半熟英雄と古代ギリシャ


FC版は、将軍は全て、モンスターも殆ど古代ギリシャ神、悲喜劇からの引用で、
古代ギリシャ神話・悲喜劇好きの私には答えられないモノでした。中でも特に好きな
オデュッセウス(弱い)や、
エコー(弱い)や、オイディプス(弱い)
が出ているのには感動しました。
弱いけど。

これらはSFC版になってずいぶん少なくなってしまいましたが、まだまだ古代ギリシャを
元ネタとする将軍やモンスターなどは至る所に見つかります。そんなネタを一堂に会し、
一刀両断にしてスッキリしよう!というのがこのページの趣旨です。
また、好みの将軍、モンスターの元ネタを知り妄想に浸るのもまた風流なものです。
まあ、「知らなかった方が良かった・・・」とお思いになる事もございましょうが・・・。
あ、あと、これを読んで今まで抱いていたイメージが崩れても当方は一切関知しません。


☆お城篇

プトレマイス:プトレマイオス朝が治めた町。
ヒュペルボレア:極北の楽園とでも言おうか。ちなみに「ヒュペリオン」は天国、「ボレアス」は北風の神。
アイアイエー:エーゲ海の島。狡猾な魔女キルケが住む。


☆将軍篇
神様は、結構兼業(?)もしていたりするので、能力は主要な物を集めました。
(例:知恵の女神アテナはアレスと同じく戦争の神と描かれることもある。
太陽神アポロンの他にも、太陽神としてヘリオスやエオスがいる)


ゼウス:神々の王。雷など気象を司る。雨に化けたり牛に化けたりありとあらゆる手で
美人を抱こうとするすけべおやじ。とはいえ神同士の諍いごとにはどちらに付くでもなく
中立を保ち、アクの強い神達を公正によくまとめる統率力を持ち合わせている。
人間の増上慢と高飛車な発言が大嫌い。聖木は樫、聖鳥は鷲。

ヴィーナス:恋愛と美の女神。ギリシャ表記なら正しくは「アプロディテ」表記
です!!!
彼女を歌う美しい歌が「アンティゴネ」という悲劇中にあるので一部引用しましょう
恋ごころ かつて戦さに負けを知らない 恋ごころよ 
富もたからも襲い荒らすもの
また柔らかい乙女の頬に 夜をこめて見張りをつづけ 
海原の上をさまようては 野の牧の住まいを訪ねる
恋の思いを免れよう者 不死なる神にも一人もあるまい
またははかない人間とても同じこと とりつかれれば ただに狂い立つ
−ソポクレース アンティゴネー  呉茂一訳−

聖木はバラ、聖鳥は白鳥。活躍についてはハデスの項を参照。

アテナ:智恵、工芸、芸術の処女神。笛を発明したのも彼女。トロイア戦争中、敵対した
アレスに泣きべそかかせて追っ払ったことでも有名。聖木はオリーブ、聖鳥はフクロウ。
ふと英雄の前に現れて、助言や敵を退けるなどの力添え(テコ入れ?)したりもしている。

アポロン:音楽、予言、太陽の神。でも、悪いことしか予言しないくせにその予言は
覆せないという結構ないけず。とはいえポキスはデルポイのアポロン神殿は最も
霊験あらたかな神託所だったそうだ。聖木は月桂樹。たいそう美青年と言うことらしいが、
惚れた女にゃとことん逃げられる。彼に追いかけられたある女性(ダプネ)はあまりの
イヤさ加減に耐えかね、木になってしまったほど。これはホントは悲恋のエピソードなのだが
どっちかっつーとアポロンはよっぽどキモイのだろうと言う印象が先に立つ。哀れ。

アルテミス:狩猟・月の処女神にしてアポロンの妹。聖獣は白い雌山羊。
淡々と残酷。彼女の裸体を見ようモンなら楽には死ねません。
狩りをしていた男が偶然水浴をしていたアルテミスを見てしまう。アルテミスは怒って、
彼を山羊に変えてしまう。その後彼は自分の猟犬と自分の狩り仲間によって狩られて
しまいました。遠のく意識の中で彼は仲間の「大きな雄山羊をしとめたぞ!ところで
あいつは一体全体どこへ行ったんだ?」と言う声を聞いたそうな。


デーメーテール:植物・農耕の神。「デメテル」と発音する方がギリシャ読みの
今の流行りでカッコイイんだ、と友人相手にマニアを気取りましょう。
アテナイ(今のアテネ)近郊のポリス、エレウシスでは、彼女とその妹ペルセポネへの
信仰が厚く、エレウシスの秘義と言われる教義が伝わっていたらしい。入信の御利益は
死後の安寧。活躍についてはハデスの項を参照。

デュオニソス:バッカス、バッコスとも呼ばれる葡萄・葡萄酒・悲喜劇の神。
酒のもたらす快楽や狂気もこの人の能力の範疇。彼を祭る大ディオニシア祭は
悲喜劇が上演され食べ物が振る舞われ、古代人にはとにかく人気のある神だった。
少年として表現されることもあれば、どアホウオヤジとして表現されることもある。
(特に喜劇作家アリストパネスの扱いはヒドイ。喜劇作家の神でもあるのに・・・)
発音的には「ディオニュソス」が正しい。友人相手にマニア以下略。

ヘスティア:竈・炉の神すなわち家族の守護神。竈は神聖なものとされていた。
処女神で本人は子供が居ないが(居ないが故?)孤児と迷子の守護者でもある。
オリンピックの聖火もこの神に敬意を表してのもの。04年アテネオリンピックも
そう思って見ると感慨深さもひとしお?神話に名はないが過激すぎる他の神連中随一の穏健派。

ヘパイストス:鍛冶の神。ゼウスとヘラの子。片足が不自由。英雄垂涎の武具や、
今で言うロボットまで作ってしまう偉大なエンジニア。びっこで醜いからと
ヘラに(雲上から)捨てられたり、その後大きくなって技巧を認められ再び神の座に
迎えられても、一向に怒ることなく己の技術を皆のために提供する見上げた忍耐の人だ。

ヘラ:ゼウスの嫁はん。嫉妬心はタユゲトス山より高く、旦那の浮気は許さない
(相手の女性とその子供だけ)。ゼウスが無理矢理言い寄った女性にも容赦ない。
母親、婚礼の守護神という一面もあるオリュンポスのビッグマザー。聖鳥は孔雀。

ヘルメス:熟達の必要な技巧全般(運動から商売、そして泥棒まで)の神。
死者の魂を冥府に届けたり、神々の伝令使として人間と神界の仲立ちをしてくれる神。
一度アポロンの牛を大量にかっぱらってピンチに陥ったことがあったが、怒ったアポロンに
自分の開発した竪琴をプレゼントし、その後アポロンに気に入られ無二の親友になったという、
なかなかしたたかな一面も持つ。その後、多分盗んだ牛は返してないような気がする。

ポセイドン:海と馬の神。どうにも短気で荒っぽいじいさん。怒ると三つ又の
矛で水をかき回して嵐を起こすので、船乗りは彼を怒らせないよう必死だったらしい。
いつでもどこでも怒っているようにしか表現されていないのは、当時の航海が非常に
危険に満ちていたからであろうか。生け贄の牛が大好き。聖獣は馬。


☆モンスター篇

ケロベロス:「ケルベロス」のパロディ。ケルベロスはタルタロス(あの世)の
門を守る三首の巨大な犬。こいつがいるせいで生身の人間は死者と生者の世界を
行き来できないらしい。過去にヘラクレスが体一つでふんじばったが、普通の人間じゃ
到底太刀打ち出来ないので、一般的には、甘い蜜煎餅(蜂蜜パンケーキ)を投げ、
ケルベロスが食ってる間に通るのが楽らしい。音楽に自信があるなら、リラに乗せて
歌を歌っても通してくれるかも。フランス語は話さないが、J.K.ローリング
「ハリー・ポッターと賢者の石」ではイギリスに出張したらしい。

オイジュース:苦悩・苦痛の神。ゼウスより一世代前の原始の神の一人だ。
カタギの人はどうしたって知らないような、かなりツウ好みの神。それが前作の
ファミコン版から引き続いて登場というのだからびっくりだ。

ゲーラス:老い・老衰の神。オイジュースと同期の神。神話にもろくすっぽ
出てこないのにどうインスピレイションを働かしたのか、どうしてエッグモンスターに
しようと思ったのか、モザイクマンのモザイクの中身より謎である。彼もFCからの古参。

テュポーン:足から蛇を生やしていたり百の龍の頭を持ってたり
燃える岩を吐き出したりと何ともにぎやかな怪物。
ガイア率いるティタン神族とガイアとクロノスの子らオリュンポス神が戦争を
したさい、ティタン神族側に味方し、オリュンポス神をさんざ苦しめ、ゼウスは
敗北してしまう。最終的にゼウスとのリターンマッチで、ゼウスの投げた
シケリア(イタリアのシシリー島)のエトナ火山の下じきにされた。

山脈投げるのは反則じゃないかとかは言いっこなし。

サイクロプス:一つ目の巨人。バカで乱暴で人食いだが、羊を手塩に掛けて
育てたりする面も。実はポセイドンの子の一人。「キュクロプス」が正しい。
友人相手以下略。

スロウケンタ:「ケンタウロス」のパロディ。上半身は人、下半身は馬のこの一族は
総じて下品で、酒とセクースのことしか頭にないような連中だが、賢者「ケイロン」は
聡明で、神医アスクレピオスやイアソン、アキレウスなど多くの英雄を育てた。

メデューサ:彼女は元々美しい女性でしたが、彼女はポセイドンと恋に落ち、
事もあろうに手近にあったアテナ神殿でちちくりあってしまったのです。
(聖域や神殿で性的行為や出産をすると神様に呪い殺されるので注意してね!)
当然アテナは煮え湯のように激昂し、事の次第を知ったポセイドンの正妻
アンピトリテもまた怒りの炎をめらめらと燃やしました。

(>ポセイドンにじゃなくて
メデューサに。
かくして、彼女は乙女の姿から恐ろしさのあまり見た者を石化させてしまう
蛇女へと姿を変えられてしまったのでした。

神々は仲間内には甘い体質です。いまこそ改革が必要なのではないでしょうか。

ハデス:冥界の神。またそのまま「あの世」の意。人々はその名を
口に出すことをおそれて「プルトン」(富める者)という隠語で彼を呼んだそうだ。
また地下から採掘される金に代表される様々な鉱物の神でもあった。(冥界は地下に
あるとされていたため)巷では暗く陰気なハデスで通っているが死者を裁く目は公正。
ゼウスやポセイドンに比べると比較的物静かではあるが、興味深い逸話を一つ。
アプロディテにけしかけられた色欲の神、エロスの愛の矢を受けたハデスは、
彼の目の前で花を摘んでいたデメテルの娘、ペルセポネがたまらなく愛しくなり、
彼女を冥界へ連れ去りそのまま嫁としてしまう。

−−−アプロちゃん思考−−−
デメテルの娘ペルセポネが神の娘であることを誇りにしてるのがシャクに障る
タダでさえアテナやアルテミスのせいでワタシが目立たないのに

エロスに愛の矢を打たせて、そこいくハデスとペルセポネをくっつけてしまおう

ウマー

・・・・・・・・・・・・
しかしデメテルがゼウスに懇願し、ゼウスの仲立ちで「一年のうち冬はハデスの元、
それ以外はデメテルの元で過ごす」と言う妥協がハデスとの間に成立しました。
かくして、ペルセポネが植物の神であるデメテルの元を離れる冬はデメテルの
悲しみによって草木は枯れていくのだそうだ。


アマゾン:女性のみで構成される好戦的な民族。弓引きの邪魔になるということで
右乳房を取ってしまうことは有名。周辺民族の男との間に子を儲けることで民族を
保持しているが、男の子が産まれると相手の男に返すか、さもなくばポイッと
捨てられてしまう。王女ペンテシレイアやヒッポリュテ辺りが有名。

アレス:戦の神。おみそがすくない。フォボス(驚愕)、ダイモス(恐怖)を
お供に連れている。とにかく戦争が好きで好きで、ひとしきり暴れた後は
累々と積み重なった屍を眺めてにこやかに充実の汗を拭うのが至上の喜びという、
オリュンポス一お友達になりたくない神。エッグモンスター「アレス」のような
武人の高潔さは神話中では感じることは出来ません。聖鳥はハゲタカ。
アテナにボコられて泣いて帰って、オヤジ(ゼウス)に告げ口しに行ったことあり。

ヒュドラ:ページ著者はスッカリ存在を忘れていたモンスター。クイーン戦では
比較的苦戦を強いられるのに。実物は九つの首を持つ蛇(というかほとんど竜)で、
べつにねえちゃんではない。見た目がモンスターモンスターしいので、恐ろしい雰囲気作りに
後世の作家に重宝がられたらしく、タルタロスなどに小道具的に何をするでもなく
配置されたりしている。だが、THE ヒュドラというべき一番知名度のある
ヒュドラはといえば、ヘラクレスに退治されたアミュモネの泉(アルゴスの日照りを
潤した由緒ある泉)にすむヒュドラであろうと判断し、ここではこれに絞って解説する。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ギリシャに力自慢の英雄は数あれど、彼らを一堂に会させタイマン張らせたら、勝ち残るのは
ヘラクレスを措いてほかはないだろう。ヒュドラは、そんな彼の冒険物語に登場することになる。
彼は、例によってゼウスの浮気によって生まれた子なので、これまた例によってヘラに
辛く当たられることになる。ヘラクレスの生涯は波乱に満ちた面白いものだが、余り
そっちに力を入れるとヒュドラの解説だかヘラクレスの解説だか分かんなくなってしまう
おそれがあるのでここでは惜しいながらも必要以上の逸話は割愛する。

上に描いたようにヘラクレスはヘラに嫌われていたので、ヘラの企みによって
ヘラクレスのいとこにしてミュケナイの王、エウリュステウスの下男にさせられる。
彼もまたヘラクレスが嫌いだったので(どちらもゼウスを父に持ってる関係から?)
十二に上る難業を彼に押し付けました。その中のひとつが、ヒュドラ退治。

ヘラクレスと従者のイオラオスがアミュモネの泉に着くと、泉の傍らに九つの頭を持った
ヒュドラが陣取っていた。ヘラクレスは棍棒を握り締めヒュドラに向かっていくと、
ヒュドラの首をひとつずつ落としていった。しかし首を落とされた所から、今度は二本の
首が生えてきた。これでは勝負にならないとヘラクレスは思い、従者イオラオスの手を借り
ヒュドラのすべての首を焼き払った。結果八本の首は見事仕留める事ができたが、最後の
一本の首は不死の首で、炎も受け付けなかった。そこでヘラクレスは、怪力で大岩を持ち上げ
ヒュドラに向かって投げつけ、岩の下敷きにし、退治した。


行動不能にしたとはいえ、とどめはさせなかったので、テュポーンといい、ヒュドラといい、
ギリシャ周辺には、結構地雷が埋まっている可能性がありますね。

ニンフ:古い本なんかだと「ニュムペー」表記になってますな、Nymph。
大概RPGだと、妖精みたいな扱いを受けてますが、人からすればカミサマ。名だたる
神様に力は及ばないものの、神格を備えている一群の総称です。神様の侍女達として
描かれたり、森や水辺で十数人ほどで暮らしていたりと、早い話が、神様のエキストラです。
(名前も語られないことが殆どですが、たまに主役級の配役もらったりすることがあります。
神様ほど全能でなく人間より神秘的なせいか、悲恋の話が多い)英雄オデュッセウスに
7年間アタックし続けたカリュプソ、前述したアポロンキモイヨーのダプネ、失意の余り
声だけになったエコーなどが有名なニンフ達ですかねえ。ニンフは全員若く美しい女性で、
間違ってもマッチョアニキではありませんポージングもしません


−参考文献とかいいわけとか−

検証が不可能なのをいいことにかなり好き勝手やってますが
参考文献は結構信頼の置ける物を選んだのでそれほど間違ったことは書いていないはずです。
なぜこんな玉虫色の態度をとるかというと、ギリシャ神話はギリシャ→ローマ・・・と各地を
巡るうちに、各地の倫理観などに合わせてさまざまな味付けが加えられ、同じ話でも細かな
ニュアンスが違うという事態があるのです。(古代ギリシャの作家の間でだって神様の解釈とか
結構違ったんだぜ、ハァ・・・。)このページではそんな中でもできるだけいじられる前の
(ような気がする)お話を優先的に抜粋しました。とはいうものの私も「カタギの人よりは
知ってるかな〜?」程度の知識で、まだまだ人に教授できるほどの情報と取捨能力を持っていない
横好き男ですので、コレを元に「古代ギリシアにおける倫理観と自然観〜人と神と」
という論文書いたら教授に大ペケもらいました。とか言われても謝るくらいしかできません。

☆ギリシア・ローマ神話 トマス・ブルフィンチ/大久保浩 角川文庫
欧米風味の味付けがなされてるけど読みやすさ一番。ある意味諸悪の根源。

☆オデュッセイアー(上・下) ホメーロス/呉茂一 岩波文庫
☆オデュッセイア(上・下) ホメロス/松平千秋 岩波文庫
ヘラスのシンドバッド(山下命名)ことオデュッセウスの冒険!

☆イーリアス(上・中・下) ホメーロス/呉茂一 岩波文庫
十二神の仲間割れでトロイア戦争。旧訳だけに読みにくい。

☆イリアス(上・下) ホメロス/松平千秋 岩波文庫
新訳だからといってさほど簡単にはなっていない罠。

☆女の平和 アリストパネース/高津春繁 岩波文庫
古代ギリシャの民俗を知ると神話より楽しくなってくるアリやんの本。

☆蛙 アリストパネース/高津春繁 岩波文庫
イロモノなデュオニュソス。古代の通俗がわからないと絶望的に難しい。

☆オイディプス王 ソポクレス/藤沢令夫 岩波文庫
アポロン。不気味な運命のめぐり合わせを神の力としているのが現代の感覚とも大差ない。

☆神統記 ヘシオドス/廣川洋一 岩波文庫
神様誕生からティタノマキア、神様の系譜とギリシャ基礎知識満載。でも絶版(哀

アンチョコ

☆「オデュッセイア」を楽しく読む ルチャーノ・デ・クレシェンツォ/草皆伸子 白水社
原作の無駄を切って面白さを浮き立たせた感じ。イイが買うにはちと高い。




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