Super-Takumar 1:1.4/50 の歩み概説

 

2018/7/9 改訂

 

まえがき

 

 「Super-Takumar 1:1.4/50」という機器名称の一眼レフ用標準レンズは、1962年から1971年までの足掛け10年間に渡って作られました。その間、外見から分別出来るものだけで「7期」もの変遷がありました。そのうち、「T期」から「W期」までのレンズ構成が「6群8枚 変形ダブル・ガウス型」であり、「X期」から「Z期」までが「6群7枚 変形ダブル・ガウス型」でした。

 その他に、外部からは判別が難しいか不可能な内部の小変更を何度も受けています。それも合わせて分類するなら「12種類」に分けられるのです。

 このようにレンズ構成が全く異なっているものだけではなく、その鏡胴に大小の変更を何度も受けているのに同一の機器名称で製造・販売を続けていたという存在ですから、一概に「Super-Takumar 1:1.4/50」という名前で評価するのは間違いです。その変遷の存在と、それぞれの違いを知って使うことが求められるのです。

 

 なお、下に掲示した画像は、各期型の特徴を表示したものです。それぞれの画像を見るだけで「期型」の判別特定は出来るものとなっています。

 

T期型 A

 1962年に誕生した最初の「期型」がこれです。この年は「PENTAX SV」が登場した年で、交換レンズに「Super-Takumar」という名称が使われ始めた年でもあります。「6群8枚 変形ダブル・ガウス型」の前から4群目が3枚のレンズを貼り合せているという、他には例の無いレンズ構成でした。「8枚玉タクマー」の俗称はこのことによります。

 

T期型 B

 最初の変更を受けた「期型」です。その変更は「絞り環」の半段クリックのうち、「開放1.4」と「2」、「11」と「最少絞り16」の間の半段について、クリックを省略しました。この変更は以後の「期型」へと継続されます。

 

U期型

 「被写界深度指標環」にある「零指標」について、「T期型」が「赤線に赤丸」であったものを「赤菱形」に変更しています。

 「T期型」にはあった絞りリンク内三日月形カム板側面の、カム形状修正用と思われる打痕が無くなりました。

 

V期型 A

 「絞り環」の幅が1mm増え、「6.5mm」となりました。そのため「被写界深度指標環」の幅が1mm減り、そのことで赤外指標の赤文字「R」が省略されました。

 この期型からが1964年7月発売の「PENTAX SP」に「セット・レンズ」とされたのではないかと推定しています。

 

V期型 B

 ヘリコイド装置の「内筒」と「中筒」とを結合する順ネジ溝が、それまでの「12条」から「6条」へと半減しました。

 

W期型 A

 レンズシリアル番号の表記位置が、それまでの「Super-Takumar 1:1.4/50」の直前から直後に移り、その文字形状(フォント)が変更になりました。

 「絞り環」の裏側のクリック溝が環の幅全体になりました。「V期型」までは、幅の半分程度にだけクリック溝が入っていて、中央部に円周溝が入っていました。

 また、マウント台座の「絞り環」が被さる部分に細い浅い溝が円周状に入りました。これは「絞り環」の裏の造形が変わったことに対応する変更です。

 この変更が行われたのは1965年ではないかと推定しています。

 

W期型 B

 ヘリコイド装置の二か所の「回転止め摺動板」のうちの片側に、デルリン樹脂 (あるいはジュラコン樹脂) が使われています。これは鏡胴にエンジニアリング・プラスチックを使用する嚆矢となりました。

 

W期型 C

 距離指標が「ピント環」に直接印字されているのではなく、一旦薄いアルミ板に印刷したものを「ピント環」に貼り付ける方法になりました。

 

X期型

 レンズ構成について「6群7枚 変形ダブル・ガウス型」に変更しました。前から4群目を2枚のレンズの貼り合わせとしています。「7枚玉タクマー」の俗称はこのことによります。

 なお、このレンズ構成は後に競業他社が競って採用して「世界標準」となり、そのどれもがよく似ています。

 この時から放射線を出す「トリウム・ガラス」で作ったレンズを用いています。そのため、今日では酷い「黄変」を示しています。「アトム・タクマー」の俗称はこのことによります。

 レンズ構成を全く違ったものに変更したことにより、実質焦点距離が少し長くなり、被写界深度や赤外指標位置が変更になっています。重量も僅かに少なくなりました。

 内部鏡胴の形状も、後部レンズ・ホルダー後端が変更されました。

 「自動絞り・手動絞り切替レバー」の背面に「製品番号(プロダクツ・ナンバー)」の刻印が行われるようになりました。この期型の製品番号刻印は「37800」です。

 「絞り装置」と「絞りリンク」を結合する「絞り連結棒」が1mm長くなりました。このため無限遠時にはマウント台座と干渉するおそれが出てきたので、マウント台座の該当部分をくり抜いています。連結棒自体も、その先端部を半月状に削っています。

 

Y期型 A

 「絞り環」の各段ごとの回転角について、本来「1段分」であるはずの「開放1.4」と「2」の間隔を「半段分」にしたため、表記の場所が無くなって「2」の表記を「・」へと省略しています。

 それまでは「A」と「M」だった自動絞り・手動絞り切替指標の表記を「AUTO」と「MAN.」へと変更しています。

 「絞り環」の幅を更に1mm増やして「7.5mm」としています。このことで「被写界深度指標環」の幅がさらに狭くなり、指標表示がせせこましくなっています。

 「絞り環」外径と「ピント環」外径を大きくしています。

 ヘリコイド装置を設計変更して全く新しいものにしています。「摺動板」を真鍮製に戻して、なおかつ数倍長いものに変更したことで内筒のガタが大幅に減少しています。その形状も、二か所の内の片側を幅の微調整が可能なものにしています。その設置位置としても、「X期型」までが「内筒」に取り付けた「摺動板」を外筒の「摺動溝」の中で動かしていたものを、この「Y期型」からは「外筒」に取り付けた「摺動板」を内筒の「摺動溝」の中で動かすように変更しています。

 レンズ群と絞り装置を組み込んだ「内部鏡胴」について、後部レンズ・ホルダー後端の形状を「X期型」とは僅かですが変えています。

 

Y期型 B

 内部鏡胴の1群目レンズを押さえるソケットの形状を、それまでは「飾銘板」にあったその内側の段付きリブ部分をソケット側に移して、その分だけソケットの断面形状を大きくかつ異形にして強度を高めています。それに伴って「飾銘板」の形状も簡素なものへと変更しています。

 

Z期型

 これまでの鏡胴とはまったく変わり、新規開発された「開放測光鏡胴」に変更しています。

 レンズ・コーティングもそれまでの「単層」ではなく、旭光学工業が誇る「7層マルチ・コーティング」に変更しています。

 「開放測光」には必要であるため、前の型の「Y期型」が採用した「絞り環」の不等間隔クリックも廃止して、等間隔クリックに戻しています。

 絞り装置を単体ユニット化し、絞り羽根が「8枚」となりました。内部鏡胴方式は廃されました。

 この「期型」はレンズシリアル番号帯「4610***」、「4611***」、「4616***」そして「4617***」からしか発見されていません。