PENTAXデジタル一眼レフで使える

非純正Kマウントレンズ収蔵庫

 

… 前書き …

 PENTAXがKマウントを制定したときに、その規格を広く公開したために、Kマウントを正規採用したカメラ会社が幾つもあります。それらに使われていた交換レンズは同じ規格なので、PENTAXのデジタル一眼レフで使えます。

 また、レンズ専業メーカーの中には、非公開となったKAマウント以降の互換交換レンズを作っているものがあり、それらも当然使えます。

 現在のPENTAXデジタル一眼レフは、PENTAX純正のレンズ以外では使えない機能も若干はありますが、露出を決定して撮影するという基本的な機能については、アダプター経由を含めて新旧を問わず、取り付けられる限りのどの他社製交換レンズでも支障なく使えるという便利さがあります。

… 目次 …

☆☆  XR RIKENON 1:2 50mm 初期型 ☆☆

☆☆  SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX  ☆☆

☆☆  XR RIKENON 1:2 50mm 初期型 ☆☆

主 要 諸 元

最短時全長(マウント面→フィルター取付枠先端) 39.5o
最長時全長(マウント面→先端) 48o
最短撮影距離 0.45m
最大外径 (ピント環部) 63o
重量 190g
フィルター径  52o
絞り羽根枚数 6枚
最少絞り値 F16
レンズ構成 5群6枚 (前3群3枚 絞り 後2群3枚) 変形ダブルガウス

 ※左図鏡胴は晩期型のもの

開放F値 1:2
焦点距離 f = 50o
画角 度 (135フォーマット時)
   
販売価格(1978年) 9000円

 これは、いわゆる標準レンズというカテゴリーに位置付けられる交換レンズで、レンズ構成は典型的な変形ダブルガウスです。

 1978年に価格破壊とも言える39.8K円で販売された「XR500」という一眼レフカメラのセットレンズとして作られました。これを作ったリコーという会社は、昔からPENTAXとは良好な関係を続けていて、これにKマウントを採用したのも、そんな関係があったからのようです。

 リコーは交換レンズの製造工場を持っておらず、複数の光学会社からOEM供給を受けていました。この交換レンズは、少なくとも光学系は富岡光学のものという「噂」があります。晩期型は日東光学が製造という「噂」もあります。和製ズミクロンという呼称を得るほど絞り開放から解像力が優れています。

 絞り環とピント環の回転方向はPENTAXのものと同じなので、違和感無く使えます。販売時は安価でしたが、決して手抜きを感じさせることのない、端正で高品位の鏡胴です。

 この個体は1979年8月の製造であることが、内部絞りユニットカムリングに押印されているスタンプ日付から分かります。鏡胴下部に刻印されている製造番号に白く色入れがされています。これは 9月に製造されたものは既に色入れされなくなりました。その1カ月後の製造のものとの製造番号の差が製造数をそのまま示しているとすると、この頃には1ヶ月に2万5千台も製造されていたということになります。6桁の製造番号の頭の桁数字は1から始まったのでしょうから、生産総数は20万台以上ということになりそうです。

 なお、これの後継として「L」の付いた製品がありますが、鏡胴にプラスチックを多用して軽量化していますし、絞り機構を簡素化してコストを削っています。

 また、その後、全長を大幅に短縮した製品が作られ、それはマウント金具と絞り関係以外のほとんどをプラスチックにしたもので、レンズ名の頭の「XR」が取られています。これらもレンズ構成は同一です。

○分解整備について

 この交換レンズの鏡胴は作りがシンプルなので分解組立が容易です。素人整備にとっては敷居が低いと言えるでしょう。必要な道具は、マイナスの精密型ドライバーセットとプラスの普通型握り0番ドライバー、丸型先端のカニ目回しレンチぐらいです。

 鏡胴の分解は、レンズを繰出してフィルター取付枠周囲側面3か所のマイナス芋ビスを緩めることから始めます。これでフィルター取付枠が外せます。芋ビスは0.5mm程度頭が出るくらい緩めるだけにしましょう。外してしまうと、再び取り付けるときに面倒ですし、紛失の虞もあります。製造組立時にレンズホルダーの緩み止めとして弱い接着剤を少量使用していますから、それが付着して、芋ビスを緩めてもフィルター取付枠が動かないことがあります。そんな時はフィルター取付枠を掴み、少し力を入れて捩じれば外れます。

  この構造のメリットは、落下事故などでフィルター取付枠が歪んだりしても分解が可能なことと、飾銘板の文字位置を任意に選べることにあります。捻じ込み式では、なかなかままなりません。

 また、ヘリコイド装置を他の鏡胴と併用するのも容易になります。複数の製品にして供給することの多いOEM生産に向いた構造と言えるでしょう。

 PENTAXの鏡胴のようにフィルター取付枠を正面からビス止めする方法だと、ヘリコイド内筒にフランジ部を設けなければなりません。これだと旋盤加工だけで作るのは材料や工程が余計に必要です。ちなみに、PENTAXの鏡胴は素材をダイキャストで作っているようです。

 フィルター取付枠はアルミですが、これに接着されている深い擂鉢状の飾銘板はプラスチックです。あまり深いフードを使わなくても画角外からの遮光性を確保できる形状です。ただし、前端レンズの曲率が大きいので、その周辺部が拭き難くいのが難点です。

 また、素材の影響か、コーン部はかなり光を乱反射するので、これに艶消し黒を塗装するなどすると逆光時のコントラスト低下を押さえることが出来るかもしれません。

 なお、飾銘板は前から押し込んで接着してあるので、後から押せば容易に剥がれてしまいます。製造時に文字の位置の向きを誤って接着している個体もあるようです。これは手内職の仕事だったのかもしれません。1個貼って1円 、2円とか…

 ヘリコイド内筒に捻じ込んである前3群のレンズホルダーは、カニ目レンチで左回しで外せます。上右の画像は取り外したレンズホルダーの裏側です。これも緩み止め接着剤が塗布してありますから、無水エタノールで溶かしてから作業しましょう。

  レンズ押さえカニ目リングを外せば1群目レンズ玉は外せます。その下のスペーサーリングを取り除けば2群目レンズ玉は外せます。3群目はレンズホルダー後部から挿入してかしめてありますから、取り出しは不可能です。組立後、艶消し塗料で厚く小端塗りをしています。これはレンズホルダーから外さなくてもレンズ前後面を整備できますが、この小端塗りは無水エタノールに溶けるので、清掃には使用厳禁です。

 ピント環は、ヘリコイド中筒に3本のナベ頭ビスの頭で押さえ付けてあります。上左画像のピント環とヘリコイド内筒の間に見えるナベ頭ビス3本を緩めるとピント環は自由に回転するようになりますから、真鍮のヘリコイド中筒を直接回して無限遠を出し、その位置でピント環の無限遠と零指標を合わせて固定することで調整します。ナベ頭ビス3本を外せばピント環は外せます。この辺の構造はPENTAXと同一です。ヘリコイド中筒にはドライバーなどで直接回すための四角い切欠きが設けてあります。

 後方からのアクセスとしては、マウント金具を外します。4本の皿ビスで止めてありますので、これを外します。中心の黒いプラ円盤は3本の皿ビスでマウント金具に取り付けてありますが、整備のためになら外す必要はありません。 これは鏡胴内部を防護するだけの役割で、機械的な機能はまったくありません。

 なお、本家PENTAXのマウント金具は5本の皿ビスで止めています。1本少ない分強度は落ちるのでしょうが、3本で止めている交換レンズも存在するので、それよりは増しということでしょうか。この4本の皿ビスの位置は、1本だけPENTAXの5本の位置と同じ場所があります。部品流用のためにネジ穴を開けるということも考えられますが、この交換レンズの場合、2ヶ所がネジ穴を開けられないマウント台座形状になっているので、強度的に問題ありです。

 マウント金具を外すと、絞り環が後方に抜き取れます。零指標の下に板バネで押されているクリック用鋼球が入っていますから、飛ばして無くさないように注意が必要です。零指標に左手親指の先をあてがっておいて右手で絞り環を抜くと鋼球の保持が容易です。組立の時には、絞り指標は両端のいずれかにした方が、絞り環の内側溝に挿入して連結するリンクの位置が分かり易いと思います。 亭主は最小絞り位置で行うことが常です。その理由は、Kマウントは最小絞りがデフォルトだからです。

 絞り環のクリックは、絞り値1段ごとです。手抜きのようですが、半段ごとになっているより微妙な中間設定がやり易いというメリットがあります。コスト削減のための工作の手抜きというより、設計思想の違いというべきでしょう。この1段ごとの移動量は、Kマウント規格の一部になっています。カメラ本体に連結する「絞り位置伝達ピン」が1段ごとに同じ角度だけ移動するのです。これが正確でないと開放測光が機能しません。

 最小絞り開度の微調節は、絞り環位置を絞り装置に伝達するレバーをリンクリングへ取り付ける位置をずらすことで行います。このレバーは2本のナベ頭ビスで取り付けてあり、取付穴が楕円になっているので調整が可能なのです。 もし中間段の絞り開度精度を調整する必要があるのなら、直接カム板のプロフィルを削るしかありません。

 上左画像の「絞り環」や「絞り作動リンク」などを取り付けている部分は、「絞り環」を後方に抜くとあらわれる3本の皿ビスでヘリコイド外筒に止めてあります。この画像は裏返した状態です。この0番プラス皿ビスには緩み止め剤が用いられていますから、無水エタノールを塗布してから作業すると回し易くなります。非常に回り難いので、確実に作業するために溝の摩耗したドライバーは使わないようにしましょう。市販のコニシ「ねじはずし」を併用すると強力に回せます。

 ヘリコイド装置は、「内筒」がアルミ、「中筒」が真鍮、「外筒」がアルミの標準的な構造です。アルミ部分には表面加工がされていません。対面する2ヶ所の「内筒回転止め」は真鍮です。この「内筒回転止め」は内筒に2本の皿ビスで止めてあります。これを外せばヘリコイド装置は分解できます。

 内筒と中筒は粗いピッチの順ネジ、中筒と外筒は微細なピッチの逆ネジで結合しています。

 自動絞りのためのカメラ本体との連結レバーは、その基部が絞りリンクにピン接合してあって、バネで保持されているスイング構造です。これはPENTAXのKシリーズ標準レンズのものと近い手の込んだ構造で、随分とコストがかかるものです。PENTAXの場合、次のMシリーズからは、よりコストの低い別の簡便な方法に変更しています。このような構造としている理由は、大型の絞り羽根がレリーズ時の瞬間的な急作動時に暴れないようにする緩衝のためです。

 ユニットになっている絞り装置は、ヘリコイド内筒裏側から3本の皿ビスを外すことで前方へ抜き取れます。絞り羽根は6枚です。絞り開度は「1:16」までですが、ユニットに組み込まれているカムなどは、 「1:22」まで対応可能になっています。絞り環とリンクを連結するピンのガイドを削る改造でそれを可能にできます。これも多機種に対応前提のOEM製造らしい柔軟構造です。

 絞り値1段ごとに等間隔な絞り環の移動を不等間隔の絞り開度に変換するためのカム装置は絞り装置の前側にあり、ユニットである絞り装置に組み込まれています。このへんが、それが後側に独立してあるPENTAXの鏡胴と異なっている点で、あまり合理的ではありません。この設計は、自動絞りが開発される以前の、絞り環が鏡胴前部にあったころの構造を引きずっているのかもしれません。そのころなら、この構造の方が合理的なのですから…

 自動絞りのための摺動レバーが絞りユニット背面に付いています。これをレリーズ時に自動絞り連結レバーが押すことで絞りを開閉する仕組みです。

 もし絞り羽根に油が回っていて作動が粘る場合は、絞りユニットを分解すると絞り羽根の再組み立てが難儀ですから、ユニットごとベンジンの中に浸けて振り洗いをするのが良い方法です。絞り羽根を動かしながらドライヤーの冷風をあてて完全に乾燥します。絞り羽根の間に黒鉛粉末などの固体潤滑剤を微量塗布するのが良いでしょう。鉛筆の芯を擂り潰して代用するという方法もあります。リンク回転部にのみ綿棒などでごく微量の注油を行いましょう。

 しかし、構造上、絞り羽根に油脂分が付くことは、通常の使用の中では起こり得ないことです。構造を無知な者によって故意に注油が行われたことが疑われます。

  ヘリコイド内筒後部に捻じ込まれている後2群のレンズホルダーは、外周ソケット部を握って左回しにすることで外せます。回り止め接着剤を塗布しているレンズホルダー本体と後部ソケット 部を分離することで、最後部のレンズ玉は取り出せます。しかし、その前の貼り合せ玉は、前群レンズホルダー内の3枚目と同じく、カシメてあるのでレンズホルダーから取り出せず、もしバルサム切れしている場合は、その修理が出来ません。前後面の清掃なら可能ですが…

※こぼれ話

 自動絞り機構を含めて、絞り羽根を作動させるメカニズムは、交換レンズ製造会社によって様々な手法が行われています。PENTAXの場合は、絞り装置より後方にほとんどの作動機構を置いていますが、「XR RIKENON 1:2 50mm」初期型は前後に分散されています。交換レンズ鏡胴の発達の過程で順次追加されてきた機構がそのまま使われているということかもしれません。新しいマウントのために新規に一から設計し直したものではないということがうかがえます。

 交換レンズは当初実絞りで使うものでした。その時代は、絞り開度の操作のための「絞り環」は繰出されるレンズ先端部に設けるのが合理的でしたから、ほとんどの製品がそうなっていました。

 また、「絞り環」の1段ごとの移動量も、1段ごとの絞り開度に従った不均等のものだったものから、操作し易い均等移動のものに改められました。このために「絞り環」と絞り羽根駆動装置の間に、両者で異なる移動量の変換のためのカム装置が必要となりました。

 次に自動絞りが開発されると、カメラ側から絞り羽根を操作する必要があるため、繰出されない鏡胴後部と絞り装置のある繰出される鏡胴前部を連絡するための摺動するリンクが必要となり、これを組み込みました。

 さらに開放測光が採用されると、「絞り環」の位置情報をカメラ側に伝達することが必要になり、「絞り環」はマウントに近い位置に置くことが主流になりました。

 この「XR RIKENON 1:2 50mm」初期型の鏡胴は、上記発達過程にしたがって順次改良されてきたことがうかがえる構造となっています。技術革新があったときに一から設計し直したという構造ではないことが明らかです。これは、時に応じて、供給する相手に応じて 、その都度必要な改造を施してOEM供給してきたものらしい構造であると感じました。

 特に自動絞りの機構は、カメラ会社によってカメラとの連結の方法が異なっています。それらに柔軟に対応するために便利な方法が取られているので、かなり回りくどい作動経路になっています。これを専用として合理化するだけでもコストを削れそうだと感じるのは亭主だけではなかったようで、販売が伸びるに従ってどんどん合理化を進めて行ったことは、その後の歴史が物語っています。

 この交換レンズの絞りリンクは、カメラとの自動絞り連結レバーを外すことが可能です。つまり、実絞りにすることができるのです。

 PENTAXの純正標準レンズの絞りリンクは、自動絞り連結レバーを切り取る以外にそれが出来ないのでが、これはビス1本外すだけで出来ます。外すだけですから、元のように取り付けることも可能です。PENTAXのデジタル一眼レフに取り付けてAvモードで使うためには、実絞りも便利なものです。

 このレンズの飾銘板はフィルター取付枠に接着されています。フィルター取付枠は3か所の芋ビスでヘリコイド内筒に固定されていますから、飾銘板の文字位置は自由に選べます。製造時本来の文字位置がどれであるのかは諸説があるようですが、亭主は下の写真の位置であると思っています。

 この位置は、3か所の芋ビスのうち1本が真上に来る配置です。

☆☆  SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX  ☆☆

主 要 諸 元

最短時全長(マウント面→フィルター取付枠先端) 66.5o
最長時全長(マウント面→先端) 102o
最短撮影距離 0.188m
最大外径 (ピント環部) 71.4o
重量 320g
フィルター径  55o
絞り羽根枚数 7枚
最少絞り値 F32
レンズ構成 9群10枚 (前4群4枚 絞り 後5群6枚)

開放F値 1:2.8
焦点距離 f = 50o
画角 46.8度 (135フォーマット時)
   
販売価格(1992年) 37,000円

 これは、いわゆる標準マクロレンズというカテゴリーに位置付けられる交換レンズです。デジタル一眼レフ対応の現行DGと光学構成は同一で、変形ダブルガウスの前後にレンズを追加した構成です。フローティングシステムを取っていて、等倍までの接写ができます。後5群6枚の内、最後部の2群2枚が他より少なく繰出されて、接写時の性能を向上させています。変形ダブルガウスの後にフローティング用レンズ群を追加したためにバックフォーカスが不足したのを、前に凹レンズを置くことでレトロフォーカスとしてバックフォーカスを稼いだのでしょう。鏡胴にリミッタースイッチを設けているので、通常撮影時にはマクロ域まで作動しないようにできます。

 シグマのKAfマウントはKAマウント互換ではないので、KAマウントカメラやリヤコンバータAを併用すると正常なAEができません。

 得られる画像は非常に青味が強いものです。PENTAX純正が暖色傾向なので、特にそう感じるのかも…

 ピント環の回転方向がPENTAXとは逆なので、MF時は違和感があります。