「Takumar」一族における広角レンズの歴史

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  一眼レフカメラはその構造上フランジバックが長いため、広角レンズを成立させるためには、いわゆる「レトロフォーカス」が必要です。それが実用化されたのは1955年のことですから、旭光学工業においても 、それ以後に開発されることになりました。以下に、その軌跡について概要を述べることとします。

Takumar 1:4 f=35mm

 1957年5月に発売された最初のペンタプリズム搭載機「ASAHI PENTAX」のために、同年12月に発売されました。当時の国際標準M42ネジマウント(プラクチカ)準拠です。

 4群4枚構成ですが、トリプレット型凸の前方に遠く離して大曲率のメニスカス凹1枚を置く非常に簡素な配置です。絞りは絞り環が単列のクリック絞りです。

 これが一眼レフ用広角レンズとしては国内で最初の機種でしょう。

Auto-Takumar 1:3.5 f=35mm

 1959年に「ASAHI PENTAX K」および「ASAHI PENTAX S2」のために用意されました。これには半自動絞り機構が搭載されていて、それはレリーズ毎に鏡胴後部のレバーを動かしてチャージし、レリーズによってそれが解除されて、設定した絞り値にまで絞られてからシャッターが落ちる仕組みです。

 4群5枚構成で、テッサー型凸の前方に遠く離して大曲率のメニスカス凹1枚を置く配置です。この簡素なレンズ構成は、Kマウント化されて「SMC PENTAX 1:3.5/35」となるまで用いられた優秀なものです。

Auto-Takumar 1:2.3 f=35mm

            アンジェニュー1:2.5 f=35mm

 1959年に「ASAHI PENTAX K」および「ASAHI PENTAX S2」のために用意されました。 これには半自動絞り機構が搭載されていて、それはレリーズ毎に鏡胴後部のレバーを動かしてチャージし、レリーズによってそれが解除されて、設定した絞り値にまで絞られてからシャッターが落ちる仕組みです。

 5群6枚構成で、4群5枚構成エルノスター型凸の直前にメニスカス凹1枚を大きく離して置く配置です。これは1955年に発売されたアンジェニューと酷似したレンズ構成で、後継機は作られませんでした。

 後に「Auto-Takumar 1:2.3/35」という表記に変更されて、他のレンズが全自動絞り化されてからも製造が続けられたようです。「704***」を確認しています。

Super-Takumar 1:3.5/35

レンズ構成は上記「Auto-Takumar 1:3.5 f=35mm」と同等です。

 1962年に「ASAHI PENTAX SV」および「ASAHI PENTAX S2 super」のために用意されました。これは全自動絞りとなり、最小絞りはF22でした。

 

 1964年に絞り環形状を改め、最小絞りをF16にしました。

Super-Takumar 1:3.5/28

 1962年に「ASAHI PENTAX SV」および「ASAHI PENTAX S2 super」のために用意されました。これは全自動絞りで、当初最小絞りはF22でしたが、F16へと変更されています。

 6群7枚構成で、鏡胴が58mm径という大きなものです。4群5枚構成エルノスター凸の前方に大きく離して2群2枚構成ガウス型凹を置いたレンズ構成です。

 これが前期型で、1965年からの後期型があります。

Super-Takumar 1:2/35

 1963年に「ASAHI PENTAX SV」および「ASAHI PENTAX S2 super」のために用意されました。

 7群8枚構成で、鏡胴が67mm径という巨大なものです。5群6枚構成変形ダブルガウス凸の前方に大きく離して2群2枚構成ガウス型凹を置いたレンズ構成です。 古典的なアンジェニュー風「レトロフォーカス」は、このあたりが最後となりました。

Fish-eye-Takumar 1:11/18

 1963年

 対角180度魚眼レンズです。

 3群4枚構成で、絞りはターレット式の円形絞りです。なお、前群凹を大曲率面での貼り合わせとしているためか、バルサム切れしている個体が殆んどのようです。

Super-Takumar 1:2/35

 1967年に、名称は同じですが、まったくレンズ構成を変更しました。7群8枚構成は同じですが、鏡胴を49mm径へと大幅に小型化しています。

 この1967年から以降の広角レンズは、レンズ構成が以前のものとは大きく変化しています。この時期に、新たな設計理論の導入があったものと思われます。

Super-Takumar 1:3.5/28

 1967年に、名称は同じですが、まったくレンズ構成を変更しました。7群7枚構成で、鏡胴を49mm径と小型化しました。

 後群凸に用いた逆エルノスター構成は、コマ収差の補正に大きな効果があるようです。この配置は、ニコンが1959年に「NIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5」で開発したとのことで、2グループ式ズームレンズの2グループ目にもよく使われています。

Super-Takumar 1:3.5/24

 1967年

 8群9枚構成で、鏡胴は58mm径です。超広角の世界に踏み出したものです。

Super-Fish-Eye-Takumar 1:4/17

 1967年

 7群11枚構成です。明るい対角180度魚眼レンズの世界を開きました。

Super-Takumar 1:4.5/20

 1968年

 10群11枚構成で、鏡胴は58mm径です。しかし、フィルターはアダプターを併用して77mmでないとケラレてしまいます。

 

Super-Multi-Corted TAKUMAR 1:3.5/35

レンズ構成はSuper-Takumar 1:3.5/35と同一です。

 1971年開放測光鏡胴に変更し、レンズコーティングを7層にしています。

Super-Multi-Corted TAKUMAR 1:2/35

レンズ構成はSuper-Takumar 1:2/35と同一です。

 1971年開放測光鏡胴に変更し、レンズコーティングを7層にしています。

Super-Multi-Corted TAKUMAR 1:3.5/28

レンズ構成はSuper-Takumar 1:3.5/28と同一です。

 1971年開放測光鏡胴に変更し、レンズコーティングを7層にしています。

Super-Multi-Corted TAKUMAR 1:3.5/24

レンズ構成はSuper-Takumar 1:3.5/24と同一です。

 1971年開放測光鏡胴に変更し、レンズコーティングを7層にしています。

Super-Multi-Corted-Fish-Eye-TAKUMAR 1:4/17

レンズ構成はSuper-Fish-Eye-Takumar 1:4/17と同一です。

 1971年開放測光鏡胴に変更し、レンズコーティングを7層にしています。

Super-Multi-Corted TAKUMAR 1:4.5/20

レンズ構成はSuper-Takumar 1:4.5/20と同一です。

 1971年開放測光鏡胴に変更し、レンズコーティングを7層にしています。

SMC TAKUMAR 1:3.5/15

 1975年

 12群13枚構成です。当初は非球面レンズを使用していましたが、すぐに球面レンズに変更されています。

 Takumar広角レンズとしては最終機種です。