山岳線のラック式蒸機
オーストリア・エルツベルグ線
フォルデルンベルグマルクトの風景
西ドイツの01を撮りにいったときにあわせて計画に入れました。話にだけは聞いたことがあるのですが最初はいったいどこにあるかも知りませんでした。 60パーミルの急勾配をラック式のタンク蒸気機関車が登っているというのです。調べてみると後部にもう一台機関車を付け2台で鉱石貨物を運搬していることが分かりました。しかも4気筒機関車で動輪が6個、つまりF型らしきすごいのもいるらしいのです。 ただディーゼル化が近いということで間に合うかどうかが問題でした。 列車で西独からオーストリアに入ると車窓は一変しました。美しい西独の田舎の光景から険しい山岳地帯に変わっていきます。ときおり見える農家の建物も古いひなびたものへと変わりました。天候は小雨。高い山々に雲が厚くかかっています。 列車はやがてエルツベルグ線分岐駅のレオーベンに到着しました。 ホーム反対側には1両のレールバスが停まっていて目的地のフォルデルンベルグマルクトまで連れていってくれるはずです。さすがにこのローカル線はトーマスクックの時刻表には載っていません。ただただ運と感をたよりに・・・ 列車の終点フォルデルンマルクトはまるで映画のサウンドオブミュージックに出てくるような美しい山あいの小さな町でした。ここに2日間滞在したのですが、一生忘れることが出来ない素晴らしい時間となりました。 |
朝の9時前にレオーベンに着きました。ホームにはフォルデルンベルグマルクト行のレールバスがたった1両で停まっていました。本当にこんなところに蒸気機関車が走っているのだろうかと、少々心配になりました。
1975年4月24日 レオーベン駅 |
フォルデルンベルグマルクトに着いてまずは駅員に貨物列車の時間を尋ねました。下り(いわゆる山に向かって登っていく列車)は午前と午後に1本ずつあることが分かりました。まだ蒸機は健在で基地はひとつ手前のフォルデルンベルグにあるとのことでした。親切な若い駅員さんでした。やがて時間になるとかなたの駅の向こうに2条の煙が見えてきました。駅構内を過ぎると2台の機関車は俄然白煙を舞い上げラック式レールをブラストとともに轟然と登ってきました。ちょっとシャッターチャンスを間違えました。 |
どこから撮っても絵になる場所ばかりです。ただ後部補機も入れようとするとどうしても山の斜面からとなってしまいます。午後の列車も結局同じアングルとなりました。先頭の機関車はギースルエゼクター、4気筒、F型機関車でした。これにラックの噛み合う音が混じるともう蒸気機関車の歯切れのいいブラスト音ではなくなります。ジャジャジャというなんともいえない初めての轟音が続きます。 |
なにぶん列車本数が少ないもので、この時はカメラ2台を使いました。1本目の上り列車は、カラーで後補機の煙がうまく写らなかったので、2本目はシャッターチャンスを考えて撮りました。
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これがF型機関車です。蒸気で足回りが見えないのが残念です。ギースル煙突もよく分かります。この形は2両いたはずですがその1両97-301です。後で分かったことですが302はすでに廃車となっていました。このタンク機関車に動輪6個、4気筒のメカニズムをよく押し込んだと感心します。連結器はバッファどうしが放れていてリンクだけで引っ張っています。 |
翌日は車両基地のあるひとつ手前のフォルデルンベルグに行ってみました。主力である標準機の97-2が休んでいました。これはC型2気筒です。 1975年4月25日 フォルデルンベルグ機関区 |
これが1泊したフォルデルンベルグマルクトに1軒しかなかったホテルです。名前は「ガストホフ・グルベル」。たぶんみんながお世話になったはずのホテルです。今は色々調べてももうないようです。足の少し悪い綺麗な奥さんが夕食を用意して、とても可愛らしい、小さな男の子がしきりに夕食時に私のテーブルにまとわりついて、じっと私を見ていました。懐かしいホテルです。こんな田舎でも英語が通じると言うのに驚きました。思い出のホテルです。 なおこの写真は、私より約2年前に訪問していた「長崎様」のホームページから許可をいただいてお借りしたものです。因みに、氏のホームページのURLは下記の通りです。 http://sl-story.jp/D100/GT/GT1_4.html |
1日2往復しかない蒸機列車。煙を吐くのは山に登る2本だけという実に効率の悪い撮影行でした。もう2〜3年前にくればもっと多くの蒸機列車がみれたそうですが、私はこれで十分満足でした。 美しいオーストリアの山間の小町フォルデルンベルグマルクトに来れたことだけでも幸せでした。 宿泊したホテル・ガストホーフグルベルの親切な人々。帰りのバスを町角で待っているときに会話した英語の話せるおまわりさん。みんなどうしているのか、ときどきふと思い出します。 |
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