リウマチの治療は薬物療法が基本ですが、副作用の出やすい怖い薬ばかりで安心して使うことができません。しかし副作用が無い薬は存在しません。薬の効果とリスクのバランスをよく理解して、きちんとした管理の元に早めに対策を取ることが大切です。

リウマチの疑いがあると判断されれば、検査などを繰り返し行いながら注意深く経過を見ていく必要があります。この間は、一般的な痛み止めとして非ステロイド性消炎鎮痛剤を内服・外用で使用します。

しかし、早期診断に至れば、すみやかに抗リウマチ薬の使用を検討しなければいけません。以前は副作用が多いという理由から極力使用しないという考え方がありましたが、早期からしっかりとリウマチを抑えないと関節の破壊が進行し後戻りができないことになるため、現在では副作用のチェックをしっかりしながら早くから使用していきます。

主な抗リウマチ薬

一般名
製品名
メソトレキセート
リウマトレックス
ブシラミン
リマチル
D-ペニシラミン
メタルカプターゼ
サラゾスルファサラジン
アザルフィジンEN
オーラノフィン
リドーラ
ロベンザリット
カルフェニール
アクタリット
オークル、モーバ
レフルノミド
アラバ
ミゾリビン
ブレディニン
タクロリムス
プログラフ

抗リウマチ薬は遅効性で、数ヶ月かかって効果を現します。したがって、痛み止めの併用がほとんどの場合に必要になります。

痛み止めは非ステロイド性とステロイド性に大別されます。ステロイド剤の方が、しっかりと効果が出やすい分副作用も多いので、適切な組み合わせで最小量の薬剤でコントロールしていくことが大切です。

1999年に抗がん剤として使われてきたメソトレキセートが、リウマチ薬として認可されました。これは、それまでの薬の治療の考え方を大きく変えるものでした。製薬会社は、きちんとした使用方法・副作用などの薬の説明を医者に個別に説明しました。また、副作用の出現についてはかなり正確に記録するようになったのです。薬に対する「危機管理」といえるものが初めて導入されたと言っても良いでしょう。実際、それまでのリウマチ薬よりも明らかに効果を上げることができたことも事実で、現在のリウマチ治療の基本薬として位置づけることができます。

最近のリウマチ関係の新薬は、医者は十分な説明を事前に受けたことを署名し、さらに使用実態を全例登録し厚生労働省に報告するようになっています。また、使用できる施設を限定したり、使用者の資格制度を導入する場合も出現しており、より安全性に対する配慮が厳格になっています。

生物学的製剤

一般名
インフリキシマブ
エタネルセプト
アダリムマブ
トシリズマブ
アナキンラ
リツキシマブ
アバタセプト
商品名
レミケード
エンブレル
ヒュミラ
アクテムラ
キネレット
リツキサン
 
製薬会社
田辺
ワイス/武田
アボット/エーザイ
中外
アムジェン
全薬工業
ブリストルマイヤスクイブ
内容
キメラ型抗TNFa抗体
可溶性TNF受容体
ヒト型抗TNFa抗体
抗IL-6受容体拮抗剤
IL-1受容体拮抗剤
抗CD20抗体
CTLA4-Ig
米発売
1998
1998
2002
 
2001
 
 
日本発売
2003
2005
2007?
2007?
 
 
 
使用方法
8週間隔で点滴
週2回筋注
月2回皮下注
月1回点滴
毎日1回皮下注
 
 
 
2003年夏発売
2005年春発売
 
 
 
 
 
 
 
2007年春厚生労働省前例登録終了予定
2005年12月申請済み
国産。2005年にキャッスルマン病の適応で発売
2006年春リウマチの追加申請済み
 
2004にリンパ腫の適応で発売。肝炎憎悪が報告されている
 

日本におけるリウマチ治療は、メソトレキセートを頂点とする免疫機能を調節する抗リウマチ薬を中心とした薬物療法がその中心に位置付けられています。しかし、2003年のインフリキシマブ発売以来、生物学的製剤と呼ばれる新しいタイプの薬による治療が注目されており、今後リウマチ治療の第1選択薬となっていくことが予想されます。生物学的製剤は、リウマチの関節内で実際に病態の主役となっているサイトカインと呼ばれる物質(TNFa, IL-1, IL-6など)を直接にブロックするため、その効果は強力で、既存の薬と比べて骨破壊についても高い抑制効果が示されています。上の表のように、2007年初頭の時点では日本では自由に使えるものはインフリキシマブのみですが、夏までにはエタネルセプトも追加され、さらにいくつもの新薬が申請を控えているので、数年後には患者さんの生活スタイルに合わせた使用方法の選択が可能になると思われます。現状での問題点は、薬の値段が大変に高価であることと、長期投与による影響や休薬のタイミングなどについてわかっていない点があげられます。また、骨破壊がないうちから投与することが望まれますが、医師はより高い精度で確定診断を行う必要があり、原因解明や検査項目を含めたリウマチ関連の研究の更なる充実が必要とされています。

生物学的製剤については「整形外科基礎知識」の話題もご参照ください。

付録 関節リウマチと漢方

漢方は、日本における中国系伝統医学の総称です。主として植物を原料とした「生薬」を経験に基づいて「体質」によって使い分けます。主として用いられる生薬には、麻黄・甘草・大黄・附子・人参・地黄・当帰などがあります。現代ではエキスとして抽出され、すでに調合されたものが主流となっており、使いやすい物になっていますが、西洋医学の効果が十分に期待できる場合に優先されるべきものではありません。また、緊急的な効果はなく、外科的治療に代わるものではないことも知っておかなければなりません。
関節リウマチでは、原則として西洋医学的なアプローチを第一選択とすることはもちろんであり、積極的に漢方薬を使用する機会は多くはありません。ただし、症状のごく軽い場合、高齢者の場合、胃腸が弱い場合、副作用などで通常の薬が使えない場合などに使用を検討してもよいと考えられています。