引き伸ばしレンズ収蔵庫
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… まえがき … ・ PENTAXが「*ist D」を発売した2003年以降急速に行われたカメラのデジタル化によってフィルムが使われなくなり、今日、暗室作業は絶滅状態です。一般ユーザー段階における引伸機の需要はほぼ皆無となっていることでしょう。これは街の写真館においても同様と思われます。 暗室作業においてネガフィルムから印画紙への拡大プリントに使う引伸機のレンズには、多くの場合、羽根枚数の多い優秀な絞りが付いています。一般的にF値は少し暗いのですが、その目的上、歪みなどの収差が少ない端正な画像が得られます。また、イメージサークルも大きいのが普通です。 引伸機の心臓部である「引き伸ばしレンズ」は一般撮影用に使えます。これを使い続けることで、写真文化の未来への継承に繋がるものと考えています。特に、ミラーレス一眼の発達により、APS-C判以下のものだけではなく、135判画角のものまでが登場しています。これを用いれば、バックフォーカスの短い焦点距離50mmクラスの引き伸ばしレンズのほとんどが、本来画角で 「無限遠」から使えるようになっているのです。これを楽しまない手は無いでしょう。 ところで、引伸機のレンズマウントは、焦点距離が135mm以上のもの以外は「ライカLマウント」であることがほとんどです。そのため、「M39 P=1」ネジなら取り付けることができます。正確には、「ライカLマウント」規格は「P=1/26インチ」ですが、「P=1」とは誤差の範囲内です。 かつて国際標準マウント規格であった「M42ネジマウント」との間ではマウントアダプターが豊富に存在します。これらを利用することで、現役のデジタル一眼で使うことが出来ます。 構造上フランジバックが長いデジタル一眼レフであっても、焦点距離75mm以上の製品なら、無限遠から近接までの写りを楽しむことが出来ます。APS-C判だと換算画角が110mm超の中望遠となりますが、少し離れた被写体をスナップ撮影するのなら手頃です。近接撮影も60cm程度まで可能ですから、軽量高性能なMFレンズとして、使い勝手は十分な存在でしょう。・
TAKUMAR時代の旭光学工業からは、「ライカLマウント」のレンズを「プラクチカマウント(Sマウント)」に取り付けるための「マウントアダプターA」という製品が販売されていました。この「マウントアダプターA」を使用して「引き伸ばしレンズ」を使う場合、そのレンズのフランジフォーカスがどれくらいあるかによって無限遠撮影が可能かどうかが決まります。中古市場に豊富にある焦点距離50mmのものだとフランジフォーカスが小さくなるので、ミラーボックスがあるためにフランジパックの長いデジタル一眼レフカメラでは、フォーカス装置を間に挟むと無限遠が出せません。無限遠が出ないのでは屋外での一般撮影は困難で、使い勝手が限られてしまいます。でも、フォーカス装置を間に挟まないと尚のこと使えません。 フォーカス装置で最も簡便なのはベローズ・ユニットです。これを介して取り付けるとなると、無限遠を出すためには最低90o程度の焦点距離が必要となります。しかし、ヘリコイド接写リングなら、もう少し短い焦点距離でも使えます。 かつてカメラ・メーカー、レンズ・メーカーの多くが自社ブランドの引き伸ばしレンズを上梓しましたが、旭光学工業(PENTAX)は出さなかったようです。同社はライカLマウントへの変換のために「マウントアダプターB」を供給して、マクロ・タクマーなどをその用途として推奨していたようです。 なお、引き伸ばしレンズを使って遊ぶのに便利な純正「マウントアダプターA」は、今では中古市場で見付けるのが非常に困難です。でも、玩具メーカー ・トミーの子会社であるBORG社からOASISというブランドで同様なアダプターが販売されています。直接通販もしていて、定価より安く入手できます。 また、同社からは操出量の異なる数種類の「M42ヘリコイド」など、引き伸ばしレンズを使うために役立つアイテムが各種販売されているので、同好の士は要チェックです。 さらに、フランジレスの「M42-M39アダプター」が安価で流通していますから、これを使うことも出来ます。これは光路を延ばしたくない時には重宝します。 ・・ 正向きでは無限遠が出せない短い焦点距離の引き伸ばしレンズは、逆向きにして超接写に使うのに限ります。 「リバースアダプター」と「ステップアップリング」を用いて「ベローズ装置」に取り付けるのが使い易い組合せです。 オートベローズにはリバースアダプターを使わずに逆付けできる機能があり、これを使えば、アタッチメントの無い「FUJINAR-E」や 「E-LUCKY」などの引き伸ば しレンズでも逆付け撮影ができます。49oのフィルター枠やステップアップリング等を絞り環に接着すればいいのです。蛇腹部を保持するだけなので、強度はそれほど必要としません。両面接着テープ程度の接着力で十分です。 ・ 「EL-NIKKOR N」シリーズの引き伸ばしレンズは、アタッチメントの規格が40.5mmです。ここにはフィルターやフードを取り付けるのですが、そのネジ規格は他の多くのものが「P=0.75」であるのに対して 、これは「P=0.5」です。このネジピッチは小径のフィルターに用いられていますが、小径であっても「P=0.75」のものがあったりして、なかなかに難しいものです。 ところで、ネジピッチとは、ネジ溝が一周するあいだに進む距離のことです。P=0.5というのは1周すると0.5mm進むことを意味しています。 ちなみに、「プラクチカ」などネジマウントに用いられているのは、ほとんどが「P=1」です。しかし、ライカLマウントの場合は「P=1/26inch」ですが、これは「P=1」と近似値なので互換が可能です。 ・ 一般論として、引き伸ばしレンズは、普通のカメラレンズと比較すれば逆光性能が大きく劣っています。太陽は勿論のこと、電燈、蛍光灯などの光源を画面に入れると盛大なフレアーが出てしまいます。あくまで順光での使用以外は難しいでしょう。 もっとも、そのフレアーを画面の味付けとして使いたいなら、これほど適しているものも少ないでしょうが… ・ 1945年8月の太平洋戦争終戦後、戦争中の軍需として砲撃、爆撃照準器や測距儀、双眼鏡などの兵器としての光学製品を作っていた数多くの企業や技術者、職人は、カメラ産業に参入するしか生存の道は無かったのでしょう。 また、それまで作っていたのが軍需品ということで、当然製品の高性能を求められたので、技術水準は皆高かったのでしょう。その時期に雨後のタケノコのように設立された企業により、多くの引伸機のレンズが作られたようです。 しかし、今日、その時代の「引き伸ばしレンズ」はほとんど残っていないようです。その製造の実態を示す資料も断片的です。日本のカメラ産業を今日の圧倒的な世界勝者へと導いた先達として、その歴史的価値は産業遺産として保存されるべきと考えます。 これらの中には、国内では販売されず、海外などのカメラ問屋の設定した輸出ブランドとしてのみ存在したものもありました。「Actinar」アクチナーなどもその一つでしょう。製品としては残っていても、その製造者の名は歴史の闇の中に埋もれています。 ・ 「E-LUCKY」というのは引き伸ばしレンズの著名なブランドですが、その販売元「藤本写真工業」の公表されている沿革を見ると、「引伸機LUCKY」のことは書かれていても、レンズ製造のことはまったく書かれていません。「富士写真フイルム」がOEM製造した引 き伸ばしレンズの存在と考え合せてみると、「藤本写真工業」はレンズ製造を行っておらず、もっぱら複数の中小レンズメーカーからOEM供給を受けていたのではないかと思われます。それ故に 、同じ焦点距離でも異なる鏡胴意匠の製品が存在するのではないでしょうか。 なお、同じOEM製造者であっても、作られた時代によって鏡胴意匠の変更も行われたようです。実際に製造した会社がどこなのか、どれくらいのバリエーションがあるのか、なかなか興味の種は尽きません。 ・ 「引き伸ばしレンズ」の鏡胴としては、絞り環が一つのものと、二つのものがあります。後者はプリセット絞りと呼ばれるもので、一つの絞り環で絞り値を設定し、もう一つの絞り環で絞り開放と設定絞り値の間を動かす 機構です。このため、一眼レフで一般撮影用途に使う場合、ピント合わせを明るい絞り開放で行い、撮影時には設定絞り値に素早く戻せるのです。従って、一般撮影に使用する場合、プリセット絞りの鏡胴の方が使い易いということになります。 近年の製品の中には、照明式の絞り表示部の位置を見易い位置に動かせるマウント浮動式の鏡胴のものがあります。これは引伸機で使うには便利なのでしょうが、カメラに取り付けて使う場合、絞り環を動かすつもりなのに絞り表示部の方を回してしまうという弊害があります。特に「EL-NIKKOR N」の鏡胴は絞り環と絞り表示部移動環の手触りが同じなので、ファインダーを覗いたままでの操作性がよろしくありません。やはり「FUJINAR-E」や「E-HEXANON」 などのプリセット絞り環が扱い易いと感じています。 また、照明式のものはマウント側から絞り表示部に電燈の光を当てる仕組みですから、一般撮影に使う場合、絞り表示窓からの光がマウント部からカメラ内に入り込むことになります。つまり、レンズ経由の光以外に撮像面を照らす光があるという状態になります。このことは、得られる画像のコントラストを低下させたり、光カプリを起こす虞があります。このような構造の引き伸ばしレンズの多くは、ちょっとした改造によりこれを防ぐことが可能になりますから、一般撮影専用とするなら是非とも行うべきです。 ところで、「引き伸ばしレンズ」にはアタッチメントが装備されていないものが多くあります。また、あっても今は供給されていないサイズのものもあります。これらを一般撮影で使う場合、フレアーを減少させるためには長めのフード使用が求められます。そのためにはフードを取り付ける 何らかの工夫が必要となります。 なお、プリセット絞りの場合、前方のプリセット絞り環にフィルター枠やステップアップリングを取り付けることで多くが解決できます。「FUJINAR-E」の新型や「E-HEXANON」の鏡胴には49mmフィルター枠が取り付け可能です。 ・ 絞り環の回転方向に就いては、開放から右回転のものと、左回転のものとがあり、これは同じメーカーでも混在していたのですが、NIKKORとFUJINONの最終機種では、右回転に統一されています。ROKKORも最終型は右回転に統一していますから、これが標準となったのでしょう。 ・ 1950年代に作られたと思われる「引き伸ばしレンズ」は、3枚玉トリプレット型のものが多くなっています。同時に多かったのが3群4枚玉テッサー型です。明るさを要求されなかったので、コーティング性能の劣っていた時期に、抜けの良い、コントラストの高い画像の得られる玉数の少なさが好まれたのでしょう。モノクロ・フィルムが対象ですから、ザイデル収差さえ満足な程度に補正出来ていれば事足りたのでしょうし、そのためには十分な補正力でした。 テッサー型やエルマー型は3群目が貼り合わせになっているので、接着面が光と熱で劣化して曇る弊害があります。これが生じると撮影レンズとしては使えなくなるので、その虞が無いトリプレット型の優位性が高まります。 ・ … 亭主所蔵の引き伸ばしレンズ名鑑 もくじ … ・ いつの間にか亭主の手元に来て溜まっている「引伸ばしレンズ」について、分かったことや、感じたことを記録しています。それらは、あくまで亭主の独断と偏見に基づくものということですから、それを信じるも疑うも、各々方、ご随意に… ・ 収蔵庫 @ Anastigmat Lucky 1:3.5 F=50mm (type D) E-Lucky Anastigmat 1:3.5 F=50mm(type A) E-LUCKY 4 ELEMENT 1:4.5/50(type C) E-LUCKY 4 ELEMENT 1:4.5/50(type C) E-Lucky Anastigmat 1:3.5 F=75mm(type A ?)旧鏡胴 E-Lucky ANASTIGMAT 1:3.5 F=75mm(type A ) E-LUCKY B 1:3.5/75(type A) E-LUCKY B 1:3.5/75(type B) E-LUCKY 4 ELEMENT 1:4.5/75(type C) E-LUCKY B 1:4.5/90(type B) ・ 収蔵庫 A EL-NIKKOR 1:4 f=50mm EL-NIKKOR 1:2.8 f=50mm EL-NIKKOR 50mm 1:2.8 N EL-NIKKOR 1:5.6 f=80mm EL-NIKKOR 80mm 1:5.6 N EL-NIKKOR 1:5.6 f=105mm EL-NIKKOR 105mm 1:5.6 N ・ 収蔵庫 B E-Rectar 1:3.5 f=5cm E-Rectar 1:4.5 f=9cm Lucky 1:3.5 f=7.5cm FUJINAR-E 1:4.5 f=5cm(E-Rectar型鏡胴) FUJINAR-E 1:4.5 f=5cm(旧鏡胴) FUJINAR-E 1:4.5 f=5cm(富士写真フイルム製) FUJINAR-E 1:4.5 f=5cm(富士写真光機製) FUJINAR-E 1:4.5 f=7.5cm(E-Rectar型鏡胴) FUJINAR-E 1:4.5 f=7.5cm(旧鏡胴) FUJINAR-E 1:4.5 f=7.5cm FUJINAR-E 1:4.5 f=9cm(旧鏡胴) FUJINAR-E 1:4.5 f=9cm FUJINAR-E 1:4.5 f=105mm FUJINON-ES 1:3.5/50 FUJINON-ES 1:4.5/75 FUJINON-ES 1:4.5/90 FUJINON-E 1:5.6/105 FUJINON-E 1:5.6 f=135mm FUJINON-EP 1:3.5/50 FUJINON-EX 1:2.8 f=50mm FUJINON-EX 1:5.6 f=105o ・ 収蔵庫 C Konitor 1:4.5 f=50mm E-HEXANON 1:3.5 f=50mm Hexar 1:3.5 f=75mm E-HEXANON 1:3.5 f=75mm ・ 収蔵庫 D R.S.K. C.P. Master 1:4.0 f=40mm Master Anastigmat 1:3.5 f=75mm R.S.K. C.P. Master 1:4.5 f=135mm ・ 収蔵庫 E C.E.ROKKOR 1:2.8 f=50mm E.ROKKOR 1:4.5 f=75mm旧 E.ROKKOR 1:4.5 f=75mm新 E.ROKKOR 1:4.5 f=75mm 新型 ・ 収蔵庫 F S Kominar-E 1:3.5 f=4.8cm ・ 収蔵庫 G E.Toko 1:3.5 f=7.5cm ・ 収蔵庫 H Zuiko C.1:4.5 f=7.5cm ・・ 引き伸ばしレンズをデジタル一眼レフやミラーレス一眼で使うための道具収蔵庫 ・ |
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収蔵庫 @ ここには、引伸機の有名ブランド「LUCKY」で知られる藤本写真工業の「引き伸ばしレンズ」を収めます。同社はレンズ製造を行っていなかったと思われ、そのすべてを複数のOEM製造者から供給されていたようです。そのため、鏡胴意匠には幾つかの特徴的なシリーズが存在します。亭主は現在 「A」から「D」までの4つのタイプに分類していますが、それがOEM製造者の実際の姿を示しているのかは不明です。 複数の製造者によるOEMなのでしょうが、どれも性能は優れています。たくさん中古市場に溢れていて安価なのですが、侮ってはいけません。一般撮影用として何ら不足はありません。 ・
類例が無く、素性のわからない品です。ごく初期のものと思われます。鏡胴は造りの良い総金属製で、なりは小さいのに、非常に重くなっています。 構造は各部の捻じ込みで組み立ててあります。飾銘板のある先端部を左回しに外すと絞り環が抜き取れます。2群目レンズも後群レンズもレンズホルダーに接着してあるので取り出せません。 ・
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(type B)の絞り環形状なのですが、マウント基部形状は(type C)です。レンズ構成も、飾銘板形状も、(type C)の特徴を備えています。 ・
(type C)の鏡胴なのですが、絞り羽根が10枚になっています。 ・
これが「E-LUCKY」の始祖かもしれません。焦点距離75mmというのは66判フィルムのプリントに適したものなので、当時のカメラの主力フォーマットであったそれのために世に出たのでしょう。1950年代前半以前に製造されたものと思われます。真鍮にクロームメッキで非常に重い鏡胴ですが、時の流れと使用による浸食を受けています。それもまた味の一つか… 分解は、前群レンズホルダーを外せば絞り環が抜き取れます。マウント基部にはクリック用の先丸真鍮ピンが対角上に2本設けてあります。他の機種の絞り開度に適合させられる汎用性の高い仕組みです。 しかし、これは後には1本に省略されました。残念… ・
同じトリプレット型(type A)鏡胴の「1:3.5 f=75mm」でも、「B」ではなく「Anastigmat」と表記された型です。こちらの方が古い型なのかもしれません。両者は絞り羽根枚数が異なっています。 ・
「E-LUCKY」は絞り環の回転方向が左回転のものが殆んどなのですが、これは右回転です。(type A)鏡胴の中でも特異です。 ・
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収蔵庫 A ここには、光学界の雄にして、帝国海軍が育てた日本光学(Nikon)の「引き伸ばしレンズ」を収めます。
日本光学の引き伸ばしレンズは絞り環の回転方向が右回転が殆んどなのですが、これは左回転です。 ・
オルソメター型の前群とダブルガウスの後群を組み合わせたハイブリット型のレンズ構成です。他に類例が無いので「エル・ニッコール型」と呼ばれています。 ・
ミノルタが「変形ダブルガウス型」の優秀な製品を上梓したので、それに対抗するためにレンズ構成を変えたという伝説があります。 ・
「ダブルマウント」という妙な鏡胴です。「M32.5・P=0.5」というマウントは、0番シャッターへの取付用です。蛇腹式中判カメラへの使用も前提としていたのでしょう。 ・
★Kマウントカメラのためのフォーカス装置:純正ヘリコイド接写リングK+マウントアダプターA オーバー・インフ0 ・
「ダブルマウント」という妙な鏡胴です。「M32.5・P=0.5」というマウントは、0番シャッターへの取付用です。蛇腹式中判カメラへの使用も前提としていたのでしょう。 しかし、シャッター羽根と干渉してしまうと思うので、納得いかない… ・
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収蔵庫 B ここには、「富士フイルム」で知られる世界に冠たるフィルムメーカーグループの「引き伸ばしレンズ」を収めます。1950年の製造開始から現在までに作られた機種は数多く、その全容が明らかになっているとは言い難いものがありますが、その足跡を少しでも拾い集められればと思っています。 ・
1950年に小田原工場で製造開始された始祖のシリーズです。後に開放値をF4.5にして「FUJINAR-E」と改称しています。 絞り環にクリックが入っています。 ・
1950年に小田原工場で製造開始された始祖のシリーズです。後に「FUJINAR-E」と改称しています。 絞り環にクリックは入っていません。初期の製造なのかもしれません。 ・
藤本写真工業の引伸機「LUCY」へバンドルするためにOEM製造したものと考えられます。 ・
「E-Recter」から名称変更した型です。全長、絞り開放値、絞り羽根枚数及び絞り環形状など、若干の意匠変更を行って非常に小さくなっています。 前群レンズホルダーを左回しに外すと、単列ピント環は前方に抜き取れます。その際には、マウント基部との間にクリック用鋼球が入っているので、飛ばさないように注意が必要です。後群はマウント基部に挿入してソケットで押さえてありますから、レンズだけ取り出せます。 ・
富士フイルムグループの「引き伸ばしレンズ」としては、二代目の鏡胴意匠です。プリセット絞りですが、絞り値設定は横に突き出したノブを引いて回します。このノブ部分でロックしているのです。 分解は、まず前群レンズホルダーを左回しに外します。これで前列絞り環が後列絞り環と共に抜き取れます。この辺の構造は、次の三代目鏡胴とはまったく異なっていますから、いきなり前列絞り環を回そうとしてはいけません。破損の恐れがあります。 プリセット及びクリックの仕組みは極めて素朴です。初期の鏡胴構造設計の発想過程を知ることの出来る良い資料です。 ・
「FUJNAR-E」の三代目最終型鏡胴ですが、1957年以前、まだ富士写真フイルム小田原工場で製造していた時期の品です。 分解は前列絞り環を左回しに外します。その後、前群レンズホルダーを左回しに外します。後群は円盤状レンズホルダーに接着してありますので、レンズだけを取り出すことは困難です。バルサム切れは起き難いようですが、もし起きても修理は困難です。しかし、レンズ群の分解清掃は容易です。 ・
「FUJNAR-E」の三代目最終型鏡胴ですが、1957年以降、レンズ製造設備のすべてと共に製造を「富士写真光機」へ移した後の品です。 ・
「E-Rectar」からの機種名変更ですが、基本的な鏡胴意匠は類似しているものの、絞り羽根枚数や絞り環回転方向、開放F値など、まったく異なった機種に変更されています。 ・
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途中で焦点距離表記を7.5cmから75mmへと変更しています。また、前列絞り環の色が茶色のものも作られました。黒色との違いの理由は不明です。 ・
富士フイルムグループの「引き伸ばしレンズ」としては、二代目の鏡胴意匠です。 プリセット絞りですが、絞り値設定は横に突き出したノブを引いて回します。このノブ部分でロックしているのです。 ・
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「FUJINAR-E」の後継機種です。 鏡胴意匠は「FUJINON-E」と同等のアルミ鏡胴となりました。違いは絞り環外周のゴム環の形状と材質です。この品の方は劣化を免れていますが、本家「FUJINON-E」やその後継「FUJINON-EP」の 灰色ゴム環は劣化が酷くて、健全なものは殆んど存在していないと思われます。 この「FUJINON-E」系統の鏡胴は、絞り環の回転方向が左回転です。「FUJINON-EX」になると右回転に戻されますから、その選択の哲学が分からない… ・
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富士写真光機が作った初めてのテッサー型以外の引き伸ばしレンズです。 光軸の長いオルソメター型の故か、マウントには光路9.5mmの下駄が履かせてあり、それを外すとフランジフォーカスは103mmとなります。 ・
シリーズの他型と異なり、下駄リングは付いていません。レンズ径が大きくなって、その余地が無くなったためでしょう。 飾銘板の焦点距離表記方法等が「FUJINON-EP」時代のものになっています。過渡期の製造ということでしょう。 ・
オルソメター型「FUJINON-E」の後継機です。テッサー型「FUJINAR-E」が鏡胴意匠等を変更して「FUJINON-ES」になったときに 、鏡胴意匠が類似のこれも名称変更したようです。違いは飾銘板の焦点距離表記方法だけでしょう。「P」というのはプレミアムということかもしれません。「S」は当然スタンダード… レンズ群の長いオルソメター型の故か、マウントには光路7mmの下駄が履かせてあり、それを外すとフランジフォーカスは44mmとなって、一般撮影時のヘリコイド行程に余裕が出来ます。 ・
ほぼプラスチック製の鏡胴となった型で、これが「富士写真光機」製の「引き伸ばしレンズ」最終形です。マウント浮動式なので、任意の方向に照明式絞り表示窓を向けられます。 アタッチメント部が外せ、その取り付けネジは「M39 P=1/26inch」なので、レンズ逆付けがアダプター無しで行えます。超接写時には便利な仕掛です。 ・
オートベローズで無限遠撮影するのに必要な焦点距離です。 アタッチメント部が外せ、その取り付けネジは「M39 P=1/26inch」なので、レンズ逆付けがアダプター無しで行えます。超接写時には便利な仕掛です。 ・ |
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収蔵庫 C ここには、小西六写真工業(コニカ)の「引き伸ばしレンズ」を収めます。初期においては、3枚玉は「Konitor」、4枚玉には「Hexar」と命名していたようです。 初期の鏡胴意匠は絞り環が鏡胴全体を覆う樽型で、かなり特異な形状です。クリックの仕組みが素朴不器用そのもので、笑いを誘われずにはいられません。 ・
1953年に発売になったベークライト・ボディのスプリング・カメラ「Konillete」に付いていたレンズを流用して作ったのではないかと思われます。 「Konitor」というのは「コニトール」と読めばいいのでしょうか… 桶型鏡胴意匠は何とも素朴そのものです。絞り値クリックの仕掛けは噴飯物… ・
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真鍮にメッキの鏡胴で、流れ過ぎて行った時代の洗礼を色濃く受けています。全体を覆う意匠の絞り環で、そのクリック機構の素朴さなど、このようなものもあったという記念品です。 鏡胴意匠としては2代目にあたるのではないかと考えられます。絞り値表示窓を絞り環を抉って設けています。その設け方が苦笑もの… セミ判(645)スプリング・カメラ「Pearl」シリーズに付いていたレンズを流用して作ったのではないかと思われます。1955年頃のことでしょう。 ・
3群4枚構成ですが、凸凹・(凹凸)のテッサー型ではなく、凸・凹(凹凸)のエルマー型です。両者は絞りの位置が違うだけです。 ・ |
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収蔵庫 D ここには、スライド・プロジェクター「マスター」で知られた理科学精機の「引き伸ばしレンズ」を収めます。この会社の実態はほとんど分かっていません。鏡胴意匠が全て異なっているので、 別の会社によるOEM製造なのかもしれません。
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なかなか風格のある鏡胴です。絞り開放では軸上色収差や球面収差が目立ちますが、1:5.6以上に絞れば結構優秀です。 ・
亭主所蔵の引き伸ばしレンズの中で最長の焦点距離です。このぐらいになるとレンズ口径が大きくなり、いかにもバレルレンズという雰囲気になります。ライカLマウントとしては、限度に近い口径です。 ・ |
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収蔵庫 E ここには、千代田光学(ミノルタ)の「引き伸ばしレンズ」を収めます。 ・
この品が1970年代前半に上梓されたことで、日本光学が同級のレンズ構成を変更したという「伝説」があります。 国産の「引き伸ばしレンズ」で最初にダブルガウス型を採用したのだと思います。 外に無い機能として、絞り環を前方に引くとクリックが解除されます。絞り値表示窓が照明式なので、マウント部を改造しないと、逆入光によってコントラストが低下する虞があります。 ・
各部を小ビスで固定するなど、手間のかかる鏡胴構造です。 ・
前群レンズホルダーが黒染めになっています。 鏡胴構造全体も上の品とは全く異なっています。同名称ですが、シリアルIDからすると、こちらの方が新しいものだと思います。レンズ構成は同じ様に見えますが、試写の印象では、線の描写が少し太めかもしれません。 社名が「千代田光学」から「ミノルタカメラ」に変わる前の製品です。 ・
1962年に社名を「ミノルタカメラ」へと変更した後の製品です。旧型の大砲型意匠から樽型意匠へと変更しています。絞り環の回転方向も変えました。 同一シリーズとして外に焦点距離30mm、50mm、105mmがあります。 絞り羽根8枚ですが、羽根の形状が特殊で、F8とF11の時には稜が尖ります。輝点ボケに癖が出るかもしれません。 ・ |
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収蔵庫 F ここには、日東光学の「引き伸ばしレンズ」を収めます。 日東光学というのは、日本光学を始めとして多くのカメラメーカーにレンズを供給していたメーカーで、「引き伸ばしレンズ」もOEM製造していたのではないかと思われます。和製ズミクロンと称揚される「XR-RIKENON 1:2 f=50mm」シリーズも、少なくとも後期のものは日東光学製という「噂」があります。 ・
3群目貼り合せ玉がバルサム劣化により濁っているので、修理待ちの静態保存中… ・ |
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収蔵庫 G ここには、東京光学の「引き伸ばしレンズ」を収めます。 この会社は、戦前には軍需品を作っていて、海軍用が主力の日本光学に対して陸軍用が主力だったようです。「RE Super」で名を馳せた自動絞り開放測光一眼レフの先駆者だったのですが、口径が小さな「エキザクタマウント」を採用したのが祟って、カメラ製造からは手を引かざるを得なくなったとのことです。レンズユニットを中小のカメラメーカーに供給していました。
「PRIMOFLEX WA」という東京光学製造・大沢商会販売の二眼レフに、このレンズ名のものが見られます。同じ焦点距離、明るさですから、同じ光学系を使っているのかもしれません。当時、トリプレット型には「Toko」銘を付けていたふしがあります。「シムラー」銘はエルマー型、「トプコール」銘はテッサー型だったようですが、1954年からは「トプコール」に統一した模様… なお、二眼レフに付けた「Toko」は、名レンズとの評価があるようです。 定点撮影の結果は、少し絞れば優秀で、線が細い描写をします。 ちなみに、エルマー型というのは1群目と2群目の間に絞りがあるもので、テッサー型は2群目と3群目の間に絞りがあるものです。3群目が凹凸の貼り合わせであるのは同じです。後にライカはテッサー型にもエルマー銘を与えていますから、厳密な区分とは言えません。 ・ |
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収蔵庫 H ここには、オリンパス光学工業の「引き伸ばしレンズ」を収めます。 同社は1949年に、それまでの高千穂光学工業から改名しています。 同社は昭和11年にテッサー型「Zuiko」レンズを開発してセミ判スプリングカメラ製造を開始しました。戦中には光学兵器を作り、戦後はセミ判スプリングカメラから再開しました。そのブローニー判フィルムからプリントするための引き伸ばしレンズなのでしょう。 ・
少し絞ると、非常に解像力が上がります。最良クラスだと思います。昭和11年の開発だと思われますが、傑作であることは間違いない… ・ |
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収蔵庫 ここには、の「引き伸ばしレンズ」を収めます。 ・
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■ 引き伸ばしレンズをデジタル一眼レフやミラーレス一眼で使うための道具収蔵庫 ・・ 引き伸ばしレンズは、撮影レンズとしても優秀です。絞り装置しか付いていないので、適当なフォーカス装置を組み合わせることと、カメラに取り付けるためにマウントを変換するアダプターが必要です。 また、無限遠撮影のためには「光路長」の調整が必要で、フォーカス装置の限られた繰出量を有効に使用するためには、この調整が不可欠です。そのための「道具」も揃えなければなりません。 「道具」というのは、優秀な物を揃えるのが便利に使うためには役に立ちます。そんな品々をここでは収めました。 ・・ 引き伸ばしレンズには、それぞれ固有の「フランジ・フォーカス」があります。これは無限遠時におけるフランジ面から焦点面までの距離で、カメラ側の「フランジバック」値を差し引いた数値がプラスになり、なおかつ、フォーカス装置やマウントアダプター等に必要な光路長が確保できることが無限遠撮影には必要なことです。これがマイナスになるようだと、無限遠には焦点を結ばないことになり、接写でしか使えないということになります。そのため、ミラーボックスがあるためにフランジバック値が大きい一眼レフでは、焦点距離75mm以上の引伸ばしレンズしか無限遠からの一般撮影には使えなかったのです。 ところが、ミラーレス一眼となると、フランジバック値が18mm前後と短くなったために、最も種類の多い焦点距離50mm以下の引き伸ばしレンズでの一般撮影が可能になったのです。それらには135判のものも現れたので、焦点距離50mmが標準レンズとしての画角で使えるようになり、撮影の幅が大きく広がったと言えます。楽しみが膨らんだのです。 ・ 最も重要な「道具」としてフォーカス装置があります。既存のものとしては「ベローズ装置」や「ヘリコイド接写リング」があります。これらは本来接写用として用意されていたもので、これを活用する方法が最も一般的です。 「BORG」社から出ているM42ヘリコイドシステムだと、3種類の最小光路長のヘリコイドが用意されています。「M42マウント」は国際標準マウントだったものですから、これに対する各社カメラマウントへの変換が可能です。これをフォーカス装置に採用するのが汎用性を高めることとなります。 旭光学工業(PENTAX)からも、以前、Sマウントの「ヘリコイド接写リング」が売られていました。これも中古市場で調達可能です。 これらM42マウントのヘリコイド装置に引き伸ばしレンズを取り付けるためには、「ライカLマウント」に変換するマウントアダプターが必要です。PENTAX純正の品以外にも、「BORG」のものや、他社製のものなど豊富に流通しています。光路の調整のためにも、色々と取り揃えるの が有効かと… 焦点距離が長めの引き伸ばしレンズは、ヘリコイドだと、単品で必要な光路長を確保することが難しくなります。複数組み合わせるなどの方法がありますが、そこで役に立つのが「ベローズ装置」です。これも「M42マウント」のものを利用することにより、システムとしての汎用性、親和性が高くなります。 ・
・ 「BORG」の製品は、公表値が微妙に実測と異なっています。上表数値はノギスを用いた実測です。目盛り精度は5/100mmです。 上記部品を組み合わせてフォーカス装置を作る場合、無限遠に対してどうしても若干のオーバーインフが生じてしまいます。これを0.2mm単位で調整する方法があります。それは、書類などを挟む事務用品「クリアファイル」を使用して「ドーナツリング」を作るのです。これは厚さが0.2mmなので、上記部品の間に数枚挟むことで調整が可能になるのです。材質はポリプロピレンなので圧縮耐性も高く、捻じ込んで締め付けるぐらいでは変化しません。カッターで容易に切れるので加工性は良好です。クリアファイルには0.3mm厚の製品も存在するようです。それで作るとスペーサーとしての調整精度が上がり、オーバーインフ無しと出来る可能性が高まります。でも、微量のオーバーインフは有ると便利ですが… また、1mm厚のアルミ板をドーナツリングに加工する方法もあります。Kマウント外径に合わせて作ると、フランジレスの純正「マウントアダプターK」をマウント外径の小さな接写リング等で使うときにも遮光板とすることが出来ます。1枚作っておくと何かと便利です。コンパス、電気ドリル、ニッパ及び甲丸ヤスリで容易に作れます。
なお、引き伸ばしレンズにはマウント部に金属製スペーサーが付属していることがあります。これはほとんどが厚さ0.3mmなので、これを用いて調整することも出来ます。 ・ |
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存在が知られている国産「引き伸ばしレンズ」たち ・・ MACRO ACTINAR 1:4.5 f=90mm
・ E-OFNAR 1:3.5 f=5cm(オフナ・大船機械製作所:富岡光学大船工場の設備・人員を以って起業)
・ IFOCO 1:3.5 F=50mm
・ Dia Anastigmat 1:4.5 F=50mm
・ OMICRON-EL 1:2.8/50
・ ITOREX 1:4.5 f=50mm(伊藤光学製作所?)
・ Kominar-E 1:3.5 f=7.5cm(日東光学)
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