■ ギプスとシーネ~整形外科の基本小道具

別にどこかの昔話のタイトルじゃありません。どちらも整形外科の基本治療手段です。ドイツ語です。英語だとcastとsplintとなります。ギプスは皆さんご存知だと思いますが、「あれあれギブスじゃないの?」と思った方いませんか。gipsで「プ」が正しい。そこんとこよろしく。

もともと骨が折れたらどうしていたんでしょうか。折れたところがぐらぐらしてとっても痛がっているので、とりあえず動かないように木の棒のようなもをそえてあげたんでしょうね。そうすると経験的に痛がらなくなることを、昔の人は知っていたんでしょう。そこで木を副える、というんでそういう道具を副木(ふくぼく)と言いました。これがシーネです。その後シーネだけじゃ安定がよくないというわけで、よりしっかりと骨折部を支えてあげるためにできたのがギプスです。

ギプスの作り方・巻き方教室。まず木綿包帯を用意します。これはほとんど伸縮性のない包帯。これに石膏の粉を、しっかり中までまぶしておきます。次に骨折している人を用意してください。お手伝いの人に骨折部の両側をしっかりと持ってもらいます。石膏をまぶしたギプス包帯を静かにぬるま湯につけ、空気の泡が出なくなったら取り出し、おにぎりを作るようにやさしく押して石膏と水分を十分になじませます。骨折部を中心にその前後の関節を含めて包帯を巻いていきますが、この時締め付けないように注意します。上から転がすように包帯を巻いていくのがコツです。巻き終わったら、全体をなでて中に残っている空気をしっかり追い出しましょう。10分から20分で型崩れしない程度に固まれば出来上がり。

実際、今時こんな感じでギプスを使うことはありません。今はプラスチック・ギプスというものが開発され、グラスファイバに粘着硬化剤がついていて、石膏の粉が舞い上がってゲホゲホすることは無くなりました。比較的誰にでも簡単に巻くことができて、ヽ(^o^)丿バンザーイ。でも、問題もあります。うまい石膏ギプスは薄くて軽いのですが、一般的にプラスチックギプスでは厚めになりやすく重くなりがち。また早く固まるので、小細工がしにくくなりました。ただ巻くだけではなく特殊な目的を持つギプスでは、巻き方に工夫が必要でかえって難しくなったといえます。

よくギプスに寄せ書きやいたずら書きをしてくる若い人がいますが、「ギプスは整形外科の命だぁ、なんてことする」といって怒る先生は今時いないと思います。むしろ、しゃれた書き物でこちらを楽しませてもらえるといいなぁと思います。