真実を申し上げますと
わたくしはもう長い事
貴方様のその首が欲しくてたまりませんでした

わたくしが貴方様の首に
どうしてこんなに執着をするのか
可笑しくお思いでしょう
わたくしも自分が可笑しくて仕方がありません
全てが可笑しくて仕方がありません

愛し愛されたいのでもなく
興味を持たれたいのでもないのです
ただ
どうしても
貴方様の首が欲しいのです
貴方様を所有したいのです

愛情ではなく憎しみでもなく
この感情は物欲です
何かをこんなにも強く望んだ事はありません
はしたないと解っておりますが
どうしようもなく欲しい
真実にそれだけなのです

白い開襟の襟からでるその首は脳裏に焼き付き離れません
夢をみてしまうほどです
それはこのような夢でした

貴方様はわたくしの足袋に口をつけるほど跪き
「忠誠を誓い申し上げる方がこの首が欲しいというのであれば喜んで差し上げましょう」
といい首を差し出すのです
その首の美しさは若い櫻の幹のよう
蒼い血が肉の中を通っているのがわかります

わたくしはその白い凛とした首を
お父様に戴いたこの短刀で自分のものにするのです
忠誠を誓う貴方様の首はなかなか落ちず
先程は蒼いと思っていた血が本当は紅い事に気が付きます

その瞬間の満ち足りている気持ちはなんと言ったらよいのでしょうか
初めて雪に触れたか
月へと還るかぐやか
櫻の散る最初の一片か

畳の上に花のように落ちた貴方様の首は静かにわたくしを見て微笑んでいます
それは目を覚ましている時には絶対に見られぬものでした
わたくしは首を拾いあげ
貴方様の頬に
傷をつけます
それはこの首がわたくしのものであるという刻印です

あまりの嬉しさにわたくしの名が入った首を持ちながら舞うと
皆が喜んでくれます
父も母も貴方様の大事な姉様も皆です

わたくしはその夢から目覚めた時
あまりの幸福さから夢とは気付かず
近くに転がっているはずの貴方様を捜してしまいました
隣で起きていた姉様が寝ぼけているわたくしをみて微笑んでいました

わたくしはもう我慢ができそうにありません
あの夢の中で味わった幸福を味わえるのであれば
火あぶりにされてもいい覚悟です

ですからわたくしはもう決めました
さあ
姉様の着物を借りて
貴方様の首を捕りにいきましょう
煩悩的戯言