名人と、云われるほど
野暮でなし。

古今亭志ん朝

三代目古今亭志ん朝は、
2001年の10月1日に死んだ。まだ63歳だった。
その芸を剣にたとえると、志ん朝は、
大上段から斬りこむ、そんな野暮はしない。
正眼で敵を見据える、そんな達人風も吹かさない。
下段から、いつの間にか相手を斬っている。
知らぬ間に観客は、くすぐられ、泣かされ、笑わされている。
軽妙で洒脱。緻密で小粋。
あの芸はもう、記録でしか味わえない。

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