☆☆ 究極のベローズ装置とは ☆☆

 

… 前書き …

 ベローズ装置というのは交換レンズの最短撮影距離を短くする、つまり接写による拡大撮影が主要な機能ですが、蛇腹を介してカメラとレンズが離れることで其々に別々の動きをさせられることがあります。これを称して「あおり機能」と言いますが、この「あおり機能」が装備されているベローズ装置は少数派です。その中でも「チルト・スイング・シフト・ライズフォール」という4種類の「あおり機能」の全てを装備しているのは極少数です。そんな中で、比較的低廉な価格で入手が可能なのが中判カメラ用「MAMIYA AUTOBELLOWS 645N」です。これにはレンズ台座に4種類の「あおり機能」が組み込まれているので、それを使いこなすことで究極の撮影が可能なのです。

 また、ベローズ装置の利便性を高めるのが、多様な交換レンズが使えるという点です。それにはレンズ台座のマウントが変換式であることが必要ですが、そのための改造を許すだけの大きさが「MAMIYA AUTOBELLOWS 645N」にはあります。

 さらに、多様なカメラで使えるということも重要な性能と言えるでしょう。その余地が大きいのも「MAMIYA AUTOBELLOWS 645N」が優れている点です。

 ところで、4種類のあおり機能ですが、「チルト」というのはレンズ面や撮像面を上下に傾けることを指します。「スイング」は左右に傾けることです。「シフト」は左右にずらすことで、「ライズフォール」は上下にずらすことです。この4種類の動きを組み合わせることで 「あおり効果」を得るのです。

 このうち、チルトとスイングでは「シャインプルーフの原理」による被写界深度の拡大及び縮小が行えます。シフトとライズフォールは、レンズの作るイメージサークルの中を撮像面のアパーチャーが移動することによって画像の歪曲を補正する効果があります。建築写真の撮影に使うのが顕著な例です。これを効果的に行うためにはイメージサークルが大きいレンズでなくてはなりません。

 「シャインプルーフの原理」とは、被写体の「前後に離れた2点」に同時にピントを合わせたい時に、その2点を結んだ線の延長と、光軸に直角なレンズ第2主点からの直線と、撮像面の延長との、この三つの線が一点で交わった時に 、「前後に離れた被写体の2点」に同時にピントが来ます。これは、一般的にはチルトダウンによって得られますが、その場合に逆のチルトアップを行うと被写界深度が狭くなって、前後のボケがより大きくなります。この効果を利用すると風景の中景にピントを合わせた時に前後が大きくボケるために、あたかも模型を近接撮影したかのような、非現実的な画像が得られます。

 チルトダウンの手法によって得られる効果的な画像としては、テーブル上に並ぶ皿の料理すべてにピントが合う写真や、模型の全体にピントが合うクローズアップ写真などです。いわゆる「物撮り」には極めて効果的な機能と言えるでしょう。

・ている点です・

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… マミヤ・オートベローズ645N 「改」 …

 マミヤが中判M645カメラのために販売したオートベローズです。レンズ台座に「あおり装置」があるのが最大の特長で、チルト・スイング・シフト・ライズフォールという、あおり動作の全てを同時に行うことが出来る「超」スグレモノです。

 その構造としては、アルミ製蟻溝式逆台形レールの上面に鉄製のラックギヤが取り付けられていて、カメラ台座、レンズ台座のそれぞれに内蔵しているピニオン・ギヤがそれと噛み合い、ダイヤルで回転させることで 各台座は移動します。

 また、マクロスライダーを組み合わせることが出来ますが、それにはアルミ製蟻溝式台形レールの下面に鉄製のラックギヤが取り付けられていて、三脚台座に内蔵しているピニオンギヤがそれと噛み合い、ダイヤルで回転させることで移動します。

 なお、このマクロスライダーはベローズ装置に対して90度の角度に組み合わせることも出来て、水平左右移動によって撮影した画像を合成してワイドな画像を得るなどのために利用できます。

 本体のレールとマクロスライダーのレールとを合体させると、X断面の角レール形状になります。

 蛇腹部の両端には金具が付いていて、カメラ台座とレンズ台座のいずれからも「つまみネジ」を緩めることで取り外せるようになっています。別売りで交換用の「袋蛇腹(Balloon Bellows)」も供給されていました。

 カメラ台座には取り外せる「マウント金具」が連結されていて、右上横の「つまみネジ」を緩めることで、外したり、カメラ位置を修正したりすることができます。カメラの横位置、縦位置はこれで切替えます。このマウント金具にカメラを取り付けてからカメラ台座に装着します。

 

 ところで、上の写真のように、亭主の所持するこの個体は、レンズ台座に組み込まれている優れた「あおり装置」を活用するために、カメラ台座マウント金具のマウント部を、亭主のメインマウントである「Kマウント」に換装する改造を施しています。このことにより、「K-3」 や「K-1」などPENTAXの最新デジタル一眼レフで使えるように しています。その改造方法は下記 ⑴ のとおりです。

 

 一方、レンズ台座の方は、上の写真のように35mm判およびAPS-C判カメラ用として応用範囲が広い「M42マウント」に換装しています。これは入手が比較的容易な「Bellows Takumar 1:4/100」で無限遠を出すためと、色々な種類がある引伸しレンズのうち、できるだけ短い焦点距離のものを無限遠まで使えるようにするために、この製品マウント部の開口 が大きいことを利用して、マウント面をオリジナルより蛇腹の中に約10oオフセットさせています。このことによって光路を短縮したので、最縮時の光路が約30oとなり、ほとんどの焦点距離90o引伸しレンズまでは余裕で無限遠が出せますし、そのときでも若干あおれます。その改造方法としては下記 ⑵ のとおりです。

 また、この新たに製作した「オフセットマウントユニット」は既存のマウント金具で押さえることで台座に固定する構造なので、他のマウント用のユニットを作って、それに換装することも容易に可能です。その例は下記 () のとおりです。

⑴ カメラ台座マウント金具の「Kマウント」への改造方法

 既存「マウント金具」の小ビス3本を外して、正規の「バヨネットマウント雄部」と「絞り操作環」を外してしまいます。

 径56mmである開口穴部の内径を、外径57mmである「55-49ステップダウンリング」がぴったり入るように甲丸ヤスリと布ヤスリなどで少し削り広げ、そこに「改造マウントユニット」を装着しています。その構成及び作り方は以下のとおりです。

材料:「リバースアダプターK49o」、「55-49ステップダウンリング」、「58-55ステップダウンリング」・弾性接着剤・ゴム板

工具:目立てヤスリ・甲丸金工用ヤスリ・荒目の布ヤスリ・仕上げ用の耐水紙ヤスリ

 「55-49ステップダウンリング」と「リバースアダプターK49o」とを、ネジ溝にセメダインスーパーなどの接着剤を付けて捻じ込み、開口穴部を甲丸ヤスリなどで57o内径に削り広げた「マウント金具」に後から差し込みます。接着剤で接着するのは 、使用中に緩んでカメラが脱落する虞を無くするためです。これは接着しなくても、注意すれば使用は十分可能です。

 前側からは「58-55ステップダウンリング」を捻じ込んで止めています。これの「58雄部」には対角状に切り欠きを設けて、レンズ整備用リング回し工具で回せるように加工します。この切り欠きは目立てヤスリで削って作ります。

 なお、「マウント金具」開口内径を削り広げるときには、削り過ぎないように慎重に行いましょう。甲丸金工ヤスリで削るときには偏芯しないように均等に削ります。「55-49ステップダウンリング」の外径と現物合わせをしながら気長に少しずつ削って行きます。この削り作業の後半は荒目の布ヤスリで行い、最後は240番程度の耐水紙ヤスリを使います。この作業は気長に行うのがコツですかね…

  他の組合わせ方法もありますが、この組合せで作るマウントユニットが最短に近い光路を得られるものです。

 

 

 なお、この構成の場合、「リバースアダプターK49o」と「55-49ステップダウンリング」を使用する代わりに、「リバースアダプターK52o」と「55-52ステップダウンリング」を使用することで、Nikonの純正Fマウント・リバースアダプター 「BR-2A」と換装可能にすることも出来ます。つまり、ニコンのデジタル一眼レフでもこの優れたベローズ装置を使えるのです。

 さらに、ネット販売の八仙堂からは各社のマウント用リバースアダプターが発売されています。径52mm用のそれを使うことで、各社用マウントへの改造が可能です。

 この改造方法の案出により、洛陽の紙価を高めることになったとしたら欣快至極…

 もし上記のように既存「マウント金具」の内径を1mm削り広げることを嫌うのなら、「リバースアダプターK49o」と「52-49ステップダウンリング」、「58-52ステップダウンリング」 の組み合わせを用意することで目的を達することも可能です。

 この場合、「52-49ステップダウンリング」の外周は径54mmなので、56mmの内径である「マウント金具」に嵌めるためには、外周部に1mm厚の下駄を貼り付けなくてはなりません。プラ板とかアルミ板、または硬めの厚紙などを3か所以上貼り付けるのが簡便な方法です。これは外周全体に貼り付ける必要はありません。センターを出すのだけが目的で、強度とはあまり関係が ないので…

 なお、この場合においてNikonの純正Fマウント・リバースアダプター 「BR-2A」を使いたいのなら、「52-49ステップダウンリング」の代わりに、ガラスを外した細幅の「52mmフィルター枠」を使います。

 このように、この「マウント金具」は改造が容易ですから、どのカメラでも使えるようにすることは簡単至極…

 余談ですが、純正の「リバースアダプターK」は、現在7000円もします。亭主は幾つか所持していますが、すべてジャンクカメラなどにおまけとして付いていたもので、購入したものは一つもありません。以前は1000円で入手できたのですが、その価格自体が安過ぎたと言えます。

 また、改造の部材としてガラスを外した枠を利用しているフィルターも、総て中古で購入した交換レンズに付いていたものなどです。そのときは不要なものでも後々役に立つことがありますから、ジャンクの蒐集は止められない…

⑵ レンズ台座マウントの「M42マウント」への改造方法

 既存の絞り駆動部やマウントのストッパーなどをすべて取外したレンズ台座に取り付ける「オフセットマウントユニット」ですが、その構成及び作り方は以下のとおりです。

材料:「58-62ステップアップリング」・「58フィルター枠」・ 「52-58ステップアップリング」・「オート接写リングから外したM42雌マウント部」・弾性接着剤

工具:目立てヤスリ・平及び甲丸金工用ヤスリ・荒目の布ヤスリ・仕上げ用の耐水紙ヤスリ

 この「オフセットマウントユニット」は、ステップアップリングと、フィルター枠と、Sマウントの「オート接写リング」から抜き出したM42雌マウント部を組み合わせています。

 その構成は、前から「58-62ステップアップリング」・「58フィルター枠」・ 「52-58ステップアップリングにM42雌マウント部を接着したもの」となっています。

  「52-58ステップアップリングにM42雌マウント部を接着したもの」の作り方は、純正のSマウント接写リングから外周の3ヵ所の芋ネジを緩めることで外せる「M42雌マウント部」を、「52-58ステップアップリング」の52雄部の内側穴内に接着したものです。両者の外径と内径が近似値なので、「M42雌マウント部」外周に少し厚めの紙などの下駄を履かせれば嵌め込むことが出来ます。下駄は外周全体に貼る必要はありません。センターを出すためだけです。

 一番前の「58-62ステップアップリング」の62雌部は、既存マウント金具のバヨネット突起部に合わせて、平ヤスリで3か所を5mm研削します。このことで、交換レンズを装着する時にも「オフセットマウントユニット」が回転してしまうことがありません。

 レンズ台座の既存マウント開口穴部内径は「58フィルター枠」外径よりも少しだけ小さいので、その分を甲丸金工ヤスリや布ヤスリなどで削り広げる必要があります。 これもカメラ台座の改造と同様、気長に慎重に削るのが秘訣…

 これに「58フィルター枠」を追加することでもっとオフセット量を増やせるのですが、そうすると「Bellows Takumar 1:4/100」のプリセット絞り環を操作し難くなってしまいます。どちらを取るかで悩むところです。両方作ると言うのが正解かも…

 この構成の「オフセットマウントユニット」だと、引伸しレンズの「FUJINAR-E 90o」が無限遠で使えます。

 もし「Bellows Takumar 1:4/100」を使用しないで外径の小さな引伸しレンズだけを使うのなら、「55フィルター枠」を使った「オフセットマウントユニット」でよく、その場合は少し小さいフィルター枠周囲に適合する下駄を履かせるだけでよくて、この削り広げる工作の必要は無いのでより改造が容易です。引伸ばしレンズ専用機とする覚悟ならその選択でも良いでしょう。それならオリジナルマウント機能への復旧も可能です。

() 他の規格のレンズマウントを製作する方法

 他のマウントのためのレンズマウント用ユニットを作る場合は、使用するマウント雌部が既存マウント金具の内径以内であれば、()で加工した「58-62ステップアップリング」にそれを接着することで作れます。

 ちなみに、「Kマウント」は製作してみました。純正「接写リングK」のマウント雌部を抜き出したものが「58-62ステップアップリング」の「62雌」内に収まりますから、エポキシ接着剤による接着で強度も十分確保できます。残念ながらストッパーの設置が出来ないことと、上記()で述べた「M42マウント」のようにはオフセットすることができません。得られる最短光路は42mmなので、どのKマウントレンズでも無限遠を出せないのが玉に傷…

 また、使用するマウント雌部は外周に小さなフランジがあり、これが既存マウント金具内径と若干干渉するので、その分だけ削り取る必要があります。

 ミノルタの「SRマウント」も作りました。これはM42マウントに改造した「EXTENSION BELLOWS for Minolta-SR」から取り外したものを使用しました。

 このマウント金具は外周が「58-62ステップアップリング」62雌部内径より小さいので、その差を厚紙で作り、3か所に挿入してセンターを出してから、隙間を接着剤で埋めて固定しています。

 ところで、レンズ台座に研削加工するのが嫌な人は、「55-62ステップアップリング」を利用した改造に止めて置くしかありません。これに使用するマウント雌部が接着等出来るのであれば、近景及び接写ならば十分実用にはなりそうです。

 Kマウントに換装

 SRマウントに換装

 

(4)リバースリングを利用してレンズマウントを製作する方法

 マミヤからは純正のリバースリングとして「RS-58」と「RS-67」が販売されていました。これらを利用することで各種のレンズマウントを作ることが可能です。

 方法としては「ステップアップリング」を使います。使用するレンズマウントに適合する内径の「ステップアップリング」の内径部分に取り付ければ出来上がります。「M42マウント」なら上記()のように「52-58ステップアップリング」で作れます。この方法ならレンズ台座の改造は不要となります。この場合、蛇腹内部にマウント金具をオフセットさせることは出来ないので、 最短光路が長め(53mm以上)になってしまいます。無限遠まで使うためには焦点距離が長めのバレルレンズが必要となります。

 マミヤ純正の645レンズ等も使いたいという場合はこの方法によるのが良いでしょう。

 また、リバースリングがあることで、様々なレンズを等倍撮影以上において逆付けで使う道が生まれます。

 閑話休題:

 このように組み合わせを工夫して色々なアダプターやらリング類を用いて最小限の工作でマウント部を改造するのは、既製品なら安価に入手可能であるということも大きな理由ですが、より安易ではあっても回復困難な接着などによる固定を可能な限り避け、他のマウントへの変更可能性を最大限確保して置こうという下心からです。なにしろもう生産されなくなった希少品ですから、将来のカメラの発展に応じたマウントへの変更余地を残しておくことで永く使えること必定…

 

 短い焦点距離のレンズであおり撮影を行う場合は操出量が少なくなり、オリジナルの直蛇腹だと動きが制約されてしまいます。そこで必要となるのが「袋蛇腹(Balloon Bellows)」です。マミヤからは正規の交換部品として供給されていました。 しかし、それは現在入手がすこぶる困難です。粘り強く探していた亭主は僥倖に恵まれてようやく入手出来ましたが、自作も考えていた時期があり、オリジナルの直蛇腹と異なって、その取付方法を含めて製造は比較的容易そうですから、その実現も課題の一つ…

 なお、この正規の袋蛇腹は生地が厚く、「Bellows Takumar 1:4/100」を使用しての撮影では、無限遠付近の操作性が良くありません。標準の「直蛇腹」の方が操作性は良好です。この品が中古市場にほとんど出て来ないのは、元々買った人がほとんどいなかったからなのかもしれません。もっと生地の薄いもので作る方が使い易そうなので、自作の方が良いのかも…

 下の写真は「あおり撮影」の実例です。「左画像」はスイングとチルトをかけて撮影、「右画像」は通常の撮影です。撮影レンズは「Bellows Takumar 1:4/100」で、絞りはどちらも開放です。

 

 左右の画像を比べれば、斜め前後に並んでいる交換レンズの絞り指標が、通常撮影の右は奥の交換レンズがぼけています。同一絞りでのピント範囲が広くなることがよく分かります。

 なお、ベローズ装置は交換レンズのイメージサークル確認用器具として使うことが可能ですが、このベローズ装置の場合、Kマウント交換レンズのイメージサークルを確認するために十分な大きさのピント板を装着することが可能です。カメラ側マウント金具を外した後のカメラ台座開口部にピント板を装着すれば、直径60oまではイメージサークルが確認できます。DAレンズのイメージサークル確認には十分でしょう。

 ピント板は、蓋付フードを作るのに使えるロッテのBLACKBLACKガムケース胴体を利用すれば、カメラ台座開口部にぴったり被せるように作ることができます。ピント板自体は透明プラ薄板に「3M」製のメンディングテープを貼るだけで完成です。

 このベローズ装置を複数所有しているのなら、カメラ台座を取り去って、代わりにレンズ台座を取り付けるという方法も可能です。そうすればカメラ側にも4種類の「あおり機能」を持たせることが出来ます。後側のレンズ台座にはカメラを取り付けられるマウントを取り付ければ可能です。この制作も課題の一つ…

追記:2010/2/27

 PENTAXは645マウントのデジタル一眼を3月に発表するようですが、このカメラ用マウントに再改造が可能なのか検討してみました。

 リバースアダプター645セットという製品がありますから、それを利用すると、簡単に再改造が可能です。後ろから「リバースアダプター645」、「49-58ステップアップリング」、「55-49ステップダウンリング」、「58-55ステップダウンリング」の構成が成立します。

 リバースアダプター645セットというのはリバースアダプター58oと、リバースしたレンズのマウント部にかぶせるフィルター枠とをセットにしたもので、定価20,000円というものです。量販店でも在庫していないところが多いようですが、注文すれば入手できそうだし、中古なら半値程度で入手可能かも…

 ところで、台形断面角レールとの嵌合に使われているレンズ台座やカメラ台座、三脚台座の「蟻溝」ですが、ここには黒いプラスチックが使われています。非常にまずいことに、この素材が経年劣化によって硬化し、亀裂が入り易くなっています。亀裂が進むと破壊に至り、そうなるともう使用に堪えられなくなります。メーカーはこの場所に求められる必要性能を見誤り、部材の選定を誤ったと言えるでしょう。つまり、この製品の余命を扼する構造的欠陥ということになります。

 特に各台座をレールから外した状態でロックダイヤルを閉め込んだりすると、この破壊は容易に発生します。絶対に行ってはいけません。

 一方、PENTAXの角レールを使用しているベローズ装置に使われている白いプラスチック(デルリン樹脂?)は、このような劣化が起こり難いもののようです。見比べても、柔軟性がより高いように思われます。

 また、このベローズ装置は全体に造りが大きく、その割には部材が細くて脆弱であることから、ロックダイヤルをしっかりと締め込まないとガタが多くなります。このことが「蟻溝」の劣化を 早める原因ともなっていると思われます。

 なお、昨今3Dプリンターなるものが普及しつつあります。これを用いることで脆弱な「蟻溝」プラスチックの代替品製作は容易そうです。単品あるいは少量生産に向いていますから、誰か奇特な人が現れないものだろうか…

 

 

 このベローズ装置を2基所有しているなら、あおり装置の組み込まれているレンズ台座を前後に配置することで、カメラ台座もあおり装置組み込みとすることが出来そうです。そのためには、レンズ台座にカメラを取り付ける方法を確立しなければなりません。

 第一観として浮かぶのが、雄同士のマウント金具を背中合わせに結合するというものです。これなら光路が短くて済みます。Kマウント換装で廃物となっているオリジナルマウント金具やジャンクレンズから外したKマウント金具がありますから、それの必要位置に精密なネジ穴を開けねばならないという関門はありますが、試みるだけのことはありそうと妄想…

データ

最縮長(マウント間)  30o

最伸長(マウント間)  170o

重量

1