~ 僕の嫁 ~ 3





「・・・は、ぁああっ!」
「・・ね、気持ちいい・・・?」
「ばッ・・いてぇ、よッ」
「大丈夫。すぐによくしてあげる」

彼の中に挿入れば、脳天まで突き抜けるような快感が走る。
それを追って暴走しそうな本能を押さえつけ、身の内の異物に震える小次郎の身体を宥めるように撫でていく。大丈夫、怖がらないで。痛くならなくなるまで待つよ。ゆっくり、ね・・?
そう彼の耳朶に吹き込むように言い聞かせると、ふ、と力を抜く瞬間が分かる。もっと気持ちよくしてあげる。トロトロに蕩かしてあげる。何も分からなくなるまで、愛してあげる。

僕の嫁は甘い言葉をかけられるのが好きだ。それだけで感じるらしく、目元をほのかに朱色に染めていく。

「愛してるよ」
「・・・んっ。おれ、も・・・っ」

すき、だ・・・と荒い息の合間に声にしてくれる。恥ずかしがり屋でぶっきらぼうな彼の、めいっぱいの求愛の言葉。それがどれだけ僕を幸せにしてくれるか、一体分かっているのだろうか。

時間をかけて小次郎の体を開いて、脳みそまで蕩けてしまったかのように彼の意識がグチャグチャになりかけた頃にようやく、僕も欲しいままに乱暴に腰を揺すり上げる。

「あ・・ぅあ、あ!ん!」
「小次郎。好き、大好き」
「みさ、き!・・もう、もう、おれっ!」
「大好きだよ。ね、え。小次郎。どうして・・・」
「あ、も・・・だ、めだッ」
「ね、どうして・・・」

彼を追い上げながら、僕は「好きだよ」と繰り返す。最初は寒くて被っていたはずの掛け布団も、すっかり脇でグシャグシャになっていた。

その瞬間に向かって、僕らの熱が急速に高まっていく。

もう少し。
あと少し。

はあはあ、と荒い息と彼の嬌声が部屋に響く。

「・・んっ、」
「・・あ!は、ああぁっ!」

僕が彼の中に一層深く挿入って欲望を解放すると、彼も一際高く声を上げながら、背を撓めて身体を震わせた          







その後僕らは一緒にお風呂に入った。狭くて壁のタイルが冷たい風呂場でも、二人で入ればより温かくなる。浴槽に浸かって、僕は彼の濡れた額と唇に軽いキスをした。

「明日は何時までいられる?」
「朝一で出る。朝飯は新幹線の中で食ってくよ」
「了解」

明日は学校は休みだが、お互いに部活がある。引き止める訳にはいかない。彼は東邦学園の特待生なのだから。

「お前、親父さんがいないからって、これ以上散らかすなよ」
「えー。それはどうかなあ」

ふふ、と笑って「そしたら小次郎、また片付けにきてよ」と甘えた風に首を傾げると、「・・・お前って、ずるいよな」と頬に朱を刷いて目をそらす。

中身はアレなのに、見た目可愛いんだもんよ           そんな風に言われて、僕は声を上げて笑う。

「あははっ。中身アレ!? アレって何?どんなの?」

くっくと肩を震わせる僕に、嫁は「タチが悪い、ってことだよっ。結局噛み跡残しやがって。どうすんだよ、これ。寮で風呂入るの、大変なんだぞっ」と上目遣いに訴えてくる。二人とも座っているから、立っている時みたいに嫁を見上げなくても済むのだ。

両の頬をぶちゅ、と僕の両手で挟んで潰すようにすると、さすがの嫁も不細工な顔になる。ブチャカワイイ顔の、それでも文句をたらし続ける可愛らしい唇に、僕はもう一度キスをした          






イく直前に、僕は『どうして、僕の嫁でいてくれるのか』と彼に聞いた。
半分とんでしまっている彼だったから、聞いているなんて思わなかった。返事があるなんて、尚更思わなかった。


          どうして、僕の嫁でいて、くれる・・っのっ

聴こえたとしても、流してくれてよかった。くだらない睦言だと、そう笑ってくれても良かった。


だけど、彼は確かに言ったのだ。荒い息の下で、途切れながらも、ちゃんと僕の目を見て、彼は言ってくれた。

          お前、の、かぞく、になれる・・からぁっ


泣きそうだ、と思った。







僕の部屋に布団は一組しか無かったから、その狭い中で僕らはくっついて温めあって、朝までの短い時間を過ごした。寝つきの異常にいい嫁は、布団に潜ればすぐに寝息を立て始める。
僕の家族、になってくれるという嫁。その可愛らしい寝顔を眺めていると、いつだってどこか苛ついている僕の気持ちが、ゆったりと凪いでいくのが分かる。

「・・・愛してるよ。家族になったんだから、もう離せないからね」

僕はそう囁いて、僕より少しだけ大きい彼の身体をギュ・・・と抱きしめる。彼の体温と呼吸を感じながら、僕はかつて無いほどの幸福な気分に眩暈がして、ゆっくりと瞳を閉じた。






END

2015.2.22

       back              top