小型6V6GTシングルアンプ

小さくて可愛いという条件付きでアンプの製作を頼まれました。
どんな球を使って、どんな回路にすれば良いのかかえって難しいことに気づいたのは安請け合いした後でした。小型というからにはシャーシーは25cm x 15cmが最大でしょう。


シンプルにということからシングルアンプとして出力トランスには野口の小型のものを使うことにしました。出力管の候補としてはMT管では6BQ5, 6AQ5,GT管では6V6GTを考えましたが、MT管ではちょっと貧相なので、6V6GTで袴の低いGE製の球を使うことにしました。これなら5極管接続で4.5W,3極管接続で1.8Wの出力が得られます。ドライバーには見た目の綺麗なメッシュの松下製6267(EF86)を3極管接続で使います。リニアリティーが良好なことで良く知られている6267の3接はシンプルな回路で良い音と言う目的には最適と考えています。これで増幅率30が確保できるので、フルパワーは6V6GTのバイアス電圧を考えると135mVとなり、10dBのNFBを掛けても0.4Vでフルパワーが得られると期待できます。      
残るのは電源回路です。小型ということからどうしてもチョークコイルが載せられません。  その分電源のパスコンはなるべく大きいのを使うことにします。整流は球でと考えています。 これらを回路図にしてみると次のようになります。


最終の回路図:当初のB電源フィルターは47uFと220Ω

25cmx15cmx6cmの1mmm厚アルミシャーシーを使うことにし、部品の配置は6V6GT
を正面中央に置くこととし、見かけのコンパクトさを狙った結果、上に示した写真のようになりました。電源トランスは例によってグリーングレイのハンマートーンに塗り直してあります。一度ばらばらにしてからワインレッドに塗装しました。シャーシーがワインレッドだと出力トランスの黒が合わないような気がします。      (2000/10/15)

野口の出力トランスもグリーングレーのハンマートーンに塗り直しました。そうして組み上げたのが右下の写真です。前列左から6267, 6267, 6V6GT, 6V6GT, 6X4と並んでいます。見るからに可愛い真空管アンプに仕上がりそうです。ここまで作ってから出力トランスのタップが3.5k, 5k, 8kΩとなっているので、出力管を6L6, 6F6のGT管に交換して、その上3極管接続にもして遊べるなと思いつきました。
当たり前ですか、(遅すぎると言わないで〜)


配線が終わったので、NFBを掛けないで周波数特性と出力特性を測定してみました。
周波数特性は出力トランスが小さいことがそのまま出てきているようで、低周波の延びが良くありません。音質はやってみなければ分かりませんが、特性はNFBを掛けることで見かけ上はかなり改善できると思います。出力は予想よりは若干低い3.3Wでクリップが始まります。この段階での音質を云々しても仕方在りませんが、まさしくラジオの音です。まあ、音質はNFBを掛けてから考えましょう。気になるのは100Hzの残留ノイズが38mVと実用の上でも障害になる程大きいことです。まあ、なんとかなるでしょう。  (2000/10/31)

ON/OFF法で出力インピーダンスを測ったら~16Ωだったのでダンピングファクターは0.5、 出力0.12Wで1kHzでの歪み率は1.2%でした。このへんの値はNFBをかければ改善できるでしょうから、今後に期待することにしましょう。              
 最初にしなければならないのは残留ノイズ(殆どがハム)を減らすことです。B電源をオシロスコープで見てみると、100Hzの両波整流の交流分が大きいことが分かりました。
これはやはりB電源のフィルターでケミコンをケチったことと、チョークを省いたことが響いているのだろうと考え、47uFを100uFへと倍増すると共に小さくてもチョーク  (2H, 100mA)を使うことにしました。その結果B電源のノイズは1/100に減少し、残留ノイズもNFB無しで1mV以下にまで減少させることができました。   
    


NFBを掛ける前後の周波数特性と容量による補正結果

次は5極管アンプでは音を決める(ダンピングファクターの制御)NFBを掛けます。  NFBを掛ける前後での周波数特性の変化を上図に示します。Rf=2kΩを接続することにより、トータルゲインが1kHzで9dB減少しました。これは帰還量としては約19dB掛けた
事になります(Rf/Rk=2k/200=10=>20dB)。帰還ループにトランスが入っている為でしょうが、10kHz以上の高域でピークとなっていることが分かります。これについては750 pFのスチロールコンデンサーをRfに抱かせることで高域の上昇を抑えることができます。このように負帰還を使うことで周波数特性としては40~50kHzで+0, -1dBとすることができました。また、ダンピングファクターDFは2.0(出力インピーダンス=4Ω)と適当な値とすることができました。(注:Rf=1.2kΩでDF=3)        (2000/11/8)

     主要部品表 (2000.11.11)
6V6GT     x2 GE
6267      x2 松下
6X4 東芝
電源トランス ノグチ PMC-100M
出力トランス(出力6W) ノグチ PMF-6W
電源チョーク Hammond 154M
シャーシー 25 x 15 x 6cm 1t
入力ボリューム 100kΩA 2連
ソケット US 8p OMRON
ソケット MT タイト9p x2, 7p x1
抵抗(記載無し) 1/2W金属皮膜(東京光音)
6267カソード抵抗 1/4W金属皮膜(東京光音)
容量47μ16V ATOM
出力管バイアス抵抗 1/2W金属皮膜(東京光音)
容量100μ25V ATOM
容量0.1μ400V  ASC
NFB回路用750pF スチロールコンデンサー
抵抗(3W) 酸化金属皮膜(松下)
容量100μ 450V 電解コンx2
容量33μ350V 電解コン

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