西独ライネの012撮影旅行


ドイツ01。その生い立ちは今をさかのぼること80余年。統一ドイツが各州有鉄道の技術を結集して作り上げた急行旅客用蒸気機関車の傑作です。この01がまだ西ドイツで走っているという情報を知ったときの衝撃は今も忘れられません。まだ日本の蒸気機関車が全国で活躍しているときでした。
そのころの学生身分で遠くヨーロッパに行けるはずもなく、夢は社会人になるまで持ち越されました。しかしながら社会人になったばかりの若造が長期の休みはなかなかとれず、そうこうしているうちに2シリンダ機の01は西独ホフに集結されたあと、あっという間に全機廃車となってしまいました。そのときのショックはかなりのものでした。これではいけないと思ったのです。
西独DBの01は1968年のコンピュータシステムの導入により、2シリンダの01は001形となり、3シリンダ機は012と呼称が変わりました。1974年末の時点でDBは蒸気機関車の終焉を迎えており、わずかにドイツ北方のライネとノルディッヒ間を042、043という貨物用機関車に混じって旅客用に012が残っていました。
しかも私が一度も聞いたことのない3シリンダ機でもあったのです。
本来は海外に行く時間や経済的な余裕などあろうはずもなかったのですが、いずれ後悔するより今決行しようと決断してついに1975年春、羽田を飛び立ったのでした。

1975年4月20日〜23日 

 
 

ルフトハンザ航空でデンマークに着いた私は、翌朝コペンハーゲン中央駅に直行しました。初めてのヨーロッパで心はかなり高ぶっています。駅の食堂で注文したサンドイッチの本場チーズは臭くてさすがに食べられませんでした。

 
 
 
 

 
ここから西ドイツに入るにはバルト海を渡らなくてはなりません。私の乗るこの列車はコペンハーゲン始発の「TEE34」で1等車2両のみの編成です。2両ともフェリーで西独に航送されるので乗客は乗り換えの必要がありません。事前に日本で1等にも乗れるユーレイルパスを購入していました。ディーゼル機関車の先頭に王冠のマークが描かれています。素晴らしい機関車です。  1975年4月20日


 

  
   

TEE34の1等車に乗り込みました。横1-2座席のゆったりした室内です。
 
 
 
 
 


2両の客車を積んだフェリーがデンマーク・ロドビーの岸壁を離れバルト海へと出航します。
 
 
 
 





TEE34は西独プットガーデンでDB本線に引き出され、221型DLの牽引となります。客車もここで1両増結されました。

 




 
 

その日は列車の乗り継ぎでフランクフルトまで行き、そこで1泊。翌日は計画通り、朝のフランクフルト駅から出発ですが、その前にホームでスナップです。






急行のコンパートメントの1等車でくつろぎます。

 

 
 
 

ようやくライネに到着。駅付近は電化されています。ホームでしばらく待つと夕方のD714がなんと103形電気機関車に牽かれてやってきました。
 
 


 
 
 

D714はここで牽引機が103形から待望の012に替わりました。初めて見る01です。感激でした。16時50分、D714は終着ノルディッヒに向かって出発します。初めて聞く3気筒の音。とにかく凄い音でした。最後は加速するにつれ連続音となり周囲に圧倒的な轟音を残して姿を消して行きました。
 
 

 
 

 
ライネの街並み。真ん中が私の泊った小さなホテルです。

  
 
 
 


そのあとお目当てのライネ機関区に行くことにしましたが、 場所が分からないのでとりあえず
 タクシーを駅前でつかまえました。ベンツのタクシーです。思わず写真を撮ってしまいました。





 

ライネ機関区は結構駅から離れていました。確か入場料を数マルクとられた記憶があります。大きな機関区で入るなり2両の012の巨体が目に飛び込んできました。ボイラーも大きいけれど重油タンクのテンダーも大きい。
 
 

 
 

ただ012や043といった機関車がいい場所にとまっていてくれず、撮影はあまり満足のいくものではありませんでした。本当は斜め横から形式写真風に撮りたかったのですが・・・・入るのに数マルク払ったのに、少し悔いが残りました。            






 

期待した3シリンダの043は出払っていて、日本のD51に相当するポピュラーな2シリンダの貨物機042がいました。
 
 
 
 




転車台や扇形庫がありましたが、運の悪いことに逆光です。機関区での撮影はちょっと消化不良でした。あまり期待できないので012を撮ってすぐ出ました。
 

 





この81号機も、構内をあちこち動いてじっくりとる暇がなく、結局最後は逆光の庫前に落ち着きましたが、うまく撮れませんでした。



 
 

 
 昼前に隣町のリンゲンに行きました。乗ったのはローカル用のDCですが、1、2等合造車もあり、え?1等車があるの、と驚きました。
 
 
 
 




リンゲンの駅前です。正面入口上には大きなDBマークが誇らしげです。
 
 


 
 

リンゲン駅からメッペン寄りの町はずれで、D715が012に牽かれてやって来るのを撮りました。駅近くなので力行はしていません。ちょっと平凡すぎました。

 

 
 
 

上と同じ場所ですが、こんどは跨線橋の上からからD734を狙いました。駅近のところです。もっと先が良さそうなので、このあと行ってみました。



 
 
 
 

リンゲンから少しメッペン寄りに歩きました。途中で家並みが切れ、緑のきれいなバックにお目当ての043重連貨物が来ました。043は重油炊きなのでほとんど煙を吐きませんが、4000トンに及ぶ貨物牽引のため3シリンダ機2両が異様な音を響かせて力行してきました。
 
 

 
 
 

これはDL牽引の普通列車です。真っ赤な機関車と緑の客車が美しく映えました。








Dツークだったと思います。平坦地なので結構なスピードでやってきました。今回のお目当てですからしっかり撮りました。
 


 

 

リンゲンの駅に戻るとライネ方面から043の貨物が勢いよく通過して行きました。貨車は空なので単機なのでしょうか。
 
 


 

夕方のD714は012の牽引でした。ここも3シリンダ音を響かせて豪快に出発して行きました。
 


 
 

ライネ3日目は昨日と同じリンゲン〜メッペン間に行き、下りのD735を撮りました。独特の3シリンダ音を響かせ加速していきました。
 



 

いよいよライネを去る日がきました。3シリンダ機の012や043に間に合ったことは本当に幸せでした。
この列車で次の目的地オーストリアに向かいます。
さようならライネ。           4月23日





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