トランジスタ


はじめに

トランジスタは電流を増幅させる素子です(電圧ではない)

大きく2種類に分けられてNPN型とPNP型がある

また接地方式というのがあり(3本のうちどれを共通線にするか)

エミッタ接地コレクタ接地ベース接地の3通りがある

 

性能 (カッコ内の数値は2SC1815の定格)

・コレクターベース間電圧VCBO:コレクタとベース間にかけても良い最大電圧(60V)壊れる

 壊れると書いたところは厳守する必要があり一瞬でも超えれば壊れます(以下)

 どの数値も最大値の1/2以下に抑えた方が良いです

 コレクターベース間電圧などのかけても良い系は電源電圧の倍あれば問題ありません

・コレクターエミッタ間電圧VCEO:コレクターエミッタ間にかけても良い最大電圧(50V)壊れる

 同じく最大値の1/2以下で使用した方が良い

・エミッターベース間電圧VEBO:エミッターベース間にかけても良い最大電圧(5V)壊れる

 VEBOは普通の動作ならありえない方向に電圧が掛かった場合で

 間違えて繋げた場合問題になります(VBEとは別物)

・コレクタ電流IC:コレクタに流せる最大電流(150mA)壊れる

 コレクタ電流は最大電流の1/2以下で使用した方が良いです

 またコレクタ電流はコレクタに流せる最大値であって流し続けられる最大値ではない

 もし流し続けた場合コレクタ損失の方で問題になる(コレクタ損失とは発熱量の限界値)

 一般的に電流をあまり必要としない場合コレクタ電流は数mA ベース電流は数十μA

 などが一般的な使われ方です(この状態でも問題なく動く)

・ベース電流IB:ベースに流せる最大電流(50mA)壊れる

 ベース電流はあくまで最大値で一般的にはICの1/10以下で使用する

 ベース電流は普通に使っていれば多くて数mA程度(あまり多いのはどこかおかしい)

 ちなみにベース電流はICの流れる量で決まると思って良い(IC/hfe=IB)

・コレクタ損失PC:PC=VCE*IC トランジスタが損失できる最大値(400mW)壊れる

 コレクタ損失は放熱板が有るか無いかや周辺温度で最大値が変わる

・接合温度TJ:トランジスタ内部の接合部の最大温度(125℃)壊れる

 接合温度はコレクタ損失の計算で決まる(どちらも熱くなら無いよう計算する)

 2SC1815でエミッタ接地で電源5Vとするとコレクタ電流は最高で40mA以下で

 使用しないと壊れるかもしれません(温度環境にもよる)

・直流電流増幅率hfe:直流におけるベースとコレクタの電流の割合(70〜700)バラバラ

 hfeはIBとICとでの増幅比率ですが 一定しないしそもそも個々の素子毎に違います

 これは製造工程でどうしてもそうなってしまうので (とりあえず作ってからランク別に分けてる)

 トランジスタをややこしくしてる1つの要素でもある;(hfeの差は回路の工夫で補う)

 hfeが変わる要素として 個体差 温度 コレクタ電流 があり

 hfeの個体差が無視できるような設計をします(設計で○○倍など決める)

 温度によってhfeは変化しますが(2SC1815では25℃でhfe=150として100℃でhfe=200 -25℃でhfe=100)

 これも設計の中で無視できるよう工夫します

 コレクタ電流によるhfeの変化は2SC1815ではあまり変化しませんがトランジスタによって異なります

・コレクターエミッタ間飽和電圧VCE(sat):完全にON状態での電圧降下(0.1V)

 コレクターエミッタ間飽和電圧は飽和状態(ベース電流がいっぱい)でのVce間の電圧差は0Vではなく

 0.1V〜1Vなどトランジスタによって異なり(エミッタ接地の場合飽和電圧1Vの場合電源5Vの場合4Vになる)

 特にスイッチングなどでは気になる項目です

・ トランジション周波数FT:高周波特性を示す指標の1つ(80MHz)

 トランジション周波数はそのトランジスタが増幅出来なくなる最大値(この値では動作しない)

 さらに実際に増幅に使える周波数は 動作周波数=FT/hfeとなる

 ちなみにFTはコレクタ電流で全く違う値になり コレクタ電流がある程度多いとFTも高くなる

 (2SC1815の80MHzとはあくまで最低値で(IC=1mA以下)IC=30mAの時FTは500MHzにもなる)

・コレクタ出力容量Cob:コレクターベース間の静電容量(2pF)

 高周波回路などで問題になる 高周波用トランジスタは容量も少ない

・雑音指数F(NF):入力と出力で雑音成分が増えるか(1dB)

 ここで信号成分の事を考えるとややこしくなるります;(入力雑音は入ってくる信号で決まる)

 例えば2SC1815での1dB(1.12倍)は信号が0.12分悪くなるのではなく

 雑音成分が0.12分増えると言うことで無視出来るレベルと言うことです

ここまでで主な電気的特性になる(主な物がここまでで他にもある)

しかしどれも設計する場合必要になるパラメータなのでどれも頭に入れておく必要がある

トランジスタというのはこの規格内で動いていればほとんど壊れることが無い部品です

しかし瞬間的に発生する電圧(ノイズなど)や部品が密集していて高温になったり

計算上で大丈夫だからと言っても安心してはいけません(実際の動作環境も考える)

 

種類

・エミッタ接地:増幅率が大きいなど全体的に平均的な特性

まずトランジスタの基本動作はベースに電流が流れるとコレクタにも電流が流れるように出来ている

上はエミッタ接地(エミッタが入出力共通端子となっているから)で一番良く使われる方式です

これはの電流の関係を表している(緑がベース電流 青がコレクタ電流)

ベース電流(緑)が少しでも流れるとコレクタ電流(青)が流れている

コレクタ電流が5.0mAほどしか流れないのはI=E/Rで 5mA=5V/1kΩ

トランジスタの電圧降下分は0.02Vなので無視しても良い

電圧から見ると(緑がベース電圧 青がコレクタ電圧)少し見にくいが

ベース電圧が0.5V辺りから(ベース電流が流れ始める)エミッターコレクタ間が

短路(ショート)したかの様になりコレクタ電圧(5V)はエミッタ電圧と同じ0Vになっている

(ショートと言ってもR=1kΩがあるので大電流は流れない)

エミッタ接地の電圧は入出力が反転する(入力5V→出力0V 入力0V→出力5Vとか)

またマイナス領域は動作していないことも分かる

LEDなど駆動させたいときなどはこんな感じ

ちなみにスイッチング動作としても入力前に抵抗は必要

 

・コレクタ接地:出力インピーダンスが低い 増幅率1倍以下

コレクタ接地は出力インピーダンスを低くしたいとき以外使わない方が良いです

(交流増幅回路の場合数百MHz帯で異常発振する場合がある)

増幅率が低いので(例えば入力が1Vなら1V以下 5Vなら5V以下 入力以上の電圧にはならない)

コレクタ接地での入出力の関係は同相となり(入力5V→出力5V 入力0V→出力0V)

 

・ベース接地:周波数特性がよい(昔の話)

今はあまり使うことが無くなった方式 使わないでもなんとかなる

 

・PNP型トランジスタ

ここまでの話は全てNPN型(2SC1815など)で解説していきました

ではPNP型(2SA1015)は必要性がないかと言うとそうでもありません

たとえばこの場合(PNP型ではこれがエミッタ接地) NPNとは逆に

入力5V→出力5V 入力0V→出力0Vとなり 接地方式を変えずに簡単に同相が出来ます

ほかにもマイナス電位を扱う場合など必要な所には必要になってきます

 

・カレントミラーや差動増幅など

上の2つはトランジスタ2つ抱き合わせるように使い

カレントミラーは電流検出 差動増幅は入力が2つになり減算のような動きをする

どちらも定電流などが関係する回路で 回路の安定面などを考えると

オペアンプなどの今時の部品を使った方が同じ事をするのも簡単に安定して動作するかも

 

・交流動作

交流ではすこし部品が増えます まず部品別に簡単に説明します

C1:入力される信号の直流成分を取り除く

R3 R4:トランジスタのベースにある程度の電流と電圧を確保する

R1:コレクタの電流値を決める

R2:動作安定のため必要

C2:トランジスタの動作で生じた直流成分を取り除く

R5:負荷(出力)

入出力の信号はこれで入力0.1Vに対して0.5Vほど出ている事が分かる(緑が入力青が出力 上の絵と同じ)

NPNのエミッタ接地なので出力は逆相で倍率は5倍くらい?に見える

ちなみに出力の抵抗が高いのは たとえこの回路では出力が最大の時出力に対してR1が直列に入る為

出力はR1より十分に高い必要がある為

交流増幅なのでこれも 出力の1Hz付近の落ち込みはC1 C2が通しにくくなっている為

1MHz以上の落ち込みはトランジスタの動作の限界を表している

ちなみに倍率は 倍率=R1/R2で求められる

交流と言っても交流を直流に入れた状態でトランジスタに入れ トランジスタから出てくるときも直流+交流

交流だけを取り出すという風になります (入力の時に入れる直流の事をバイアス電圧と言う)

そして上の方式では電気効率から言ってもあまり良くありません

トランジスタのON OFF関わらず常時電流は流れ続けます

もしONの場合R1→トランジスタ→R2と通り OFFの場合はR1→R5と通り(C2は交流時繋がってるに等しい)

この場合いつの状態でも 流れない 状態にはなりません(この状態をA級動作とも言う)

 

実際の使用

実際に使う場面ではLEDなどの駆動回路 が一番多いかもしれません

ほかにはAMやFMなどの電波関係など手軽に使えるにはいいかも

しかし精度を求める所など(ぴったり○○倍にする)は不向きというより今はもっと良い部品があるので

そっちを使う方がいいかも(設計によって不安定になることが起こりやすい)

あとダーリントントランジスタというのがあるがスイッチングとして使う場合コレクタ飽和電圧が高い物が多い

(通常 飽和状態だとVCE間は0.1V以下だが ダーリントンの場合1Vほどあり 電圧降下分発熱する)

ダーリントン接続したトランジスタ2つなら何も問題はない