愉しみの一つかと… ・ レンズ玉は前群、後群ともヘリコイド内筒に捻じ込まれたレンズホルダーの中に取り付けてあります。ソケットや切欠きリングで押さえてありますから、これを外して取り出します。後群のレンズ玉は非常に小径なので扱いには注意が必要です。 木の根状に広がる白カビの除去は中性洗剤を使った水洗で綺麗に取れるはずです。水洗後はすぐにティッシュペーパーで包んで水滴を完全に取ります。水滴が付いたまま乾くと、その跡が取り難くなります。仕上げはレンズクリーナーとレンズペーパーで拭きます。これはレンズ玉整備には必要な資材です。 ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated TAKUMAR 1:4.5/20 ☆☆
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・ これは、超広角レンズというカテゴリーの交換レンズです。Kマウントに移行しなかった数少ない交換レンズのひとつですが、そのときに新設計のものになったのは、もう少し明るくという欲求が強かったのでしょう。でも、開放から解像力は優れていて、周辺光量落ちも少ない実力者タイプの交換レンズです。 専用の巨大な角型フードが設定されていて、これは前後に分割でき、間に77mm径フィルターを挟んで使うようになっていました。フィルター枠は58mmですが、135フォーマットのカメラだと、このサイズのフィルターは蹴られる場合があったようです。APS-Cフォーマットのデジタル一眼でならまったく問題ありませんが… 状態が良く、必要が無いのでまだ無分解です。 ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated Macro TAKUMAR 1:4/50 ☆☆
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・ これは、マクロレンズというカテゴリーの交換レンズです。同一のレンズ構成でKマウント化もされました。長いヘリコイドによる全群繰出しで、テッサータイプの小さなレンズ群の割りに大振りな鏡胴です。1/2倍の撮影を可能にするための長いヘリコイド装置を搭載しているせいですが、擂鉢状の奥にあるレンズを拭くときはフードの役割もする「擂鉢」を外すと作業がし易くなります。先端部外周を掴んで左回りに回すと抜き取れます。それで鏡胴内部が見渡せるようになり、繰り出したときの絞りリンクの動きやその仕組みを見ることができますが、それにしても 、レンズ群の小ささが際立ちます。 ピント環先端部に表示されている数字は、分数で表わされる倍率の分母です。倍率は「倍率=繰出し量/焦点距離」で得られますから、表示の1/2倍というのが正確だとすると、この交換レンズの実際の焦点距離は50oではなく52oということになります。このことから、26o厚の接写リングを装着すると、等倍〜1/2倍の撮影ができるはずです。 レンズ構成がテッサータイプの通例として逆光性能が少し劣るとの評価もありますが、諧調豊かで滑らかにボケるとの評価もあります。亭主の評価は…無問題… ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated Fish-eye TAKUMAR 1:4/17 ☆☆
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・ これは、魚眼レンズというカテゴリーの交換レンズです。同一のレンズ構成でKマウント化もされました。対角線画角が180度です。四隅の歪曲が面白い画面を作るのが特徴ですが、APS-Cフォーマットのデジタル一眼ではその効果は減殺されてしまい、デストーションが大きめな超広角レンズという感じになってしまいます。 発売時には、旭光学は驚異的な解像力を謳っていました。 通常のフィルター取付枠はありませんが、フィルターが3種類(UV・Y2・O2)内蔵されていて、先端部のリングを回すことで選択します。その他に鏡胴最後部にゼラチン・フィルター・ホルダーがねじ込み設置されています。 鏡胴先端よりレンズ面が前に飛び出しているので、傷を付け易いのが問題点です。使わないときは必ずかぶせ式レンズキャップ(58o径用)をしておかないと危ないです。 絞り羽根は、当時の旭光学の広角系の交換レンズには珍しく6枚です。 この個体は状態が良好なので整備の必要が無く、無分解です。 ・ |
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☆☆ Super-Multi-Coated BELLOWS TAKUMAR 1:4/100 ☆☆
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・ これはベローズ用レンズというカテゴリーの交換レンズです。絞り環が二列になったプリセット絞りで、絞り込んで行くと途中F8のときに8稜星型になる変な絞りです。F11になると正8角になり、最小絞りのF22では円形です。ヘリコイドが内蔵されていないので、ベローズ装置やヘリコイド接写リング等に取り付けて使用します。同一のレンズ構成でKマウント化されました。そのときには自動絞りとなっています 。 トリプレットの両側の凸をダブレットとした、典型的なヘリヤータイプのレンズ構成です。 この個体も程度極上なので、まだ無分解です。 ・ |
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