Vol.10 - 10 Jul. 2000

今回の話はバーゲンシーズンに合わせて、いかにも関西らしい
ディスカウント電器店のCM合戦の話です。
まず緑色がカンパニーカラーの『ミドリ』が仕掛けたことから始ま
ります。

画面には関西の漫才師風の男性二人が並んで立っています。
向かって左側に立つヒゲにメガネの男は緑色のブレザーを、右
側のちょっと小男は赤いブレザーを着ています。
まずはその赤の小男が言います。「9,890円、安いやろぉ!」
すると緑の男が背筋もピンと、甲高い声でうなります。
「ちゅぅぅぅぅぅとハンパやなぁぁぁぁぁぁ!!」
緑の男は続けて、「『ミドリ』は中途半端が大嫌い!」
こうして緑の男は「税込みで1万円」という値段設定をしている
『ミドリ』の方が安い! とアピールしてCMは終わります。

そのCMを何度となく見せられたある日、今度はこんなCMを目
にしました。
それは赤色がカンパニーカラーの『和光デンキ』のCMでした。

選挙戦の街頭演説のような風景。街宣車のお立ち台にはピン
ク色のお姫様ドレスを纏った30代とも40代とも判断つきかねる
「女性候補者」と、背の高い実直そうなメガネをかけた「対立候
補」の男性。
女性候補者は赤い文字で「中途ハンパ党」と書かれた白いタス
キをかけ、頭には「安い」と赤く染め抜かれた白鉢巻きを巻いて
います。
一方の対立候補は無地のタスキと無地の鉢巻き。
手には『\10,000(税込)』と書かれたプラカードを持っています。
すると女性候補は『\8,980(税別)』と書かれたプラカードを掲げ
て叫びます。「中途半端でまだ安い!」

コーラに始まって最近ではインターネットのサーチエンジンまで
この手のCMを展開していましたが、この関西2大電器店のCM
はさすがに関西モノ。
いっさい洗練されていないストーリーやコテコテベタベタな展開
は、むしろ見ていてアッパレと思うくらいにさっぱりとしています。
最近は関西にもコジマやヨドバシカメラといった関東系電器量販
店が進出して拡大しつつありますが、そんな連中を迎え撃つ
『ミドリ』と『和光デンキ』。
お互いを貶しながらも、なんだかんだいいながら結局は仲のいい、
いかにも関西らしい「ライバル」企業の宣伝だなぁ、なんて感じ
ています。
1円まで負けさせようとする気質を持つ関西人の関西人による、
みんなのためのとてもわかりやすいCMでした。

“1万円ちょうど”の『ミドリ』の店内のポスターや配達のクルマの
側面には「税いらず」と書かれていて、「中途半端」な小銭がい
らず計算のしやすさがアピールされているけれど、よく考えてみ
るとこれは別に「税いらず」な訳ではなくて、単なる「税込み」な
だけでしょ。となると、『和光デンキに宣戦布告したはずの『ミドリ』
は実は嘘つきだったっていうこと?
考えてしまうと意外と釈然としないことが多いところも、いかにも
関西っぽいです。


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