smc PENTAX-A、F及びFAシリーズ交換レンズ収蔵庫

 

 PENTAXのデジタル一眼レフは、開放測光に不可欠だった交換レンズからの絞り環位置情報を受け取りません。そのため、フィルムカメラ用の従前交換レンズも絞り情報をデジタルデータのみで伝えるようになり、なおかつ、絞り開度をカメラ側から設定操作できるようになったAシリーズ以降の交換レンズでないと、自動露出機能が使えません。そこで、それらデジタル一眼レフで自動露出機能が使える各シリーズ交換レンズのマウント構造の概要と、各レンズ性能の概要や特長について、以下に述べることにします。

 

 なお、2016年4月に35mmフルサイズ一眼レフ(PENTAX K-1)が登場したことで、これらはその本来画角を使えることになり ました。また存在感を増すことになるのでしょう。標準から広角系は特に期待大…

●smc PENTAX-Aシリーズ

 smc PENTAX-Aシリーズ交換レンズは、カメラ側からの絞り開度の正確なコントロールを可能にしたAシリーズカメラのためのものです。この機能を追加したことでシャッター速度優先自動露出が実現し、従前からの絞り優先自動露出と組み合わせて、プログラム自動露出も実現しました。

 これの前のシリーズであるMシリーズとそれ以前の「Kマウント」では、カメラ側から絞りを動かす機構は自動絞りのためだけのものであり、カメラから操作する絞込みレバーの移動量と絞り開度とが比例関係には無くて、交換レンズをカメラに取り付けると開放になる絞りを、レリーズすることで交換レンズ側で設定した絞り開度に戻すだけの単純な機能しかなかったのです。そのため、Mシリーズ以前のものは「クラシックレンズ」と位置付けることがあります。

 Aシリーズの交換レンズに採用されたマウントが「KAマウント」です。これは、絞りの制御の方法について、カメラから操作する絞込みレバーの作動量と絞り開度とが比例するように絞りリンク機構を変えた外に、マウント面に電気 的接点を設けて、これにより交換レンズの最小絞り値と、その最小絞りから何段目に絞り開放があるのかを二進デジタルデータとして伝え、また、絞り環に 「A位置」というものを設け、その位置に絞り環を設定していることをカメラに伝達する機能を持たせました。このときにはまだ交換レンズ内に電子基板やROMなどは設けていないので、6個の電気的接点の「導通」か「絶縁」(ONかOFF)の組合せによって、そのレンズ固有情報をカメラに伝達する仕組みでした。

 「A位置」というのは、絞り装置の状態としては、機械的には最小絞りの状態です。絞り環にこの位置が設けられ、それを伝達するための電気接点が設けられた理由は、Aシリーズ以外の交換レンズがAシリーズカメラに取り付けられたときにカメラがそれを自動認識して、シャッター速度優先オートやプログラムオートを行わないようにするためでした。一種の「馬鹿者対策」です。

 交換レンズの絞り位置情報自体は開放測光には必須であるために、Mシリーズ以前の「Kマウント」でもレンズ側からカメラに伝達する機構は搭載されています。でもこれは絞り 環の設定が開放からどれだけ絞った状態かを伝達する仕組みでした。「Kマウント」の絞り装置はレンズを取り外しているときには設定絞り側となる構造なので すが、カメラ側から絞りを操作するためには最小絞りにしておかねばならず、そこから開放までの間隔(段数)の情報伝達が不足していたのです。

 マウント面の電気的接点は、6個の端子のうち上から3番目の端子を絞り環が「A位置」にあることを伝達することに使い、残りの5個の端子の「導通」か「絶縁」との組合せで「最少絞り値」と、そこから何段目に「絞り開放」があるかを伝達する仕組みです。この情報は半段単位でしか扱えません。

 「A位置」にあることを伝達する端子は、カメラ側の接点がマウント面より沈んでいます。これに対する交換レンズ側接点(ボール)が飛び出すようにしたのが「A位置」の伝達メカニズムです。絞り環が「A位置」なら、この接点は カメラ側のマウント面から引っ込んでいる接点と「導通」しているのですが、「A位置」以外にすると、交換レンズ内でこの接点が引っ込んで絶縁し、それによってカメラの電子回路はMシリーズなどの非Aレンズや非A位置状態の交換レンズであると認識するのです。交換レンズ側接点で可動式なのはこの接点だけで、他はマウント面と絶縁するか、導通するかだけの固定接点です。カメラ側接点の方は、3番接点以外はマウント面から出ている可動のボール構造で、6個ともカメラ内の電子基板に電線で繋がっています。

 光学系の大部分は前の時代のMシリーズのものを踏襲しています。絞り環など鏡胴の一部にエンジニアリングプラスチックが使われていますから、前シリーズより少し軽くなっています。マウント内部は「A位置」の伝達接点の導通を操作する機構のために複雑になっていて、分解後の組立難度はKマウントより格段に高くなっています。

 また、レンズ玉の鏡胴への固定に一部接着やカシメを使い始めていますから、素人分解整備をやり難くしています。

 なお、このAシリーズの時代には、ズームレンズが一段と高性能化した時代でもありました。PENTAXにおいても3グループ式ズームの製品化が始まり、広角から望遠に渡るズーム比の大きな製品が発売されました。広角に強い2グループ式ズームも、多グループ化された製品が上梓されています。

●smc PENTAX-Fシリーズ

 smc PENTAX-Fシリーズは、AFを実現した第一世代のSFXシリーズカメラのためのものです。光学系は、多くのものが前時代のAシリーズのものを踏襲しています。

 そのAシリーズとの最大の変更点は、マウント規格を「KAf」に変更したことです。AFに必要な動力接続用のカプラーを設けたほかに、マウント面の電気接点の数を1個増設しています。 そして交換レンズ内に電子基板とROMを内蔵し、それによって自動露出に必要なレンズ情報を伝達する仕組みに変えたためです。

 この変更はとても大きなものだったのですが、従来の「KAマウント」カメラでも使えるようにするために、互換の仕組みも内蔵しています。この点が純正およびOEM提供元をしている「Tamron」と、それ以外の「シグマ」などとの違いです。今ではほとんど需要は無いでしょうが、シグマの「KAfマウント」レンズは、「KAマウント」カメラでは正常に使えません。

 「KAfマウント」のカメラ側7個の電気接点ですが、2番、3番、4番接点の役割は「KAマウント」と共通ですが、他の4個の働きは異なっています。

 その働きが異なるようになった4個の接点により、交換レンズ側からは開放絞り値のほかに、交換レンズの種類ごとに与えられたIDや焦点距離情報がカメラ側に伝えられる仕組みです。ズームレンズの場合は焦点距離が変化しますから、交換レンズ内にその変化の度合いを4桁の二進数によって16段階に変換する機械的な仕組みが設けてあります。これにより、焦点距離の変化によって開放絞り値が変動する場合もそれを伝達するようになりました。

 カメラ側接点の構造と違って、交換レンズ側は大きく変わり、既設の「A位置」伝達接点以外にもボール構造の可動接点が4個設けられていて、交換レンズ内に設けられたレンズ固有情報を記憶したROMの載った電子基板からの電線がこれらに繋がっています。このため、マウント内部は一層複雑になっており、分解後の組立難度はより高くなっています。

 カメラ内に設けられたトルクが限られている小型モーターで駆動する必要から、従来のヘリコイド装置では抵抗が多すぎて使えなくなり、ピント合わせのために全群を繰出すヘリコイドもエンジニアリング樹脂製の軽量なものとなっていて、潤滑油を使用していません。その機構には遊びが多いのですが、 これはモーターの駆動・制動で制御するのには都合がいいのかもしれません。また、この遊びによって光軸が微妙に下に傾き、チルトダウン効果を生じることから、通常の撮影姿勢と被写体の場合には、被写界深度を深くする効果が生じるという怪我の功名もあったりして…

 AFのメリットを得て、ズームレンズの一般化はますます昂進しました。そのため、販売政策上、低価格のものが求められることとなりました。これにより、Aシリーズ時代にはズーム比を大きくすることを目的として採用されていた多グループ化3グループ式ズームですが、これを低スペックな基本的3グループ式とすることで、低価格ズームを実現しています。

●smc PENTAX-FAシリーズ

 smc PENTAX-FAシリーズは、Z-1を頂点としたカメラシリーズのためのものとして始められました。大振りになったカメラのデザインとの統一のための外装の変更や、軽量化等のための更なるプラスチック化、レンズなど部品の接着ユニット化を行い、機能的にも、鏡胴内蔵ROMにMTFデータなどが追加されました。

 また、パワーズームを搭載したものは、カメラ側マウント内部にそのための電源供給接点と信号接点の2個を追加したマウント規格の「KAf2」にしています。この増設した2個の接点は、その後のDAシリーズでの「SDM」化のために役立つことになりました。

 FAシリーズには、以前のシリーズからあった★シリーズのほかに、Limitedシリーズが加わったのが特筆されます。

 なお、FAシリーズは、カメラが小型軽量を志向したMZシリーズになってからも使われ続けているため、後期に開発されたものは外装デザインが大きく変化しています。

… 目次 …

FA★シリーズ

 諸収差の除去や明るさなど、レンズ性能を追求した最高級シリーズです。

  smc PENTAX-FA★ 28-70mmF2.8 AL

FA Limited シリーズ

 小型のアルミ削り出しボディによる質感と、描写に味を持たせた単焦点シリーズです。Fシリーズまであったフィンガーポイントを復活した機種があったり、専用フードやキャップにも凝っているのがこのシリーズの特徴です。

  smc PENTAX-FA 31mmF1.8 AL Limited

  smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited

  smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited

FAシリーズ

  smc PENTAX-FA 28-200mmF3.8-5.6 AL[IF]

  smc PENTAX-FA 70-200mmF4-5.6 PZ

  smc PENTAX-FA 35-80mmF4-5.6

Fシリーズ

  smc PENTAX-F Soft 85mmF2.8

  smc PENTAX-F Zoom 28-80mmF3.5-4.5

  smc PENTAX-F FISH-EYE Zoom 17-28mmF3.5-4.5

  smc PENTAX-F AFアダプター1.7X

Aシリーズ

  smc PENTAX-A 1:2.8 24o

  smc PENTAX-A 1:1.2 50o

    smc PENTAX-A 1:1.4 50mm

  smc PENTAX-A ZOOM 1:3.5-4.5 35-70o

  REAR CONVERTER-A 2X-S

※ 用語の解説

 「ED」 特殊低分散

 ガラスの屈折率は光の波長によって異なります。従って、様々な波長を含む自然光は、1点に焦点を結ばない性質があります。赤色が焦点を結んだときに、周囲に紫色のにじみが出ることがありますが、これが色収差と呼ばれるもので、一般の光学ガラスを使用した場合に、この修正が困難になります。
 この色収差を抑えるために様々な特殊光学レンズを使用するのですが、そのなかのひとつが特殊低分散(Extra-Low Dispersion)ガラスです。屈折による各波長(色)の分散が小さく、優れた結像性能を実現できます。

 「AL」 非球面レンズ

 ALはAspherical Lensの略で、非球面レンズのことです。光学レンズには、理想的な結像を妨げる様々な収差があります。そのひとつが、光が1点で像を結ばず、点像のにじみとなって現れる球面収差です。これは、通常の球面レンズでは避けられない収差であり、明るい大口径レンズほど発生しやすくなります。それを解決するために採用されたのが非球面レンズです。

 「IF」 インナーフォーカスシステム

 通常の交換レンズは、その多くがレンズ系全体を動かしてピントを合わせる全体繰り出し方式です。これに対しIFは、ピント合わせの際にレンズ群の内の一部だけを動かす仕組みとなっており、オートフォーカス時にモーターが駆動するレンズ部分が軽く、AF時の高速化に寄与することになります。

 また、全長の変化がない、重量バランスが大きくは崩れない、最短撮影距離が短くできるなどの特長があります。

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smc PENTAX-FA★ 28-70mmF2.8 AL

 大口径ハイブリッド非球面レンズ、異常低分散レンズ、高屈折率低分散レンズを採用した4グループ非線形移動ズームです。全画面に渡って諸収差を抑え、コントラストの高いクリアーな描写性能を発揮します。

 全焦点距離域でF2.8の明るさ、単焦点レンズにひけをとらない美しいボケ味をはじめ、ズームレンズの常識を超えたハイレベルの描写力を実現した高性能標準ズームです。

 ズーム原理として分類すると2グループ式ズームなので、広角時に全長が伸びます。倍率を稼ぐためにバリエーターが大きく動くので、望遠側でも少し伸びます。Jターン形鏡胴とでも言ったらいいのでしょう。

 フォーカス時には前玉が回転して繰り出します。これは円偏光フィルターの使用などにおいていささか不都合な仕様です。

 広角時に伸びることを利用し、「FA☆80-200/2.8」と共用のフードをズームしても伸長しない鏡胴外側に装着することで、ズーム全域で有効なカバーを確保しています。前玉回転のために花形フードの使えないことを解決する秀抜なアイデアですが、そのために少し重い…

 2グループ式ズームの後グループ凸部分を3グループ式に分割することで、全体として4グループとしているズーム機構です。このことから、4グループのうちの第3グループ凹の3枚は鏡胴に対して不動です。

 パワーズームを搭載していますが、ズーム環を前後させることで手動ズームとパワーズームを切替えることができます。また、ピント環を前後させることでAFとMFを切替えることができます。

 他にもズーム位置をカメラ側で憶えて置いて、ボタンの一押しでそこへ復帰できる機能なども搭載されていますが、それに対応する機種はZシリーズだけだったので、現役デジタル一眼レフでは使えません。

 35mmフルサイズデジタル一眼レフの誕生により、標準ズームとしての価値が戻ってきます。

 ☆の付くレンズですが、少し歪曲収差がありますから、四角いものを水平構図で写すと目立ちます。

 絞り開放時は軸上色収差がほんの少しありますが、1段絞れば解消します。

<SPEC>

焦点距離/明るさ:28-70mm/F2.8

レンズ構成枚数:11群14枚 (1G凹凹凸2G[凸凹][凹凸]凸絞り3G[凸凹]凹4G凸凸凹)

絞り羽根数:8枚

最小絞り:f22

最短撮影距離:0.45m

フィルター径:67mm

サイズ:84.5(最大径)×104(長さ)mm

質量(重さ):800g

バヨネット式専用フードPH-RBC77

35mm判換算焦点距離:43-107mm相当

 

smc PENTAX-FA31mmF1.8 AL Limited

 広角の表現に新境地を切り拓いた31mmの単焦点レンズです。F1.8の大口径に、ガラスモールド非球面レンズ、高屈折率低分散レンズを贅沢に採用。ナチュラルな遠近感、コントラストが高く切れ味が良い結像性能が持ち味となっています。

 フローティングシステムを採用して、全撮影距離において端正な描写性能を発揮しています。

 レンズ構成はレトロフォーカスです。前の凹要素部分は凸凹凹の3枚構成とし、後の凸要素部分は、絞りを中心とした対称形の前群オルソメター、後群ダブルガウスのハイブリット対称形構成としています。

 「フィンガーポイント」は銀台に緑の七宝です。

 円偏光フィルターの操作が容易な花型フードを一体化しています。APS-Cフォーマットのカメラで使うときにはフードをもっと深くしても良いので、HOYAが上梓している折畳み式ゴムフード(58径)を使用すると、鏡胴の保護にもなって具合が良いようです。保護フィルターを使用した上に58mmフィルターの枠を1枚ゲタにする必要がありますが…

 35mmフルサイズデジタル一眼レフの誕生により、少し狭めの広角として独自の価値を発揮しそうです。

 K-7のファームアップで、カメラ内レンズ補正(デストーションと倍率色収差)に対応しました。FAシリーズの中では、Limitedの3本だけが対応です。

 K-3のファームアップで、絞り回折補正に対応しました。FAシリーズの中では、Limitedの3本だけが対応です。

 絞り開放では軸上色収差が僅かに出ますが、2段程度絞れば大幅に改善します。APS-C判では標準画角となりますので、開放F1.8は常用レンズとして十分な性能です。

<SPEC>

焦点距離/明るさ:31mm/F1.8

レンズ構成枚数:7群9枚(凸凹凹 凸[凹凸]絞り[凹凸]凸)

絞り羽根数:9枚

最小絞り:f22

最短撮影距離:0.3m

最大撮影倍率:0.16倍

フィルター径:58mm

サイズ:65(最大径)×68.5(長さ)mm

質量(重さ):345g

フード組込。専用ケース付属。

35mm判換算焦点距離:47.5mm相当

設計 村田将之 伊藤孝之

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited

 FAリミテッドレンズの第一弾として登場しました。35mmフィルムの対角線寸法と同じ焦点距離を持つ真の意味での標準レンズです。ゴーストレスコート、高屈折率ガラスの採用で描写力を極限まで高めたレンズです。F1.9の明るさ、0.45mまでの近接撮影、8枚絞り羽根によるクセのないボケ味など、高品質なレンズを思う存分に楽しめるモデルです。

 試験機による性能評価に加え、高度な実写による評価を設計に施したことで、シャープで階調豊かな描写、自然なボケ味、暗部のディテール表現を実現しています。

 高屈折率ガラスを贅沢に用い、球面収差、コマフレア、色収差を押さえています。

 外観全てにアルミ素材を使用した質感の高い仕上げになっています。

 レンズ構成は変形ダブルガウスです。この6群目に凸レンズを加えたレンズ構成は、1965年「Super-Takumar 1:1.4/50」W期型が最初に用いたものです。

 「フィンガーポイント」は、これにはまだ再現されていません。

 35mmフルサイズデジタル一眼レフの誕生により、標準レンズとしての役割が生き返ります。

 K-7のファームアップで、カメラ内レンズ補正(デストーションと倍率色収差)に対応しました。FAシリーズの中では、Limitedの3本だけが対応です。

 K-3のファームアップで、絞り回折補正に対応しました。FAシリーズの中では、Limitedの3本だけが対応です。

 この個体はベトナムで組み立てています。

<SPEC>

焦点距離/明るさ:43mm/F1.9

レンズ構成枚数:6群7枚(凸凸凹絞り[凹凸]凸凸)

絞り羽根数:8枚

最小絞り:f22

最短撮影距離:0.45m

最大撮影倍率:0.12倍

フィルター径:49mm

サイズ:64(最大径)×27(長さ)mm

質量(重さ):155g

フード(MH-RA49)。専用ケース付属。

35mm判換算焦点距離:66mm相当

設計 平川 純

smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited

 肉眼で見る感覚に近い遠近感が得られる中望遠レンズです。高屈折率ガラスやゴーストレスコートなどの技術を惜しみなく注ぎ、最短撮影距離0.7mまでメリハリの効いた描写力、微妙な陰影まで写し込む階調豊かな表現力を実現しました。F1.8の明るさと、9枚絞りによる自然なボケ味で、深みのある写真を実現しています。

 各種試験機による数値評価だけでなく、高度な実写評価に基づいた設計を施すことで「絞り開放ではほどよい柔らかさ、絞り込むとともに鮮鋭な像性能 」と「空気感・グラデーション・階調・立体感」の描写を可能にしています。

 ピント合わせには、レンズ系の最後群を固定したままで前群だけを移動させるFREEシステムを採用。近距離から遠距離まで安定した像性能が得られます。

 レンズ本体にはアルミ素材を使用、高級感・精密感ある仕上げを施しています。

 また、カメラボディへの装着性を高める“フィンガーポイント”を採用、その素材には銀無垢の台座に深緑色の七宝焼を用いました。

 レンズ構成は変形ダブルガウスです。

 35mmフルサイズデジタル一眼レフの誕生により、ポートレートレンズとして価値が高まります。

 絞り開放では柔らかいことを性能の一つとしたことによるものかもしれませんが、黒が紫色に染まる軸上色収差がかなり顕著です。これは絞れば消えます。

 K-7のファームアップで、カメラ内レンズ補正(デストーションと倍率色収差)に対応しました。FAシリーズの中では、Limitedの3本だけが対応です。

 K-3のファームアップで、絞り回折補正に対応しました。FAシリーズの中では、Limitedの3本だけが対応です。

 この個体はベトナムで組み立てています。

<SPEC>

焦点距離/明るさ:77mm/F1.8

レンズ構成枚数:6群7枚(凸凸凹絞り[凹凸]凸 凸)

絞り羽根数:9枚

最小絞り:f22

最短撮影距離:0.7m

最大撮影倍率:0.14倍

フィルター径:49mm

サイズ:64(最大径)×48(長さ)mm

質量(重さ):270g

フード組込。専用ケース付属。

35mm判換算焦点距離:118mm相当

設計 平川 純

 

smc PENTAX-FA 28-200mmF3.8-5.6 AL[IF]

  「TAMRON」がOEM製造してPENTAXに供給した高倍率ズームです。デザインは少し異なるものの、まったく同一内容のものがTAMRONブランド(モデル171D)でも上梓されていました。PENTAXのレンズ開発陣は3グループ式高倍率ズームが苦手なようで、自社開発するより、高性能なこのモデルを利用した方が得策と考えたのかもしれません。このモデルは、その後のTAMRON高倍率ズーム発展の基礎となりました。

 広角時が最短で、望遠になるに従って鏡胴が二段に伸びて行く構造です。材料剛性と工作精度が高いため、長く伸びてもガタがほとんど発生しない優秀な鏡胴です。

 分類すると3グループ式ズームですが、それの発展型で、第3グループ(バリエーター)がさらに分割されて移動することで高倍率を実現し、第2グループを動かすインナーフォーカスシステムによって最短撮影距離の短縮を実現しています。TAMRONにおけるこれの前のモデル(71D)は第1グループを回転繰出ししてフォーカスする仕組みでしたから、広角時の前群繰出しによる周辺光量減少を避けるため、最短撮影距離が2.1mもありました。

 第1グループを回転させて繰出すフォーカスではないので、先端部を回転させないようにして花形フードが採用されていますが、厳密に見ると、構造上や作動上の制約から、鏡胴先端部は微少に回転します。フード開口部に影響が出るほどではありませんが…

 第2グループを動かしてフォーカスすると、ズームすることによって焦点位置は若干移動してしまいます。これについては、カメラ側のAF機能によって補償する考えのようです。MF時には、ズーム後の再合焦作業が必要です。これでは厳密に言うとズームレンズではなく、バリフォーカルレンズなのかもしれません。このことは、この時代以降の他のズームレンズでもほとんど同様のことなのですが…

 焦点距離によって開放F値が変動するのですが、KAマウントカメラの場合や「F AFアダプター1.7X」を併用すると、最小絞りF32で開放絞りF5.6としてだけ表示されます。

 上記したように3グループ式ズームなのですが、その第3グループを2つに分割していて、その前グループと本来の第2グループとでレトロフォーカスの光学系を形成して広角化するという仕組みを使っています。4つのグループがそれぞれ独自に非直線形で動くという複雑な鏡胴になっています。

 この製品に限らず、TAMRONのKAFマウント金具は、PENTAX純正レンズのそれと少し異なっています。純正KAFマウント金具のロックピン受け穴の形状は楕円形をしていてマウント金具外周に切欠きが無いのですが、このTAMRONのKAFマウント金具のロックピン受け穴の形状はU字形をしているために、マウント金具外周に切欠きが有るのです。このため、この部分からの水分の侵入が容易です。K10D以降の防塵防滴仕様のカメラで使う場合に、純正のレンズよりカメラ内に水分が侵入するリスクが高くなります。

 この欠点にPENTAXのOEM外注担当が気付かなかったのか、そこにコストを掛けてまで改める必要性を感じなかったのか、違いにすら気付かなかったのか、その辺の真相は如何に…

 

 すべての焦点距離でのことですが、「K-1」での試写では白地の中の黒文字の発色が不満です。少し白っぽくなります。これは絞っても改善しないので、倍率色収差の影響かもしれません。望遠端では少し緑系に染まります。解像感そのものは全体として絞り開放から良好なので、実用性が損なわれてはいません。

 

<SPEC>

焦点距離/明るさ:28-200mm/F3.8-5.6

レンズ構成枚数:14群16枚

各グループ構成枚数:3群3枚-4群5枚-3群3枚-4群5枚

絞り羽根数:6枚

最小絞り:f22〜32

最短撮影距離:0.52m(135mm時)

フィルター径:72mm

サイズ:78(最大径)×82(長さ)mm

質量(重さ):465g

専用バヨネット式花形フード

35mm判換算焦点距離:43-307mm相当

 

smc PENTAX-FA 70-200mmF4-5.6 PZ

 Zシリーズの最大の売りだったパワーズームを搭載しています。「K10D」以降のデジタル一眼レフでもパワーズームが使えるものがあります。

 ズーム環を後方に引くことで手動ズームに切り替えることが出来ます。このことを知らないと、パワーズームが作動しない、故障だと早とちりしてしまいます。☆ズームと違って、ピント環の操作で手動と切り換えることは出来ません。

 下の図のように、3つのグループが別々の移動をすることでズームする形式です。絞り位置も移動します。フォーカス時には、無限遠位置から前玉が前進しながら回転します。

 分類すると、典型的な3グループ式ズームです。下図で分かるように、凹レンズである青い色の第2グループ(前群バリエーターまたはエレクター)はほとんど移動しません。凸レンズの黄色い第 1グループ(焦点系)と凸レンズの灰色の第3グループ(変倍系)が同じように前後に移動します。

 70oのときには、凸レンズの第1グループが第2グループに近付いて、第2グループの強力な負のパワーに打ち負かされ、全体としてはレトロフォーカスの広角レンズになります。

 200oのときには、正のパワーの第3グループが第2グループに近付き、第2グループの負のパワーと相殺されて、全体としてはテレフォトとなり、望遠レンズになります。

 中間の135oのときは、対称形の標準レンズです。

 第1グループと第3グループの間隔は、70oから135oまでは少し広がりますが、135oから200oの間は変化しません。第2グループは、70oから135oまでは移動しませんが、135oから200oの間は前方に少し移動します。

 鏡胴の中での各グループの動きとしては、第3グループは全域を通じて直線的に前進します。第2グループは135oから200oの間だけ少し前進します。第1グループは、70oから135oまでは大きく前進し、135oから200oの間は小さく前進します。

 最小撮影距離が1.1mもあるのは、前群繰出しフォーカスの3グループ式ズームの欠点である近接時に急激に周辺光量が減少することからでしょう。それ以上近接するとケラレてしまうためと思われます。これを回避するために考え出されたのがインナーフォーカスということで、TamronからのOEM供給を受けた「smc PENTAX-FA 28-200mmF3.8-5.6 AL[IF]」がそれにあたります。

 焦点距離によって開放F値が変動するのですが、KAマウントカメラの場合や「F AFアダプター1.7X」と併用すると、最小絞りF45で開放絞りF5.6としてだけ表示されます。

 この交換レンズの鏡胴は工作精度がかなり甘く、作動時のガタが多めです。AFのみならず、パワーズームのためにも摩擦抵抗を減少させたかったのかもしれません。回転繰出しする先端部は少しお辞儀をしてしまいます。もっとも、通常姿勢での撮影なら、そのことでチルトダウン効果が発生しますから、望遠側で繰出されることで、望遠時には薄くなってしまう被写界深度を厚くする効果が生じるかもしれません。怪我の功名かな…

 

 このレンズ、絞り開放の無限遠望遠端では色収差が結構目立ちます。駆動音と振動が大きく、パワーズームが普及しなかった理由も分かるような気がします。

 

 この交換レンズの設計は、あの高名な「平川純」氏が行ったとのことです。

 

 

<SPEC>

焦点距離/明るさ:70-200mm/F4-5.6

レンズ構成枚数:8群10枚

各グループ構成枚数:2群2枚-2群3枚-4群5枚

絞り羽根数:9枚

最小絞り:f32〜45

最短撮影距離:1.1m

フィルター径:49mm

サイズ:72(最大径)×117(長さ)mm

質量(重さ):460g

35mm判換算焦点距離:107-307mm相当

 

smc PENTAX-FA 35-80mmF4-5.6

 プラスチックマウントの廉価版です。MZシリーズの廉価版カメラ用キットレンズとして販売されました。光学系はAシリーズ以来のものです。簡素な構造であるために小型軽量なので、小型軽量カメラと組み合わせるのに最適です。

 前グループ(フォーカス系)が凹、後グループ(バリエーター)が凸になっている2グループ式ズームです。 鏡胴内で絞りを含めて2グループが移動することでズームします。

 フォーカス時には前玉が回転します。

 広角側で全長が伸びますが、倍率を稼ぐためにバリエーターが大きく動くので、一旦縮んで、望遠側でも伸びます。

 後グループは、レンズ玉の並びが凸(凸凹)凸のトリプレット構成です。

 焦点距離によって開放F値が変動するのですが、KAマウントのカメラの場合や「F AFアダプター1.7X」を併用する場合、最小絞りF32で開放絞りF5.6としてだけ表示されます。

 ブラマウントの廉価版といえども、このズームレンズ侮れません、絞り開放でも解像感は驚くほど優れています。暗いことも影響しているのでしょうが…

 

<SPEC>

焦点距離/明るさ:35-80mm/F4-5.6

レンズ構成枚数:6群7枚

各グループ構成枚数:3群3枚-3群4枚

絞り羽根数:6枚

最小絞り:f22〜32

最短撮影距離:0.4m

フィルター径:49mm

サイズ:65(最大径)×58(長さ)mm

質量(重さ):160g

35mm判換算焦点距離:53.5-122.5mm相当

 

smc PENTAX-F Soft 85mmF2.8

 開放からF5.6までは実絞りSoftで、F5.6からは通常の開放測光による中望遠レンズです。A位置が無いので、プログラム&Tv によるAEはできません。Soft化の原理としては、大口径レンズの球面収差を利用しています。球面収差は絞ることで軽減しますから、F5.6からは普通の中望遠レンズになります。開放からF5.6までのSoft域では実絞りAE が可能です。Soft域以外ではKマウントのAFレンズとでも言うべき存在です。

 デジタル時代になって、PC上で自在に画像処理できるようになったので、このレンズの存在価値は失われてしました。

 レンズ構成はテレフォトタイプです。前凸部分はダブルメニスカスの貼り合せダブレット、後凹部分は凹凸凹の逆トリプレットです。

 

<SPEC>

焦点距離/明るさ:85mm/F2.8

レンズ構成枚数:4群5枚

絞り羽根数:9枚

最小絞り:f32

最短撮影距離:0.5m

フィルター径:52mm

サイズ:65(最大径)×60(長さ)mm

質量(重さ):300g

専用フード付属

smc PENTAX-F Zoom 28-80mmF3.5-4.5

 Aシリーズからの光学系を引き継いでいます。望遠時にマクロ機能が使えるため、最短撮影距離が短いのが特徴です。でも、広角時には1.3mもありますから、広角レンズの楽しみの一つである近づいて主題を強調するような絵作りには向きません。あくまで撮影者が動かずに周辺の夾雑物を整理するためのもの、ものぐさ者に迎合した存在でしかないのかと…

 2グループ式ズームですから広角側で伸びますが、倍率を稼ぐためにバリエーターを大きく動かすので、望遠側でも伸びる形式です。

 広角側で大きく伸び、望遠側で少し伸びるJターンという鏡胴の動作ですが、鏡胴が機械的に可能なUターンとの差をマクロ機能として利用しているので、80mm時にのみマクロ機能が使えます。

 レンズ構成図を見ると分かると思いますが、単純な2グループ式ズームではなく、後グループを3つのグループに分割していて、それ自体を3グループ式ズームとしていることで2倍を超える高倍率を実現しています。後グループの内の第1グループ凸と第3グループ凸は同じ間隔で同時に動き、間にある第2グループ凹も独自に動きます。つまり、単純な2グループ式 ズームは動く要素が2つで構成されているのに対して、それを3つに増やしているのです。それだけ鏡胴の構造が複雑となります。

 この光学系は1986年にAシリーズとして初めて製品化されたもので、この多グループ化の設計コンセプトはPENTAXの中ではエポックメーキング的なものなのですが、今ではあまりそれを語られることのない地味な存在になっています。この2グループ式ズームの後グループを3つのグループに分割する方法でその後作られたのが、名作と謳われる「smc PENTAX-FA★ 28-70mmF2.8 AL」です。そちらは後グループの第2グループを鏡胴に固定しています。

 

 これは絞り開放でこそ解像感が劣りますが、少し絞ってF5.6からの解像感は単焦点にひけを取りません。

 

<SPEC>

焦点距離/明るさ:28-80mm/F3.5-4.5

レンズ構成枚数:9群12枚

絞り羽根数:8枚

最小絞り:f22〜32

最短撮影距離:0.4m

フィルター径:58mm

サイズ:70(最大径)×81(長さ)mm

質量(重さ):405g

35mm判換算焦点距離:43-122.5mm相当

smc PENTAX-F FISH-EYE Zoom 17-28mmF3.5-4.5

 135フォーマットでは、17oの時には対角線180度のれっきとした魚眼レンズでしたが、APS-Cフォーマットのデジタル一眼レフでは、樽型歪曲収差の大きい広角ズームという存在です。

 広角系のズームですから、2グループ式ズームです。広角側で鏡胴が伸びますが、倍率を稼ぐためにバリエーターを大きく動かす必要から、一旦縮んだ後、望遠側でも鏡胴が伸びるJターン形式です。

 この鏡胴デザインは「FA」シリーズの初期のものと共通です。デザイン変更の先鞭的存在であったのでしょう。そのためか、「FA」化した製品は作られなかったのです。

 35mmフルサイズデジタル一眼レフの誕生により、作品作りの上で有力なアイテムとなることでしょう。

 

<SPEC>

焦点距離/明るさ:17-28mm/F3.5-4.5

レンズ構成枚数:7群9枚

絞り羽根数:6枚

最小絞り:f22〜32

最短撮影距離:0.45m

フィルター径:なし

サイズ:65(最大径)×61(長さ)mm

質量(重さ):255g

フード組込み

35mm判換算焦点距離:26.2-43mm相当

smc PENTAX-F AFアダプター1.7X

 Aレンズなどのマニュアルフォーカスレンズとオートフォーカス機能を持ったカメラボディの中間に装着し、オートフォーカスを可能にするアダプターです。

 使用できる交換レンズは、原則としてF2.8より明るいレンズです。主レンズの焦点距離は1.7倍に、開放F値も1.7倍に、約1.5段暗くなります。Aレンズを絞り環A位置で使用する場合、カメラ側の表示する絞り値は自動補正されます。F1.7より明るい交換レンズを使用した場合、合成開放F値はどれもF2.8になります。つまり、F1.4やF1.2でもF2.8になってしまうのです。これはレンズ径から来る制約です。

 マスターレンズのF値は、F5.6あれば昼間の明るい屋外ならAFが作動します。F8では動きません。F7ぐらいが限界のようです。

 後玉が大きく出ている超広角レンズなどは破損の恐れがあります。

 AFの機構としては、アダプター内のレンズ群をAFカプラーによって駆動して前後させることでピントを合わせます。レンズ群は全体として凹レンズなので、焦点距離が1.7倍になってしまうのです。

 絞り機構は連動する構造なので、自動絞りは使えます。絞り優先、シャッター優先などの自動露出は使用できますが、レンズ固有データを記録したROMが無いので、プログラム自動露出はノーマルプログラムモードのみとなります。

 カメラ側マウントは信号接点が7個とAFカプラーのあるKAfマウントですが、レンズ側マウントは信号接点6個のKAマウントです。Aレンズ以前のKマウントレンズを取り付けて使うことができます。

 しかし、Fシリーズ以降のレンズを取り付けても、Aレンズとしてしか認識できません。このため、KAマウントと互換機能を持たないシグマ製KAfマウントレンズは、AEが正常に作動しません。

 信号接点の無いKマウントレンズの場合や、絞り環をA位置にしていないAレンズ以降のレンズの場合は、Aレンズではないとカメラは判断し、デジタル一眼レフではシャッター速度優先やプログラムなどのAEは使えません。絞り優先AEは絞り開放としてのみ作動します。実用的にはMモードで使用するしかありませんが、ハイパーマニュアルが搭載されているPENTAXのデジタル一眼レフなら、ボタンひと押しで絞り値に適合したシャッター速度を設定するので、それほど不便ではありません。

 TakumarなどM42マウントのレンズをマウントアダプター併用で取り付けた場合、マウント面がアルマイト加工や塗装加工してあるとマウント面の信号接点が絶縁状態となり、レンズを取り付けていないとカメラは判断するので作動しません。交換レンズのマウント面を導通可能な状態とすることでKマウントレンズが取り付けられていると判断して作動します。マウント面のアルマイト層や塗装を剥がして金属面を露出させることが必要です。

 インナーフォーカスのためと、その移動量が小さいため、AFの作動は非常に迅速です。マスターレンズのピント環は原則として無限遠にしておきます。近接や接写撮影の場合は、マスターレンズのピント環を回して調節します。AFはマスターレンズのピント環位置より近接側にしか作動しないので、マスターレンズのピント環を近接にし過ぎるとAFができないことがあります。

 

 レンズ構成はオルソメター前群とダブルガウス後群のハイブリット対称形です。このレンズ構成は、引き伸ばしレンズやマクロレンズに使われた歪曲収差の少ない優秀なものです。

※換算表

レンズ焦点距離 換算焦点距離   レンズF値 換算F値
24o 41o   F2 F3.5
28o 48o   F2.5 F4.3
35o 60o   F2.8 F4.8
40o 68o   F3.5 F6
50o 85o   F4 F6.8
55o 94o   F4.5 F7.7
105o 180o   F5.6 F9.5
135o 230o      
150o 260o      
200o 340o      
280o 480o      
300o 510o      

<SPEC>

レンズ構成枚数:4群6枚

倍率:1.7倍

ピント合わせ:全群移動式

サイズ:64(最大径)×26(長さ)mm

質量(重さ):135g

 

smc PENTAX-A 1:2.8 24o

 レンズ構成はレトロフォーカスです。前凹構成はダブレットと逆トリプレットになっていて、すべてがメニスカスとなっています。後凸構成は逆置きのエルノスターです。前凹部の曲率を大きくすることで 、口径を押さえても明るさを確保した設計です。

 

●分解について

 これの分解の手始めは「ピント環」の周囲の「ビニール環」を抜き取ることです。そうすると下に穴が3か所あり、「フィルター取付枠」を「ヘリコイド内筒」に固定している小ビスにアクセスできます。

 

<SPEC>

焦点距離/明るさ:24mm/F2.8

レンズ構成枚数:8群9枚

絞り羽根数:5枚

最小絞り:f22

最短撮影距離:0.25m

フィルター径:52mm

サイズ:63(最大径)×41.5(長さ)mm

質量(重さ):205g

smc PENTAX-A 1:1.2 50o

 PENTAXで最も明るいレンズです。変形ダブルガウスタイプの銘玉です。Kマウントの開口では、これ以上の明るさは出来ないでしょう。

 Aシリーズの単焦点交換レンズとしては最後に残った品になりました。オートフォーカスのFシリーズ以降に移行しなかったことがその長命の理由でしょう。ファインダーが明るいのと、被写界深度が浅いのとで、マット面でピントの山が掴み易い優れたMFレンズです。フォーカスエイドに頼らなくとも、ピント位置は画面のどの位置でも自在に選べます。K-7の100%視野率により等倍に近い見え方で、構図とピントだけに集中できるナチュラルな使い心地です。両目を開けての使用でも違和感が少ない…

 なお、マウント金具は「smc PENTAX-A 1:1.7 50o 」用のものについて、5番穴を金属で埋める加工をして用いています。製造数が少ないために、その後も専用のマウント金具は作られなかったようです。

<SPEC>

焦点距離/明るさ:50mm/F1.2

レンズ構成枚数:6群7枚

絞り羽根数:9枚

最小絞り:f22

最短撮影距離:0.45m

フィルター径:52mm

サイズ:64.5(最大径)×47.5(長さ)mm

質量(重さ):345g

smc PENTAX-A 1:1.4 50o

 

 1965年に始まった変形ダブルガウス型6群7枚構成を引き継いでいます。しかし、エコガラスを採用して設計をやり直しているようで、実質焦点距離が前の型の「smc PENTAX-M 1:1.4 50mm」より少し長くなっています。しかし、色収差は随分改善していますから、解像感が上がっています。

 鏡胴構造もエンジニアリングプラスチックを多用しているため僅かに軽量化しています。

 

 これのマウント金具は、当初は「smc PENTAX-A 1:1.7 50o 」用を加工していたようです。その後、専用のものに変わっています。この個体は専用のものに替わったマウント金具を使っています。

 

 ●分解と組立について

 この交換レンズの分解・組立は、前の機種の「smc PENTAX-M 1:1.4 50mm」やそれ以前の機種などとは比較にならないほど難しくなっています。故障があって必要なら仕方がありませんが、安易に分解するのは考えものです。

 

 まず最初にすることは、鏡胴先端部(フィルター等取付枠)の周囲に1つだけある芋ビスを緩める( 無くすと困るので抜かない!!)ことです。それで鏡胴先端部(フィルター等取付枠)は左回りに捻じって外せます。この段階でヘリコイド内筒に捻じ込んである前部レンズホルダーがカニ目を利用して左回りに捻じって外せますから、前群レンズ玉の清掃だけならそれで事足ります。

 なお、3群目レンズ玉はレンズホルダーに接着されていますから外せません。必要ならレンズホルダーごと洗浄するしかありません。

 

 無限遠の調整やヘリコイドの整備が必要な場合は、「ピント環」を外さなければ先に進めません。この「ピント環」を外すためには「ピント環」の外周にある「ビニール環」を抜き取らねばなりません。それは経年劣化で硬化して折損のリスクが高まっていますから、事前に柔軟剤の塗布やドライヤーなどで温めて軟化させておくなどの手当てが肝要です。

 「ビニール環」を抜き取るのには細い竹串が使えます。下に差し込んで慎重に一周させることで接着を剥がせば前方に抜き取れます。一例では薄い両面接着テープ片が2か所に貼られていました。

 「ビニール環」を外すと「ピント環」の周囲に3個の小穴が等間隔に現れます。ここにドライバーなどを差し込んで押しながら、その横の「銘板」との境の溝に薄い板をあてがって「こじれ」ば、「銘板」は外れます。つまり、「銘板」は3か所の弾性ロックによって固定されているのです。なお、「こじる」ためには、「ピント環」外径と同等の内弧を持った薄板を用意すると、傷を付けるリスクを下げられます。

 「銘板」が外せれば、ヘリコイド中筒に3本の小ビスで止めている大リングが外せ、その大リングで「ピント環」はヘリコイド中筒に押え付けられて固定しているので、固定位置を変えることで無限遠の調整が可能なのです。

 

 「ヘリコイド装置 」を「マウント台座」から分離するためには「絞り環」を後方に抜かなくてはなりません。そのためには、まず「マウント金具」を外さなくてはなりません。

 「マウント金具」は5本の小ビスを外すことで外せるのですが、それを外すと「A位置」伝達用スイッチである「3番端子」が容易にバラバラになってしまうので、4個の極小部品で構成されるそれを再度組み立てるのはなかなか厄介な作業になります。 洗浄のために後群レンズホルダーを外すだけなら、「マウント金具」内周に取り付けてある黒リングを外すことで可能になります 。

 

 「絞り環」を抜くと「A位置」解除用ボタンとクリック用鋼球が「絞り環」内側から外れます。これを無くさないように注意が必要です。組立時には正しく組み合わせなければいけません。

 

 「ヘリコイド装置」は内筒、中筒、外筒共にアルミ製です。ヘリコイドの分解は対向する2か所の摺動板を外筒から外せば可能になります。しかし、組立が厄介ですから安易に 分解しない方がいいでしょう。

 

 この「smc PENTAX-A 1:1.4 50o 」の鏡胴組立において難しいのは、一番にマウント金具の「3番接点」の組立です。4個の微小部品を不安定に組み合わせてマウント金具の穴に挿入するのですから、その正しい組み合わせ姿を知らないと困難を極めるでしょう。

 第二に、ヘリコイド装置の内筒と中筒との組立です。それは6条の順ネジで組み合わせるのですが、その6条のどれと組み合わせても良いわけではなく、内筒の回転を阻止する役割の二組の摺動板の位置との正しい組み合わせを選ばねばならないからです。

 他としては無限遠の調整と最少絞り開度の調整がありますが、前者はカメラに取り付けて遠方の被写体に合わせることで行えば、そんなに難しい事ではありません。

 

<SPEC>

焦点距離/明るさ:50mm/F1.4

レンズ構成枚数:6群7枚

絞り羽根数:8枚

最小絞り:f22

最短撮影距離:0.45m

フィルター径:49mm

サイズ:62(最大径)×37(長さ)mm

質量(重さ):235g

 

smc PENTAX-A ZOOM 1:3.5-4.5 35-70o

 2グループ式ズームで、ズーム環とピント環が共用の直進ズームです。押し出した側が広角ですから少し違和感があります。70mm時には前玉がさらに 回転して繰出されてマクロ領域になります。

 APS-Cフォーマットだと標準から中望遠画角となり、小型ですから人物などのスナップ撮影用に手頃です。

 ズーム比2倍で8群構成の単純な2グループ式ズームですが、8群目はほとんど板ガラス状で鏡胴内で不動です。マウント金具に取り付けてあるこれが光学的に何らかの役に立っているのか不明です。「FA 77mmF1.8 Limited」の最後群が不動なのと同様な近接撮影に効果のあるFREEシステムなのかもしれません。1985年の製品化です。このレンズ構成はFレンズ化されました。

 

 これのマウント面にある3番接点は「A位置」以外にしても引っ込みません。鏡胴内部に別に断接スイッチがあって、それと電線で繋がっているようです。未分解なので推測ですが…

 

 ●分解について

 これのピント兼ズーム環の先端にある銘板はプラスチックで、単に押し込んで固定しているだけですから、ビニール環との境をマイナス精密ドライバーでこじるだけで簡単に抜き取れます。

<SPEC>

焦点距離/明るさ:35-70mm/F3.5-4.5

レンズ構成枚数:8群8枚

絞り羽根数:6枚

最小絞り:f22

最短撮影距離:0.7m (70o時にはさらにMacro)

フィルター径:49o

サイズ:(最大径)×(長さ)mm

質量(重さ):g

35mm判換算焦点距離:53.5-107mm相当

REAR CONVERTER-A 2X-S

 一部の超望遠レンズや後玉が大きく出ている超広角レンズを除くほとんどのペンタックス交換レンズに使用でき、焦点距離を2倍に拡大できるコンバージョンレンズです。

 開放F値は2段暗くなりますが、絞り環位置連動や自動絞りなど絞り制御機構は利用でき、プログラムAEやシャッター速度優先AEでの撮影ができます。最短撮影距離が変わらないことも特長です。

 KAマウントなので、シグマのKAfマウントレンズを使うと、これはKA互換ではないため正常なAEができません。

 汎用コンバージョンレンズなので、解像感などの画質は少し低下します。明るい交換レンズでは2段程度絞って使用することをPENTAXは推奨しています。近距離撮影を主とした設計ではないので、接写は勧めていません。無限遠付近の性能を確保する設計ということでしょう。

<SPEC>

レンズ構成枚数:6群7枚

サイズ:64.5(最大径)×39(長さ)mm

質量(重さ):210g