リウマチ教室での患者さんの質問
われわれのセンターでは1年に2回、一般向けにリウマチ教室を開催している。
2月22日に第15回が行われたが、その中の療養相談で患者さんから寄せられた質問を整理してみた。患者さんが、ふだんどのようなことに疑問を持ち、またどのような治療に期待しているかを知るてかがりになるのではないかと思う。なお、自分が主として上肢の手術を行っている関係で、質問は上肢中心であった。
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Q. ある先生は痛くてもどんどん動かせというが、それでいいのか?
Q. リハビリでは動かすようにいわれたが、先生にはやっても無駄たからいいといわれたが?
Q. 痛みの程度には波があるが、それぞれの時期の対処法は?
Q. 内科にかかっている。手術のことがしりたいので整形外科にそうだんしたいが、どうすればよいか?
Q. 内科のことは、ここに通院しているが、手術はよそでやったので、あっちこっちに通っていて不便。どうすればよいか?
Q. 肩の人工関節を行う時期と、それによってどの程度肩を動かせるのか?
Q. 後ろでエプロンの紐を結ぶのに、腕を後ろに回せないが、直せるか?
Q. 顔に手が届かないので不便。直せるか?
Q. 手関節の人工関節はある?
Q. 手の手術を勧められたが、手術後手が使えない期間はどのくらい?
Q. 指のMP関節の滑膜炎が続いており尺側偏位が進んだ。滑膜炎は直るのか、そして滑膜切除の適応は?
Q. ボタン穴変形をリハビリで、がんばって伸ばしたほうが良いか?
Q. MP関節のシリコン・インプラントの手術を受けているが、思ったより曲がらない。最近痛みがあり、ずれている感じがする。入れ直せるのか?
Q. 顎関節の障害の対処法は?
Q. 頚椎のカラーをするようにいわれた。必要性はあるのか、また手術の適応は?
Q. 膝の人工関節をすると歩けなくなると聞いたが本当か?
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Q. ある先生は痛くてもどんどん動かせというが、それでいいのか?
Q. リハビリでは動かすようにいわれたが、先生にはやっても無駄たからいいといわれたが?
Q. 痛みの程度には波があるが、それぞれの時期の対処法は?
これらの質問には、いずれもリハビリテーションに関係した基本的な考え方が適当な答えとなる。
まず、急性期と慢性期があることを説明する。急性期は炎症が強い時期で関節は腫脹し発赤・熱感を伴う。炎症が強い場所は、血管が拡張し血流が増加、このため圧があがり疼痛を生じる。このときには、局所は安静にし冷却することが基本となる。しかし、慢性期には、むしろ温めて血管を拡張し、血流をよくすることが、痛み物質を早くに局所から流し去ることができ有利である。筋肉を動かすことで、筋肉のポンプ作用により、より血液の流れが改善する。しかし、骨の脆弱性がある場合には、いくら運動したほうが良いといっても、無理な力がかかって骨の圧潰が進むことは好ましくない。また、関節の破壊による拘縮が進んできた場合には、関節を動かしても痛いだけで、それ以上のメリットは無い。この場合には慢性期でも局所の安静を指示しても良い。
関節の可動性とは別に、筋力を保つことは重要な課題である。関節を動かして痛みが強い場合には、等尺性の筋力強化を指導する。医師は、患者さんに対して、基本概念と個人別の対応方法を説明することが重要で、そのどちらかしか説明しないと、チーム医療としての治療形態の中では矛盾が生じやすいことを知っておくべきである。また、個々の細かいことに立ち入ると収拾がつかなくなりやすいので、基本をおさえた上で、患者自身の生活の中で、各人に判断をまかせた方がうまくいきやすい。
Q. 内科にかかっている。手術のことがしりたいので整形外科にそうだんしたいが、どうすればよいか?
Q. 内科のことは、ここに通院しているが、手術はよそでやったので、あっちこっちに通っていて不便。どうすればよいか?
これらの質問も、共通の部分であり、また毎回のように聞かれることである。
Second opinionという言葉があり、一定の主治医だけでなく他の医者の意見も聞くことが、治療方針に客観性をもたせ、適正化に役に立つことは周知の事実である。まして、細かな専門性の違いで複数の医者が診療に当たることは、積極的に進められるべきことである。患者の便宜を十分に考慮し、また希望に可能なかぎり沿うようにマネージメントすることが重要である。
Q. 肩の人工関節を行う時期と、それによってどの程度肩を動かせるのか?
肩関節の解剖学的特徴を把握していないと、他の関節と同じに考えてしまいがちである。肩関節は骨性の適合よりも、むしろ軟部組織(主として腱板)に重点が置かれる。骨構造が甘いので、むしろ可動域・可動方向に自由度が高い点が、たの関節とは決定的に異なる。骨破壊が強いからというだけの理由で人工関節を施行しても、腱板の状態が悪ければ、当然関節の可動性は回復しない。また、骨変化が強いと腱板機能も不全に陥っているため、実際には人工関節の効果は除痛に絞られ、可動域に関しては希望的な説明は控えたほうが良い。腱板機能が十分なうちは、骨構造も比較的保たれていることが多く、手術の説明をしても、患者さんの側で了承することはごく稀である。したがって、現実的な手術時期は、痛みが強く骨破壊の進んだ比較的晩期ということになるが、機能を重点に考えるならば、腱板機能を把握した上で、できるかぎり早いほうが良い。
Q. 後ろでエプロンの紐を結ぶのに、腕を後ろに回せないが、直せるか?
これは、肩・肘・手のいずれもがある程度使えないと無理な動作である。まず、肩の内旋運動で上肢を体の後方に持っていく準備をし、次に肘の屈曲で角度を調整、最後に手を回外させると腰に手のひらが向く。したがって、どれか一つの関節の障害であれば可能になる場合があるが、少なくとも肩関節があまり障害されていないことが条件である。
Q. 顔に手が届かないので不便。直せるか?
これは、主として肘関節の屈曲と手関節の回外によって行える動作である。肘の屈曲時に、明らかに変形や橈骨頭の亜脱臼により、上腕骨と橈骨が当たっているならば、橈骨頭切除によってある程度は肘屈曲の改善が期待できる。腕尺関節の破壊が原因であれば、人工肘関節の適応を考える。肘の場合下肢と違い荷重関節ではないため、表面置換型と蝶番型(拘束型)の両方が使われている。一般には、破壊が軽度であれば膝・股関節に使われるような表面置換型が用いられるが、術後の安定性は周囲の軟部組織に依存する。安定性と広い可動域は相反する部分があり、表面置換型では可動域が得られにくい。一方、蝶番型は破壊が高度な場合に用いられるが、近位と遠位のコンポーネントが連結しているので安定性があり可動域が確保しやすい。手関節の回旋運動は、従来から行われている尺骨頭切除(Darrha法)か、遠位橈尺関節固定術(Sauve-Kapandji法)によって、比較的容易に改善できる。
Q. 手関節の人工関節はある?
欧州を中心にいろいろ開発されているが、まだ十分な成果があるとはいえない。実験段階である。患者さんからの強い希望があっても、原則として行うべきではない。
Q. 手の手術を勧められたが、手術後手が使えない期間はどのくらい?
手術法によって異なるが、いずれにせよ抜糸までの期間は10?14日間位なので、この間は創部の管理が必要となる。手関節の滑膜切除のみであれば、疼痛が自制内であれば術後数日からはできることはやってよい。腱形成を行った場合、腱の縫合部が離開しないように3?4週間は何らかの動作の制限が必要となる。遠位橈尺関節固定術でも同様。手関節固定術では、骨癒合までおよそ2ヶ月間必要で、この間装具などによる外固定を行う。
Q. 指のMP関節の滑膜炎が続いており尺側偏位が進んだ。滑膜炎は直るのか、そして滑膜切除の適応は?
滑膜炎は抗リウマチ薬の効果が出てくれば消失することが期待できるはずであるが、小関節では炎症が続くと関節包が肥厚してかなりのボリュームを占めてくるので、全身のコントロールがいくら良好でも、局所的には腫脹がとれないことは、しばしばある。これが手指の変形を憎悪させる原因になるので、数ヶ月?6ヶ月間程度持続するならば、滑膜切除術の適応である。全身的な検査数値だけで手術の必要を判断しがちであるが、リウマチの治療のend pointは病因の根本的な解決ができない現状では、関節炎のコントロールではなく変形の防止にあることを忘れてはならない。
Q. ボタン穴変形をリハビリで、がんばって伸ばしたほうが良いか?
他動的にPIP関節の伸展が可能であれば、手術をするしないにかかわらずリハビリテーションを行ったほうがよい。拘縮が起こってしまうと、無理に伸展することは無意味である。可動域を温存する手術は、自動伸展不能だが他動伸展可能な時期か、拘縮傾向が見られた初期に本来は考慮したい。完全に屈曲拘縮してしまった場合には関節固定術の適応を考える。
Q. MP関節のシリコン・インプラントの手術を受けているが、思ったより曲がらない。最近痛みがあり、ずれている感じがする。入れ直せるのか?
シリコンインプラント自体は、ある程度その柔らかさにより関節の他動的可動域が確保できる。しかし自動的可動域は、指を動かすための筋力や腱の滑走性が確保されている必要があるので正常と同等にはならない。安易に患者さんに期待を持たせてはいけない。また同じ機種であれば、比較的容易である。通常シリコンインプラントは5?10年程度で破損すると考えている。
Q. 顎関節の障害の対処法は?
顎関節障害も珍しくない。顎関節は半月版のような関節円板を持っており、痛みと不安定性による開口障害と咬み合わせ不良が問題になる。基本的には口腔外科が専門である。
Q. 頚椎のカラーをするようにいわれた。必要性はあるのか、また手術の適応は?
頚椎の環軸椎亜脱臼がかなり高率に見られ、頚椎カラーによって不安定性に対処する必要がある。不安定性が出でくると、はじめは肩こり的な痛みであることが多い。しかし、進行すると脊髄に影響を及ぼし麻痺症状が出現、また高度では屈曲時に呼吸中枢を圧迫して呼吸停止をきたすこともある。軽いうちは使い心地のよいソフトなものでもよいが、高度ではしっかりした物が必要で、患者さんには十分に理解させることが重要である。麻痺症状が出現し始めたら、固定術の適応を早急に検討する。
Q. 膝の人工関節をすると歩けなくなると聞いたが本当か?
歩けないくらいになったから手術を考えるのであって、人工関節をするのは歩けるようになるためである。患者さん同士の口コミは有益な場合もあるが、風潮も多く、誤った知識を正しくしていくことも大切である。またリウマチが個々で違うことを認識させ、自分の状態で、他人を判断した話をしないように説明する。