何かで踵の上を殴られたような感じだ !! と、ほとんどの人が言います。これはアキレス腱が切れた時の様子です。スポーツ外傷としては、最もポピュラーなものの一つです。
ギリシャ神話のアキレスの弱点として知られる、ふくらはぎの筋肉の腱。ヒトの体で一番太い腱。地面を蹴るための原動力。腱の中の腱。ザ・キング・オブ・ケン。ほとんどのスポーツでは、走ることを抜きには成り立ちません。従って、アキレス腱をいためるチャンスはそこらじゅうにあるのです。
ふくらはぎの筋肉は、内側と外側の腓腹筋・ヒラメ筋の3つから成り立ち、下腿三頭筋と呼ばれます。この場所をいためると肉離れといわれる状態になります。これについては別項を見てください。この筋肉が足の方に下がっていくと、下15cm程度がアキレス腱になります。太さは直径で2cm程度もあり、大変太くてしっかりしています。これが踵の骨に付いているのです。
筋肉部分の硬さがあるうちに、強力につま先を上に向けるような足の姿勢を取ると、アキレス腱が伸ばされ断裂してしまうのです。通常、モップの毛のようにバサバサになって切れており、一部は残っていることもあります。切れてしまえば、足を下に向けられなくなるので、つま先立ちができなくなってしまいます。当然歩けなくなるので、誰かに抱えてもらうか、あるいは救急車のお世話になることになります。
診断は比較的容易です。うつ伏せに寝てもらい、断裂部のアキレス腱がくぼんでいるのが見えます。また、ふくらはぎを、ぐっと掴むようにすると切れてなければ足が下に向きますが、切れていれば動きません。少し時間がたっていれば周囲に内出血も広がっているでしょう。
治療は、ギプスで固めるか、手術で腱を縫うかの二つに一つ。ここが考えどころです。それぞれに長所・短所があり、絶対的にどちらかの方が良いということはありません。ギプスで直す場合には、思いっきりつま先立ち姿勢で膝上から足先までのギプスをまず2週間、少し足の角度を戻して膝下から足先までのギプスを2週間、とりはずせる形にして2週間、以後体重をかけて歩く練習をして、計2ヶ月程度は最低かかります。手術の場合はどうでしょうか。ギプスで直すより、確実に強固に断裂部を再縫合できることはまちがいありません。従って再断裂する危険性が低くなるため、スポーツ選手には安心です。また術後のギプス使用期間も、私なら膝下だけで4週間程度あれば十分と考えています。ただし、手術に伴う危険や細菌の感染、あるいは麻酔薬に対するアレルギーなどのリスクも考慮しなければなりません。
さぁ、あなたならどうする?